鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 これにてUSJ編は終了、次からは体育祭編となります。相澤先生の怪我に関しては悩んだんですけど怪我をさせないと強すぎるので後遺症は残しました。相澤先生好きの皆さん、大変申し訳ありません。さてと、次のネタがない……。どうしよう………(汗)。
 
 


16 生きていれば大体はなんとかなるもの

 

 

 「ふぅ疲れた。流石に手加減してオールマイトと戦うのは肝が冷えたぜ」

 

「よく言うさ。力の半分も出さずにオールマイトを捌くなんてよほどの強さと技量がなければできない。少しは誇ったらどうなんだい?」

 

「決着をつけられなかった時点で今回は俺の負けさ。もっとも、これで終わりこそしたらそれこそ全部壊していたところだが」

 

「まだ僕達が本格的に表に出るときではない。もう少しだけ待っててくれ」

 

「わかってるさ。これから先、面白いことはいくらでも起きる。その時まで退屈はしないだろうから問題ないさ」

 

 男は椅子に深く座り込み、仮面を外すと懐に隠していたタバコを吸った。暗い部屋の中にタバコの匂いが広がる。

 

「しかしお前、弔に攻撃をするだなんてやり過ぎではないか?奴は恐怖のシンボルと成りうる男なのじゃぞ」

 

「あんなのがシンボル?笑わせるな。あんなのはまだ少し悪ぶってるガキにすぎない。寧ろいいお灸になっただろうよ」

 

「だとしても傷つけるのはやり過ぎだ。彼はまだ発展途上、まだまだこれからじっくり時間をかけて育てていけばいい。それを傷つけるのはそれこそガキのやることだと思うよ」

 

「ちげ−ね−なそりゃ。今回は俺が悪かったよ。あまりにいい戦いだったもんで血が滾っちまった。あいつにはお前から謝っといてくれ」

 

「それとワシと先生の共作、脳無を肉の塊呼ばわりするのは何事じゃ!?オールマイト並みのパワーにするのは苦労したんじゃぞ!!」

 

「また作ればいいだろ。あくまであれは試作品、データ取れただけ良かったろ?」

 

「じゃとしても!!ワシの愛しの脳無を馬鹿にするなんて貴様一生許さんぞ!!!」

 

「悪かった、悪かった。また作るの手伝ってやるから勘弁してくれって」

 

 仮面の男と老人の会話がヒートアップしていく中、奥の椅子に座る男が口を開く。

 

「そういえば、彼を見た感想はどうだった?君も気にかけていただろう?」

 

 男のその言葉により、老人と仮面の男は口を閉じ、 室内は一度静寂に包まれる。

 

「……そうだな、本音の話ここ十年の中で一番驚いたよ。まさかあそこまで個性が体に合っていないとは思わなかった」

 

「そうだね、彼はとても歪だ。力をコントロールできず、自身の体を傷つけているのだから」

 

「だからこそより警戒せねばいかんのう。歪な力というものは時に完成された力をも大きく上回る、一歩間違えれば足元をすくわれかねん」

 

「だからこそ壊す時が最も面白い。なにをしてくるのかわからず、一歩間違えれば死、……たまらない感情だ」

 

「まったく、相変わらずお主もいい性格をしとるのう」

 

「お前にだけは言われたくはないがな」

 

 そんなを会話を交えつつ、男は椅子から立ち上がった。

 

「もう行くのかい?」

 

「ああ、この世には面白いものが満ちている。それを奪い、壊していくのはたまらないものなのさ。それができる限り、俺はあちこちを彷徨うよ」

 

「だが、次の祭りが起こる時にはまた来てくれるんだろう?」

 

「当然だ。それもまた面白いからな」

 

 

「ならいい。また次の祭りで会うとしよう。我が友よ

 

 

「また次の祭りで会おう。我が友よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                              ◆◆

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……17…18…19…20…。重症の二人を除いて……ほぼ全員無事か」

 

 ヴィラン逮捕と現場を調べに来た警察の一人であるコートの男は生徒等を見てそう言った。一応の生徒の安否に彼は一度安堵の息を吐く。

 

「相澤先生は……」

 

「『両腕にひどい裂傷、顔面粉砕骨折……幸いなことに命に別状なく、リカバリガールの治癒で直ぐに復帰はできるでしょうが……眼窩底骨が粉々になっていまして…眼には間違いなく後遺症が残るでしょう』……だそうだ」

 

「ケロ……」

 

「13号の方は背中から上腕にかけて裂傷は酷いが命に別状なし、オールマイトの方は腕に切り傷ができたぐらいでほぼ無傷だ。念の為、今はリカバリーガールのところで検査を受けている」

 

「デクくん……」

 

「緑谷君は……!?」

 

「狼は……狼は大丈夫なんですよね……!?」

 

 麗日に飯田、ヒミコが心配の声を上げ、警察官へとそう尋ねた。他の生徒も恐る恐る耳を傾ける。

 

「緑谷君の方は四肢に大きなダメージを受けているがそれは全て個性の反動によるダメージ、時間は掛かるが、リカバリーガールの治癒で徐々に回復していくそうだ。今彼は保健室にいるよ」

 

「そうですか……良かった……」

 

「だが、真血 狼君の方は無事ではなかったそうだ」

 

 

「「「…………!!!」」」

 

 

「左腕の骨折、アバラ骨12本の粉砕骨折、内臓の一部出血、胸部の大きな裂傷、そして個性の反動による全筋肉の損傷…………。……つい先程、セントラル病院での緊急治療により無事意識は取り戻したそうだが、2、3日は動くことすらままらないだろう」

 

「そんな………」

 

「内臓の損傷自体はどれも急所を外す形で受けていたらしく、それが命の無事に繋がったそうだ。………大人達がヴィランの襲撃に気づけず、君達に被害を与えてしまったこと………大人の代表としてまず謝罪させてくれ」

 

 その場にいた警察官達は全員頭を下げ、生徒達に謝罪をした。

 

「……セキュリティーの大幅な強化、そしてオールマイトを相手取った仮面の男の調査が必要だね」

 

「ワープなんて”個性”ただでさえものすごく貴重なのによりにもよってヴィラン側にいるだなんてね」

 

「更にはあの仮面の男……オールマイトと相手取って上で余力を見せ、黒い靄の男とはまた違うワープの個性を使う、もしくは外部の協力者が奴に個性を行使していた。……これはかなり闇が深そうです」

 

「国とも連携をとり、他のヒーロー学校にも情報を共有しなくてはならないね。調査の方はよろしく頼むよ」

 

「わかっています。必ず奴等を全員探し出してみせます」

 

 警察官と教師陣が会話を終えると生徒達には帰宅の指示が出され、ブラドキングの先導の下バスに乗るよう指示を出された。

 

「……ヒミコちゃん大丈夫?狼のこと……」

 

「……心配はしてますけど大丈夫です。生きているのならばどうにかなります」

 

「俺等にもっと力があったら………」

 

「そこまで重く考える方が還って無駄です。狼の方も多分重く考えてないでしょうから」

 

「なんでそう言い切れるんだよ?」

 

 ヒミコは空を仰ぎ、口を開く。

 

「『考えるだけじゃ結果は変わらず、時間も戻りはしない。ただ結果を糧に前に進み、後悔しないような選択肢を探すしか次の未来に進む方法はない』……狼が時折言う言葉です。生き残ったですから今は笑いましょう。きっと狼もそんな事を考えてるでしょうから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……マジで動けない。これじゃあテレビも思うように見れないな。………みんなは……ヒミコは無事か?」

 

 病室の一角のベッドでそんなことを呟きながら、俺はひたすら暇だと感じていた。

 

 起きてから数時間、病室の天井をこうやって見上げた回数が手を10個あっても足りないせいで、流石にこの光景を見るのは飽きた。苦笑いを浮かべたいが、顔面の筋肉すら動かすのすら痛くてできない。

 

「大丈夫か狼?怪我の方は命に別状ないのか?」

 

 大急ぎで来たらしく、息を端的に吐きながら父さんが現れた。口の筋肉すら動かすのが辛いなと思いながら、俺は声を出す。

 

「この通り大丈夫じゃないけど命に別状はない。ほっといても死にはしないよ」

 

「そうか……それなら良かった……。仕事中に急に連絡が来て心配したぞ……」

 

「仕事の方はどうしたの?まさか放置?」

 

「鉄田の方に後処理は任せた。あいつもヒーローになって長いから、まぁ大丈夫だろう」

 

「絶対困った顔してるよ鉄田さん。あの人そこら辺の事務関係苦手じゃん」

 

 そんな会話をしつつ、俺はベッドの一段下のテーブルに置かれたスマホを見た。ほぼクラスの全員から連絡が来ているらしく、えげつない量の着信履歴が表示されている。

 

「クラスの子達が心配か?そっちの方は大丈夫だ。緑谷君?以外は全員ほぼ無傷だそうだ」

 

「別にそっちの方の心配はしてねーよ。ただ、どいつもこいつもお人好しだなって思っただけ。(勝己はやっぱり連絡してないけど)普通は自分の事で精一杯だろうに」

 

「なんだ、この短期間でそんなにクラスの子達を信頼しているのか。お前にしては珍しいな」

 

「あのヒミコの行動を笑って許す奴等だよ?逆に信頼しないほうがおかしいだろ」

 

「そうか……あのヒミコに本当に友達ができたのか……。お前達を雄英に入れて良かったな……」

 

「父さん気持ちはわかるけどここ病室。涙抑えて」

 

「すまんな…つい嬉しくてな……」

 

 俺も表情筋が痛くなかったら泣いていたなとしみじみ思いながら俺はティッシュを渡した。やっぱり俺はこういうところを含めて強く父さんの個性を遺伝しているらしい。

 

「とりあえず、お前が無事で何よりだ。じゃあ父さんは家に帰るな。しばらく無理はするなよ」

 

「帰るのはいいけど父さん、奴等もしかしたら………」

 

「わかっている。中部にいる母さんにもその事は連絡入れた。俺も伝を頼りに探ってみる」

 

「それならいいや。じゃあ後はよろしく。俺は少し寝るわ」

 

「ああ。ゆっくり休め……と言いたいところだがそうとはいかないみたいだ。お前の客が大量に来た」

 

「んっ?客?」

 

 警察かな?などと思っていると病室に大量の人という人が流れ込んで来た。更に言えば、誰かがベッドになだれ込んできた。

 

「狼大丈夫でしたか!?心配しましたよ!!」

 

「痛って−よヒミコ!上に乗るな!俺は一応病人だ!!」

 

「口ではああ言いましたけどやっぱり心配だったんですよ!!生きてて良かったです!!!」

 

「お前が降りないとほんとに死ぬ!!早く降りろ!!!」

 

 飛び込んできたヒミコをどうにか下ろし、俺は顔を上げた。そこには家にいるはずのクラスメートがほぼ全員いた。(やはり勝己はいない(N回目))

 

「……なんでお前等いるの?普通家で生きてて良かったー、って言いながらベットで横にならない?」

 

「馬鹿野郎!!心配で病院に来るんだよこういう時は!!無茶しやがって!!」

 

「ヒミコちゃんに心配かけるんじゃないわよこの馬鹿!!ほんと生きてて良かった!!」

 

「って、狼ヒーローフェンリル!?なんでここに!?」

 

「……あっ、コスチュームから私服に着替えるの忘れてた。どうも、狼とヒミコの父です。いつも二人が世話になっています」

 

「狼とヒミコのお父さん!?親が確かヒーローって言ってたけど、ヒーローランキング11位のフェンリル!?嘘でしょ!?!?」

 

「そういやそんなランキングあったな。ここ数年まともに見てないけど」

 

「すげー……これがトップヒーローの貫禄……。テレビとじゃ迫力が違うぜ………」

 

「皆!!ここ病室だ!!全員静かにしたまえ!!!」

 

「お前が一番うるせーよ」

 

 ……前言撤回、こいつらお人好しじゃなくて超お人好しだわ。ほんと…いい奴等だな……こいつら……。

 

 だが、病院内ではやはりいい奴等と言えるほど静かでなかったらしく、見舞いに来た奴等はその後無事全員怒られていた。

 

 

 

 

 

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