我、汝の罪を裁くものなり   作:ruly714

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判決

◇ SIDE: 【大騎士】シド・グレイ

 

先程、ロウ殿から報告のあった場所に緊急招集を掛けて向かうことになった。

窃盗だけな単純な事件かと思ったが最近報告のある不審な児童遺体に関係があるとは……。

 

遺体は全く傷がなくきれいなものだった。

我々はなにかしらの呪術によるものではないかと予想をしていたがそれが最悪な形で的中してしまった。

呪術が行われている場所がわからなかったがヴァルナ殿の潜入のおかげで場所も隠し部屋の入り方も判明した。

 

「シド殿!部隊編成が完了いたしました!」

 

部下から準備完了の報告が来た。

 

「よし。直ちにネストルのアジトへ向かう!本作戦は時間が経つごとに囚われている被害者の危険度が高まる。急いで確実に行動を起こすぞ!突入!!」

 

まずは住民の安全が第一の任務である。捕らえられる以上にこしたことはないが仮に逃げられたとしても深追いをする必要はないだろう。

 

「被害者のいる区画は判明いたしました!」

 

「よし、まずはそこの安全の確保を急げ!安全を確保したのちに被害者を救出を行え!」

 

「了解しました!」

 

第一目標は達成されそうだ……。しかし、戦闘音が聞こえないのはどういうことだ?

もしかして、我々が来ることを察知して逃げたのか?

戦闘がなければ部下も被害者にも危険が少なくなるからそういう点では嬉しいが……。

 

「全箇所制圧しました!中には敵の姿はなく拠点は放置されたものかと思われます!」

 

「そうか……。なら、中にある物品の押収を頼む。何か手がかりになるものが見つかるかも知れない。」

 

「はっ!直ちに!」

 

逃げられてしまったか……。他の地域で同様の事件が起きてしまわないか疑念はあるがとりあえずは目の前のことに当たらなければ……。

 

「救出した被害者は馬車で教会まで運ぶよう伝令を!また、教会に協力要請をするように!」

 

救出されてきた子供たち全員が意識不明で見つかっている。何が意識不明の原因かはわからないが息のあるものは教会まで送れば意識を取り戻すだろう……。

 

「被害者の総数は分かるか?」

 

「いえ……。そういう数に繋がる証拠は消されてしまった模様です。基本的なものは焼却処分。燃やせないものは持ち運んで逃走した模様です。」

 

「例の部屋については?」

 

「そちらは儀式とやらに使われていたかも知れない子どもたちの遺体が複数ありました。全員が死んでなかったことだけが幸いですが、それでもかなりの子たちが殺されてしまいました……。」

 

「そうか……。」

 

この事件についてもっと早く動けていればこんなことにならなかっただろう。次同じようなことが起きた時にはどういう行動ができるか後で話し合わないとな。

この現場については部下たちに任せ、私は教会に行き被害者らがどういう状態になっているか聞きに行くとしよう。

 

 

「司教、こちらに連れてきた子どもたちの様子はいかがでしょうか?」

 

「芳しくないですね。ほとんどの子たちは息を引き取ってしまいました。一割くらいでしょうか、生き残った子供は……。」

 

「そんなに少なかったのですか……。」

 

「我々の力不足です……。呪術の影響でしょうか、回復してもすぐに体力が減ってしまうという状態が続き、体力を保てて解除できた子どもは少なかったです。」

 

「謝らないでください。我々の行動が早ければ救われた子も多かったでしょう。全ては我々の責任です。」

 

悲痛な表情をした司教が説明してくれた。我々の行動が遅かったせいで甚大な被害になってしまっている……。

このような結果を見ると我々の力不足を実感してしまう。

 

「ところで、意識を取り戻した子たちはいるのでしょうか?どんなことをされていたのかを聞きたいのですが。」

 

「それは少し難しいでしょうな。」

 

「難しいとは一体?」

 

「目を覚ました子どもたちにどんなことをされていたかを我々も聞いたのです。まだ治療中の子どもたちを救うことができるかも知れませんから。ですが、目が覚めた子たち全員が捕まっている間の記憶が無いそうなのです。」

 

「記憶がない……。そうですか……。自身に繋がる情報を全て抹消したと言うことなのでしょうね。儀式を行っていた部屋らしきところで見つかった子どもたちはどうでしょうか。一番呪いなどの影響を受けていそうでしたので。」

 

「一人だけ助かった子がいますよ。これは嬉しい事というべきなのでしょうか、悲しい事というべきなのでしょうか。」

 

「ここは喜ぶべきことといたしましょう。一人でも助かったのですから。」

 

救われなかった命が数多くある中、少しでも助かった命があるのだ。その子たちの生還は喜んでいいだろう。

ただ、その一方で助からなかった命があるのは我々の落ち度だ。こういう悪質なものは起こす前に見つけられるようにしていかなければならないな。

「その助かった子についてなにか気になる様子はないでしょうか?なにかの影響がある場合詳しく調べて頂く必要があると思いますので。」

 

「その子に関しては今は特に気になるような点は無いですね……。経過については書面にまとめさせるつもりです。現在、回復した者の一覧を書面で用意させております。」

 

「でしたら、その書面を受け取り次第我々は戻らさせていただきます。……、一人、【裁判官】ギルドへ伝令を頼む。頂いた書面も一緒に持っていくように。」

 

 

 

 

 

◇SIDE 【裁判官】ファトレティ・ロウ

 

 

ものすごく痛ましい事件になってしまった。

被害者が分かっているだけでも50人近い。生存者がそのうちの10人程度だと聞いてしまうともう少し私がなにかできなかったのかという気持ちになってしまう……。

それに、突入前に逃げられたのは私のせいだ。私が焦ってギルバードさんへ契約の内容を話させてしまったから……。

デンドロでも悪意のある人がいるんだなって思ってしまった。

こういった悪意のある事件ってどうにかして知るため、犠牲者を出さないようにするための手段が無いのだろうか。

今回の件に関しては私にも戦う力があればよかったのかなって思ってしまう。

 

「キャシーという女の子はどうなのでしょうか。彼女の兄から一度面会できないかと来ておりまして。」

 

考え込んでいるとヴァルナが私の代わりにギルバードさんから言われていたことを言ってもらえた。

 

「こちらが教会より頂いている本事件の被害者の一覧です。ご確認ください。」

 

騎士に言われ被害者一覧を見てみると、キャシーという名前が見つかった。

儀式の部屋にいて、危険な状態だったが現在は持ち直しているとのこと。

 

「ギルバードさんが悲しむことはなくなったけど、この犠牲者の数は……。」

 

「えぇ。隊長も心を痛めておりました。再発防止に取り組むことを考えてるようです。ただ、この手のものはやはり後手になりがちで……。なんとか先手が取れないかとは常に思います。」

 

そうだよね。事件っていうのは基本的に起きてからの対処になっちゃう。事件を起こそうとした段階で見つけられれば良いんだけど、それはとても難しい……。

 

「スキルとかで事前に見つけることはできないのですか?」

 

「見つけるスキルもあればそれを隠蔽するためのスキルが存在するのです。このような大量殺人を起こす場合、ほとんどが高度な隠蔽を行っているのです。」

 

現実だと事件は起きてしまってからの対処になるから起こさせないというのは難しいけど、こちらの世界では見つけるスキルがあるから大きな事件になる前に見つかるのかなって思っていた。でも、逆に隠蔽するスキルもあるだろうから、現実と同じかそれ以上に見つけるのが難しいこともあると考えさせられた。

もしも、そういう犠牲者が出る前に見つけられる手段があれば良いのになって思わされるけど……。

 

「そうなのですか……。」

 

「ご質問などがなければ戻らさせていただこうと思いますがよろしいですか?」

 

「ローテルさん、何かありますか?私は特にはありませんが……。」

 

「私も特にありませんよ。戻られてよいですよ。」

 

「はっ!では、失礼いたします!」

 

騎士は急ぎ退室していった。

 

「さて、ロウさん。我々は明日の判決について話し合いましょう。今回は色々と考えなければ行けないと思いますので。」

 

「はい、わかりました。ヴァルナも行こうか。」

 

「ええ、行きましょうか。」

 

三人で【裁判官】ギルドの執務室へ向かった。

扉を開けるとその中でもう一人の【裁判官】が待っていた。

 

「ロウさん。色々と大活躍だったようじゃないですか。その分、余計なこともいくつかしたと伺っておりますが。」

 

「それは言わないでくださいよぉ。反省はしています……。」

 

「妾たちが事件の動機などを聞くことが大事だと思って、被告に話させてしまったのは問題だと反省しています。」

 

「その点は私が言っておきましたよ。これ以上はよろしいでしょう。」

 

「そうですか。では私は言わないでおきましょう。」

 

「そうしてください。さて、皆さんに聞こうと思っているのは今回の判決についてです。本日、言われていた通りの求刑通りにするのは少し問題があると思います。そこで、どのような刑に落としていくかを聞きたいと思っております。」

 

今の求刑では少し重い刑なのか、もしくは情状酌量の余地があるということなのだろうか。

 

「私としては執行猶予を短くすることで問題ないと思いますが……。」

 

先輩の【裁判官】は執行猶予を短くすることで減刑することを求めたらしい。

 

「私もそれは考えました。もう一つ、罰金刑にするのも考えましたがそれは減刑し過ぎかと思いまして……。」

 

「妾は罰金刑でも問題ないと思います。今回は彼も被害者の一人だと思います。」

 

「それは別の事件として分けるべきじゃないのかな……。盗まれた側からするとそういうのはどうでもいいと思うし。」

 

「では、ロウさんはどうするべきだと思うのですか?」

 

私は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇翌日 SIDE 【裁判官】ファトレティ・ロウ

 

「それでは、被告人に判決を言い渡します。」

 

裁判長が今日判明したことと昨日話し合った内容を元に私たち4人で話し合った判決を言い渡す。

 

「被告人、罰金2万リルを支払うことを命じる。支払い期限は1ヶ月後とする。不可能である場合、こちらが指定する労役を行うことでそれを支払ったこととする。」

 

昨日、私は基本的には重い罪のように見せて実質的には軽い刑にすればいいんじゃないかと発言してみた。

罰金刑で1月ほどの猶予があれば払える人は支払えるだろうし、払えない場合は私たちが指定する労役で代替ができるようにすれば周りも結構重いように見えるんじゃないかなって。

労役の頻度は定期的にやってもらって長期間を拘束せず、また妹のこともあるから遠出する場合は一緒に行けるように都合をつけることができるだろう。

 

裁判長は今回の被告人は妹を助けようとした点は良いことだとは思っていた。ただ、手段が良くなかっただけだと。

 

「被告人、あなたの家族を守りたいという気持ちがあったことは素晴らしいと思います。しかし、そのためにあなたが行ったことはどんなことがあってもやってはいけないことです。次回以降、どこにも頼ればければ我々に助けを求めてください。その時に理由を話せなくても構いません。我々【裁判官】ギルドや騎士団などが力になりましょう。」

 

「はい。今後は必ずそのような状況になってしまったら力を借りたいと思います。」

 

「また、あなたには上告の権利があります。本判決が不服であれば上告を申請してください。」

 

「わかりました……。」

 

妹さんと分かれる可能性があることを危惧してるのか暗い表情だ。

そんなことにはならないから安心して。

何かあったときは私たちが力になるから。

 

 

裁判が終わりヴァルナと二人で部屋に戻った時にヴァルナから言われた。

 

「昨日の潜入時に妾に力があればもっと多くの子どもたちを助けられたのかと思うことがあります。でも、今の妾にはその力がなくて悔しい思いです。」

 

「私たちは悪意のある人から助けるんじゃなくて物事を公平に判断するのが仕事だよ。確かに誰かが苦しんでる時に力になれないのはすごく辛いけど……。」

 

「しかし、妾はマスターを守るガードナーです。マスターが行いたいことの力になれないことが悔しいのです。」

 

それは私の力不足だよ、ヴァルナ。

今回の事件を受けて、これまでは公平な判決を行うということだけが大事なのかなとか思っていた。しかし、悪人を裁くための力もこの世界では必要なのかも知れないと思ったね。

そういう力を私とヴァルナで手に入れられればいいなって思うよ。

 

 




今回の事件、ロウの立ち振る舞いで良くなった点もあり、悪化した点もあります。

初裁判編はここまでです。

だけど本章はまだ続きます。
本章のプロット書いてそのとおりの流れを守って書いていたのですが一段落させるというは難しいですね。
ちゃんと一段落させている他の作者の方々を尊敬しますよ。

せっかくのアルタースタートですのでもう少ししたら原作キャラ(クマにーさんとかフィガロとか)を出せたらいいかなぁと思っています。
(裁判所とかにこの2名は御用になってそうですし。)
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