雄英体育祭本番当日
「皆、準備は出来ているか?もうじき入場だ!!」
「コスチューム着たかったなー」
「公平を期す為着用不可なんだよ」
本番まで数分という中、控室では緊張を紛らわせようとするものに、普段通りの者もの、様々な形で皆が本場に備えていた。だが、
「狼…来ませんね」
「昨日まで通じていた連絡も通じないし、一体どうしたんだ?」
「昨日までは普通に来るって感じだったんだけどね。一体どうしたんだろう」
病院から退院し、この場にいるはずの狼がどこにも影はなく、連絡すらとれていなかった。
USJで戦い、ボロボロになった彼の不在になんとも言えない不安感が漂う。
「緑谷」
「轟くん......何?」
「!」
「客観的に見ても実力は俺のほうが上だと思う」
「へ!?うっうん......」
「おまえ、オールマイトに目ぇかけられているよな。別にそこ詮索するつもりはねえが......おまえには勝つぞ」
「おお!?クラスナンバーツーが宣戦布告!!?」
突然の宣戦布告に部屋が熱を帯びる。
「狼とヒミコ、お前等にも俺は勝つつもりだ」
「ヒミコはともかく、狼はここにいないぞ」
「あの化物を倒した奴が来ないわけないだろ。あいつは絶対に来る。そんでもってお前等が優勝するって言うんなら、俺はお前等全員ぶっ倒して前に行くだけだ」
轟の言葉に不安感が消え、一種の熱が辺りに広がる。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか.はわかんないけど......。でも......!!皆......他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって......後れを取るわけにはいかないんだ。僕も本気で獲りに行く!!」
「当然、狼がいようがいまいが私は負けるつもりはありません。こんなところで止まってられない以上、全員を踏み台にしてでも前に行きます」
「.........おお」
「......っ」
なぜ焦凍君が宣戦布告をしたのか?一体なにを押さえつけているか?まではわからなかった。ただ、一つ言えるとしたならば
「焦凍君ありがとうございます。狼のことで固くなっていた空気を柔らかくしてくれて」
「……なんのことだ?俺はただお前等に負けたくないだけだ」
「それでもですよ。みんなが感じていた責任感のようなものをあなたは振り払ってくれました。その事について関係がなくてもとりあえずお礼を言わせて下さい」
「………そうか」
戦うだろうライバルに、ひとまずお礼を言うべきだと思った。
◆◆
『1年ステージ、生徒の入場だ!!
雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!
どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?
ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!
ヒーロー科!!1年!!A組だろぉぉ!!!??』
………こちらにまで聞こえるプレゼントマイクの声をよそに、俺は足を震わせた。絶対これは退院してまもない病人にやらせることではない。
「一応お前は重症負ったってマスコミで騒がれてるからな。戦えるっていう事を示すパフォーマンスも必要なんだよ。諦めろ」
「せめてみんなに連絡ぐらいさせてくださいよ。絶対責任感感じて固くなってますって」
「お前はお前でクラスに対して過保護すぎだ。こんぐらいで潰れるほどあいつらはやわじゃない。ぼさっとしてると逆にやられるぞ」
「やられるっていう忠告は受け取りますが、過保護っていうことでは相澤先生もだいぶ負けてないと思いますよ。ここまで送る必要なかったのに」
「一応担任だからな。これも仕事なんだよ。………ミッドナイトさんのコールが始まる。お前も腹くくれ」
「了解です」
絶対にこの人も過保護だ、と思いながら俺は気持ちを入れ直した。
ここで気を抜いたらそれこそミンチ、笑い事では済まない。なんていったってここは”空”だ。
『選手宣誓!!選手代表!!1-A 真血 狼!!降りてきなさい!!』
ミッドナイト先生のコールと共に、俺はライトで照らされたヘリからスタジアムへとダイブした。
「何だ!?人!?」
「あれって入院してったていう生徒か!?」
「やること派手だな雄英!!!」
いろんな声がパラシュートを広げ降りてくる俺に向けられながらもマイクの置かれた台へと着地した。
「ヒーロー科は何でも派手だね。自分が主役かってんだ」
「あれが真血 狼……。USJで化物をぶっ倒したっていうシスコンか………」
「ちょっと待て。何でシスコンって事になってんの?俺はあくまで保護者兼義兄よ」
なんか俺の事をシスコン呼ばわりしてた普通科を少し睨みつけながら、俺はマイクを取る。
『選手宣誓!!このような事態の中、体育祭が開催されたのはご協力していただいている皆様のお陰です!!私達選手一同は己の全力を出し抜きスポーツマンシップに則り戦い抜くことを誓います!!
それと一位は俺が取るから』
「調子乗んなよA組オラァ!!」
「ちょっとヴィランを倒したからって舐めてじゃねーぞ!!」
「うん。ヴィラン倒していようがいまいがあいつはあいつだね」
「だな」
『あと俺の妹は世界一可愛いのでしっかり目に焼き付けてください。以上です』
「なに勝手に変なこと言ってるんですか!?また病院送りしますよ!!!」
「ヒミコちゃん落ち着いて!」
「気持ちはわかるが抑えろ!」
散々俺の胃を痛めたお返しじゃ。大人しく受け入れろ。そして俺がいつも感じてる胃痛をお前も感じるがいい(悪役感)。
『さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!!』
「雄英って何でも早速だね」
『いわゆる予選よ!!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!さて運命の第一種目今年は.....』
「早速ではないよね」
「張り切ってんだから言ってやるな」
『コレ!!!』
ミッドナイトの後ろのスクリーンには障害物競走と書かれていた。
このスタジアムが障害物競走のスタート地点となるとかなり入り口でロスすることになりそうだな。モード狼で突っ切るしかないか。
『計11クラスでの総当たりレースよ!!コースはこのステージの外周約4キロ!!我が校は自由さが売り文句!!ウフフフ......コースさえ守れば何をしたって構わないわ!!さあさあ位置につきまくりなさい。
………スタ────────ト!!!」
ミッドナイト先生のシグナルとともに俺は最後方でモード狼に変身、壁を走ることで人の波を振り切った。
前へ前へと進む俺に迫る影が一人。
「やっぱ早いな狼!負けるつもりはないぞ……!!」
「来るとしたらお前だよな焦凍!流石に早いな!!」
氷で足場を凍らせ、他の生徒の動きを封じながら焦凍は確実に俺に迫っていた。後ろからもA組の奴らが次々と迫ってくる。
「……ほんとに潰れるほどやわじゃないな。当然といえば当然か」
「なに独り言言ってやがる!?よそ見なんかしてる暇なんかねーぞ!」
「危っな、ほんとにぼさっとしてるとやられるなこりゃ。だが、俺も優勝を目指してるんだ。少しえげつない手を使わせてもらうぞ」
『さぁ、いきなり障害物だ!!まずは手始め......第一関門ロボ・イン───おっとこれは早い!!現在一位の真血 狼がロボ・インフェルノの足元を突っ切った!!そして後方を向いた!?』
「まさかお前……!!」
「退院がてらの腕鳴らしだ!死ぬんじゃね−ぞっ!!!」
ロボ・インフェルノ数機の足をモード獣人のパワーで持ち上げ、そのまま後ろに放り投げた。
後ろの生徒達の頭上にロボ・インフェルノが迫る。
「チッ………!!」
大規模の氷壁がロボ・インフェルノを阻み、生徒達に跳んでくるのは避けられた。
だが、今のでだいぶ時間は稼ぐ事ができた。このまま───
『ちょっ!?今度は上!?!?』
「んっ?上になにがって、えっ!?!?」
「どいた!どいた!!上を失礼しますよ!!!」
『なんでここにホークスがここにいるんだ!?!?!?』
「何やってんだヒミコ!?!?!?」
なんか空をゆうゆうとホークスに変身したヒミコが迫る戦闘用ドローンを破壊し、みるみるうちに俺の頭上を通り過ぎようとしていた。
◆◆
警備班 テント内
「……シンリンカムイさん、ホークスさんって私達と同じ警備班ですよね?あれっ?私の記憶違いでした?」
「Mt.レディ、多分それは間違ってないはずだ。なんであの人あんな所いんの?っていうかなんで競技に参加してんだあの人」
テントの中央に置かれていたテレビを介してサイドキックと成りうる人材を探していたヒーロー達であったが、突如映し出されたハイテンションのホークス姿に唖然となっていた。
「俺の仕事はこれで終わりっと。あれっ?皆さんなんで唖然としてるんですか?」
「えっ!?ホークス!?なんでここにいんの!?」
「じゃあ映し出されてるのは誰!?まさか雄英生!?」
何事もなく現れたホークスを前に、テントは騒然となった。隣のテントのヒーローも出てきており、完全にカオスが作り出されている。
「彼女頑張ってんね。僕に血をくれるよう頭を下げただけはあるか」
「じゃあやっぱりあれは雄英生徒か……。血をあげたっていうのは………」
「彼女血を取り込むことで変身できる個性らしくてね。ちょうど献血バスにいた僕の血の匂いに誘われて現れたんだよ」
「そ、それでまさか………」
「勝ちたいって熱心に頼み込むから少し血をあげちゃった(テヘッ☆)」
「「「「何やってんですかあんた!!!!!」」」」
◆◆
『ここで警備班テントのホークスから緊急連絡!!
『競技で勝ちたいのでホークスさんの血を少しください、と頼み込んできたので真血 ヒミコちゃんに血を少しあげちゃいました』
だそうです。何やってんのあの人!?!?というか、お前のクラスの奴はロボ投げたり、トップヒーローの血を飲んだりって、どんな教育してたらこんな事してるんだよイレイザー!!あの二人は何やってんだよ!?!?』
『知るか!俺が聞きたい!!彼奴等は何やってんだ!?一体何を考えたらそんな事すんだあのアホ共!!!』
実況席、というかヒミコ以外は全員混乱していた。
空を飛ぶヒミコを追いかけ、俺は思わず叫ぶ。
「待てやヒミコ何やってんだ!?ホークスさんになんちゅー事頼んでんだ!!」
「機動力欲しいなーって思いながら学校に向かってたらたまたま会ったんですよ。直ぐにOK出してくれていい人でした」
「そうじゃね−よ!サインは貰ったかって聞いてんだ!!」
『聞くことそれじゃね−だろ!!』
「サインは貰ってませんね」
「そこは貰えよ!!誰もが欲しがるもんでしょうが!!」
『お前等これ終わったら説教な』
謎の言い争いをしつつ、俺達は第二関門へと向かった。目の前にはロープで繋がれた渓谷が用意されている。
『気を取り直して第二関門!!落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォ────ル!!!って、現在一位の真血 ヒミコには意味はなし!!なんて言ったって飛んでるからな!!!』
プレゼントマイクの言う通り、みるみる内にヒミコの影は遠くなっていく。
だが、ヒミコの変身の効果時間はおそらく10分、次の関門で効果は切れるはず、今は少しでも置いていかれないように走らなければ。
「待てや犬顔!!よくもロボを落としてくれたな!!!」
「どちらも逃さねーぞ!!」
「お前等の相手する暇はないんだよ!!邪魔すんな!!」
恐るべき速さで追いかけてきた勝己と焦凍の攻撃を避け、第三関門へとたどり着いた。ヒミコの変身はやはり解けており、いつもの姿で中盤の辺りを走っている。
『逃げる一位に追いかける男三人!!そんな奴等を阻むのは一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と足酷使しろ!!威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』
確かにあちこちに地雷が張り巡らせており、プラスチック爆弾の匂いがあちこちに広がっている。
「そんなのはどうでもいい!!全員ブチ殺す!!!」
「後続に道を作っちまうがそんなのはどうでもいい!!今は絶対に追い抜く!!!」
「全員邪魔だ!!道を開けろ!!!」
「これでもホークスさんに絶対に勝てって言われてるんです!!負けるわけにはいきません!!!」
追いついた俺達三人とヒミコはお互いにお互いを妨害し、お互いの行く手を阻んだ。
爆発による浮遊からの勝己の爆撃、得意の氷結による焦凍の範囲攻撃、猛スピードから繰り出される俺の連打、全ての攻撃を避け繰り出されるヒミコの蹴りと拳、それらが飛び交い他者を蹴散らす勢いでの妨害合戦が始まった。
『男三人が一位に追いついた!!そして繰り広げられる妨害の猛襲!!!俺も大好きな展開だ!!!!』
『下手に踏み入れば巻き添えだ。というか、彼奴等目的忘れてねーだろうな』
『それでも後続もスパートかけてきた!!!だが、引っ張りながらも......先頭4人がリードか!?』
こいつらやっぱ無駄に強い!!俺はさっさとゴールしたいんだ!!いい加減倒れろ!!これで倒れないのなら───
バアァァァァァァッン!!!!!
俺の思考を吹き飛ばす大きさの爆発が起き、鉄板が物凄い跳んできた。その上に乗っているのは
「出久!?!?」
「出久君!?!?」
「デク!?!?」
「緑谷!?!?」
この場の誰も予想ができるはずのない後方を走っていた人物、緑谷 出久だった。爆発の勢いは収まらず、あっという間に俺達を追い抜いた。
「逃がすわけにはいかねーな!少し痛い目を見てもらうぞ!!」
一瞬驚いた3人の隙をつき、飛翔する鉄板に蹴りを入れた。鉄板には穴が空き、出久は宙に放り出される。だが
「(目が死んでいない!?!?)」
「僕だって優勝したいんだ!!だからここで抜かれるわけにはいかないんだよ!!!」
紐を通じて振り下ろされた鉄板は粉々に成りながらも確かに役目を果たした。再度引き起こされた爆発は俺達4人の行く手を阻みながらも出久を前に吹き飛ばし、最後の関門を突破させた。
急いで追いかけるが順位は変わらず、その結果はアナウンスされた。
『誰も予想しなかった大逆転劇!!緑谷 出久!!!障害物競走1位通過!!!!』
妨害組順位
2位 真血 狼
3位 轟 焦凍
4位 爆豪 勝己
5位 真血 ヒミコ
以下原作通りの順番
「私のベイビーが負けた!!!!」
「僕の体育祭が…………」
発目 明、青山 優雅、予選敗退!!!!