鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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25 迷ってでも進む意志

 

  

 

『君の力じゃないか!!!』

 

 

 

 ………緑谷と戦うまで"考える"なんて……考えもしなかった。

 

 ずっとあいつを否定して……お母さんの力だけで勝つことだけを考えていたから……自分がどうしたくて、自分が正しいのかだなんてこと……考えたことなかった。

 

 お母さん俺は…………

 

 決勝戦間近だというのに……俺の頭の中はそのことでいっぱいいっぱいだった。……いや、緑谷と戦ってからずっとそうだ。

 

 あいつへの怒りも憎しみもなにかもも消えたわけでもないし、勝ちたいとは本気で思っている。

 

 けどよ……全員に真正面からぶつかって進んで来た狼に……似た個性でありながらなりたいもんがはっきりと見えてるあいつに……俺はどんな顔をして戦えばいい?こんな情けない顔をしてる俺は……どうしたら……

 

「おーっす焦凍いるか?ちょっとじゃまするぞ。これ試合前じゃました詫びのパッツな。一個食っとけ。美味いぞ」

 

 ガチャリとドア音をたて、狼はいつも通りの様子で入ってきた。とりあえず顔を上げ、差し出されたパッツを口に入れる。

 

「試合の方はどうだったんだ……?爆豪とだったんだろ?」

 

「リアルタイム中継のやつ見てねーのかよお前。俺が腹パン入れて無事勝己に勝利、あいつは今病室で寝てるよ。アバラ1本折れかけてたってのに無茶しやがって……あの天才マンは………」

 

「あいつらしいといえばあいつらしいけどな」

 

「ご尤も。んでもってお前はどうしたんだ?常闇戦、全くらしくなかったじゃねーか。緑谷戦でふっきれたんじゃなかったのか?」

 

 その言葉に何も言えず、俺はただ顔を下に向ける。

 

「やっぱこじれてやがる……。……大方、どうしたらいいかわかんなくなってるってところか?」

 

「………」

 

「無視かよ……。それとも何だ?どんな顔してればいいかわかんねーとかか?」

 

 俺の考えてる事をビシビシと当ててくるこいつに、口の中のパッツが妙に苦く感じながらも俺は頭を下げ続ける。

 

「全部図星ってとこか。とりあえず言っておくが、俺は手加減なんてものするも気も、敵の顔色を伺うつもりも毛頭ない。俺は全力のお前を全力で捻じ伏せるために立つ。だからその右手の力も、お前のしこりも全部俺にぶつけてこい。俺が言いたいのはこれだけだ」

 

「……お前も緑谷も敵に塩送るようなことばっかしやがって。………どうしてこんなことする?」

 

「決まってるだろそんなもん。

 

 

 

俺もあいつもヒーローになりたいからだ」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

                                               ◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遂にこの時が来た……。長き戦いの果に今………体育祭決勝戦という伝説が今……築かれようとしている………!!!』

 

 プレゼントマイクのいつにもなく静かな口上によってスタジマムは一度静まり返り、その時を今か今かと待つ。

 

『雄英体育祭始まって以来の波乱の体育祭になった今回!!勝ち上がってきたのは奇しくも両名がヒーローの息子であり二つの個性の性質を持った2名!!俺の口上はもういい?早くそいつらを出せ?俺も同様の気持ちだ!!!早速出てこい!!二人の戦士よ!!!!!』

 

 その声とともにスモークと炎が上がり、その中から人影が静かに近づいてくる。

 

 

 

『右手には炎!!!左手には氷!!!それらを使いこなす頭脳!!!このパーフェクトボーイは誰だ!?ヒーロー科!!轟 焦凍!!!!』

 

 

 

 静かに上がる焦凍に比例するようにして莫大な量の声援がステージを覆った。彼のステージ到着を待っていたかのようにもう一人の人影が近づいてくる。

 

 

 

『その姿は全てを破壊する狼!!!その身に宿すは血という禁断の力!!!破壊の獣は今!!戦場に降り立つ!!!ヒーロー科!!真血 狼!!!!』 

 

 

 

 

 焦凍に負けないぐらいの声援を受け、俺も静かにステージも上がった。焦凍も俺も拳を構え、その時を待つ。

 

 

 

『全ての期待と熱は今!!クライマックスと言っていい!!最後の戦いが今!!幕を開ける!!!雄英高校体育祭決勝戦………START………!!!!』

 

 

 

 開幕のコールと共に焦凍は瀬呂戦で見せた大氷壁を放出、それが一気に迫ってくる。

  

 

「初手はやっぱりこれかいっ!!!

 

 

 その動きを事前から考えていた俺は迷わずモード獣人に変身、深く腰を入れるとともにに拳を放った。その一撃により氷壁は粉々となって霧散した。

 

「開始の一撃は大事だが……それにしては派手過ぎんだよ!!」

 

 氷壁が霧散すると同時にモード狼に変身、大規模の氷結で隙ができた焦凍を囲うような形で幾度も攻撃を与える。しかし次を警戒していた焦凍にはその攻撃は上手く入らず、迫る氷を前に俺は後ろに跳んで一度避難する。

 

「どうした焦凍!?こんなもんか!?!?」

 

「チッ………!!!」

 

 小規模の氷結から発せられた氷の刃が俺に迫るが俺には関係ない。全て砕き焦凍に接近、拳を肝臓あたりにクリーヒットさせ、場外まで吹き飛ばした。

 

『デカい一発が入った!!このまま場外──おっと!!これは面白い!!氷壁で場外アウト回避ーー!!楽し────そうではないね!!モード狼による執拗なまでの追撃!!氷壁を足場にして加速してるのか!?』

 

『自身の周りをよく見て全て使う。これもヒーローの基本だな』

 

 氷壁を足場にして加速により目で追うのすら難しい俺に対応して、囲うような形の氷壁をが生成された。

 

「これで……どうだ……!!」 

 

 常闇戦で見せたものとは比にならない量の大質量の氷が俺に放出されるとともに焦凍は俺に接近、俺を直接凍らせるつもりだ。

 

「けどな。あめーんだよ!!」

 

 ステージを一度叩き割ることで焦凍の接近を阻止、迫る氷を拳で全て破壊した。

 

「おいおい焦凍!!俺は全力でって言ってんだ!!こんなもんじゃねーだろ!」

 

「…………」

 

 そう言いながら接近する焦凍はあくまで無言。割れた地面から氷を放出、俺を氷の中に閉じ込める。

 

『これは勝負決まった!!勝者───』

 

「フンッ!!!!」

 

『No確定!!中から狼が復活だ!!中から氷を壊すってどんなパワーだよ!?』

 

 馬鹿力で氷を壊して接近し、戦いは近距離戦にもつれ込んだ。焦凍は拳を的確に払い、俺は逃げようとする焦凍に手技や裏拳で動きを止める。

 

 エンデヴァーの息子だけあって近距離も仕込まれているがあくまで主体は遠中距離、クリーヒットした俺の蹴りが氷壁まで焦凍を吹き飛ばす。

 

「体の霜、回ってきてんだろ?右手を早く使って回復しろ。でねーとお前……負けるぞ?」

 

「……………」

 

 距離をとって構えを取りながら俺はそう焦凍に声を掛けた。だが、聞く耳を持たず焦凍は大規模の氷を俺に放ってくる。

 

「……初回の半分以下の威力だな、こりゃ。この程度……足の蹴り一発で砕けんだよ」

 

 腰を入れず放った足の蹴りにより氷は粉砕、俺は焦凍に迫る。

 

「………わかねーんだよ。どんな顔すればいいのかも……どんなヒーローになればいいのかも……俺は……どうしたらいいのかもな………」

 

 迫る俺にようやく焦凍は口を開いた。俺は言葉を返す。

 

「それはお前自身が一生かけて見つけるもんだ。誰だって迷ってんだよ。どんな大人になればいいのか、どうすればやり直せんのか、どうすればこんなクソみたいな状況から抜け出せんのか………とかな。父さんの事務所がヴィラン更正の場である以上、俺はそんな奴等を死ぬほど見てきたし、死ぬほど悩みも聞いてきた。だからこそ俺はお前に言う。中途半端でなれるほど……ヒーローは甘くない」

 

 その言葉とともに顔を上げ、こちらを見る。

 

「ようやく俺を見たな、焦凍。前向いて進む道、ちゃんと見えたか?」

 

「俺は………」

 

「お前の道はもうあるだろ?だってよ」

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けるな!!!頑張れ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣き虫のヒーローが………ちゃんと手を掴んでくれたんだからよ」

 

 

 

 

 

 その言葉とともに焦凍の右半身から炎が溢れ、高らかに燃え上がった。

 

「ほんとお前等は………敵に塩送るようなことばっかしやがって。けどよ……今は言わせくれ。ありがとう。狼、緑谷」

 

 全てが吹っ切れた笑顔で焦凍はこちらをしっかり見て焦凍はさらに口を開く。

 

「俺も本気を出すんだ……。お前も出せるもん……全部出せよ」

 

「………いいのか?勝ち目が全部なくなるぞ?」

 

「それで構わねぇよ。これではっきりとわかる、俺とお前との距離がな。それによ、そういうの全部乗り越えていくのがヒーローってやつ、なんだろ?」

 

 

「言うようになりやがって。でもそうだな。俺もお前の本気に………全力を持って応えねーとな

 

  

 そう言うとともに俺は腕を噛み、血を啜った。

 

 

 

 

「……魔血55%開放、モード戦争狼(ウォーウルフ)!!!!」

 

 

 

 赤い煙の霧散とともに全身に赤い痣を宿した俺は再び構えを取る。

 

「これが俺の今出せる理性を失わず出せる全力だ。後悔すんなよ?」

 

「俺も炎全然使ってねーから手加減できねーからな。お前こそ後悔すんなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上等だ!!こい!!焦凍!!!」

 

 

「行くぞ……狼!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉とともに焦凍は氷と炎を俺に放ち、俺は砕き躱して攻撃をぶつける。そんな戦いが繰り広げられた。

 

『なんか完全に吹っ切れた轟と本気を出した狼!!これだ!!これを見たかったんだよ相澤!!!!』

 

『落ち着け!!俺を掴むな!!』

 

 プレゼントマイクの言葉に同意するように爆発するような声援が辺りを覆った。だが、そんな声など俺達の耳には届いてはこない。

 

「(やっぱこいつは強い!!個性も!技も!何もかも!!だが……負けるつもりはない!!!)」

 

「(想像の何倍だよおい!?吹っ切れて個性の操作が何倍にも高まってやがる!!こいつは……強い!!!)」

 

 俺達も互いに胸を熱くしていたからだ。最早常時目で負えない速度の俺の退路を炎で塞ぎ、緻密な操作で大量の氷を放出する。

 

 これが弱いわけがないだろ!!そしてとんでもなく楽しい!!こいつとの戦いが!!とてつもなく楽しい!!!

 

 そんな熱に体を動かされ、モード狼で突撃した瞬間にモード獣人に変身して拳を打ち込むのを繰り返し、幾度の連撃を浴びせた。流石にこれは効いたらしく焦凍は少しよろけ、氷で距離をとる。

 

「まだ……!!」

 

 氷壁が俺を囲うように放出され、その上から高温度の炎が放出された。

 

「なんの……!!」

 

 肺に大量の空気を溜め、それを一気に放出することでの空気弾が炎を割いて跳んでいった。氷壁を破壊して俺は焦凍に近づく。

 

「最早理不尽みたいな強さだな……ここまでやって立ってるなんてよ………」

 

「これが俺の全力だからな。ここで終わりにするか?」

 

「まさか……!!寧ろ俺がこれで終わりにする……!!!」

 

 緑谷戦で見せた爆発を、あいつは起こす気だ。なら……

 

『モード狼に変身して狼はあの爆発に対抗する気だ!!そしてあの独特構えは……!!』

 

「父さん直伝!!必殺技!!!」

 

 足に力と神経を集中させ、俺は一気に跳び上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『牙爪連爪牙』!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体を回転させての突撃と爆発が真正面からぶつかり合い、文字通り火花が散った。爆発は徐々に弱まっていき、俺は爆発を突破した。

 

「…………これがヒーロー」

 

 そんな言葉を最後にして、焦凍はステージから吹き飛んだ。回転して幾度に放たれる連撃、それは大きなダメージとともに焦凍を強くステージの地面にぶつけ、場外にまで吹き飛ばした。

 

 辺りを覆っていた煙が晴れ、徐々に俺の姿が現れるとともに歓声が大きくなっていく。

 

『これにて決着!!長く短かった体育祭決勝戦!!そこに立っているのは誰だ!?!?最後に立っているのは誰だ!?!?!?』

 

 

 

 ワァウオォォーー!!!

 

 

 

『雄英高校ヒーロー科!!!真血 狼だあぁ!!!!!!!』

 

 俺の遠吠えととも割れるような歓声が辺りを覆い、一気に爆発した。一人眠るあいつを俺は一瞥する。

 

「これがお前のオリジンだな、焦凍。お前の、ヒーローまでの、始まりだ」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 長かった……!長かった体育祭編……!そして……長かった私の入院生活……!!

 どうも、腸炎で投稿が遅れてしまい申し訳ありません。これとあと一話にて体育祭は終了となります。

 ちなみに牙爪連爪牙はまんま『NARUTO』の牙通牙です。

 
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