「痛っててて………、30%とはいえ、魔血開放は体にダメージが残るな………。………レクリエーションは見れそうにないか」
魔血開放の痛みに声を出しながら、俺はジュースを買いにスタジアム裏の自動販売機に向かった。
ここまでの戦いで余裕を残している奴等にとっては羽を伸ばせる瞬間かもしれないが、ここまでの戦いで余裕が殆ど無い俺にとっては立っているだけでも少し辛い。今は休むことに尽力しなければ。
「んっ?あんた大丈夫か?こんなところに座り込んで」
そんな事を考えていると、自動販売機にもたれかかるようにして俺と同い年ぐらいの男が地面に座っているのを見つけた。生きてるかの確認のため、俺は少し肩を揺らす。
「………少しほっといてくれ。今は誰とも話したくないんだ………」
「なんでここに座ってるかは知らないけどよ、ここに座ってたらそれこそ余計心配されるぞ。とりあえず立てって」
「………僕のせいでみんなが負けた以上、みんなに合わせる顔がないんだ。ほっといてくれ………」
「ここで座ってんのがバレたらそれこそ合わせる顔がないって。ハンカチいるか?」
「うるさいな……!ほっといてく───なんで…君が……ここに………」
顔上げた男の正体はつい先程B組に指示を出していた男その人だった。
男は俺から逃げようと後ろに下がるが、後ろが壁であるが故に逃げることができない。
「そんな逃げることないだろ。ついさっき戦った仲じゃんか」
「うるさいA組!君がいなかったら……お前……が……いな………かっ……くっ………」
「泣くな泣くな。お前をどうこうするつもりはないから泣くなって」
「………僕の……この姿を広げようとは思ってないのか?」
「んな外道なこと誰がやるか。俺はただゴロナミンCを買いに来ただけだっての。お前はなんかいるか?」
「………ゴールデンアップル」
「くっそ、無駄に高いの選びやがって。今回は特別だからな」
普通のりんごジュースにしとけよと呟きながらも俺はゴールデンアップルを買い、そいつに手渡した。なにかを諦めたようで、男は素直にジュースを受け取った。
「……僕になにかさせる気かい?君達にあんな言葉を言ったんだ、どんな罰でも受けるつもりだよ」
「だからそんな事やらないっての。あと俺の名前は真血 狼、お前じゃなくてちゃんと名前で言え」
「なら僕のことを物間とちゃんと呼べ。それと心配したような声を出すな。腹が立つ」
「そこまで言えるようなら一応は気を取り戻したみたいだな。無駄な心配をかけさせるんじゃねーよ物間」
「…………お前が勝手に心配したんだろ。敵だった奴と仲良くしようとだなんてどうかしてる」
無駄に煽るようなことを言いながら、物間はジュースをラッパ飲みし、ペットボトルを強く地面に突きつけた。少し目を逸した後、物間は俺の腕を少し触る。
「やっぱり………君の個性は一応コピー出来ないか………。今更やっても無駄なのに……なんでA組の奴の腕なんか触ってんだ……僕は………」
「騎馬戦で最後で使おうとしてた動作、やっぱりそれはお前の個性だったのか。どんな個性なんだよ?」
「ほんとズケズケズケズケと人に聞いてくる奴だな……君は………。そうだよ、僕の個性は『コピー』、名前の通り人の個性を一時的に使える個性だよ。もっとも、君の妹の個性の完全劣化だけどね」
「血を摂取する動作が必要ない以上、劣化と言いたがたいと思うけどな。当然、劣化の条件が無かろうとヒミコの方が断然強いが」
「はっきり言ってくれる……。その通りといえばその通りだけどね。ヒミコだっけ?そいつと違って僕には声を真似することも、姿を真似することだってできない………ただ弱個性さ………」
「弱個性だろうが、結局ものは使いようだろ?………お前が敗退したからこそ言うが、ヒミコの個性だってそんな万能じゃない。変身する度に大量の体力だって消費するし、変身し続ければ動けなくなる。下手に強力な個性を使うために変身し、無闇に使えば最後、あいつ自身の体が耐えられず、最悪死ぬ可能性だってある。そんな自分を弱個性だーっていう枠組みに押し込むなって」
「………君は一体何がしたいんだ?僕を励ましに来たのか?それとも僕をけなしに来たのか?」
「どっちでもない。俺はただここに休憩しに来ただけで、お前がたまたまここにいただけだ。ここで俺とお前が話しているのも俺の気まぐれだ」
ゴロナミンCを飲みきり、空き瓶をゴミ箱に放り込んだ。一度話が途切れ、気まずい空気が漂う。
「俺がヒミコの情報を話したんだ、お前も俺の質問に答える義務があるよな?」
「……なんだい、僕の弱みでも握る気かい?」
「だからそんな事はしねーっての。少しは俺を信頼しろよ……まったく……。俺が聞きたいのはついさっきのB組の連携だ。あれはお前が指示を出してやったのか?」
「……そうだよ。卑怯だなと感じながらやったその策は完膚なきまでに破られ、みんなには面目をなくした。それがどうかしたのさ……?」
「少しはポジティブになれこのネガティブ男!俺はただ、驚くぐらいお前がB組の奴らに信用されてるんだなって思っただけだ。包囲網にしろ遠距離戦にしろ、たった数ヶ月会っただけのお前が指示出したとは思えないくらい連携が取れてた。母さんの修行以外で肝を冷やしたのはUSJと今回の連携だけだよ」
「何が言いたい………?」
「上手くは言えないけど、個性うんぬだけがお前の力じゃないってことさ。噂をしてればぞろぞろと現れたようだぜ、大切なお仲間さんが」
あれで隠れたつもりなのかと思いながら、俺は近くのコンテナの後ろを覗き見た。B組の全員がこちらをなにをするのかと警戒する目で見ている。
「A組の真血 狼だな……。物間になにをするつもりだ……?」
「だから何もしてないっての!!B組の連中は少しは俺を信用しようっていう気持ちにはならないのか!?」
「だって……ブラド先生がヒミコと狼にはなるべく関わるなって………」
「あのトラウマ被害者……なにをややこしい情報を流してんだ………警戒させるのは母さんだけにしろっての………。まぁいいや、話は終わったから俺はもう行くよ。そこのビビリ泣き虫をよろしくな」
「おい待て!!」
「そうそう、今年の体育祭も次の体育祭も次の次の体育祭俺が全部優勝するから。せめて次は精々勝てるようよく考えてかかってきな。
ブチッ。
「てめぇ調子に乗ってんじゃねーぞ!!次は絶対勝つからな!!!」
「誰が来年お前なんか優勝させるか!!このシスコン野郎!!!」
「誰のことがシスコンだ!?俺はあくまで保護者兼義兄だ!!そこのとこ間違えるなこのどアホ!!!」
「選手宣誓であんな事を言う奴は100%シスコンだ!!そこは間違ってねーだろ!!!」
「いいや間違ってるね!!誰がなにを言おうと、俺は保護者兼義兄だ!!そこを履き違えるんじゃねーぞこの負け組が!!!」
「ならお前はド変態だ!!シスコンじゃないってんなら間違いなくそれだ!!!」
「俺はシスコンでもド変態でもない!!日本語と英語の一から学び直してから出直して来な!!Do you understand!?一から考えて下さい!!」
「ドゥユーアンダー……えーっと………」
「鉄哲そこは忘れちゃダメだ!!しっかり勉強しろ!!」
謎の言い争いを繰り広げ、俺は膝に手をつける。
「ここまで元気があるんだ、そこまで深刻に考える必要はないんじゃねーの?お前にはお前なりの才能があるんだ。いつかその才能で俺を倒しに来な。何度だって蹴散らしてやるからよ」
俺は最後にそう言い残すと自販機から姿を消し、スタジアムの中に戻っていった。
「他の誰かががいなきゃ使えない個性ってことは、無意識でも誰かの信頼を得ようとする行動を日頃からやってるってことだ。少なくとも俺にはない才能の一つを持ってんだよお前は。まぁ、そんな奴等をも蹴散らして、俺がトップを取らせてもらうけどな」
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「実に電気………あれは一体何だ?一体何をさせている…………?」
「頑張れ頑張れA組!!ファイトファイトA組!!」
………かなり露出の高いチアの服装を身に着け、なんかヒミコがボンボンを楽しそうに振っていた。その光景を見て俺は二人の首に込めていた力を更に強める。
「いや………あれはですね………目の保養というか……なんというか………」
「エロ要素も必要だろ………体育祭なんだし…………。お前もヒミコのチアガール姿見れてよか……………グフッ!!!」
「ヒミコがそこら編鈍感なこと知ってるだろ特に実……!保護者の断りなしにあんな事をやらせるだなんていい度胸だな……………!!!」
「ちょっ!ちょっと待って!!俺次本戦だから!!!」
「おいらこれで何回目!?おいらのエロ要素はお前にとっても────」
「黙って汚い花火になっとれ!!!この大アホども!!!!」
「アアアアアァァァァァァッ!!!!!!」
「結局俺もかよォォォォォォォォォォォッ!!!!!!」
なんか色々台無しな感じで、俺の休憩時間は終了した。
やっぱり台無しにしないと落ち着かないな。………とりあえず峰田飛ばしとけばいいか。
やはり峰田は使い勝手がいい!!!