「な、なんなんだお前等は!?く、来るな!!!」
「ここにいるのは15そこらのガキじゃなかったのか!?一体どうなってやがる!?!?」
「こんな奴等に敵うわけない!!逃げ────」
目の前で逃げおおせていた奴を体当たりで吹き飛ばし、俺達は出口へと更に足を進めた。
やはりここにいるのはチンピラ同然の奴等のようで、入試の時のヴィランロボの方がよっぽど強いのでは?と思えるほど弱すぎる。これじゃあ俺達の方がよっぽどヴィランだ。
「なんか私達を見て悲鳴を上げるヴィランが多くなってきましたね。これじゃあどっちがUSJを襲っているのかわかったもんじゃありませんよ」
「どいつもこいつも個性をぶっ放しているだけで連携のれの字もできていない。一体何しに来たんだか」
「三奈ちゃんが心配でしたけどこれならまぁなんとかなるでしょうね。だって弱すぎますもん」
「心配するだけそれこそ三奈に失礼だろ。だって弱すぎるもんこいつら」
謎にヴィランの心に大ダメージを与えながら、俺達はようやく出口にたどり着いた。しかし、出口の前には無駄にでかい巨漢が居座っている。
「ガッハッハ!よくぞここまでたどり着いた!!俺の名は───」
ダァァンッ!!
男の話など聞かず、俺とヒミコは男の首元に強めの蹴りを入れた。だが無駄に頑丈らしく、一発で倒れる様子はない。
「図体がでかいだけあって無駄に頑丈ですね。けど体の構造自体は普通の人と同じっぽいですのでこのままいきましょう」
「じゃあ俺は首元から下の急所を攻撃する。お前は頭を狙え」
「了解です」
「ちょ、ちょっとま──」
ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダァァァンッ!!!
6っ箇所の急所への攻撃を貰った巨漢は言葉を出す暇もなく、出口から遠ざかるように倒れた。
「お前なんかに割く時間なんてものはない。おとなしく寝てろ」
「私達にはやらなきゃいけない事があるんです。おとなしくそこでずっと寝てて下さい」
そう巨漢に言い残すと俺達はロックの掛かっていたドアを蹴破り、セントラル広場に出た。そこでは相澤さんが手袋の男に手を捕まれ、腕の一部を崩壊させていた。
「その個性じゃ集団との長期決戦は向いていなくないか?普段の仕事と勝手が違くないか?君が得意なのはあくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか?それでも真正面から飛び込んで来たのは生徒に安心を与えるためか?」
「(くっそ!右肘が崩れた!!こいつの個性は──)」
「かっこいいなぁ。かっこいいなぁ。ところでヒーロー
本命は俺じゃない」
脳味噌むき出しのヴィランが迫り、相澤さんが掴まれそうになる最中、ギリギリのところで俺達が間に合った。
「人の知り合いに………」
「私の先生に………」
「「何しているんだ!!」」
モード狼で出口から跳んできた俺と、俺の背中に乗ったヒミコの大振りの一撃が脳味噌むき出しのヴィランの背中に当たった。しかし、ついさっきの巨漢と違い決まったという手応えがない。
何ということないといった様子で、脳味噌むき出しのヴィランがこちらに向く。
「なんだお前等?ここの生徒か?まぁどうだっていい、どうせここで死ぬからな」
脳味噌むき出しのヴィランの拳が迫り、空中にいる俺達の避ける手立てはないと思った最中、今度は相澤さんの捕縛武器がギリギリ間に合った。
「俺の生徒をそう簡単に死なせるわけにはいかねーんだよ。もっとも、後でこいつらには説教しなきゃいけないがな」
捕縛武器が俺達を相澤さんの元まで引き上げ、俺達は掴まれる寸前で助かった。相澤さんとともに敵から距離を取りながら口を開く。
「お前等なんで来た!?13号とともに下がれって言ったろ!!」
「そうする予定でしたけど黒い靄の男に殆どが分断されました。相手がチンピラなので死ぬことはないと思いますけど撤退するのは無理です」
「それに相澤さんの戦闘スタイルとあの脳味噌むき出しのヴィランは相性が悪すぎます。何より、片腕崩れてるんでしょ?」
「それをなんとかするのがヒーローの役目だ!!何より、お前等ガキに任せられるか!!」
「意地張ってる場合ですか?何より状況は今のところ最悪です。そして恐らく……」
俺がここに来て感じてしまった最悪の可能性の一つが的中した。黒い靄の男がどこからともなく現れる。
「死柄木 弔」
「黒霧、13号はやったのか?」
「行動不能に出来たものの散らし損ねた生徒がおりまして…一名逃げられました」
「は?はー…、はーー…、黒霧おまえ…おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…」
一名逃げられた。それすなわち助けを呼びに行かれたということだ。状況は最悪ではなくなったが、これで間違いなく13号先生がやられた事が確定した。
血の匂いの量からして死んではいないようだが、それでも戦闘参加は不可能だろう。
「13号……やられたのか……」
「(ここで引いてくれるのが最善だが、ボスと見られる男の性格からして……)」
「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ…今・回・は・(←ルビタグ振り忘れてます)ゲームオーバーだ。帰ろっか」
首元をある程度掻くと男は一旦落ち着きをみせ、一度体の動きを止めた。
「けどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでも
へし折って帰ろう!」
「やっぱそうくるよな!!」
梅雨ちゃんの前に迫った手を蹴り飛ばし、大急ぎで出久達を咥え回収した。
上手く攻撃できなかった事に手袋の男は苛つき、また首元を掻き出した。
「邪魔だなぁあの狼。2回もこっちの邪魔をしやがって……!」
「蛙吹、峰田、緑谷、怪我はないか!?」
「とっさのところで狼君が助けてくれたのでなんにも!!」
「つーかなんなんだよあれ!?!?なんだよあの脳味噌むき出しの奴!?!?」
「俺達にもわからん。だが……あいつだけはヤバい……。いくつもの匂いが合わせ混じった気持ち悪い匂いを持つあいつだけはヤバいぞ……」
「早く撤退したいですけどあの黒い靄の男が邪魔です。仮に相澤先生が黒い靄の個性を消したとしても脳味噌の男が襲ってくる。………厄介すぎます」
「じゃあなんだよ!?打つ手なしかよ!?!?」
うろたえる峰田をよそに、敵は動き出す。
「脳無、予定変更だ。プロヒーロはとりあえず後回しだ」
「不味い…………!!」
ヒミコを含めた全員を投げ捨て、俺は一度距離をとる。
「まずは邪魔するあの狼からだ……!!!」
ドォォォォォンッ!!!!
ワープゲートから突如現れた脳味噌の男の攻撃など躱せるはずなく、俺は轟音ともに土砂ゾーンの外壁まで飛ばされ、外壁にめり込んだ。
「狼ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
土煙に巻かれ状況こそわからないが、状況からもヒミコの返事に答えないことからしても、狼が瀕死の大ダメージを負った事は明らかだった。
皆が絶望に覆われ、
「ヒーロー!!守ることはできなかったな!!大切な仲間も!!大切な生徒も何もかも!!!お前等は何も守れなかった!!何も守ることなんか最初からできなかったんだ!!!何も」
「うっせーんだよド三流!!!!」
その声とともに狼は土煙の中から立ち上がった。全身血だらけで今にも倒れそうだが、その眼光は怒りの炎で燃え、その気迫が止む気配はない。
「なんだ……まだ生きていたのか狼………」
「おうよ!そうよ!そのまさかよ!!よくも好き勝手やってくれたな!?えっ!?モード獣人が間に合わなかったら今頃ミンチだったぞクソが!!!既に内臓もアバラも逝っちまったけど俺は生きてるぞ!!!そこは一体どうなってんだヴィラン!?!?」
「うるさいやつだな。そんなに焦らずとも今殺してやるよ」
「狼下がれ!!お前はもう動ける状態じゃない!!今すぐ下がれ!!!」
「うるさいですよ相澤さん。俺も退くつもりでしたけどもう我慢できない。一発こいつらに泡を吹かせない限りは俺の腹の虫も治まりませんよ」
「一人じゃ無茶だ狼君!!そのヴィランはオールマイトでもない限り倒せない!!今すぐ下がらないと!!!」
ヴィランヒーローと共に狼が既に限界である事は誰の目から見ても明らかだった。しかし、狼がその足を一歩でも後ろに下げるような素振りはみせない。
「………相澤さん、ヒミコ達を連れて出口まで後退してください。こいつらは俺が足止めします」
「なっ!?なんだと!?!?」
「おいおいヒーロー!!死にかけで頭が遂に可笑しくなったのか!?こっちにはオールマイトをも殺せるよう作られた怪人脳無、そしてそっちは死にかけの学生。どっちが勝つかなんて明らかだろ!?!?」
「いーや、俺は死なないね。必ず生きてお前等に一泡吹かせてやる。出久達も早く立ち上がって出口に行く!巻き込まれるぞ」
いつもの軽い声で行け、なんて返すものはいない。常識的考えてそんな奴はいなかった。
「わかりました。思う存分やっちゃって下さい」
だがそれはいた。全く持って
「おっ、良い返事だ!この問答に答えるとは流石我が妹!!」
「さっさとこんな勝負片付けて帰りますよ。今無性にあなたの血が飲みたいんですから」
「おいおい、それは勘弁してくれよ。俺の腕お前の歯型だらけなんだぜ?少しは我慢してくれよ」
「嫌です。今はあなたの血が飲みたいんです。それにそんな血だらけなら歯型一つ二つ増えたところで変わらないでしょ。少しくらいいいじゃないですか」
「へいへい、了解致しました。代わりといっちゃなんだが、出久達を出口まで連れて行ってやってくれ。ここじゃ危ないからな」
「その分吸う血の量は増やして起きますからね。絶対に負けるんじゃありませんよ」
「ああ、絶対にだ」
ヒミコは出久達になにか言うと、無理矢理この場所から離れさせた。我が妹ながらよくできた子だ。
「ヒーロー志望って聞いていたが、それは間違いか?自殺志望の間違いじゃないのか?」
「いいや間違ってないね。俺もヒミコ達もヒーローになるためにここにいるんだ。こんなどこからか怒られそうな場所で死ぬわけないだろ」
「……状況が理解できていないのか?お前?」
「逆に聞くが状況が理解できていないのか?お前?」
その言葉と共に、狼の纏う空気がより一層激しさを増す。
「俺は彼奴等を逃がすために出口に連れて行けと言ったわけじゃない。
ガブッ!!!
俺は自身の腕を血が出るほど強く噛み、血を啜った。俺の喉が血で潤され、黒い目が強く見開かれていく。
「お前等は獣が最も強くなる時の条件を知っているか?」
一つは自身の死を感じた時
一つは血に飢えた時
一つは大切なものを傷つけられた時
「お前等はこの条件を嫌というほど犯し俺の大切な人達を散々苦しめた!!この姿を見て嘆き続けろ!!この惨劇を見て後悔し続けろ!!!お前等が何を呼び起こしてしまったのかをなぁ!!!!」
突如発生した赤い煙とともに全身の毛が血に近い赤に染まり巨大化していき、そしてその黒い眼光が更に強く見開かれた。
「魔血完全開放!!モード
赤い煙の霧散とともに、血に飢えた真紅の獣が現れた。