援軍が到着し、依姫を中心に今後の打ち合わせをする。急進派は第1行政区画にあるリアクターの制圧を目論んでいるらしい。ここを制圧された場合、月の各所へ送られる電力を急進派が自由に止めることができるようになってしまう。
それを阻止するため、一行はトラムに乗り込み、第1行政区画へと急行していた。
「よし、各員聞け。俺たちの役目はリアクターの確保、および敵の排除だ。バルチャー、依姫と共に行動し、素早くリアクターを確保しろ。後の連中は別働隊として援護に回る。」
ベッカーがTF148のメンツに言う。バルチャーはやっぱり殴り込み要員か、と苦笑いを浮かべていた。
「わかりました。レイセン、ついてきてください。」
「は、はい!」
レイセンは暢の持ってきた狙撃仕様のZ-32Nを持っている。
その時、トラム内に警報が鳴り響いた。依姫が玉兎に確認させると、その先のレールが損傷していることが判明した。
「すぐにトラムを停止させなさい! 誰か修理できる人は!?」
「えーと、宇宙服と工具と取説あれば俺とヘンリーでできると思うぜ。」
暢がおずおずと手を挙げる。ヘンリーは一応、電気工学の学位を持っているので、修理できるだろう。
「取説以外はそこに!」
依姫の指差すロッカーを開けると、宇宙服と工具が入っていた。2人はすぐにそれを着込み、トラムの外に飛び出していく。
「誰か援護についたほうがいいんじゃ?」
「そうですね……レイセン、行ってあげてください。」
「弘行、お前も行け。あと、玉兎からライフル借りておけ。」
「あいよ。」
祐介は真空の宇宙空間では地球のライフルを撃てないと判断し、玉兎から借りるよう指示した。弘行はそれに従ってライフルを借り、宇宙服を着てレイセンと共に外へ飛び出していった。
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「おー、こんな感じ……」
暢が苦笑いを浮かべながらつぶやく。レールは折れて、少し曲がっていた。だが、地球の重力に鍛えられた暢には、月の重力下で作られたこのレールを曲げることなど容易いことであった。
素手でレールを曲げ、ヘンリーと溶接を始める。バーナーは宇宙空間でも使えるよう、酸素を噴射して火を出す仕組みになっていた。
「暢!」
「おや? どーした?」
弘行とレイセンを見つけた暢は溶接しながら言う。
「援護してやれ、って祐介からの指示。宇宙服に穴開けられたら俺たち死ぬからな。」
「来なきゃいいんだが、このレールをぶっ壊したのが誰かによるな。」
「あの……この区間のレール、最近メンテナンスしたばかりなので、自然に壊れたとは思えないのですが……」
レイセンが言う。
「確かに、なんかの工具で切ったみたいだよなこれ……」
ヘンリーも不審に思っているようだ。その時、近くのレールで火花が散った。敵弾が当たったようだ!
「お出ましだ! 作業を続けろ! レイセン! 撃て!」
弘行はアイアンサイトでなんとか狙いをつけながら応戦する。工兵2人がやられてしまえばトラムは立ち往生するハメになるのだから、何としても守らねばならない。
弘行は何発か外したが、そのおかげで銃の特性を理解し、狙いをだんだん正確にしていく。地球ではただのクソライフルだが、宇宙空間ではかなり使いやすい。
「おいレイセン! ちゃんと狙え!」
「つ、使いにくいです!」
「落ち着け! 冷静になって撃ってみろ!」
レイセンは使い慣れないスコープに四苦八苦しながらも、どうにか当てていた。
「おい弘行! まともに援護する気あるのか!?」
暢は至近弾にビビながら怒鳴る。
「もう少しだからさっさと終わらせやがれ!」
「わかってる!」
弘行はレイセンに指示を出しながら戦闘を続ける。弘行も弘行で、宇宙服に穴を開けられないかヒヤヒヤしていた。
「終わったぞ!」
「よし引け!」
4人はすぐにトラムまで退避する。敵兵が追ってくるが、トラムからの制圧射撃に加え、霊夢の弾幕、魔理沙のマスタースパークによる迎撃を受け、引かざるを得なくなった。
4人を収容するなり、トラムを発進させ、敵の防御網を突っ切る。
「ふう……助かったよ魔理沙……」
弘行は宇宙服を脱ぎながら魔理沙に礼を言う。
「当然のことだぜ!」
「おい弘行、イチャつくのはかえってからにしろ。もうすぐ第1行政区画に着くぞ。」
祐介は2人にそう言いながらも、改装したG36Cを持って前を見据えていた。
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リアクターに向かう途中、ビル街をどうしても通らなければならない。ベッカーを始めとしたTF148の隊員は、罠があると警戒していた。
バルチャーが目立たないように先行する。弘行だけはレイセンと共に近くのビルに潜んで偵察している。
向かいのビル、中層階にスナイパーがいるのを弘行が見つけた。この調子だと、他にもスナイパーが配置されているだろう。
「レイセン、狙いやすいからあいつは任せる。」
「はい。」
ここに来るまでに、弘行は付け焼き刃ながらもレイセンに狙撃のコツを教えておいた。あの程度なら当てられるはずだ。
そのビルのさらに上の階、またスナイパーだ。弘行はこっちを狙うことにした。
改装したMk.11で当てられるかに不安はあったが、なんとか命中。敵は後ろ向きに倒れたので、落っこちて敵に見つかることはないだろう。
レイセンもなんとか敵にヒットさせていた。元から筋がいいのだろう。
「祐介、スナイパーを排除。まだいるかもしれないから気をつけろ。」
「了解。」
弘行は無線で祐介にそう伝えると、レイセンを引き連れて次の観測地点へ移動する。
祐介たちは警戒しながらもビルの間を徒歩で進んでいく。すると、低めのビルの屋上から鎧武者がビームサーベルを持って飛び降りてきた。祐介は依姫に先に行くよう言うと、暢と愛良に指示して散開し、飛びながら応戦することにした。
暢はジャンプしてビルの外壁を駆け上がり、ある程度登ったところでサマーソルト、真上から敵兵へ乱射攻撃を繰り出す。鎧武者はビームサーベルで何発か斬ることに成功したが、弾が多すぎて対応しきれず、蜂の巣にされた。
祐介は敵の玉兎と空中で銃撃戦を繰り広げる。が、慣れない2丁拳銃で当てることができず、苦労していた。
そこへ、敵弾が胸に命中。弾は防弾プレートが防いだが、衝撃でバランスを崩して落下していく。
「なにやってるのよドジ!」
それを霊夢が空中で受け止める。
「助かる!」
霊夢に抱き抱えられた状態で射撃し、敵を仕留める。やっぱ1丁でいいや、と呟きながら、Mk.23をホルスターに仕舞った。
ビルの屋上から飛び降り、祐介と霊夢を斬りつけようとした敵は弘行に狙撃されてどこかへ吹っ飛んで行った。これで辺りの敵は一掃されたようだ。
「弘行、聞こえるか?」
「感度良好。」
「よろしい。依姫に代わる。」
祐介はインカムを依姫に渡す。
「聞こえますか? あなたはレイセンと先にリアクターを確保してください。ダクトから侵入出来るはずです。」
「了解。援護は頼むぜ。」
弘行は通信を切ると、レイセンに依姫からの指示をそのまま伝えた。
「大丈夫なんでしょうか……?」
弘行は自信なさそうなレイセンの両肩を掴む。突然のことにレイセンはひっと声を上げた。
「依姫は俺たちに託したんだ。大丈夫かどうかじゃない。任務を遂行するしかない。お前も一端の兵士なら、不安に思うのもわかるが任務を遂行することに集中しろ。いいな?」
「でも……」
「いいな!?」
「は、はい!」
弘行はレイセンの肩をポンと叩く。我に帰ったレイセンはリアクターへと弘行を誘導していった。