人里
「あのクソ野郎ども撤退して行くぞ!」
M2を乱射しながらウィルが叫ぶ。
「フォートレス! ジャッカル1-1だ!敵が後退する! 指定ポイントに"別れた女房"を! トドメを刺してやれ!」
アランはディスプレイに表示されたマップをタップし、ポイントを指定する。
USSポセイドン CIC
「了解。"別れた女房"だな! トレバー!」
「座標をロック。発射準備完了!」
トレバーがコンソールを操作する。
「なあ弘行、"別れた女房"ってなんなんだ?」
「ああ、巡行ミサイルだ。ナゼかポセイドンでは"別れた女房"って呼んでるけど。」
魔理沙の質問に弘行が答える。
「ああ、それはトレバーが艦から飛び出して行くミサイルを、『喧嘩して家から飛び出して行く女房のようだ』って虚ろな目で言ったのが始まりだ。」
「将軍、それを言わないで下さい。当時、女房に愛想尽かされて出て行かれて……」
トレバーのトラウマが蘇ったようで、モリソン将軍は苦笑いしている。
「まあいい。"別れた女房"発射!」
「俺のどこが悪いんだ! 浮気も酒もギャンブルもやってねえ! ただ仕事熱心だっただけじゃねえか! おまけに一切合財持って行きやがって!クソくらえ!」
トレバーは涙目で叫びながら発射ボタンを殴りつけた。それを他の面々は哀れみの目で見ている。悲壮感が漂った。
ミサイルは艦を飛び出し、アランが指定したポイントに向かって飛んでいく。そして、撤退中だった月面軍の上からミサイルが1発。それがダメ押しの一撃となった。
唯でさえ、TF148の精鋭相手に武器の性能と練度の差で圧倒されたところにミサイルを喰らい、人里攻撃部隊の半数を失ったのだ。
そして、空から一つの光と轟音。それは、TF148のオスプレイだった。
オスプレイ機内
「準備は?」
「問題ありません。同志ヴェルシーニン。」
もう一機には、他の部隊が乗って人里へ向かっている。
「よし。いいか、あいつらは非戦闘員位しかいないと知ってて派手に襲撃、おまけにたった4人に返り討ちにされるようなアホだ。俺だったらそんな奴まとめてシベリアにでも送ってるところだ。」
「それは言えてます。しかしここにシベリアはありませんよ?」
「分かってるってのサハロフ。とりあえず索敵殲滅。あ、1、2匹残しとけよ?」
オスプレイ降下地点へ到着する。
「行くぞ!」
ロープを下ろすと、ヴェルシーニンが一番に降下する。
「遅れるな!」
それに3人が続く。しばらく暗い森の中を歩き続けると、葉が擦れる音が聞こえた。
「っと、前方に敵さんだ。」
ムラショフの指差す所に2人、月面軍兵士がいた。傷だらけで弱っている。
「ムラショフ、そいつらは捕虜にしろ。」
「了解です同志ヴェルシーニン。手伝えサハロフ。」
ムラショフとサハロフはこっそり後ろから近寄ると、首に組みついて締め上げ、あっという間に気絶させた。
「フォートレス、ボターク0-1だ。2名捕虜にした。」
「了解。捕虜はジュネーブ条約に則って扱う。手荒な真似はするなよ?」
「了解。ボターク0-1アウト。ムラショフ! 手荒な真似はするなとさ!」
「了解。縛っておきます。他の奴は全滅ですかね?」
「ミサイルの雨に降られた後だからな。」
その後、ボタークはポセイドンへ帰還し、ジャッカルは別の部隊と交代してポセイドンに戻った。
USSポセイドン
「さて、知ってる事を洗いざらい話してもらおうか?」
「うるさい! 誰が喋るものか!」
モリソン将軍が捕虜の内の1人を尋問している。周りにはバルチャー、ジャッカル、ヴィンペル、ユニオン、ジャバウォックの他に、紫、霊夢、魔理沙、アリス、永琳、鈴仙と、ユニオンについて来たレミリアと咲夜もいる。
「痛い目には遭いたくないだろう? 話せば楽だ。」
「拷問でもするのか? 耐える訓練を受けているから無駄だ!」
「そうか。ここは幻想郷。ジュネーブ条約なんか知ったことじゃない。パトルシェフ軍曹! 拷問セット
モリソン将軍はキリルに命令する。
「将軍、本気ですか!? あれは非人道的過ぎます!」
「知ったことか! 今すぐ持ってこい!」
「Yes,sir……」
数分後、キリルは『拷問セットF』と書かれたトランクを持って来た。
「おいなんだよそれ……血付いてるぞ?」
「月面軍だろうとこれを食らえば吐くさ……」
モリソンはゲスい笑みを浮かべ、周りの面々はその恐ろしさに青ざめている。
「ギャハハハハハハハハ!!!!」
「ほう、君はツンツン君が好みのようだな♪」
「ねえ祐介、あれは何をやっているの?」
状況が理解出来ない霊夢が言う。
「あれが拷問セット
トランクの中には孫の手や矢印が付いた棒など、くすぐる為の(くだらない)道具が入っている。
「分かった! 話す! 話すから止めてギャハハハハハハハハ!!!!」
モリソン将軍はドSだと、そこにいた全員が確信した。
こっちの捕虜はモリソン将軍に任せ、他の面々は隣の部屋にいるもう一人の尋問に取り掛かる事にした。
「よう。ジャンケンに負けてお前の尋問を担当するハメになった函南だ。」
祐介は心底嫌そうな表情だった。19人でジャンケンして全敗を喫したからだ。
「あ……レイセンと言います……あの……」
「ん? どうした?」
「そこにいらっしゃるのは八意様では?」
レイセンは永琳を指差して言う。
「そうよ。レイセンと言ったかしら? あなたは何者なの?」
「私は綿月様より急進派の内部を探るよう命じられた玉兎です。」
「急進派? 綿月? 順を追って説明してくれ。」
祐介は訳が分からなかったので、その辺詳しく聞く事にした。記録を取る為にタックゴーグルの録画機能をONにしている。
「はい。今、月の都では今まで通りに暮らすという穏健派と、我々が手を出すことの出来ない月の表側に勢力を伸ばそうという急進派に分かれています。」
「成る程。具体的な行動は?」
「急進派は表側に人間が立てた旗を抜いて地球に投げました。「「「「おいこらテメェ! 合衆国の旗を引っこ抜いただと!?殺されてえのか!」」」」」
月面に立ってる旗といえば、アメリカの国旗だ。それを聞いてジャッカルの4人(元々は米軍)がブチ切れた。
「落ち着けお前ら! で、他には?」
「はい。今にも内乱が起きそうな勢いです。それで急進派は幻想郷に最近現れたという軍が穏健派に付く事を恐れ、攻撃しました。」
「成る程。それで返り討ちに遭った訳か。バカな奴らだ。で、綿月ってのは?」
「豊姫様と依姫様です。月の都の防衛を任されていて、穏健派です。」
「成る程ね……で、お前の目的は?」
「え?」
「ここまでペラペラ喋るからにはその綿月から手紙かなんかでも預かってるんじゃないのか?」
「鋭いですね……これを。あと、これは八意様にです。」
レイセンは2通の手紙を取り出し、片方を祐介、もう片方を永琳に渡す。
「弘行、こいつをモリソン将軍に渡して来い。」
「了解。」
弘行は手紙を受け取ると、隣の部屋のモリソン将軍へと届けに行った。
「読まないんですか?」
「俺は唯の一兵士。こういうのは上官に判断を仰ぐものだ。そのうちお前の処遇も決まるだろ。悪いようにはしないだろうが。今日はここまでだ。」
これから起こるであろうことに、祐介は不安を感じていた。