鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 今回はかなり早足になってしまったので少し混乱するかもしれません。そこを考慮して読んでいただけるととてもありがたいです。
 
 


21 兄妹喧嘩

 

 

 

「スタジアム外に飛んでった子の意識が戻ったみたいだし、トーナメントのくじ引きを始めちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!レクに関して出場者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね」

 

「私はレク出るのでこの羽織脱いでもいいですか?邪魔なんですけど」

 

「駄目だ。絶対に駄目だ。あのアホ共の言うことなんて聞く必要ないんだ。着替えたくないのならせめてこれは羽織ってくれ」

 

「そう言うなよ狼……。お前もヒミコのチア姿見れてうれ───」

 

「上鳴あんたは黙ってな!こんな格好させるなんて馬鹿じゃないの!?」

 

「腹パンすんじゃねーよ耳郎!!だって見たいだろ女子のチア姿!!!男の一つのロマンなんだぞ!!」

 

「そうだぞ耳郎!!チアこそ男のロマンだ!!志向のエロスの一つだ!!男の一つの到達点なんだよ!!わかったか!?」

 

「上鳴君、峰田君この事はテレビ中継されてることを忘れないでね。さぁまずは一位チームからいくわよ!!」

 

 とんでもない熱量で話す峰田に、ヒミコと他の女子をガードするような位置で俺は峰田から一歩距離を置いた。

 

 駄目だ………上鳴は置いとくとしても……峰田………こいつだけは駄目だ……救いようのなさすぎる………。こいつがヒミコの半径数メートル来たらまず厳戒態勢を取らなければ………。こいつは………危険すぎる………!!

 

 俺とこの場の女子の多くがそんな事考えてる間にもくじ引きは続き、俺が引く番が訪れた。箱の中に手を突っ込み、くじを掲げる。

 

「真血 狼のアルファベットはHね。次は真血 被身子」

 

「はいっ!」

 

 意気揚々と現れ、ヒミコは自信満々にくじを引いた。その引いたくじに、周りがざわざわとした声に包まれる。

 

「これはこれはなかなか面白いわね………。真血 被身子のアルファベットはH!対戦カードが一つ決まったわ!!」

 

 電光掲示板にまた一つ名前が浮かび上がり、俺とヒミコの試合を示した。

 

 ここまで波乱を引き起こした者達の、それもトップヒーローの息子と娘の兄妹対決。それだけでも周りの空気を熱くさせるには十分だった。

 

 だが、そんな空気をよその俺達の間の空気は明らかに冷たく、静かだった。

 

「残りの残ったくじはCで、対戦カードは上鳴 電気と耳郎 響香ね!!これにてくじ引きは終了!レクリエーションを始めるわよ!!」

 

「じゃあレクリエーションは頑張って下さい。私は少し休みます」

 

「あれっ、レクリエーションに出るんじゃ……」

 

「狼が相手な以上、万全を期さなければ絶対に勝てません。少し休んでもう一度策を練ります」

 

「俺も控室でアイシングをして少し休むわ。最善で臨まないとこいつには勝てないからな」

 

「あ、ああ。また後でな」

 

 別々の方向の控室に向かい、俺達は互いに備えた。そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ステージの修理終わりました。いつでもいけます」

 

『1回戦最終戦!!お前等も俺も………いや、第1回戦を見ている全員が注目してる対戦カードだ!!』

 

 テンションの上がったプレゼントマイクの実況とともに、二人は入場する。

 

 

 

『戦闘力と戦術!!圧倒的な二つを持って勝ち上がってきた可憐な鮮血乙女!!ヒーロー科!!真血 被身子!!!』

 

 

 

 圧倒的な声援を受け、静かにヒミコがステージに上った。

 

 

 

『圧倒的戦術を破るものがあるとすれば圧倒的力!!底しれぬパワーとスピードを秘めた兄爆誕!!ヒーロー科!!真血 狼!!!』

 

 

 

 

 同様に圧倒的声援を受け、俺も静かにステージに上った。

 

 ヒミコは2本のナイフを、俺は拳を構え、スタートのその瞬間を待つ。

 

『なお真血 ヒミコは個性の関係上、血を摂取するため専用のナイフを使用します!!殺傷能力ゼロの超硬質ナイフのため、ブラッティーな状況は起こらないので安心して見てくれてOKだ!!』

 

「おいおい女の子だからって武器持ちかよ。ずるくね?」

 

「ついさっきの女の子にも持たせてやれたばよかったのにな。ヒーローの娘だからって優遇しすぎじゃね?」

 

「血を摂取するだなんて気持ち悪。ヴィラン目指してるの間違いじゃないのか?」

 

 ナイフを持ったヒミコに対して卑怯だなんだというくだらない声が上がるが、俺達は無視して口を開く。

 

「こうやって1対1をするのは久しぶりですね。まさかタイマンの腕がなまっているなんて事、ありませんよね?」

 

「お前こそ真正面からの戦いは苦手だったじゃねーか。少し手加減してやってもいいんだぜ?」

 

「その口ぶりなら大丈夫そうですね。まぁ、殺ってみればわかります」

 

「それはお互い様だろ?一撃で倒れるだなんてこと、なってくれるなよ」

 

 

 

『それでは第1回戦最終戦!!STA────』

 

 

 

 ダッ!!ダッ!!ダッンダンダッダッタ、ガンガッ、ダンッ!!!

 

 

 

『RT………ってはえーよ!!!つーか何やった今!?!?轟同様わけがわからんぞ!!!!』

 

 ”血闘術”の挨拶を終え、俺達は再び距離をとり、互いに向き直した。

 

「………胸部と右脚部、それとみぞおちに一発入りかけましたね。モード獣人でなかったならば間に合わなかったのでは?」

 

「お前こそ肝臓に右腕の関節、それと腹に一発入りかけたな。右に重心が乗る癖がまだ直ってねーぞ」

 

「今から修正していけばいいだけですよ。あなたこそ私の本番についてこれますかね?」

 

「ここでのモットーは言葉より拳だ。わからないのなら拳で語れ」

 

 

「わかりました。ならばあなたを手早く壊すとしましょう………!!」

 

 

「俺は手加減が苦手だからな。早々に壊れるなよ………!!」

 

 

 鋭いヒミコの攻撃と重い拳がぶつかりあい、文字通りの火花と突風がステージを包み込んだ。

 

 攻撃の速度が早すぎるため、実況席も理解が追いついていない。

 

 

 

『早すぎてここからじゃ目が追いつかねー!!イレイザー!!お前は何が起こっているかわかるか!?!?』

 

『まぁ一応なんとなくは』

 

『なら解説を丸投げするわ!!俺にはあれを解説しきれん!!頑張ってくれ!!』

 

『俺はこういうの苦手なんだが………』

 

 

 

 プレゼントマイクと相澤先生がごたついてる間にも技と技のぶつかり合いは続き、互いに絞め技に足技に投技といった技を高速で相手に浴びせ続けた。お互いに思考し、相手の行動を読み合う。

 

「(やはり耐久力のないモード狼は使いませんね。となると決めては投技もしくは拳。いや、狼ならば予想外の攻撃をするはずだ。そう簡単に決めつけず、決め手のための思考を絶やさず続けろ!!一瞬の隙は必ずある!!)」

 

「(大振りはカウンター、小振りはいなしで対処される。こっちもカウンターで対処したいがヒミコが早すぎて寧ろ隙を与えちまう。ならば俺は………)」

 

 

 

「くっそ、やっぱり解説も追いついてないな。なにを何してるのかわからないぞ」

 

 混乱してるのは生徒席も当然同様だった。距離が近いお陰でなんとか技を掛け合っているのはわかるが、それでも思考が追いつかずにいた。しかし、一人の生徒が口を開く。

 

「………合気道に剣道、それに柔道に空手といった色んな技が混ざっているのか?それができるとしたらやっぱり血闘術か…………」

 

 口を開いたのは1回戦で飯田と戦い、惜しくも負けた尾白その人であった。急に流暢に話した彼に、皆目を向ける。

 

「血闘術ってなんだ?武術かなんかか?」

 

「まぁ一応はね。かなり異質な流派だけど」

 

「というと?」

 

 

 

『まずは血闘術について説明しなきゃいかんな。あの二人の攻防を解説するのであれば』

 

『血闘術ってあれか………?刀花先輩が発案の………』

 

『そうだ。多くの武闘派ヒーローが作った流派同様、ブラッティーヒーロー血影が生み出した流派で、あらゆる流派の中でもっとも強いと考えられている流派だ。かなり異質で完全に習得してるのは発案者の血影と夫のフェンリルぐらいなもんだけどな』 

 

 

 

 相澤先生の解説と尾白の解説、観客と生徒は二人の話に耳を傾け、言葉を待つ。

 

 

 

「他の流派がその前身を各護身術としてるのに対して、血闘術は血影が護身術という前身なしに、一から技を生み出した流派だ。その特徴は各護身術と独自の体術が混ざりあった独特の攻めのリズムだ」

 

 

『あらゆる状況、個性に対応できることを主とした流派であり、どんな形からでも攻撃を繰り出すことでも可能としている。最初の障害物競走でヒミコが爆轟達に攻撃できたのはこの技術があってこそのことだ』

 

 

「独特なリズムは防御や受け、いなしすらなどの防御動作すらも攻撃にし、自身の行動そのものを武器としているんだ。当然武器を使った技術も血闘術には存在している」

 

 

『問題なのはこの流派のモットーが完全殲滅であり、下手な相手に使えば最後、相手を簡単に殺してしまうという点だ。ついでにいえば、修行が地獄過ぎて誰も半日以上修行を続けることができない上、血影が誰も逃さないことでも有名だな。懲役判決を受けたヴィラン達が更生のため修行させられるなんてケースも多い』

 

『流派についてはこれぐらいにしようぜイレイザー………。トラウマが蘇りそうだ…………』

 

 

「流派についてはわかったけどよ、今優勢なのはどっちなんだ?」

 

 

『オーディエンスが聞きたいのはどっちが今勝ってるかだぜ?それはどうなんだ?』

 

 

 

 

『「それは間違いなくヒミコだ」』

 

 

 

 

 二人の言葉に重なるようにして、ヒミコの鋭い一撃が俺の胸部を切り裂いた。俺は追撃を避けるため一歩下がり、ヒミコはそんな俺を追撃する。

 

「やはりあなたも胸部を差し出してしまう癖、直ってませんね。この一撃はデカいですよ」

 

「どうだかな!まだまだこれからだろうが!!」

 

 一瞬下がったヒミコの隙をつき、俺はヒミコのナイフを一本破壊した。だが、もう一本のナイフが残っており、それには血がたっぷりと付いている。

 

 

 

「モード獣人が得意なのはその高い防御力と攻撃力によるゴリ押しだ。スピードが持ち前のヒミコさんには分が悪すぎる」

 

「早すぎるせいで狼は防御動作を攻撃にできていない上、逆にヒミコは狼が攻撃する度にさらなる攻撃を与えている。あれで倒れないのがおかしいくらいなんだ」

 

 

 

『ヒミコが血を取った以上、攻撃力と防御力の不足というヒミコの弱点も消え去った。狼にとってはかなり不味い状況だぞ』

 

 

 

「これで条件はイーブン。……いや、こちらの有利に傾きました。これで決めにかかれます」

 

「どうだか、俺の個性を俺以上に使いこなせるとは思えないぞ」

 

「あなた以上に使いこなせるなんて最初から思ってませんよ。私は私のやり方であなたの力を使い、勝利する。その考えしか今の私にはありません。………変身」

 

 ナイフの血を全て舐めたヒミコは俺に変身し、俺同様モード獣人の姿となった。

 

「これで終わりにさせていただきます。覚悟はいいですね?」

 

「どうだかな。お前は俺に一度も勝てていない。その記録を破れるとでも?」

 

 

「それを破るために私はここに来ているんです。いきますよ………狼!!!!

 

 

「こい………ヒミコ!!!!

 

 

 最後の激突だと覚悟した俺達は全力の拳を互いに振るい、互いにその拳を相手に倍にして返した。倍にして返されると知りながら、お互いに持てる全てをぶつけ合う。

 

 

「(打って蹴る打って流す打って受け止める打って吹き飛ばす打って──────)」

 

「(打っては引く打っては落とす打っては投げる打っては差し込む打って──────)」

 

 

 永遠にも思える殴り合いをし、戦いは決着を迎える。

 

「(ここで変身を解除!?!?)」

 

 

ここだぁ!!!!

 

 

 変身を解除して殴り合いを捨て、ヒミコは俺の懐に入り込み、俺の足と首を持って頭から地面に叩きつける形で俺を投げ飛ばした。だが………

 

 

「悪いな……俺も同じこと考えてたよ………!!!!」

 

 

 殴り合いを捨てられる間際に人型に戻ろうとしていた俺はようやく人型に戻り、ヒミコの腕から抜け出して受け身をとった。その体制のままヒミコに蹴りを入れる。

 

 

「これで最後だぁ……!!!!」

 

 

 崩した体制のヒミコを頭から叩きつけ、ステージを大きく揺らした。まともに喰らったヒミコは完全に動く事ができない。

 

 

 

「真血 被身子……行動不能!!真血 狼君!!2回戦進出!!!」

 

  

 

 ミッドナイト先生の声に一コンマ開けて爆発的な声援が上がった。受けたダメージでフラフラに成りながらも、俺は立ち上がる。

 

「………これで58戦中58勝0敗だな。また俺の勝ちだ」

 

「………これで58敗目ですか。また黒星を1つ増やしましたね」

 

「だが、次は勝つって言うんだろ。また負かしてやるから覚悟しとけ」

 

「今度負けるのはあなたでしょうが。次は絶対に勝ちます」

 

「おう、いつでも待ってるぞ。お前が1勝するのをな」

 

 ボロボロに成りながらも差し出したヒミコの拳を俺が突き返すとともにヒミコはレスキューロボによってリカバリーガールの元に運ばれていった。

 

 

 

『両者の技と策!!そして熱がぶつかり合う兄妹対決を勝したのは真血 狼!!!兄の威厳と強さを見せつけた!!!!』

  

 

  

 プレゼントマイクの声に急かされるようにして、俺もまた退場した。

 

 ………流石に何度もヒミコの技を喰らったのはヤバいな……俺もリカバリーガールのとこに行くか………。

 

「おい待てお前。話がある」

 

 フラフラな俺の前にさらなるヤバいやつが現れた。

 

 ヒーローランキングNo2、エンデヴァーが俺の方見てがっつり睨んでいる。

 

「………なんでもいいから帰っていいですか?」

 

 

 

 

 

 




 
『少休憩の前に一つ忠告だ。今、真血 ヒミコのことであれこれ言った奴、死にたくなかったら全員カメラの前で全力で土下座しろ。俺は忠告したからな』(真顔)


「「「「!?!?!?!?」」」」
 
 
 




(真血家兼事務所)
 




「雄英に行くのは駄目ですって!!殺傷事件が起きますから!!!」

「鉄田離せ!!あのクソ野郎どもに一発入れないとこっちの気が収まらん!!一発殴ったら終わりだから離せ!!!」

「あんたの一発で簡単に死にますから駄目ですって!!!!」









 




 
(某処酒場)
 
 
 
 
 
「姐さん抑えて!!気持ちはわかるけど抑えて!!」

「私の娘にあれこれ言うとはいい度胸だな……!!全員ぶち殺してやる………!!!!」

「早く土下座して頼む!!姐さんが虐殺事件を起こす前に!!早く!!!」
 
 
 やはりモンスターペアレント達はブチギレていた(当たり前だが)。
 


 
 
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