………どうしよう……この中途半端感。話長すぎて絶対書ききれんぞ……これ………。
………とりあえず前編と後編で分けるけど………変な評価こないかな……これ。(ガチで心配)
「やめなさい!何をしてるの!?」
「その笑い方をやめなさい!不気味な顔だ!まるで…………異常者だ!」
…………私は普通じゃないんですか?普通って……どうすれば手に入れられるんですか?
「ヒミコちゃんってさ………なんか気持ち悪いよね。怪我するたんびに人の血をジロジロ見てくるんだよ」
「それな。ヴィランみたいな個性っていうかまんまヴィランみたいな子じゃん。いつか本当にヴィランになるんじゃないの?」
…………私は……普通に生きたいだけなんです。なのになんで………誰も………許してくれないんですか?
「ヒミコに告れだって?嫌に決まってるだろ。あんな奴の彼氏になったら最悪殺されて終わりだぜ。あんな奴、早く掴まればいいんだよ。俺達が普通に生きるためにな」
…………なんであなた達は普通にできて………私はなんで普通にできないんですか?………どうして?
「いつか……事件を起こすんじゃないかって思っていたんだ。これを機に、お前との縁を切れてせいせいしたよ。…………お前なんか……産まれてこなければよかったんだ」
「他人を脅かそうとした以上、君はその責任を受け入れなくちゃいけない。どんな理由があれ、他者を脅かそうとした以上……彼らがなんと言おうと君は元ヴィンという肩書きを背負ってしまったんだ」
…………私だってこんなことしたくなかった。普通に生きれるなら………普通に生きたかった………。
「ヒーローを目指すだって?お前が?無理に決まってるだろ。ヒーローにとっ捕まった上、更生なんて無駄なことをやってるお前がヒーローになるなんてアホなんじゃねーの」
…………どうしてみんな……私を否定するんですか?どうして私の夢を否定するんですか?
………私は…………どうすれば………普通に生きれるんですか?
◆◆
「おいヒミコ!!大丈夫か!?ヒミコ!!」
狼の大きな声とともに、私は跳ね上がるように体を起き上がった。全身なら吹き出した異様に冷たく感じる汗を拭い、小さく震える手を抑えながら口を動かす。
「……………一応は大丈夫です。少し魘されてだけで……心配するほどじゃありませんよ」
「…………更生業務の件、やっぱり考え直してもらった方がいいんじゃないか?聞いてたこっちが苦しくなる声を上げてたし……今はまだ……やめといたほうが………」
「……今やらなくてもいつか向き合わなきゃいけません。………あれから2年経ってるんです。きっと………大丈夫なはずですよ。………さっ、狼も早く着替えて準備始めてください。爪牙さんの訓練、始まるんでしょ。女子の部屋覗く趣味があるわけでもないんですし、早く出て行ってください」
私がそう言うと狼は心配そうにしながら部屋の扉を開け、こちらの方をチラチラ見ながら部屋から出て行った。
………私が少しでも苦しんだり嫌がったりする素振りを見せた瞬間、狼はとことん過保護になりますね。そんな心配しなくとも大丈夫だというのに………ほんと優しいというか過保護というか………。
狼の姿に苦笑いしながらも私は髪をとかし、リビングに置いてあったトーストを一枚食べ、ヒーロースーツに手際よく着替えていった。
受刑者の更生業務も行っているということもあって、フェンリル事務所の朝は早い。所属してるヒーロー達は全員看守業を兼業しており、24時間体制で受刑者の精神状態や行動などをモニタリングしている。
受刑者と一口で言っても、フェンリル事務所で更生しているのはヴィランだけではない。
個性の暴走によって精神のバランスを崩した者から、自身の個性が故に普通の生活を送るのが難しい者、異形型の個性が故に差別を受け、ヴィランになるしか生きる道がなかった者などなど、幅広い者が事情を抱えここに流れ着き、社会復帰のためここで更生を受けている。
そのため、私達の仕事は受刑者達に個性のコントロールの指導から受刑者の不安定な精神状態の回復、コントロールが難しい個性の保持者が普通にできる仕事の斡旋及びそういった者達が働くことができる会社の企業など多岐にわたり、ヒーロー飽和社会である今の時代の中では珍しい人手不足問題が毎日発生しているのだ。
あまりの忙しさに、フェンリル事務所系列の事務所を増せばいいという案も出たのだが、《ヴィラン更生資格》という国際資格を持っている者の認可でしかヴィランの更生業務を行えないという問題、個性カウンセリングでは解決できないほど酷い精神状態の者への治療ができる人材が限られるという問題、一つの事務所が過剰なまでの戦力を持つことは危険だという考えから国が許可をが下ろしてくれないなどの問題が重なったため、この忙しさを解消することは難しくなっている。
現に監視室で夜勤当番の梟さんが目を血走らせ、血眼になってカメラから映し出される受刑者の部屋の前の通路でなにか起こってないか監視していた。直ぐ近くの机に大量のエナジードリンクの空き缶が山積みされているのは闇深いため見なかったことにする。
「…………おっ、ヒミコちゃんだ。おはよ。……これってもしかして交代の時間?」
「おはよう御座います梟さん。夜勤、お疲れ様です。トーストとお茶持って来たんですけどいりますか?」
「おおっ……これはありがたい。チームアップ要請で人が少ないせいで昨晩は僕と爪牙さんだけで監視と巡回をやらなくちゃいけなくてね………。お陰でお腹ペコペコだったんだ………。…………僕、もう寮に帰っていいかな?」
「あとは監視カメラの確認作業だけですし、あとは黒江さんと私でやっておきますよ。………そもそも、不眠不休でヒーロー業と看守業を問題なくこなせる刀花さんと爪牙さんがだいぶおかしいだけで………普通寝ずにやるなんて無理ですからね………。あんな生活習慣したらそりゃあ体調も悪くなりますよ……」
「あの人達のやることなすこと全部、化け物か外道がやるようなことばかりだからね………。元ヴィランの僕なんか……霞んで見えてしまうよ………」
「その化け物の一人に狼は死亡宣告を受けまして……現在ばっちり地獄を見てると思います………。………生きて帰って来れますかね?」
「多分というか間違いなく死ぬんじゃない?化け物っていうか化け物そのものみたいな顔してるじゃん、訓練の時の爪牙さん達。それに今回は型式を習得させるとかなんとか言ってたから………いつもの倍辛いと思うよ……ほんと……」
ボロボロになりながら地を這いずっている狼の姿を想像し、私と梟さんは寒くもないのに体を震わせた。
型式とは血闘術の中で唯一名が与えられている技で、血闘術が簡単に人を殺せる技であるという根幹をなしている技でもある。
技は全10種類あり、全部の技に体内で練った気を使うらしいのだが………正直、気が何なのかは私にはわからない。
数少ない全ての型式を使うことができる人物の一人の鉄田さんいわく。
『確かに強いし便利だけど非科学的過ぎてわけがわからない。そもそも気を練る訓練に耐えれるだけ奇跡だし、気について完全に理解した奴は最早人間をやめている』
らしい。…………あの人達って本当にただの人間なんですよね?化け物とか悪魔とかじゃないんですよね?やってることが常軌を逸っしすぎて、最早ヒーロー、ヴィランどうこうの話じゃなくなってる気がするんですけど。………本当に人間ですよね?
「じゃあ僕は寮に戻って一眠りさせてもらうよ。トースト、ありがとね」
「あっ、はい。お疲れさまです」
私がそんな考えているうちに、梟さんは欠伸をあげながら監視室から出ていってしまった。
誰もいなくなり、静まり返った室内でカメラ映像の確認や機材のメンテナンスをしている内に続々と看守達が集まり、今日の業務説明が行われた。受刑者達のデータが入ったファイルを手に、副看守長の立場でもある爪牙さんが口を開く。
「まずは鉄田と狼、お前達は先日脱走しようとした乱打達9名の懲罰トレーニングを頼む。当然懲罰である以上、手加減をする必要は一切ない。容赦がない責め苦痛で彼奴等の心を徹底的折ってくれ」
「了解」
「りょ、了解………。徹底的にやっとくよ………徹底的に………」
いつも通りの鉄田さんとは対象的に、ハイライトが一切ない目で、狼は遠くを見上げながらそう言った。
…………よほど辛かったんだろうな………型式のトレーニング。…………今日はあと10回くらいは死ぬんだろうな………狼。
私がそんな哀れみの視線を向けている間にも話は続き、話が残り僅かになってしまったので気を切り替えて話に耳を傾けた。幸いなことに、私の追加業務についての説明はなされていない。
「記田はヒーロー希望の受刑者への学術的指導、病は精神状態が不安定な受刑者へのカウンセリングと薬物治療をいつも通り頼む。そして解原の方はだが…………まぁいつも通りMIPデックスで寝てるだろうから後で俺が叩き起こしておく。最後にヒミコと黒江、お前達は受刑者ナンバー1897、【金銀 一角】の更生だ。初期懲役期間となる今日明日のメンタルケアで、あいつが再びヴィランになるかならないかが決まってくる。十分考えた上で、更生業務に励んでくれ」
「「「了解」」」
「では各自別れて業務を開始。今話したことを重視しつつ、業務こなしてくれ」
爪牙さんがそう言うともに各自動き出し、黒江さんと私は上級受刑者のいる地下3ブロックへと足を進めた。
上級受刑者のいるブロックに行ったことのない黒江さんは長い廊下一発に書かれたラクガキや傷跡に、少しおどおどしながら目をあちこちに向ける。
「凄い量の傷跡に破壊痕…………。初級受刑者や中級受刑者達のいる1、2ブロックとは全然様相が違うわね………」
「ここに半年以上いる受刑者ならともかく、来てそれほど経っていない受刑者達は脱走しようっていう意志で溢れていますからね。これらの傷跡や破壊痕は全て、脱走を試みた者達が残した者です。………まぁ、全員もれなく捕まって、懲罰トレーニングを受けさせられましたが」
「ヒミコちゃんやたらここに詳しいみたいだけど、何回か来たことあるの?爪牙さん達の手伝いとかで来たとか?」
「…………数ヶ月の間だけ、ここにいたことがあるんです。殺人未遂とはいえ罪は重いですし、寧ろ1年でよく懲役が終了しましたよ……ほんと」
「あっ……ごめん………。そういう話……させちゃって………」
「いえいえ、別に気にしませんよ。それよりも舌、噛まないよう歯を食いしばっといた方がいいですよ。ここからは少し危ないですし」
「えっ、それはどうい─────」
バァァァァンッ!!!!
黒江さんに説明する暇もなく、ドアを開けた瞬間爆風が辺りを覆い、数人の受刑者が共有スペース内を飛び回っていた。
「待てよコラ!!てめぇよくも俺のプリン横取りしやがったな!!テメー一回地獄に叩き込んだろか!?!?」
「何言ってんの?馬鹿じゃないの?だって君弱すぎて僕を殺すことも捕まえることもできないじゃん。それなのに僕を殺すだなんて………ププッ、ヤバい、笑い止まんないや」
「殺す!!お前だけは殺す!!!!」
「てめぇらうっせーぞ!!チアリースターのライブが始まるってのに騒がしくしやがって!!!全員可燃ゴミしたろうか!?」
「お前ら全員うるさいっての!!人が仕事してるってのにギャーギャー言いやがって!!全員薬漬けにしてやろっか!?」
「上等だかかってこいや!!全員まとめて燃やし尽くしてやるよ!!!」
「殺るの!?殺るの!?なら僕も混ぜてよ!!その喧嘩!!」
「愛しの時間の邪魔した時間の分はてめぇ等の命で償って貰う!!塵も残さず消してやらぁ!!」
「ああもうっ我慢できない!!少しばかり痛い目をみてもらうわよ!!全員覚悟しておきなさい!!!」
個性を顕わにした受刑者達はぶつかりあい、共有スペース一帯を吹き飛ばす勢いで暴れ回った
「はいっそこまで!!全員静かにして下さい!!!」
「痛って!!」「おっと」「むっ」「あっ、ごめん」
ら困るので、個性がぶつかる直前に私が全員の頭に強めの手刀を一発入れ、動きを止めさせた。
私のその動きと同時に、あまりの状況に開いた口が塞がらなかった黒江さんもどうにか正気を取り戻した。
なにか言いたげに私の方を黒江さんは見る。
「えっと………これは色々問題じゃないのかな………?受刑者……牢から抜け出してるし…………」
「下手に牢に閉じ込めて、ストレス与えて暴走されるよりはマシなんです。元々牢の鍵は空いてますし、勝手に出て来てるのはいつものことなんですよ。初中級受刑者と違って、下手な拘束じゃ彼らを縛ることなんて不可能ですしね」
「なんだよてめぇ新入りか?看守だからって俺達に舐めた真似するならぶち殺すぞ」
「ねぇあんた強いの?強いなら僕と殺り合わない?」
「こっちのトサカヤンキーが【爆炎刃 投球】君、こっちの好戦的な子が【神速 俊雷】君です。一応どっちも古株なので、ある程度の常識は持ってるので大丈夫ですよ」
「なぁお前チアリースターは知ってるか?可愛いだろ?なぁ、知ってるか?」
「黙れアイドルオタク。急にそんなこと聞くから困惑してるでしょ。せめて挨拶ぐらいはしてから聞きなさいよ」
「こっちのチアリースターっていうアイドルが好きな人が【鏡 連】さん、ここの受刑者達の姉御的存在が【江頭 葉子】さんです。みんないい人ですし、そんな固くならなくて大丈夫ですって」
「いやいや、受刑者達がこんな自由奔放なのも色々問題だと思うし、なんでそんな仲いいのよ?私より距離感近くない?」
かなり困惑している黒江さんを尻目に、投球君達はいつも通りワイワイしだした。
刑務所などはかなり受刑者達の扱いが厳し目であり、拘束などに重点を置いてるため自由は殆どないが、更生施設などでの扱いは大きく違う。
そもそも更生施設の存在意義はヴィラン特有の不安定な精神状態を安定させ、現社会における常識や個性との向き合い方を学ばせるというところにある。
そういった意味で精神状態が特に不安定な上級受刑者を拘束するといった精神的に大きなストレスを与える行為はタブーであり、社会復帰から大きく遠のかせてしまうということでもある。
そのため、一定の業務をこなせば基本的に受刑者達は自由である。個性の使用も看守が問題と思い、口に出さない限りは黙認されており、そこが刑務所などとの大きな違いだ。
まぁその分暴動は起こりやすいため、常に危険と隣り合せという点が、更生施設拡大の歯止めをかけてる原因なんでしょうけどね。日本はそこらへんお硬いですから。
「えっと、それじゃあ業務を始めてもらっていいかな?まずはここと自身の牢の掃除から───」
「はいはい、わかってますよそんくらい。もうそんなのはとっくに終わってますし、命令されずともできますよ。命令されなきゃ何もできないほど、俺達はそんな落ちぶれてないんでね」
「爆炎刃はそんなこと言ってけど、実はヒミコちゃんが来るから大急ぎで掃除してたんだよ。いつも掃除サボって懲罰トレーニングに行きにさせられる筆頭だってのにわかりやすいよね、アホだから」
「て、てめぇそれは言うなつったろ!マジでてめぇ殺すぞ!!」
「俺も掃除終わらしてるんで、テレビ見に行ってもいいですか?ライブ始まる1時間前なんで、早く事前準備済ましたいんですけど」
「い、いえ、他の業務もあるのでそういうのは………」
「あんっ?駄目だってか?俺が受刑者だから駄目だってか?」
「仕事である以上、受刑者看守この際関係ないでしょうが。えっと、確か黒江さんだったっけ?掃除の方の仕事は私達が見ておくんで、まだ起きてないどっかのトサカヤンキーみたいな子達の様子を見て貰ってもいいかしら?どっかのトサカヤンキーみたいに、誰かに起こしてもらわないと起きれない子ばかりだからさ」
「一人ちゃんと起床ぐらいできるわ!!この酒浸りクソ眼鏡が!!つーかてめぇこそなんだ?ヒミコの前だからってそんな真面目キャラ演じちゃってよ。お前こそ、普段こっそり密造した酒でヘロヘロになって懲罰トレーニング行きになってるくせによ。そんな一時の真面目キャラでヒミコにいい顔できると思ったら大間違いだからな!!」
「あ、あんたそれは言わない約束でしょ!!このトサカヤンキー!!これ以上言うなら本当に薬漬けにするからね!!覚悟はいいのかしら!?」
「上等だ!!その前に燃やし尽くしてるよ!!」
「ヒ、ヒミコちゃん!!また喧嘩が始まりそうだけど大丈夫なの!?今度こそぶつかり合いそうだよ!!あれ!!」
「大丈夫じゃないですけどすぐ収まります。俊雷君、連さん、適当なタイミングで捕縛して、看守への引き渡しをよろしくお願いします。掃除の方はチャラにしておくので忘れずに捕縛やっといてくださいよ」
「わかってる、わかってる。了解、了解」
「だから、俺にはチアリースターのライブが────」
「二人を抑えてくれたらライブ終わるまで自由にしてもらっていいですよ」
「てめぇら暴れんのはそんくらいにしとけ!!さっさと落ち着いて茶でも飲んでろ!!」
「変わり身早!!」
驚きが全く隠せていない黒江さんの手を引き、私達は共有スペースの奥にある牢所へと足を進めた。葉子さんと投球君のぶつかり合の音がこっちまで聞こえるが、あくまであれは平常運転なため、気にしなくていいだろう。
「な、なんか……初級中級受刑者達との扱いが180度くらい違うわね…………。なんていうか無秩序というか………自由すぎるというか………………」
「あっちが個性コントロールができるまでの隔離処置や不安定な精神状態な人達の治療などを主にしてるのに対して、こっちは片脚どころか両足ヴィラン行為に浸かった人達の更生を主目的としてますからね。普通に扱っていては更生はできませんし」
「女だ!!女がいるぞ!!!」
「これまではガチッガチッの男看守共ばっかだったからな!!たんまりと楽しませてもら─────グハッ!!」
「こういう風に実力行使をして、根本から心を折ることもできませんからね。ヴィラン更生はまず犯罪をしようとする心を容赦なく折ること!それが鉄則ですから」
「え、えげつない………。…………壁にめり込んでるけど生きてるの?これ?」
「ここの人達はこんなので死ぬほどやわじゃありませんし、頬っておけば5分ほどで復活します。最悪治療ウイルスを投与して、無理矢理傷を治すまでですしね。何度でも襲いかかるようなら何度でも心を折るだけですよ」
「………この極悪更生を考えた刀花さんは本当に何者?鬼?悪魔?外道?それともヴィラン?」
「「「それら全部を超えた化物」」」
「おおっ………受刑者と看守の心が一つになってる…………。……やっぱりあれは化物とかそういう類なんですね。私が見た綺麗な血影は幻覚ってところなんですね……そうですか…………」
「あの人のことを綺麗に見ようとするだけ無駄ですよ。やることなすこと外道過ぎて、頭痛くなってきますから。さぁさぁ、あなた達も喋ってないで早く牢屋から出て掃除始めて下さい。もう業務時間ですよ」
なにかが色々ショックらしく、少し暗い顔の黒江さんとともに寝ていたりサボったりしている受刑者達を叩き起こし、襲ってくる人達を適当にさばきながら業務をやらせていった。
時々来て1,2ヶ月の人が襲ってくることはあるもののさばき切れないことはないため、大して辛い業務内容ではない。となるとやはり………一番の難関となるのは…………
「一角君、早く起きて業務を始めてください。もう朝ですよ」
「…………おうっ、わかったよ」
昨日辺りに護送され、うちに新たに来た一角君は静かにこちらを睨みつつ、大人しく掃除を始めた。
その後は事前に準備してあった朝食を配膳し、外回りに出ていた他のヒーローと看守を交代した後、更生後受刑者達の受け入れ先となる会社の一つであるMIPデックスに10数人ほどの受刑者を護送した。
MIPデックスは更生した受刑者受け入れのため設立したサポートアイテム会社の一つであり、会社職員の6割が元受刑者で構成させれている会社で、うちで使われているサポートアイテムの多くもここから受注している。
元受刑者が多いということもあって受刑者達への対応も完璧であり、福利厚生も………給料が多少安く、全体的に荒っぽいということ以外は完璧だ。
民間への個性コントロール用アイテムの販売も行っているということもあり、個性が暴走してしまい、一時的に保護された子供などもちらほら見かけることもできるのが特徴の一つだ。
そんな子供達にキックをされながら、相澤先生より酷い生活習慣をしている社長券技術長、【解原 栄一】さんが連れて来た受刑者達を引き取りに来た。
いつも通り目元のくまを擦り、ロン毛をフラフラと揺らしながら受刑者達に話しかける。
「どうもお疲れね皆さん……。今日も楽しい楽しいアイテム開発のお手伝いをありがとう………。………おやっ?そこの一本角さんと会うのは始めてか。どうも、ここの社長をやらせてもらってる解原だ。これから数年の間よろしね」
「………なんでもいいんで、早く仕事やりませんか?俺、人と関わんのとかあんま好きじゃないんで、早く一人になりたいんすけど」
「なんだとてめぇ!?解原さんに頭下げねぇとはどういうつもりだ!?さっさと頭を下げろ!!頭を!!」
「そんな怒らなくてもいいから爆炎刃君………。………君のことは今朝爪牙から聞いてるし、事情もある程度聞かせてもらったから。仕事をさえちゃんとしてくれればこっちも何も言うつもりもないし、介入するつもりもないからさ……………。そこんとこは………安心してね…………」
「………ウッス」
「それじゃあ早く皆仕事場に行こうか………。結構危ないものもあるし、勝手にあんま触らないようにしてね…………。…………神速君、それは開発に失敗した空間転移プロモーターの残骸だから触ったら危ないよ。爆炎刃君のフードに入れようなんてこと………考えちゃ駄目だからね…………」
「てめぇ何勝手に入れようとしてんだ!?危ねぇだ──────イテテテテテッ!!!!!」
「ハハハッ!触ったら危ないって言われたのに直接触るだなんてやっぱ爆炎刃はバカだね!!ヤバい!ウケるわこれ!!」
「て、てめぇ何を他人事と思っ────イタイイタイイタイ!!!!!江頭こいつ引っ剥がすの手伝え!!ちょっと手を貸せ!!」
「嫌よ!!勝手に腕を掴まないで!!ちょっと鏡!!あんたが手を貸してあげなさいよ!!」
「うるせー俺の腕を掴むな!!さっさとお前も腕を離せ!!」
「じゃあみんな早く行くよ!!あの3人はどうせすぐ来るし、ほっといてみんな行こうね!!」
「「「おいこら!!お前が一番に手を貸せ!!!」」」
そんなちょっとした騒ぎを交えつつ、私達はこうしてMIPデックスの地下作業室へと足を進めた。
オリキャラ 人物説明
•爆炎刃 投球
個性 爆炎野球
手から炎のボールとバット、炎のグローブやシューズなど、野球に関わるものを手から出現させることができる。投げたボールを爆破させたり、バットやグローブを硬化させたりと結構万能。ただし、出現させた物は自身から一定距離離れると消滅してしまう。
罪状 ヴィランに対する過剰防衛、裁判所爆破
刑期 8年 追加刑期2年
男と書いて漢と読む熱血漢。11歳の頃、美容師のミスによってトサカヘアーへと散髪され、その髪型と真っ直ぐ過ぎる正義感から長年虐めと問題児というレッテルを貼られ続けたことから曲がったことはとことん嫌う。
15歳の時に初恋の相手がヴィランに襲われ、その子を守るために個性を使いヴィランを撃退したものの、その捕まったヴィランが多額の金を周囲に配り、自身のやった罪の全てが爆炎刃がやったということにされた結果、タルタロス送りの判決を受けてしまう。
誰も味方してくれず、納得のいかない懲役刑を受け、ヤケクソになった結果自身のいた裁判所を爆破、自身にあらぬ罪を被せたヴィランをヴィランとして殺そうとしたところを血影に捕まったものの、その後行われた裁判で血影が自身の言ったことを信じ、自身の無実を証明してくれたことであらぬ罪を被ることを免れた。
裁判所爆破の事で更生施設に入れられたものの、自身が目指していたヒーローまでの道を血影が示してくれた事で完全に改心、更生期間終了後フェンリル事務所に所属する為、ヒーローの勉強を死ぬ気でやっているのだが………煽り耐性の低さからよく公共物を爆破してしまい、怒られてしまっていることを影で頭を悩ませている。
•神速 俊雷
個性 神速
取り込んだ電気を体の神経に伝達、最高速度マッハ3の驚異的な速度を生み出すことができる。ただしその速さの分燃費悪く、自動車と同等速さなら100秒、最高速度ならば1秒ほどで体内の電気が空になってしまう。
罪状 違法個性ファイトへの参加、多数のヒーローへの公務執行妨害
刑期1年 追加刑期2年 執行猶予7年
物心がつく前に違法ファイトクラブに売られ、サンドバッグも同然の生活をしながら成長し個性が発現、生きる為ファイターとして死にかけながらも戦い続け結果無類の強さを持つようになる。
10歳の時クラブ解体され、ヒーロー達に逮捕される瞬間まで笑いながら戦い続け、多数のプロヒーローを戦闘不能にしたことから《笑う閃光》などという二つ名を持っている。
フェンリル事務所に入所した当時はひらがなすら書けず、ひたすらに戦おうとする有様ではあったものの、5年及ぶ教育と、薬物治療などによるメンタルケアにより、一定の水準の生活ができるようになった。
現在は執行猶予という名の保護を受けており、ヒーローになる為の勉強をしている。
また、爆炎刃のことはいい玩具として気に入っており、よくよく楽しそうにちょっかいを出しては問題を全て爆炎刃に擦り付けている(結局バレて共に怒られる)。
•江頭 葉子
個性 葉っぱ
光と水を用意することで自身の知るあらゆる植物の葉を創造、創造した葉を恐るべき速度で成長させることが出来る。創造し続けると酒を飲んだ時のような酔いに襲われ、最終的に酔っ払いように絡みながら泥酔、翌日必ず二日酔いに襲われる。
罪状 個性使用による違法薬物の栽培、海賊行為への加担
刑期8年 追加刑期2年
海賊(ワン○ースみたいな奴ではないマジの方)をしていた夫婦の間に産まれ、個性使用による薬物の栽培を幼い時から長らく強いられていた。
元々好戦的な性格ではなかったものの親に自分が殺さないようにする為に多数の貨物船などを襲撃、裏切られる形で16歳の時に自分だけ逮捕された。
自身の人生に絶望し、留置所での自殺を図ろうとしていたところを血影が確保、自身の生きる道が他にある事を示され、自身の意志で生きていくことを決心した。
個性使用によるメンタルケアを将来行う為勉強をしているのだが極度の酒好きであり、夜な夜な勉強をしていると見せかけてこっそり密造した酒を啜り、泥酔した結果よく怒られている。
•鏡 連
個性 鏡
自身の周囲5メートルの範囲に鏡を多数創造、幾度も光を反射させることでレーザーを繰り出したり、自身の周りに鏡を創造して一時的に姿を消したりすることができる。この鏡の創造及び維持には莫大な集中力が必要であり、少しでも集中力が乱されると鏡は消滅してしまう。
罪状 多数件に及ぶ強盗、多数件に及ぶ不法侵入、多数件に及ぶ器物破損
刑期6年 追加刑期4年
社長だった両親が6歳の頃に死亡、財産を巡り邪魔と思われた結果親族達に家を追い出され孤児となる。
その後は生きる為ゴミ箱を漁り、泥水を啜りながら盗みや路地裏で喧嘩をを繰り返すという幼少期を過ごし、逮捕される18歳の時までに合計3000点を超える物を盗み出した。
その後はフェンリル事務所の更生施設に入所、看守の鍵を盗み脱走しようとしたところをフェンリルに確保され、元々中級受刑者だったところを追加刑期と共に上級受刑者へとランクアップさせられた。
自由すぎる上級受刑者達に困惑しつつも自身が静か生活するために受刑者達の問題を解決、盗み以外にも自身にもできることがあると自覚したことで、更生した受刑者達が普通に生活することができる会社企業の勉強を誰にも見られない夜な夜なに密かにやっている。
上級受刑者達の共有スペースに置かれたテレビは彼専用であり、チアリースターのライブを見ることと引き換えに受刑者達の問題の解決を一手に引き受けている。