東方〜2つの世界の守り人〜   作:Allenfort

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mission49 点と点

暢はパチュリーから祐介たちの居場所である冥界への行き方を教わり、咲夜とともに急行していた。カイルの話が本当なら、霊夢や逸波がいるにも関わらずピンチに陥っているのだ。

 

冥界に到着すると、そこには長い階段があった。訓練の階段ダッシュよりはマシだと思いつつ、装備を抱えて階段を駆け上がって行く。8kgもあるマシンガンを持ってきたのは間違いだったかもしれない、そう思いつつ、暢は走る。

 

階段で戦闘の痕跡を見つけた。恐らく霊夢が暴れた跡なのだろうが、今は周囲に敵影はない。じゃあやはりこの階段の終着点にいるのだろう。

 

階段の先には大きな桜の木が見える。花どころか葉っぱ一枚生えていないけれど、不思議な光を発していた。時折、光弾が飛んでいるのが見える。それに時々曳光弾が混じっているのは実弾を使わなきゃヤバい相手がそこにいるということなのだろう。

 

走りながら実弾を装填し、即座に戦闘に移れるように体制を整える。マシンガンもハンドガンも大丈夫だ。

 

階段を登りきると、そこでは祐介と弘行が倒れて呻いており、霊夢と魔理沙は立っているが肩で息をしている。ケロっとしているのは猛と逸波くらいのものだ。

 

「祐介! タケさん!」

 

暢は急いで祐介に駆け寄ろうとするが、祐介は驚いたような表情とともに暢を制止しようとした。

 

「待て! 来るな!」

 

へ?そう思った暢が近くにある和風な館の方へ視線をズラすと、紫色の光の尾が迫ってきていた。咄嗟にその場に伏せると、その光の尾は暢の上を通り過ぎて地面に着弾。草花を焦がした。レーザーだ。

 

館……白玉楼の屋根にはライフルを持った男が佇んでいた。黒いロングコートをまとい、顔をフードで隠している。そうだ、月面戦争の時、弘行と交戦した男だ。フィルの偽物……何者なのだろうか?

 

「避けたか。やるじゃないか。」

 

暢は余裕そうに構えている男へ銃口を向ける。もちろん、間髪入れずにトリガーを引いて弾幕を見舞う。飛び出した無数の銃弾は男の体に命中し、ズタズタに食いちぎるはず……だが、弾丸は全てすり抜け、屋根の瓦を叩き割るだけだった。

 

「はぁ!?」

 

「遅い。」

 

次の瞬間、男は暢の真後ろに現れてライフルを向けていた。レーザーで焼かれることは避けられそうになかった。だが、男は白髪の少女……魂魄妖夢が横から切り掛かってきたのに対処せねばならず、暢へつけた狙いを一度外さねばならなくなった。

 

もらった、そう確信した暢はピストルを抜いてしっかり狙いをつけ、男へ向けて発砲した。今度はすり抜けることなく弾丸が腕に命中する。乱射してるせいか射撃の腕が落ちた、または散布界が広いのかはわからなかった。

 

男はまた姿を消し、どこかへ移動した。今度は空中だ。

 

「やってくれたな。こんな事ならそこに倒れてる奴らにトドメを刺しておいたほうが良かったかもしれないな。」

 

「うるせえなクズ! 正体を表せチキン!」

 

「やれやれ、生き急いで楽しいか? ゴースト?」

 

暢は一瞬目を見開いた。なぜ過去の世界で名乗っていたゴーストの名を知っているのだろうか?

 

すると、男の姿に霞がかかった。霞が消え、男がフードをとると、銀髪に赤目の青年の姿に変わっていた。どこかで見たような気がする、どこか咲夜に似ている……そう思った瞬間、暢の頭の中に電流が流れたような感覚があった。そうだ! こいつは過去の世界で見つけたあの時の……!

 

「思い出したか? 皆月雷人。それが俺の名だ。妹はどうやら新しい名前と身分を手に入れたようだがな。いや、与えられたのほうが正しいか……」

 

相変わらずお互いの銃口を向けあったまま、問いかけは続く。

 

「目的はなんだ? あのくそったれマッドサイエンティストに加担した理由は?」

 

「簡単な事さ。復讐だよ。幻想郷は何者も受け入れると謳っておきながら、俺たちに居場所はなかった。能力があるだけで、俺の友達はみんな殺されていった。もう少しで殺される……そんな時に友の魂に救われなければ、俺もあの世行きだったはずだ。今、こうして幻想郷に復讐する機会を得た。あの村はもう滅ぼした……あとは、見て見ぬ振りをしていたこの世界全てに同じ目に遭ってもらう。簡単だろう?」

 

「貴様!」

 

また無数の弾丸が空間を切り裂いて雷人目掛けて飛んでいく。だが、結果はさっきと変わらず、弾丸が当たることなくすり抜けていく。

 

「そんなのが当たると思うか?」

 

「なら、これならどうかしら?」

 

花の咲いていない巨大な桜の木、西行妖を背にした桃色の髪の美女、西行寺幽々子が扇を振る。それと同時に無数のレーザーと弾幕が雷人目掛けて撒き散らされた。それはまるで桜吹雪のようで、うっかり逃げることを忘れて魅了されそうになってしまった。我に返った暢は祐介のところに駆け寄り、状況を訊いた。

 

「祐介、どうなってる?」

 

「ああ……あの刀使いの妖夢が春を集めてるってタレコミがあったからきてみたんだが……どうもあのクソッタレのロクでなしが化けてたらしい……タケさんと逸波さんも苦戦してる……」

 

逸波と猛は攻めあぐねているし、祐介と弘行は戦えそうにない。霊夢と魔理沙はバテている。どうしたものか。

 

なぜ弾丸が通り抜けるのか? 1番考えられるのは能力を使っていること。むしろそれ以外に何があるというのだろうか?

 

「全く埒が明かねえ! 逸波! 封印を解除しろ! 俺が始末する!」

 

「ああもう仕方ないわね!」

 

逸波は猛の額に手を当てる。すると、手のひらが光って猛を包んだ。光が消えても特に外見上の変わりはない。

 

「霊夢……何をしたんだあれ……?」

 

祐介は霊夢に訊く。祐介は猛の能力を知らないのだ。逸波は確か封印する程度の能力だったはずである。

 

「お母さんがお父さんの封印解いたのね……否定して消し去る程度の能力、危ないからいつも封印してて、本当にマズイ時だけ使ってたんだけど……」

 

つまり、元博麗の巫女にも現博麗の巫女にも手に負えない相手であり、最後の切り札を切らねばならないという事態に陥っているということである。

 

猛は散弾銃、M1014を撃ち、雷人へ攻撃する。弾はすり抜け、雷人が消える。それから数秒して、猛の真後ろに雷人が現れた。猛の狙いはこれだ。

 

銃剣での刺突をヒラリと躱した猛は雷人の額を掴んだ。

 

「手こずらせてくれたなこの悪ガキが。お前のその能力、この俺が否定する。そんなものはない!」

 

猛の手のひらから紫色のもやが現れ、雷人を包んだ。アレがその能力で、雷人の能力を消しているのだろう。だが、もやが晴れるとそこに雷人の姿はなかった。

 

「何!?」

 

「もらった!」

 

猛の後ろに雷人が現れ、銃剣で背中から腹を貫いた。刃からは赤い血が伝って石畳に垂れていく。

 

「猛!」

 

「お父さん!」

 

「タケさん!」

 

「嘘だろ!?」

 

「タケさんが!?」

 

逸波が、霊夢が、祐介が、暢が、弘行が叫ぶ。能力を消したはずなのに、何故?

 

「躱された瞬間、本体と幻影を入れ替えて良かったよ。お陰で、幻影を使えなくされただけで済んだ。」

 

「能力は……1つじゃねえのか……!」

 

「それじゃ50点にも届かないよ? おじさん?」

 

雷人は銃剣を抜く。猛はその場に倒れ、石畳に血だまりを作った。雷人は銃剣の血を払って語り続ける。

 

「俺の能力は死者の力を借りる程度の能力……能力があるからといって殺されていった村の子供たちから能力を借りているんだ。復讐のためにね。会ったことがあって、本人の霊の同意を得られないと借りれないのが難点だけど。」

 

「クソ……じゃああの消えるのは……!」

 

猛は血を吐きながらもピストルを抜き、雷人へ向けて撃つ。1発だけは当たったが、残りは回避されてしまった。雷人からは赤い血がポタポタと垂れている。当たったのだ。

 

「幻覚を見せる程度の能力。本体を消して、幻覚を見せていたのさ。まあ、攻撃の時は本体がやらなきゃいけないし、そこの剣士に化けるのもお手の物だったよ。おじさんに消されたけどさ。」

 

「よくも……許さない!」

 

霊夢は唇を切れるほど噛み締め、逸波も無言で激昂している。猛の世話になった祐介たちも勿論怒りが心を支配していた。

 

「やれるものならやってみなよ? 出来るならだけどさ!」

 

雷人はその場で体が歪み、消えてしまった。祐介はその間に猛に駆け寄り、応急処置を始める。

 

「ほら、甘いよ?」

 

雷人はそんな祐介の目の前に現れて銃剣を振りかざす。それを防いだのは弘行だ。ライフルのハンドガードで受け止めたのだ。

 

「お前に俺たちの隊長は討たせねえよ!」

 

弘行は雷人を蹴飛ばし、霊夢と逸波が猛然とそこへ突撃する。霊夢はお祓い棒を、逸波は博麗ノ太刀を構えている。

 

雷人はそれをライフルの銃身や銃剣で弾いては時々反撃に出る。その後ろから暢がスペツナズマチェットを振り下ろして斬りかかる。ローブが防刃仕様になっているようで、刃は通らなかったが、隙を作ることには成功した。逸波が太刀で雷人の左腕を斬り落としたのだ。

 

「……ッチ! ここまでか!」

 

雷人の体が歪み、また消えた。撤収したのだ。

 

「祐介! お父さんは!?」

 

霊夢と逸波が猛に駆け寄る。祐介は青ざめた顔で必死に止血を試みていた。

 

「ああったくあのクズ野郎が! 出血が止まらない!」

 

祐介は圧迫止血や止血剤、ありとあやゆる手を施すが、正規の衛生兵ではなく、たかだか戦闘救命士程度にできることは限られていた。

 

治療を続けようとする祐介の手を猛は掴んで止めた。もう無駄だ、そう悟ったのだろう。祐介はそれを悟り、ポロポロと涙をこぼした。それは霊夢と逸波、暢と弘行、幽々子と妖夢も同じだった。幽々子と妖夢は霊夢が生まれるより前から猛、逸波と親交があったのだ。

 

「逸波……悪いな、こんな別れ方でよ……」

 

「何言ってるのよこのバカ……幻想郷でその年まで生きられたら儲けものよ?」

 

逸波は涙をこぼしながらも猛の手を握る。

 

「殆ど外の世界に居たからだろうがよ……ありがとな、お前との夫婦生活……人生最高だった……」

 

「こっちのセリフよ……」

 

猛はもう片手で霊夢の手を握る。

 

「霊夢、悪いな情けない親父で……後の幻想郷を頼む……」

 

「勿論よ……だから……死なないで……」

 

泣きじゃくる霊夢に対し、猛は首を横に振った。

 

「生き物はいつか死んでいく……俺も逸波も、お前も……祐介たちも。祐介たちと力を合わせて、全てを終わらせてくれ……いい娘を持ったって、あのロリ閻魔に誇ってもいいな……?」

 

「うん……ちゃんと修行もするし、神社のこともしっかりやるから……」

 

「よし……祐介、娘を見守ってくれ……お前を一端の男と見込んで頼む……暢と弘行も……霊夢に協力してやってくれ……」

 

「勿論ですよ……」

 

「俺が奴を中途半端に逃がしたからこうなったんです。責任持って始末します。」

 

「タケさん……お世話になりました……!」

 

祐介たち3人は猛に敬礼する。猛は安心したように縦に1つ頷く。

 

「まあ幽々子と妖夢は……このあとしばらく頼むわ……」

 

「縁側の特等席、用意しておくわ……」

 

周りに咲いていた桜が、突風に舞った。散りゆく桜吹雪の中、猛は安心したように笑顔を浮かべながら眠りについた。敬礼していた祐介たちの目からはとめどなく涙が溢れ、軍服や銃を濡らしていく。霊夢と逸波は猛の亡骸に取りすがって号泣した。1つ、時代が終わったのだ。

 

ーーーーー

 

湖のほとりで、猛の葬式がひっそりと行われた。祐介たちのあったことのない妖怪や人が集まっていた。猛と親交のあった人々なのだろう。

 

その中に、幻想郷の閻魔である四季映姫もいた。この後、猛の霊を裁くのだろう。そんな閻魔がわざわざ葬式に来るとは、祐介はそんな風に不思議に思っていた。

 

火に包まれ、燃える棺を遠目に眺めていた祐介に、映姫は声をかけた。

 

「函南祐介ですね?」

 

「はい……閻魔様。」

 

「映姫でいいですよ。あなたは、案外平然としているんですね。」

 

映姫はそう言うと霊夢と逸波の方を向いた。棺に向かって立ち、俯いて涙を流している。

 

「……遅かれ早かれ、いつかはこういう時が来るって覚悟していましたから……あの棺に入ってるのは俺だったかもしれないし、他の誰かだったかもしれない。」

 

祐介は自分のドッグタグを握りしめながら言う。自分の中に渦巻く様々な感情をなんとか制御しようとしている。

 

「……これから、どうする気ですか?」

 

「決まってる。タケさんの犠牲は無駄にしない。どうせ地獄に堕ちる身です。ならば、先に堕ちるべき奴を堕としてからでも遅くはない。」

 

祐介の目にはまだ光が残っていた。やっと掴んだ尻尾に食らいついて、しがみついてでも終わらせる気なのだ。今度こそ、あいつにトドメを刺して憂いを取り払う。

 

「そうだな。ここが正念場だ。」

 

そう言って後ろから祐介の肩を叩いたのは外の世界に戻ったはずのモリソンだった。その後ろにはベッカーを始めとした小隊のメンバーが勢揃いしていた。

 

「将軍……」

 

「我々の世界からこっちに漏れた災いは我々が責任を持って取り除くぞ。感染者をばら撒いて幻想郷を潰す気なら、先に仕留める。後は幻想郷の人々に任せる。最後の戦いにしよう。」

 

「わかりました……分隊集合!」

 

祐介が号令をかけると、暢と弘行が飛んできた。2人とも、いよいよ決戦かと期待の表情を浮かべていた。

 

「よし。奴の居場所だが……霊夢に探してもらうことになる……勘が当たるかどうか、当たる方に賭けてみよう。」

 

モリソンは霊夢に視線を向ける。霊夢は袖で涙を拭うと、縦に頷いてみせた。その隣に、魔理沙と咲夜が立つ。ついて行く気なのだろう。

 

「霊夢、魔理沙、咲夜はバルチャーの3名と行動! 後のものは各隊に分かれて行動。私もついて行こう。」

 

ピストルに手を掛けようとしたモリソンをベッカーが止めた。

 

「将軍は指揮をお願いします。まとめ役がいないと話になりませんから。」

 

「わかった。紫、聞こえてるな?」

 

すると、スキマが現れて紫が顔を出した。

 

「司令室なら用意してるわよ。私も最大限協力するわ。」

 

「よし。始めよう。」

 

モリソンが宣言し、幻想郷での最後の作戦が幕を開けた。




いよいよラストスパート。ここまで長かった……
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