祐「ポセイドン見学後の夜だな。」
それでは本編をどうぞ!
side 祐介
「あー、死ぬかと思った。」
あの後俺達は命からがらそれぞれの家へと帰還した。で、タケさんと逸波さんも今日は博麗神社に戻るそうだ。既に日は落ちている。
「久々の我が家だな。」
「猛の店も居心地良かったけどね。」
タケさんの店って銃砲店じゃん。ちなみに霊夢は俺の背中で寝てる。起こすのちょっとかわいそうだが、仕方ない。
「霊夢、起きな。神社に着いたよ。寝るなら風呂入ってからにしな。」
「ん〜・・・分かったわよ。祐介の背中って大きいわね。」
「そうか? 標準的だと思うが。」
とりあえず霊夢を降ろし、装備を外してから居間に行く。
「やっぱり落ち着くわね。」
「そうだな。」
逸波さんとタケさんは居間で横になる。
「そうだ霊夢、久しぶりに耳掻きしたげるからこっちにおいで♪」
「じゃ、お願いしようかしら。」
霊夢は逸波さんの膝枕で横になり、耳掻きしてもらっている。
俺が最後に母親に耳掻きしてもらったのっていつだっけ?
記憶にない。家族って、何がいいのだろうか。俺にとっては、苦しみ、重荷以外の何でもない。
なんだか霊夢を見ているのが辛くなって来た。戦う事には慣れてしまったのに、こればかりはいつまでたっても慣れることはない。何だろうこの痛みは。
「ちょっと外の空気吸って来る。」
護身用にMk.23を入れたホルスターを腰に付け、予備弾倉入りのベルトポーチを装着。BDUに元々付いている胸ポケットに懐中時計を入れて空へ飛び立った。
side 霊夢
「祐介の奴、まだ吹っ切れて無いようだな。」
祐介が飛んで行った夜空を見上げてお父さんは呟く。
「どういうこと?」
「霊夢、祐介の過去については聞いたことあるか?」
「本人から聞いたわ。」
忘れはしない。あんな悲しみに満ちた目をした祐介の顔を忘れる訳が無い。
「あいつは外の世界で心を壊しちまってる。心の拠り所であるはずの家族との軋轢の中で1人、重荷を抱え込んでゆっくりと壊れた。」
祐介が壊れている?
「あいつは家族を憎む代わりに仲間を大切にしている。今のところ祐介が生きているのは仲間が心の支えになっているからだな。そのくせ、自分の命を軽んじている。どうしてそうなったか分かるか?」
「全然。」
見当すら付かない。祐介はたった1人でどれだれの重荷を抱え込んでいるのかの見当すら付かない。
「自分は必要とされない失敗作だと自分で認識しているからだ。そんな事は無い。あいつはあの事件以来仲間を守り抜き、多くの命を救っている。だけど、一度付いた傷はなかなか消えずにあいつを苦しめ続けている。恐らく、霊夢と逸波を見てたらかつて心に刻まれた傷が痛み出したんだろうな。」
確かに、祐介は私やフランを救った。自分が傷付き、苦しむ事も厭わずに。それは自分の命を軽んじていたから出来た事なの? 私を庇って死にかけたのも、自分が死にたかったから? そんな訳が無い。あの時の祐介の目には優しさと決意が見て取れた。仲間を守りたいのは本心からのようね。
でも、助けてばかりで自分はおざなり?
「報われないわね。」
「そういうものだ。報われないのなんて世界が崩壊する前も後も変わらねぇ。努力して報われる事なんかそうそう無い。」
「それじゃ、なんで祐介は毎日体を鍛えてるの?」
私は努力が嫌い。報われないし、本気出して負けたら後が無いもの。
「例え報われなくてもやらなきゃ仲間に迷惑掛けるからだ。それに、仲間を守れない。」
本当に自分の事は軽んじているようね。そんな傷を隠しながらも戦い続けている祐介を哀れに思えた。
side 祐介
夜空を眺めて、俺は一筋の涙を流した。苦しい。
俺は、何のために戦っているのだろう。何故、俺は生きる?
あの時、蘇生せずに死んだら楽だったかも知れない。誰にも悲しまれる事もなく、誰にも気付かれることなく、忘却の中で消えてしまいたい。でも・・・
『死んじゃったかと思ったわよ!』
あの時の霊夢の涙は本当に俺を心配して流した物だ。こんな俺を心配してくれる人がいた。作戦データを見たが、弘行も暢も必死に俺を蘇生しようとした。
本当に分からねぇなこの世界。
不必要な存在が突然、必要とされ、頼られることの無かった者が頼られる。あの事件が無ければ、俺は誰にも必要とされなかったはずなのに。
星空は輝き続ける。必要とされてる訳じゃなくとも輝き、地上の人を照らす。その光を見る度に心臓の辺りが痛む。この体にもガタが来たな。
星空に手を伸ばすが、届かない。それでいい。届かないからこそ、星は美しいのだから。夢だって、叶わないからこそ、自分の中では美しく輝くのだろう。
「・・・ただいま。」
神社に戻り、小声で言う。折角の一家団欒を邪魔したく無いし、気付かれないように振る舞い、今日は寝袋出してその辺で寝ようかな。飯ならマズイMREレーションがある。孤独には慣れてる。俺にはピッタリだ。
「お帰り。祐介。」
霊夢が来た。だめだ。俺の所へ来ちゃ。霊夢はあの2人の所にいるべきだ。
俺は、イレギュラー。ここにいてはならない存在なのに。
「あのバカ2人、『天体観測もいいものだ。』とか言ってデートに行ったわ。ほら、こっちに来て。」
霊夢は俺の袖を引っ張って居間へ連れて行く。
「ほら、横になって。」
霊夢は自分の膝をポンポンと叩く。俺は引き寄せられるかのようにそこに頭を乗せ、ゴーグルとインカムを外してちゃぶ台に置いた。
「お母さんに習った耳掻きを見せてあげるわ♪」
霊夢は俺に耳掻きをする。多少ぎこちないが、なんだか安心する。
「祐介の耳って意外と綺麗ね。それに触ってて気持ちいいくらいの福耳だし。」
霊夢は俺の耳たぶをいじる。くすぐったい。
なんだか目頭が熱い。
「ねえ祐介。ありがとうね。助けてくれて。祐介がいて本当に良かったわ。」
「え?」
「だって、ずっとここで1人孤独に毎日過ごしていた所に祐介が来て、まだあまり経っていないけども、毎日が楽しくなったわ。私が食事を作れば喜んでくれて、眠れない時には話し相手になってくれた。ありがとう。祐介。」
「あ・・・ああ・・・」
何が起きているのか一瞬理解出来なかった。涙が溢れ出した事に気づくのに時間が掛かった。
「泣いてるの?」
霊夢は耳掻きをやめて俺の顔を覗き込む。そして、俺は霊夢に抱きつく。
「すまん、しばらくこのままでいさせてくれ。」
「うん。今度は祐介の番ね。」
霊夢は俺の頭を撫でる。
今度は霊夢の腕の中で静かに泣いた。暖かい。安心する。
俺は、自分の家族を憎んでいた。
そして、最後には自分の手に掛けた。敵同士として。私情を捨てて、兵士として任務を果たした。
お互いを理解することなく、永遠の別れを迎えた。
そんな俺に、幸せを求める権利なんて無い。出来るのはこの身に罪を重ね、散る事だけのはずだったのに。
俺は、淋しかっただけなのかもしれない。
それからしばらくして2人が帰って来た。
「や〜、星空が綺麗だったな〜。向こうじゃ見られないぞ〜♪」
「あら、戻ってたのね祐介。お帰り。」
「ただいま、と言うべきですか?」
「そうね。遠慮はいらないわよ。霊夢と仲良くしてたかしら?」
逸波さんは笑顔で言う。
「まあ・・・ね。」
それからしばらくして・・・
「それじゃ、お休み。」
布団が3組しかないので、敷布団を全部並べて川の字+1で寝る事になった。順番は左からタケさん、霊夢、俺、逸波さんだ。どうしてこうなった。どう見ても俺は邪魔者じゃないか。
折角、霊夢が家族と再会したんだから、俺は邪魔したくない。こっそり抜け出そう。
俺はゆっくり体を起こした。が、服の裾を誰かに掴まれた。
「独りに・・・しないでよ・・・」
「霊夢?」
寝ぼけてるのか? しっかり裾を掴んでいる。
「ん・・・あれ? 祐介?」
「寝ぼけてるのか?」
「そうみたい。」
霊夢起きちゃったし、とりあえず横になる。
「夢を見てたの。お父さんやお母さんに祐介が外の世界に帰っちゃう夢。また私一人で毎日過ごしている夢だったわ。祐介は外の世界に戻りたいかもしれないけども、お願い。もうちょっとここにいて。お父さんとお母さん、明日船に戻っちゃうから。」
あの2人ポセイドンに戻るのかよ。
「何言ってるんだ霊夢。いつか言ったろ? 任務を終わらせたら除隊してこっちに住むって。俺は外の世界に未練は無い。」
あの世界のSLFを全滅させたら俺が戻る意味はない。
すると、霊夢が抱きついてきた。
「私が寝るまでこうしていて。また怖い夢見そうだから。」
博麗の巫女だってたまには甘えてもいいだろう。もうちょっとしっかりしなきゃな。
霊夢の頭を撫でながら、俺は眠りについた。
・・・が、寝ぼけた逸波さんのチョークスリーパーを食らう羽目になってしまった。首が締まりそうで締まらない微妙な力加減だ。
首は地獄、後頭部は天国だった。本当に天国へ行く羽目になるところだったけど。
函南少尉?
祐「ちょっと弱気になりすぎたかな・・・」
霊「祐介って結構メンタル弱いの?」
兵士としての函南祐介は自信に満ち溢れた頼れるリーダーだけど、一人の少年としての函南祐介は結構メンタル弱いからなぁ・・・
霊「二面性があるのね。」
祐「まあな・・・どうしてこうなったんだか・・・」
そんな祐介がここまで来れたのも、仲間に支えられてたからですね。仲間あっての函南祐介。ここで生き延びるには連携が重要になりますよ〜。
祐「だな。にしても、逸波さんのチョークスリーパー痛かった・・・」
霊「何やってるのよお母さん・・・」
寝ぼけてたようですね。
それでは次回もよろしく!