鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 書きたいものを書いてると楽しいんですが、その分凝って上手く書けなくなる………。しかし投稿間隔と相まって、現在めちゃくちゃ頭を痛めています。
 
 果たして次の投稿日はどうなるのか!?作者の試験はどうなるのか!?次回、多分赤点+多分投稿日遅れる!!デュエルスタンバイ!!
 
 


29 自身と向き合ってこその成長か

 

 

 

「………んっ………んんっ………。…………ここは?私は一体………」

 

「起きましましたか黒江さん。気分の方は大丈夫ですか?」

 

 鉄田さんの声でゆっくり意識を取り戻した私はゆっくりと体を上げ、はっきりと冴えない頭を働かせるために少し体を動かした。 

 

 それとともに記憶が浮上していき、最悪の未来が脳裏を過る。

 

「鉄田さん工場の方は大丈夫ですか!?受刑者達は!?鎌崎と乱打はどうなったんですか!?」

 

「今話しますから落ち着いてください。焦ったら元も子もないでしょ」

 

「受刑者達が脱走してるんでしたら今すぐ追いかけないと!!私のせいで……私のせいで脱走者が───」

 

「だから落ち着いてください!!脱走した受刑者達は全員捕縛、鎌崎と乱打も気絶して無事捕縛されました。受刑者が脱走するなんて非常事態になってませんし、誰も黒江さんを責めたりしないので落ち着いてください!!」

 

 焦って飛び出そうとした私の手を鉄田さんは掴み、ゆっくりと言葉を掛け、私を落ち着かせた。

 

 非常事態になっていないという言葉に私は安堵し、全身から力が抜けていく。

 

「誰かが脱走した……なんて事態にはなっていないんですよね……?受刑者達は本当に……確保されたんですよね………?」

 

「その場にいた若と私、資材管理室から戻って来た爪牙さんがどうにか全員を捕縛しました。気絶したあなたを治療したはお嬢ですしほんと、彼らさまさまと言う他ないでしょう」

 

「そうだったんですね………。私……大人などというのに……高校生の彼らに助けられたんですね………。よかったと言うべきか…………面目がないと言うべきというか……なんというか………」 

 

「ここでは年齢や経歴、性別どうこうのあれこれの話は一切なしです。そう落ち込まずとも大丈夫ですよ」

 

「まぁ私の面目なんてあってないようなものなのでそう気にしていませんよ。………それはそれとして、狼君とヒミコちゃんは一体どこにいるんですか?助けてもらったならお礼ぐらい……ちゃんと言わないと」 

 

「………一応いるにはいますが彼らの今のいる場所は隣の訓練場。………どうなっているかはご察しの通りですよ?」

 

 訓練場という単語に私は寒気など一切感じてないのにも関わらず、私は少し体を震わせた。

 

 見たくないもの見たさに私は訓練場の光景が見える窓の方へと立ち上がり、訓練場を覗き見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬ!!死ぬ!!死ぬ!!今回ばかりは本当に死にますよ狼!!!」

 

 

 

「口開く暇があったら足を動かせ!!止まった瞬間死線超えることになるぞ!!!」

 

 

  

「どうしたどうしたもう疲れたのか?蜂の巣になりたくなかったらちゃーんと足を動かせ」

 

 

 

「鉢の巣になったら普通死ぬから!!その事実をなんともない顔で言うって、あんたは鬼か!?!?悪魔か!?!?ヴィランか!?!?」

  

 

 

「俺は普通に狼だけどなにか文句あるか?」

 

 

 

「そういう事じゃないから!!文句も腐るほどあるから!!!」

  

 

 

 

 

 

 ………そこにあったのは電動スクーターに乗ったフェンリルさんが機関銃(実弾は流石に死ぬため、内蔵されている弾はゴム弾)を乱射しながら狼君とヒミコちゃんを追いかけ、二人は死にものぐるいで障害物を遮蔽物として使いながら全力で逃げているいつもの光景だった(ここに来ていろんな感覚麻痺してきた)。

 

 菩薩のような笑顔とともに私は目を迷わず窓からを背を向け、今見た地獄の光景を脳裏から抹消する。

 

「……フェンリルさんから伝言です。『黒江が目を覚まし次第訓練を始めるからヒーロースーツを来て訓練所まで来い。必ず黒江も連れてこいよ』だそうです。………どうします黒江さん?」

 

「………私は気絶してまだ寝ている、鉄田さんは私が起きたことなんて知らない、という方向で話をもっていきましょう。私達は何も見てない。OK?」

 

「了解です。私達はなにも知らない。何も見てない。OK?」

 

「OK」

 

 大人二人は地獄から目を背け、迷わず現実逃避に時間を捧げるのだった(その後二人は結局見つかり、倍の量の訓練をやらされた)。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

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「もう………足が動かない……………。もう……これ以上は………動け……ないぞ…………」

 

「まったく、こんくらいで息を上げるだなんてお前らもまだまだだな。目で見るより先に気配で弾丸を察知できるようにならなきゃ無駄な体力消費を抑えるなんてこと、永遠に不可能だぞ」

 

「気配だなんて……非科学的なものを言ってる時点で………爪牙さんと刀花さんは……十分化け物染みてるんです………。避けれるだけでも………褒めて……欲しいくらいです………」

 

「人を化け物とは失礼だな。まぁ心配せずともお前等もいつか気配を完璧に感じ取れるようになるさ。さーて、あともう一本やっとくか?」

 

 

「「冗談でももう無理です……。少し休ませてください……………」」

 

 

「お前等マジで動けないみたいだし、流石にこれは冗談だ。たかだが準備運動で体調崩されたらたまんないし、これでお前等の実力を測れないってもの嫌だからな。そこにあるアクセリ飲んで水分補給してじっくり休んでろ」

 

 ………逆に動けたらまだ走らせていたのか。母さんよりはマシだけど……父さんは父さんで色々ヤバいな……こりゃ……。

 

 我が父ながら、やってることがヴィランより悪どいと思いながら、クーラボックスの中でキンキンに冷えていたアクセリを呷り、カラカラだった喉を潤した。

 

 電動スクーターをしまい、軽いジョギング(俺達目線からはどう見ても全力で走っている速さにしか見えない)と念入りな柔軟をしている父さんを見て、俺はつい先程の父さんとの会話を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「まずは脱走した受刑者の捕縛と気絶した黒江の治療、俺がすぐ対応しなきゃいけないもんを肩代わりさせちまって悪かったな。職場体験だってのに最初から頭が上がらないよ」

 

「そんな頭を下げることないですよ。ヒーロー志望として、私達はやるべきことをやっただけです。頭を下げてまで感謝されることをやった覚えはありません」

 

「今日はチームアップ要請で看守の数が少ないんだし、こういう騒ぎは仕方ないでしょ。工場の壁がまた壊れるぐらいの被害で済んだんだし、そう落ち込むことないって」

 

「そうか、お前達がそう言ってくれるんならほんとありがたいよ。結果論と言えば結果論だし、本来あっちゃいけないことだから他の誰かに言うつもりはないが、とりあえず狼の動きを直で見れたってはこっちとしても運が良かった。これで俺もより具体的に指導できるってもんだ」

 

 鉄田さんの出してくれたお茶を飲みながら、最後の方は暗い顔から一転して真面目な雰囲気で父さんはそう話した。

 

 一息置いて、父さんは話を続ける。

 

「体育祭でのお前達の活躍、しっかり分析して、お前達が今持っている実力のデータを取らせてもらった。全体的な講評として述べることはずばり一つ。

 

『どちらもまだまだ詰め甘し。各人の研鑽を怠ることなかれ』

 

……って言ったところだろな。ちゃんと噛み締めておけよ、お前等」

 

「毎度毎度講評を句らしきものにされては噛み締める物も噛み締れませんよ。……具体的に、個人の評価としては?」

 

「まぁまずは狼の方だが…………お前は全体的に戦いのバラエティーを個性に頼りすぎだ。もっと使える技を増やして、その技の技術を一線級にまで仕上げろ。特に爆豪 勝己君との試合、はっきり言ってあれはまぐれ勝ちだ。当たりどころ悪かったら場外負けだったろ」

 

「あっはははは………、あればモード獣人の耐久力で余裕で耐えれるっていう目論見があっただけで………特にまぐれってわけでは………」

 

「全部顔に出てるし、そういうところが頼りすぎって言ってるんだ。いくらお前が訓練を拒否しようと、俺と刀花は必ず訓練をお前に受けさせるからな。職場体験の7日間、基本の技を全て叩き込むから覚悟しておくんだな、狼」

 

 絶対に逃さないという強い意思を感じる言葉に、俺は真っ白になって下を向くことしかできなかった。

 

 うん、死んだな。7日間、俺、何回死ぬんだろうな?俺、終わった時に自我残ってるのかな?

 

「狼、気持ちはわかりますが戻ってきて下さい。魂が抜けかけてますよ」

 

 ヒミコの言葉でどうにか魂を体に戻し、俺は無事意識を取り戻した。危ない危ない、訓練が始まる前に死ぬだなんて事、笑い事にならないからな。死ぬのは母さんの訓練だけで十分だ。ほんと……ね………。

 

「なんか笑ってる狼を頬っておいて、次はヒミコの評価だ。………まぁぶっちゃっけ、今回上げる駄目だったところの責任は俺にあるわけだし、これから教えようと習得させようとしていたことだから狼ほど大した反省点ではないがな」

 

「なんだよそれ。ヒミコにだけ贔屓なんてずるいぞ」

 

「俺が言ってるのは贔屓じゃなくて事実だから別に問題ないんだよ。そんで今回の体育祭、お前は覚えていた体術や戦術や機転などをうまく使ったことで無事、3回戦まで勝ち上がった。だが、これらだけではこれから強くなるであろうライバル達に置いていかれる結果となる。………何故だがわかるか?」

 

「……単純に……個性を使う回数が少ないからです」

 

 どこか暗い顔で、ヒミコはその事実を述べた。そんなヒミコの姿を見てなにか考える素振りを見せつつ、父さんは話を続ける。 

 

「お前の個性がいくら血を吸わなければ発動しないというデメリットがあったとしても、相手が個性を使ってくるヒーロー家業で、自身の力量を極限にまで鍛え上げているわけでもないお前が自身の持つ個性を極力使用しないというのは死に直結する。血を吸うというデメリットもやり方によってはすぐに解決できる以上、お前はそれを模索しなきゃならない。……というわけでお前のこの7日間、自身の持つ個性と改めて向き合い、いつでも個性を発動できるようにするってのが最終目標だ。まぁこればかりは俺が教えるわけにもいかんし、お前が真に向き合わなきゃ一切の意味はない。しっかり頑張って模索するんだな」

 

「……はい、頑張ります」

 

「そうは言っても父さん、ただ口頭で説明しただけじゃヒミコもどう模索すればいいかわからないでしょ。少しぐらいヒントあげたら?」

 

「そうは言ってもだな……こればかりはなんて説明したらいいか……俺にもよくわからないんだよ。強いて言うなら『個性の持つ本質を掴め』………ぐらいしか掛ける言葉はないな。……やはりそうだな。口で言うより、その身を持って体験した方がお前等も実感するだろう。お前達が如何に詰めが甘いってことがな」

 

「その言いぶりだとまさか…………」

 

「ああその通りだ。全ては大方、お前が察している通りだ。二人とも、持ってきたヒーロースーツに着替えて訓練所に来い。少しばかり揉んでやるよ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                       ◆◆

 

  

 

  

   

  

  

  

  

  

  

「……それで結局どうする?相手はあの父さんだ。手加減はすると言ってはいるが、結局の所その実力は俺達の何倍も格上だ。下手に行ったとこれで返り討ちだぞ?」

 

 一通りの準備を終えたことでいい感じに体が温まった父さんを見て、俺はヒミコにそう言った。

 

 こっちがゴリゴリの装備付きで、父さんがただのジャージ姿だとしても、その圧倒的強さの差は埋まることはない。故に勝つ鍵となるのが誰にでも平等に使うことができる戦術であり、それを使う事ができるヒミコなのだ。少し考える素振りを見せ、ヒミコは口が開く。

 

「……まず爪牙さんはつい先程、体育祭で顕になった私達の弱点を私達に話してくれました。爪牙さんが私達に戦いを教える立場である以上、それを間違いなく突いてきます。今の私達が弱点を突かれず、勝つための勝ち筋がある戦い方、それは………」

 

「………奇襲からの電撃速攻……っていったところか」

 

「そのとおりです。いくら爪牙さんと言っても急に来た多角的攻撃を防げるはずがありません。……もっとも、これで防がれたらそれこそ手はありませんが」

 

「その時はその時だ。今は俺達が今できることを、父さんに全てぶつけるだけだ」

 

 

「作戦会議はそろそろ終わりでいいな?そんじゃあ改めて、血闘術流組手のルールおさらいだ。組手のする二人は片方は受け、片方は攻めの役割に別れてもらう。今回は三人で俺はお前等を揉むわけだから、お前等二人は攻め、俺は受けの役割をやるっていったところだ。攻め側の勝利条件は制限時間30秒以内に受け側を円の外に出すこと。逆に受け側は円の外に出されなかったら勝ちだ。………じゃあ早速二人とも、準備はいいか?

 

 

「「はいっ………!!」」

 

 

「それじゃあ血闘術組手…………STA─────」

 

 

 

 ダッ!!ダッ!!ダッンダンダッダッタ、ガンガッ、ダンッ!!!

 

 

 

 体育祭同様繰り出されたSTARTのコールを待たず繰り出された俺とヒミコのラッシュを父さんは難なく捌き、俺達に蹴りを入れようと足を動かした。喰らえば一発終了の動きに、俺とヒミコは後ろ飛びで一歩下がる。

 

「体育祭同様、コールを待たずしての行動は基本中の基本だ。コールだなんてもん待ってるだけ時間の無駄だからな。……それで?次はどうする?」

 

 奇襲は失敗したと見て、ヒミコと目配せした俺はモード獣人に変身、ヒミコも腰の刀とナイフを取り出して真正面からの応戦を始めた。

 

 だが、それら全ての攻撃は父さんの手に当たった瞬間倍になって返され、一撃も与えられないまま時間だけが過ぎていく。

 

「狼、魔血開放を!!このままじゃ間に合いません!!」

 

「言われなくとも!!」

 

 残り15秒切ったことで焦る俺は血を啜って魔血開放を発動、今出せれる最大出力の55%での攻撃を繰り出した。しかし

 

「(嘘だろ!?これも平然と返すのか!?!?)」

 

 父さんは平然とした顔で拳を受け止め、その勢いを逆に利用したカウンターを俺に繰り出した。返されると思っていなかった攻撃に反応できず、俺はもろにカウンターを受け、吹き飛ばされてしまった。

 

「個性というのはいわば、体に宿る道具のようなものだ。お前の魔血開放ってのは道具を動かす個性因子のエネルギーを大量に消費することで無理矢理道具の出力を上げて、一時的に動きを良くしているだけに過ぎない。如何に結局動き自体は変わらないわけだから動きの先読みで対処ができる。もっと攻撃のバラエティー増やさなきゃ、実践でもこういうことになるぞ。そしてヒミコの方は……動き自体は悪くないな。だが、それだけだ。面白みが一切ない」

 

「クッ…………」

 

 俺がカウンターでふっ飛ばされた後もヒミコはナイフを投げ、刀を振り回し応戦を続けた。カウンターでふっ飛ばされぬよう一定の距離を保ち続けることで攻撃は受けていないが………ヒミコの攻撃も……一切入っていない。

 

「個性っていう道具を使うことで俺達は戦闘のリズムやスピードを変え、敵を翻弄することができる。それがないお前はただただ早いリズムを刻み続けてるだけに過ぎないんだ。だから……こうなる」

 

 父さんの緩めのチョップが頭に当たり、ヒミコは動きを止めた。それとともに30秒設定で動かしていた組手終了を告げるアラームが猛々しきなり、俺達の負けを示した。

 

 あまりの力量の差に俺たちは上を向き、疲れでグッタリと床に倒れた。投げられたヒミコのナイフを回収し、父さんは口を開く。

 

「連携自体は悪くなかったが、あれだけ言ったってのに動きの改善に一切繋がってないな。これは少し厳し目に止んなきゃ駄目……かな……?」

 

「あれだけの攻撃を受けて平然で攻撃を返せる父さんが化物過ぎるってもあると思うけどね。……でも、俺達の弱点っていうのは嫌でもわかったよ」

 

「あそこまでわかりやすく示されちゃうと何も言えませんね……。………これは課題山積みです」

 

「だからこそお前達をここに呼んだわけだからな。みっちり鍛えてやるから覚悟しておけ」

 

「ハッハハハッ………。お手柔らかにお願いします」

 

「それじゃあ今日は寝て明日に備えろ。ついさっき具体的なトレーニングメニューをスマホに流しておいたからそれ見て業務の合間にちょくちょく実行していってくれ。7日間の内に全部実行しなかったら……刀花の矯正トレーニング行きってこと……忘れるなよ………」

 

「地獄への片道切符なんて誰が欲しがりますか………。死ぬ気でメニューの方は実行しますよ……………」

 

「それじゃあ今日は解散だ。明日から地獄だからゆっくり休めるだけ休んでおけよ。そうでなきゃ……普通に死ぬしな……メニューの内容で……」

 

「恐ろしいこと言わなくても休みます!!だからそのヴィラン顔で私達を脅すのはやめて下さい!!そこかしこにいるヴィランの何倍も怖いですから!!」

 

 間違いなくヴィランに間違われる謎の微笑みに、ヒミコは思わず一歩後退りし、逃げるように更衣室へと入っていった。

 

 悪巧みしてる父さんの顔は映画に出てくるヤバいヤクザや凶悪ヴィランも真っ青な表情をしているからな………。逃げてしまうのも仕方ない。

 

 しかもそういう顔をしている時に考えていること……それは大抵ろくなことじゃない………。そして案の定スマホに映し出されたトレーニング内容にしたってどのメニューも普通に死ぬか死なないかのギリギリの内容だ………。これは間違いなくヒミコも頭を抱えて────

 

「………!?父さん………これって……………」

 

 ヒミコに出したたった一つのメニュー、それはあまりに危険であり、あまりに難しい題材だった。

 

 俺の言葉に対し、少し遠くを見上げながら父さんは口を開く。

 

「あいつは今一度向き合わなきゃならない。自分が行ってしまったこと、自分ができること、自分が本当になりたいものは何なのかって事をな」

 

「………けど父さん………ヒミコはずっとこの事を心の中でしこりを抱えてるんだ。………あいつは……大丈夫……何だよな?」

 

「…………全てはあいつ次第だが…………きっとあいつは乗り越えてくれるさ。なんせあいつは俺達の……もう一人の家族……だからな」

 

 ”上級受刑者の更生”、個性を持て余し、人から化け物になってしまった者達の元へ、ヒミコは今一度投げ出されようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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