東方〜2つの世界の守り人〜   作:Allenfort

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mission48 紅魔館の主

あれから2日ほど。咲夜を連れての行軍はやはり遅い。暢とでは体力の差があり過ぎた。だが、それも計算のうち。もうすぐ紅魔館に到着する予定だった。時刻は午後2時。

 

マズイMREレーションのせいでげっそりしている暢は、双眼鏡で森の先を確認する。そこに、紅魔館と思わしき屋敷が見えた。木々の隙間からわずかに門が見え、その脇には見覚えのある門番が立ったまま居眠りしていた。

 

「よし、目的地が見えた。あと一踏ん張りだ。頑張ってくれよ?」

 

暢は隣にいる咲夜へ声をかける。咲夜の顔には疲労の色が見えるが、それでもしっかり縦に頷いた。

 

暢はM4V1のマガジンを抜き、チャージングハンドルを引いて弾丸を抜いた。代わりに、空のマガジンに魔力を込め、それを装填する。美鈴を殺すわけにはいかない。万一の時は弾幕で気絶させる。

 

ただ、弾幕ごっこが出来たのが霊夢の代になってからのはずだ。今は逸波の代。つまり、こっちは殺す気が無くても向こうが殺る気に満ち溢れているかもしれない。美鈴ならそんなことはないだろうが、そうとも言い切れないのが痛いところだ。レミリアが出てきてくれれば話は早いのにな、暢はそんなことをぼんやり思った。

 

暢は低姿勢でゆっくり茂みを進み、門へ近寄っていく。咲夜もそれを真似して後ろから付いていく。暢は内心ハラハラしていた。美鈴は一応妖怪なのだ。殺されはしないだろうが、殴られたら怪我は免れない。それだけは避けたいところだった。

 

美鈴はまだ寝ている。このまま、このまま……暢は慎重に進み、門を潜ろうとした。その瞬間、眠っていたはずの美鈴が目にも止まらない素早さで拳を打ち出してきたのに気づく。咄嗟にM4V1の銃身でそれを受け流し、その場で一回転。美鈴から少し距離をとってM4V1を構え直した。

 

「寝てたんじゃねえのかよ?」

 

「気配を感じたんですよ。それより、侵入するのなら容赦はしませんよ?」

 

「じゃあレミリアに取り次いでもらえるか?」

 

「怪しい人を取り継ぐ訳には行きません!」

 

美鈴が再び殴りかかってくる。それを暢は横に転がって回避すると、美鈴にM4V1を向け、トリガーに指をかける。機関部が凹んで、実弾は撃てそうにないが魔力弾を撃ち出すくらいは出来るだろう。

 

だが、トリガーを引くより美鈴の拳が飛んでくる方が早い。あのトリガーハッピーの暢が1発も撃てず、美鈴に押されている。完全に不利な状況だ。

 

すれ違い様に拳を繰り出そうとすれば躱され、手痛いカウンターを食らう。かといって守勢に回ればガンガン攻められる。もはや八方塞がりもいいところだ。

 

「双方ともやめろ。もう十分だ。」

 

低めの男の声が聞こえ、暢と美鈴は戦闘を中断した。声の方に視線を向けると、日傘をさした長身の男が立っていた。銀髪で、コウモリのような羽が生えている。吸血鬼とは一目でわかった。

 

「だ、旦那様!? どうしてここへ……」

 

「旦那……?」

 

暢は美鈴の言葉を聞くと、自分の記憶を片っ端から漁って、この男のことを思い出そうとした。なぜか知っている気がする。

 

「まさか……レミリアの親父か?」

 

「そうだ。モリソンの部下、長谷川暢軍曹。いや、ゴーストだな。」

 

暢は一歩後ずさった。なんで自分のことを知っているのだろうと、怪しんだ。

 

「カイル・スカーレットだな? モリソンから聞いたことがある……でも、なんで俺のこと知ってるんだ? この時代のモリソンが俺のことを知っているわけがない。」

 

すると、カイルは自分の目を指差した。

 

「能力だ。見通す程度の能力。過去も、未来も、お前のことも……何もかもを見通せる。お前の後ろにいる少女がどんな人物で、どんな未来を辿るか。そして、お前がなんの目的でここに来たかもわかる。その子は紅魔館で引き取ろう。レミリアとフランには大切な人間になるのだからな。」

 

暢は冷や汗をかいた。レミリアの能力の上位互換といったところだろうか。この男には誰も勝てる気がしない。それほどの人物だった。

 

「ついて来い。美鈴、この男の方は覚えておいた方がいいぞ。」

 

「え、ええ……? わかりました……」

 

暢は咲夜を引き連れてカイルについていく。紅魔館の中へ導かれると、カイルはメイド妖精を呼び出し、咲夜を部屋に案内するように指示した。暢とはここでお別れだ。

 

「それじゃあ咲夜、元気でな。」

 

「うん……」

 

暢は咲夜の頭をポンポンと撫で、視線を合わせる。

 

「また会える。10年位したら、またここでな。」

 

それだけ言うと、暢は咲夜と別れてカイルについて行く。最後まで咲夜に顔は見せなかった。名前はバレたかもしれないが。

 

「さあ、パチュリーに頼んでお前を未来に帰すとしよう。どうやら、友達が窮地に立たされているようだ。すぐにでも、お前の助けが必要だろう。」

 

「マジかよ? 祐介と弘行、それに霊夢と魔理沙もいて、何にやられるんだよ?」

 

「そこまでは判別できん。私の知らない何がとしか言いようがない。来い。」

 

カイルはゆっくり歩く。走ればすぐなのに歩く。何か話したいことでもあるのだろうか。暢はそれに黙って付いていく。様子見するしかなかったのだ。

 

「お前は、運命と宿命の違いはわかるか?」

 

カイルは唐突に訊いてきた。突然哲学じみた事を言われても、思いつくはずがない。運命も宿命も、意識したことも信じたこともないのだから。

 

「分からない。どっちにせよ信じてはいない。」

 

「そうか。だが、運命も宿命もお前のすぐそばにある。宿命とは元から宿っているもので、変えることはできない。そして、勘違いされ気味であるが、運命は変えられるのだ。自分や周りの力によってな。」

 

カイルは振り返り、後ろ歩きしながら語りかける。暢はそれを黙って聴く。

 

「お前はいずれ死ぬ。それは生き物の定めであるから、変えることのできない宿命だ。ではどのようにして死ぬか? これは運命だ。誰かに殺されるか、自ら死ぬか、自然に死ぬか……これは変えることのできることだ。」

 

「といっても、あんたにゃ俺の死に様が見えてるんだろう?」

 

「見えている。だが、それは何パターンもあるのだ。現状で考えられる死に方の一覧とでも言おうか。この中にあるのか、他の死に方をするのか……パターンは見えても、どれが当たりかは私にもわからない。今言えるのは、もう直ぐお前の役目は終わる。それがどのような終わり方か、どのような終わりにしたいか……それはお前自身が考えろ。それだけだ。」

 

そんなことを話していたら、あっという間にパチュリーの部屋に辿り着いてしまった。何もかもがあっという間に終わっていく。暢はそう思って、少し寂しさを覚えた。

 

「パチュリー、いるか?」

 

カイルが呼びかけると、パチュリーが本に向けていた目線を上げ、カイルと暢を見た。ダルそうにしながらも、怪訝な表情で暢を見つめていた。なんせ、暢は顔を隠しているのだから。

 

「彼は客人だ。まあ、何者かは10年もすればわかるはずだ。」

 

「そう……で、どうして彼をここへ?」

 

「元の世界に送り返すためだ。魔力を貸してもらえるか?」

 

「わかったわ。数日寝込むと思うけど。」

 

「看病はする。」

 

そう言うとカイルはチョークで床にサラサラと魔法陣を描き始めた。とても慣れた手つきだった。行きの時にユーリが書いていたスピードより遥かに早い。

 

「これでいいだろう。ゴースト、この上に乗ってくれ。」

 

「ああ。」

 

暢は魔法陣の上に乗った。どのような終わりにするかは自分で選べ……それは、無事に祐介たちと合流してから考えよう。幻想郷に外の世界から持ち込んでしまった厄災を取り払う。そんな終わり方に出来るように。

 

パチュリーとカイルが手を合わせ、呪文を唱える。すると、魔法陣が青白く光り、暢の視界が霞み出した。転送が始まったのだ。

 

「さらばだ、勇敢な人間。モリソンによろしく伝えてくれ。私はもう会う事は無いだろうが、私の言葉は恐らくお前の心に残り続ける。それをどう解釈するかはお前に任せる。」

 

「どう解釈するかは大体わかった。任せろよ。幻想郷を潰させはしない。また会おうぜ。」

 

「いずれ、また輪廻で。」

 

暢は白い光に包まれ、意識を失った。

 

ーーーーー

 

気がつくと、パチュリーの図書館の床に暢は倒れていた。無事に戻ったのだろうか?

 

「あら、早いお帰りだったわね。やっぱりあの時に会っていたの……やっと本人だって確証を持てたわ。」

 

後ろからパチュリーがそう語りかける。戻ってきた。そう確信できた。

 

「そういや、祐介たちがピンチってカイルが言ってたが?」

 

すると、後ろからユーリが歩いてきて、暢の壊れかけたM4V1を取ると、暢のM249を代わりに渡した。

 

「冥界に異変解決に出掛けたんだが、なんかあったらしい。連絡は途絶しているが、大体の位置は分かってる。急行してくれ。あと、咲夜は……」

 

その時、ドアが勢いよく開いて咲夜が図書館に飛び込んできた。無事だったようだ。そして、暢の姿を見るや否や、駆け寄って暢に抱きついた。

 

「おわっ!? 咲夜!?」

 

「やっぱり……暢だったのね……!」

 

咲夜は暢のバラクラバを取ると、じっとその顔を見つめた。咲夜は涙を流しながらも、微笑んでいた。

 

「ありがとう……助けてくれて……!」

 

「ああもう、わかったから泣くなよ……」

 

暢はたじろぎながらも、咲夜を宥めた。結局、咲夜を泣き止ませて出発するまでに多少の時間を要することとなってしまった。

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