鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 なんでや………数日かけて………文字数も多くして…………考えに考えたのになんで!!中編ということになったんだWhy!?
 
 元々は1話で終えるつもりだったんです………。すぐ書き終える予定だったんです………。なのに書きたいことが多すぎて書ききれませんでしたすみません………。
 
 後編制作も時間がかかるかもしれませんが、気長にお待ち下さい。
 
 



31 自分がなりたいもの 中編

 

 

 

「血闘術1式………!!『D-101デリンジャー』…………!!!」

 

 体内で気を循環させた気を手に集中させ放った神速の一撃。その一撃の威力は凄まじく、直径1メートルの鉄塊を一撃で破壊した。

 

 ターゲットを切り替え、体内の気を再び手に集中させる。

 

「血闘術2式………!!『M9バヨネット』……………!!!」

 

 極限にまで研ぎ澄ました気を手に集中させ放った手刀。その威力は1式同様凄まじく、右中央に現れた鉄塊を真っ二つにした。

 

 背後数10メートル先に出されたターゲットを嗅覚で察知し、足に気を集中させ、一気に跳躍してターゲットの俄然にへと接近する。

 

「血闘術3式………!!『SAMスティンガー』……………!!!」

 

 勢いをつけた蹴りが最後のターゲットを大きく吹き飛ばすとともに、跡形もなく破壊した。

 

 制限時間を示すアラートとともに、全ターゲットを破壊した俺は力を抜き、ヘナヘナとその場に座り込んだ。

 

「1、2、3式の動き事態は掴めてきたようだな。まだまだ気のエネルギー配分が甘いし、エネルギー配分が甘い事でくる疲労が大きすぎるせいでまだ実践に出せるようなもんじゃないが、型式を初めて使ったにしては上出来だろう」

 

「90回以上死線を超えかけてもまだまだ実践に出せないって………父さんと母さんは毎日どんな特訓をしてるんだよ…………。一体………何を考えたらこんな馬鹿げた技を思いつくのか………わが親ながら恐ろしすぎるよ………本当に…………」

 

「えっ知りたいか?俺達がどんな特訓をしているのか?」

 

「いいや知りたくない………。間違いなくトラウマ植え付けられるだろうから絶対に知りたくない…………」

 

「まぁそんな心配せずともいつかはやらせるから安心しろ。刀花の方はやらせる気満々だったし、上手く行けば職場体験中にできると思うぞ。よかったな、そんなにやりたがっていた特訓がやれてな」

 

「冗談抜きで何も良くないからね?あんたは俺を本気で殺す気ですか?俺を本当にあの世送りにするつもりですか?」

 

「まぁとりあえずあの世行きの一歩手前にはするつもりだ。行きかけたとしても、無理矢理こっちに戻してやるから安心して死んでこい」

 

 …………笑顔でそんな事言うとは………我が父ながら恐ろしすぎる。…………本当にこの人達はヒーローなんだよな?大魔王とか大悪魔とかの人外じゃないの?えっなに?俺は一体何されるの?

 

 あまりの恐怖に残像を作る勢いで震えながら、俺は手渡されたアクセリンをヤケクソで思いっきりラッパ飲みした。

 

 空になったアクセリンのペットボトルを片手で弄りつつ、俺はなんとなくヒミコのことを顔を思い出す。

 

「…………なんだ、そんな寂しそうな顔をして?もしや、ヒミコのことを考えていたのか?」 

 

 何故か少しニヤニヤした顔で、父さんはこちらを覗き見た。なんで突然ニヤニヤしだしたのこの人?と思いつつ言葉を返す。

 

「俺はただあいつのやらかしで胃を傷めないか心配なだけ。そんな気にしてるわけでもないっての」

 

「個性による発作もほとんど見られなくなったし、そこらへんは大して気にしなくてもいいとは思うがな。最近は特に問題を起こしてもいないんだろ?」

 

「やたら俺の腕を噛んでくることはあるけどね………。他の奴の血にはあんま反応しなくなってのに………なんで俺への噛み癖は直さないんだが…………」

 

「それは大方、お前へのスキンシップってやつだとは思うがな。それだけお前が好きって事だろ?」

 

「とりあえず、俺が好きってのはナイナイナイ。あれはただ俺の血を飲みたいってだけで、好き嫌いの問題は別だろ。あれにとって、俺はたまに飲みたくなるジュースぐらいの感覚なんだろうよ」 

  

「それはだな………過小評価がすぎるというか………あまりにあいつが不憫というか………なんというか…………」

 

 何故か頭を抱えた父さんをよそに、俺は弄っていたペットボトルをゴミ箱の中に放り込んだ。

 

 父さんと母さんはたまに変な事を言い出したと思ったら、急に頭を抱えだす。傍若無人、暴虐の権化という言葉を地でいく化け物二人がなに頭を抱えてるだかわけがわからん。

 

「まぁとりあえずこの話題は一旦置いておこう。この鈍感アホ息子一体どうするべきか………

 

「んっ?なんか言った?」

 

「別に、なんでもないよ。それはそうと、お前がランニング帰りヒミコを連れ帰ってきた時はほんと驚いたな。夜中に女の子連れてきただけでも大騒ぎだってに、お前の場合は体のあちこちに大量の歯型を作ってたからな。たしか、こっちに連れてくるまでに歯型を20個ぐらいつけられたんだっけ?」

 

「正確には68個………。警察に連れていくと思ったらしくあちこち噛まれて……………それを落ち着かせるために更に噛まれて…………お腹すいたから更に更に噛まれてを何度も何度も繰り返してさ…………。あの日ばかりは自分の血が多い体質を呪ったよ………………」

 

「刀花同様血が普通の人間より多くて死ににくいくい分、血を求める個性を持つ相手にとって、お前は格好の餌みたいなもんだからな。まぁ、それがあいつの心を開く鍵になって、今の明るい性格になったんだからいいじゃないか。結果オーライと言うやつだ、結果オーライ」

 

「その分俺が何度も何度も貧血で死にかけたわけだけどね…………。……………逆に言えば俺以外が会えば殺されていたし、会った相手が俺で運がよかったんだろうけどさ。………大体あいつの親も親だよ。あいつのこれから処遇について伝えに言った際

 

 

 

『血液を摂取する何ていうヴィラン向けの個性を持ってる上、前科持ちの子供なんて私達の娘じゃありません。そんなヴィラン同然の子、もういりません』

 

『いつか……事件を起こすんじゃないかって思っていたんだ。これを機に、お前との縁を切れてせいせいしたよ。…………お前なんか……産まれてこなければよかったんだ』

  

 

 

だなんて言いやがったんあのクソ野郎共………!!ああくっそ!!思い出しただけでも腸が煮えたぎる!!個性だなんてもんはあくまで文字通り人が持つ個性、つまりは特徴なだけで、それを極度に抑圧する必要なんてないんだよクソが!!そんな事言いだしたら全人類全てがヴィラン!!全人類全てが犯罪者!!全人類全てが悪!!だなんていうクソみたいな結論に至っちまうだろあのアホが!!中学校入りたてのガキでもわかることを何故40代はとうに超えてる爺婆は理解しない!?!?テメーらがクソみたいなレッテル張った結果!!ヴィランという名の被害者が量産され!!!最終的に本当のヴィランに成り果てる!!!!

  

 

 

 

 

 

 ヴィラン作り出してるのはそんなどうでもいいことをああだこうだ言い合っているお・前・等・だ・ろ・う・が!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「………狼、気持ちは痛いほどわかるが一旦落ち着け。苛ついていても、こればかりはどうすることもできない。苛ついていては、何も変えることができないからな」

 

 話してくうちに世間への怒りがいつの間にか爆発していた俺は怒りを隠そうとする素振りを見せず、八つ当たりとばかりについ先程破壊したターゲットの残骸を思いっきり踏み潰した。

 

 どこぞマスゴミはニュースやらなんやらで『ヴィランになった理由とは』だとかくだらないことを日夜取り上げているが、俺から言わせてみればその理由は明白、お前等のクソ報道が原因で差別やらなんやらが拡大しているからだ。

 

 元々の個性の語源はあくまで特徴。

 

 それが変わったのは個性の母と呼ばれる初の個性を持つ子を産んだ女性の声が発端として、個性のあるもの、個性のないものでの差別意識が生まれてしまったことに起因している。

 

 

 

『この子が自由に生きれる世の中を』

 

 

 

 ただ純粋に子供の自由を求めた優しい願いは形骸化し、個性とは力、個性とは暴力、個性とは人の在り方というネジ曲がった意味を持つものにへと成り下がった。

 

 ………その後引き起こされたデストロによる暴力での権利の獲得は間違ってこそいるが考えそのものに一切の間違いはない。当たり前に普通を過ごしたいというのは誰もが持つ普通の考えだからだ。

 

 その普通という社会の指針を作っておきながらメディアはそのものの人格やそのものが持つ世間的に危険と呼ばれる個性そのものを批判し、それを当たり前かのように振る舞っている。

 

 そしてその普通という指針を世の中に提示し、社会に奉仕するものであったはずのヒーローそのものもまた形骸化、力と利益、名声のみを追い求める存在に成り下がった。

 

 …………一体何がヒーローで何がヴィランなのか、一体何が普通で何が異常なのか、これではわかったものではない。普通そのものが人を傷つけるならそんなものは普通でも何でもない。ただ、普通という名の暴力を誰かにぶつけているだけだ。

 

「…………個性社会が始まってから早数十年、ヴィランとはヒーローが助けられなかった者であるのにも関わらず、誰もがヴィランもまた人間であった事を忘れ、ヴィランが普通を求めることを拒絶する。………その拒絶によって人間だったヴィランが人間をやめ、自分の存在を証明することだけを求め、超えてはならない一線を超えた化物になってしまっているにも関わらずにな」

 

「ヴィランそのものが悪ではなく、ヴィランを生み出す拒絶そのものが悪だってのに、なんで誰もそれをわかるとしないんだか…………」

 

「それを真に理解してヴィランの更生をうち以外でやってるのは、俺の義母であるプリティーラブリーマンに鳴羽田の元ヴィジランテである苦労マンとかの限られた人間だけだからな。ああくっそ、公安委員会のクソババアさえいなければ事務所増してもっと多くの奴を更生できるってのに邪魔しやがって………。…………この際、直接公安委員会に殴り込みに行くか?」

 

「気持ちはわかるけど流石にそれは駄目だって。そんなことしたら国からマークされて余計やりにくくなるでしょ」

 

「いざとなればやるが、流石に国に喧嘩売るほど俺もそう馬鹿じゃない。そんな馬鹿げたことをやるのは緊急時だけだよ」

 

 逆に緊急時だったらやるのか……と半場呆れつつ、頭をかいてどうしたものかと考えている父さんを見た。 

 

 俺が生まれる数十年前から始まったヴィランの更生という難業の日本での歴史は、世界的に見てもかなり浅い。

 

 世界ではある程度盛んに行われている更生が何故、日本ではあまり盛んではないのか?………その原因と考えられる理由は他でもない、オールマイトという平和の象徴が日本にいるせいと言えるだろう。

 

 彼のヴィランを笑顔で倒す姿は人々にヴィランを許してはならないものという歪んだ思想を植え付け、オールマイトがいれば大丈夫であるという歪んだ考えをヒーロー達に植え付けてしまった。

 

 彼がいなければ日本がここまで平和を保つことは不可能であったし、それで多くの人命が救われたことにも変わりはないし、彼のヒーロー活動を否定する気もさらさらもない。だが、それが皮肉にも数多のヴィランという名の被害者を産み、日本のヒーロー達の弱体化を促進させてしまったということも変わりはないのだ。

  

 ………ただ目の前にあるものを救うだけじゃ全部は救えない。日の影で泣き叫ぶ誰かの手を掴むことは出来ない。ただ待ってるだけじゃ…………全部を失うことになる。

 

 俺達は全てを救う真のヒーローにならなくてはならない。何にも負けぬ意志を持ち、何にも負けぬ力を持ち、全てに手を伸ばすことができるヒーローにならなくてはならないのだ。

 

 俺は顔を表情を絞め直し、深く落していた腰を上げた。

  

「なんだ?もう休憩は終わりでいいのか?」

 

「もう十分休めたから大丈夫。そんなことより早く型式の特訓をやろう。あと1時間もすれば仕事に戻らないとだから時間もないしね」

 

「………下手に自分を追い込み過ぎれば体全体にダメージが入って動くどころじゃなくなる。そんな追い込みすぎることないんじゃないのか?」

 

「いいや、そんぐらい追い込まないと俺はこれから先やっていけない。ヒミコだってこれから先強くなるし、出久とかも間違いなく強くなってくる。………俺が勝ち続けるためには、自分の体なんか気にしてる暇はないんだ。だから頼む………力を貸してくれ」

 

 自分の親である父さんに対して、俺は深く頭を下げてそう言ってた。

 

 強くあり続けなければならない以上、プライドなんてくだらないことを気にしてる暇はない。あいつ等が更に強くなっていくならば、俺は更にその上に行かなくてはならない。力を手に入れられるなら、俺はどんな痛みでも耐え抜いてみせる。………そうあらねばならないのだから。

 

 俺のそんな感情を察したのか苦笑いをしつつ、父さんは俺の頭に手を置いた。

 

「わかったからとりあえずその下げた頭を上げろ。お前がどんな道を行こうと俺達はお前を信じているし、その道を信じ続ける。だが、自分を顧みない行動や言動だけはどうしても看過できない。そして何より、戦いの場で最も重要なことはどんな手を使ってでも必ず帰還することだ。どんなに強かろうと帰ることができなければそれまでだし、全てを守るなんてことは夢のまた夢だ。強くありたいのならばまずは自分の事を大切にな。でなければ……大切な者を……守ることもできないからな」

 

「………わかってる。もう……失うのは御免だ」

 

「わかっているのならそれでいい。じゃあまずは気を察知、そしてそれを循環させ動かすことからだ。そして次に──────」

 

 父さんの指導の元、俺は再び特訓を再開した。

 

 もう何も失うわけにはいかない。もう何にでも負けるわけにもいかない。あの日失った者達のため、俺ができることはそれだけなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

             ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「ほーら一角君!!またここの配線間違っている!!ここはA端子とD端子を繋ぐって言ってるでしょ!!これで18回目ですよ!!18回目!!」

 

「煩いな………一人でやるって言ってんだろうがクソが………。大体あの社長は何も言うつもりもないし、介入するつもないって言ってたろ。なのになんで看守であるお前が、俺に付きっきりで一緒に端子のはんだ付けやってんだ?一人でやらせろって言ったろ……一人でって…………」

 

「解原さんは仕事をちゃんとやってくれればって言ったんです。2度や3度ならともかく、そう何度も間違われてはこっちも介入せざるもえないですよ。わからないならちゃんと教えますから、ちゃんと私を頼ってくださいよ。一人で何でも出来るわけでもないんですし、こういうのは助け合いでしょ?」

 

「2回も腕を噛んで血を吸おうとした奴を信用できるか。助け合いのどうこうの前に俺はお前に対しての信用が一切ないんだよ。そこを考えてものを言ってくれ」

 

「うっ………それは本当に申し訳ありません…………。いつも狼がいたり人工血液があるので問題ないのですが今はどちらも切らしていたので………つい欲求が勝ってしまいました………。本当に申し訳ありません…………」

 

「よだれ垂らしそうな顔でそんなこと言われちゃあ説得力の欠片もないわ。ああもう一人でやるからトサカヤンキーの方にでもさっさと行け。邪魔なんだよさっきから」

 

「そうしたいですけど一角君………これまた配線間違えてますよ。あと、こことあそこの配線も」

 

「そ、それもたまたまだ!!さっさとあっちに行け!!」

 

 頑なに一人になろうとする一角さんの手を避けつつ、私はどうしたものかと顎を手に乗せた。

 

 解原さんが案内してくれた地下作業室の一室で、私は一角君と共に計器などに組み込まれる回路の製作作業を行っていた。

 

 何故看守までもが作業を?などと思われるかもしれないが、あくまでヒーローの本分は人助け であり、その為に役立つ技術はいくらでもある。なので看守も受刑者と共に学び、仕事を覚え、実行していけるようにするというのが通例だ。

 

 新人である一角君もこういった通例を受けた上で仕事をやっていくはずなのだが、どうも彼は人の話を聞こうとしない。というより、人と接するのを避けているのかもしれない。

 

 そんな彼とどう接したらいいかわからず、ただ静かに時間が過ぎていっている………。本当にどうしたらいいんでしょう…………。

 

「お疲れ様ねヒミコちゃん。金銀君の相手、ご苦労様。これ、差し入れお菓子何だけど食べる?」

 

 私がそんなことを考えていると、はんだ付けを終え、のびのびとしている受刑者達とともに黒江さんがお菓子を持って来た。チョコを口に入れ、私は言葉を返す。

 

「はんだ付けなんて黒江さんやったことなかったはずですけど大丈夫でしたか?火傷とかしてませんか?」

 

「ああ……火傷ならちょっとだけしたね………ちょっとだけ………。まさか看守もはんだ付けの作業やると思ってなかったし………受刑者達の方が何倍もうまいし早いから驚いちゃった………。最後の方は私が逆に教えてもらったくらいで情けないわ……本当に………」

 

「初めてにしてはお姉さんうまかったと思うけどね。遅いって言っても爆炎刃よりは全然早かったんだし、気にすることない!!ない!!ない!!!」

 

「てめぇ誰が一番遅いだと!?一番早く終わってたのは俺じゃくそったれ!!!お前が蜘蛛とかいうゲデモノ投げつけてなきゃ回路は壊れてなかったし!!俺が一からやり直し事もなかったんだぞ!!!てめぇ次やったらマジでブチ殺すからな!?本当にブチ殺すからな!?わかったか!?!?」

 

「全然わかってない!!だって爆炎刃、君僕に一度も攻撃当てたことないじゃん。そんな君が僕を殺すだなんて笑わせないでよ!!そもそも当てることすらできないじゃん!!!」

 

「この野郎!!!こうなったら特大の爆炎球で───」

 

「やめろアホ!!ここでそんなもん使ったら全員生き埋めだ!!神速もいい加減その台から降りてこい!!なんか苛つくんだよ!!お前が上から目線やってると!!!」

 

「嫌だよ。絶対に。だってそれじゃあつまんないじゃん。鏡もほら!!もっとノリよくいかなきゃモテないよ!!爆炎刃みたくモテなくていいの?」

 

「俺にはチアリースターがいるから───ってあっ!!!お前その手に持ってるのは俺の限定チアリースターブロマイドじゃねーか!!!!テメェどこから持ち出してきやがった!?!?!?」

 

「元大盗賊のくせに、鏡は宝物の管理がガバガバなんだもん。こんなの盗んでって言ってるようなもんじゃん。それで?ノリはよくなってくれた?」

 

「超乱反射!!!大口径レー────」

 

「馬鹿やめなさい!!それこそ使ったら全員生き埋めどころの騒ぎじゃないでしょ!!!」

 

「放せ!!俺から今直ぐ手を離せ!!!」

 

「放したらお前絶対に大口径レーザー打つだろ!?後で取り返してやるから今は落ち着け!!!」

 

「放せ!!!汚いその手をチアリースターから放せ!!!!!」

 

 葉子さんと投球君が連君を抑えてる間に、俊雷君が少し遠くの台から思いっきり他の受刑者を煽ったことで、工場では最早恒例行事である乱闘騒ぎが発生した。

 

 作り終えた回路提出して、工場壊れない範囲で個性を使っているあたり、皆さん根は真面目なんですけどね。皆さん好戦的すぎるというか、俊雷君の煽りスキルが高いというか何というか………。

 

 この騒ぎを初めて見る黒江さんは口をまた大きく開けて唖然となっているが、工場のドアの向こうでは休憩時間を利用して、数人の職員が試合を見るかのように飲み物と昼食を片手に事の成り行きを見守っている。

 

 ………ほんと、ここの受刑者達も職員達も皆自由すぎるというか破天荒すぎです。唯一の常識人であるはずの黒江さんが哀れというか何というか………とにかく可愛そうです。ほらそこ。受刑者達の喧嘩の勝ち負けで賭けをするのはやめて下さい。

 

「あらあら………今日もいつも通りみんな仕事をしっかりやってハッスル中だね………。今日はとりあえずMIPデックスでの仕事はこれで終わりだから………みんなお疲れ様………」

 

「か、解原さん!?何でこんなところに!?」

 

「そんな震えなくても大丈夫だから黒江さん………。もっとフランクリーにやってくれて大丈夫だよ………。あっ、そうそう………。僕がここに来たのはつい先程、病と記田が来てくれたっていうことを君達に伝えるためだよ…………。レポートの方を書いて………提出の方をよろしくね…………」

 

「うわっ………初級中級受刑者の倍の量の記入欄…………。予想はしてたけど流石にここら辺もハードね………。私………ほんとにやってけれるかしら?」

 

「まぁそう言わず………少しずつ慣れていってくれれば大丈夫だよ………。ああそれと……自由には遅くはなったけど一角君のレポートだよ…………。それで実際………彼と接してみてどうだった?何か気になった点とかはあるかい………?」

 

「………彼、頑なに人との関わりを避けてるとは思います。はんだ付けの工程についての説明も一人距離を空けて聞いていましたし、他の受刑者や黒江さんが話しかけても全く口を開こうとしないんです。作業のミスについての説明は流石に聞いてくれましたが、それでもやはり私を遠ざけていました。あそこまでいくとやはり、人見知りどうこうの問題とかではないかと」

 

「彼は少し逮捕歴が特殊でね…………少し人と接することにトラウマを覚えているんだ………。少しずつ………距離を近づけていくしかないか………」

 

「…………上級受刑者達の殆どがなし崩しでここに来たように、13歳の彼もまた、なし崩しの理由で来たということですか?」

 

「見たのかい………?ここの受刑者達のレポートを全て………?」

 

「はいっ………どれも言葉にしにくい感想を覚えましたが…………」

 

「ここにいる受刑者達の殆どはヒーロー社会の闇に人生をめちゃくちゃにされた被害者であり………真に悪意を持ったヴィランなんていないんだ………。彼も逮捕歴も特殊なだけで………真に悪意を持ってヴィラン行為と呼ばれることをやったわけではない。…………できることならそこを理解した上で………彼と接し」

 

 

 

「やめろ!!!!俺の角に触れるな!!!!!」

 

 

 

 

 私達が話している最中、一角君が叫び、膝をついてうめき出した。

 

 彼の角を触ったとみられる俊雷君も悪意があったわけではないらしく、彼の叫びにあたふたしている。

 

「ご、ごめん。そんな嫌がると思っていなくて………」

 

「嫌だ………また折られるのだけは…………また傷つけられるのは…………またゴミみたいに扱われるのは嫌だ…………」

 

「えっと、大丈夫?もしかして怪我とか───」

 

「俊雷君!!今直ぐ一角君から離れて!!!」

  

 

   

  

 

  

  

  

「誰も俺に………近づくな………!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

  一角君の頭部に生えている黄金の角が彼の苦しそうな声とともに光だし、黄金色のエネルギーを一気に放出した。

 

 私の声に反応した俊雷君や他の受刑者達はとっさに物陰に隠れたため怪我はなそうだが地面という地面がえぐれ、機械という機械が無惨な鉄屑へとみるみるうちに変貌していく。

 

「凄まじいエネルギー波………!!解原さん!!これが彼の個性なんですか!?」

 

「ああそうだ………!!彼の個性は『金幻角』………!!あの角から黄金状のエネルギーを放出し………そのエネルギーを自由自在に操ることができる………!!…………今は正気を失ってるみたいだからエネルギーを操れていないみたいだけど………大量放出されたエネルギーに一発でも当たれば即死だ!!そしてもう一つの特性として………」

 

「ちょっとヒミコちゃん!?どこ行くのよ!!」

 

 解原さんと黒江さんの静止を振り切り、私は暴走する一角君の元までひた走った。当たれば即死のエネルギーをどうにか躱し、一角君の眼前にまで接近する。

 

「一角君落ち着いて下さい!!ここには誰もあなたを攻撃しようとする人なんていません!!正気を取り戻して下さい!!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 うめき苦しむ一角君の体に放たれていたエネルギーの光が集まり、一角君が胸部の中央に配置された巨大な金色の鎧が現れた。鎧の拳をすんでのところで避けたものの、手榴弾程度の爆破を防ぐ強化シャッターの中央に大穴が空いた。これも間違いなく当たったら即死だろう。

 

「一角君の放つエネルギーは彼の裁量によってエネルギー状にも合金並みの強度を持つ固体にも形を変える…………!!その上、彼が作り出した個体上の物に体が少しでもかすったら痺れて動けなくなるんだ…………!!!」

 

「つまり、少しでも当たったら終わりってわけですね!!ですが、当たったら終わりの攻撃は散々いつも喰らっているんです!!そう簡単に当たるものですか!!!」

 

「ヒミコちゃんこの麻酔薬を彼に打ち込んで!!彼専用に配合した特別性だから即効性が早いはずよ!!これなら多分彼を止められるわ!!」

 

 影に潜り移動していた黒江さんから麻酔薬を投げ渡され、私は暴れまわる彼の攻撃を躱しながら本体にいる鎧中央にへと向かった。

 

 暴走しているということもあって個性の操作が上手くいっていないのか、近ずくにつれ攻撃の頻度は遅まり、私は彼の首元に手を掛けることができた。このまま麻酔を────

  

 

 

「どう゛し゛て…………どうして角を゛折る゛の…………?どうして゛………?俺が普通じゃな゛い゛がら…………?」

 

 

 

 突如発した彼の言葉に私は動きを止め、麻酔を打つ手の力を弱めてしまった。私が迷っている間にも彼は言葉を紡ぎ続ける。

 

「嫌だ………あ゛の゛暗い部屋にい゛るの゛は……………一人で入る゛のは……………痛み゛を堪え続ける゛のは゛嫌だ……………。ヒーローが助けて゛くれるん゛じゃな゛いの…………?どうして゛だれ゛も゛助゛けてく゛れな゛いの゛……………?俺が普通じゃ゛ない゛から゛………………?どう゛し゛て……………?どうし゛て…………………!?」

 

 どこまでも苦しそうに彼はうめき、悲しそうな表情を浮かべ続けた。

 

 

 

 

  

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうして普通にできないのよ!?!?どうしてなのよ!!!!』

 

『そう怒るな母さん。最初からこいつになんて期待していない、普通にすることができない異常者に何を言っても無駄だ。騒ぐだけ無駄だろう』

 

『私だってあんな子ならいらなかったわよ…………。あんな普通でいられない子………いない方がよかったわよ………。あんな異常者…………いない方が良かったんだわ………!!!』 

 

  

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  あの人達のことが思い出され、私は完全に麻酔を打つ手を止めてしまった。

 

 駄目だ………私にはこの子を傷つけることはできない………。痛みを知り………それを耐え続け………助けを求め続けるこの子を傷つけることは…………できない…………。私は──────

 

「ヒミコちゃん危ない……………!!」 

 

 解原さんの声でハッとなった時には鎧の手は眼前にまで迫り、私を押しつぶさんとしていた。

 

 咄嗟に反応して攻撃は躱したものの鎧の装飾が体をかすり、私は全身の痺れとともに地面へと墜落した。

 

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛!!!!!!!」

 

 絶えずうめき苦しむ彼の腕が迫り、私が吹き飛ばされようとする直前、何が割って入り、その攻撃が私に届くことはなかった。

 

 目を開けてみるとそこには投球君が炎のグローブとジャケットで攻撃を受け止め、葉子さんが蔦で、連君が鏡で一角君の動きを封じている姿があった。

 

「来て早々に罪が増えるなんてたまったもんじゃねーからな…………。これは一個借りだからな………新入………!!」

 

「何があったかは知らないけど………少しおいたが過ぎたみたいね………。少し眠ってもらうわよ………!!」

 

「新入りの看守!!さっさとこいつに麻酔打ち込め!!そう長くは保たねーぞ!!」

 

「わかっています!!今打ち込みます!!」 

 

 私の落とした麻酔薬を回収した黒江さんは一角のいる鎧中央にしがみつき、彼の首元に麻酔薬を打ち込んだ。

 

 黒江さんの言っていた通り麻酔は直ぐ効果を発揮され、一角君は少しクラっとした素振りを見せた後、鎧から排出される形で地面に倒れ込んだ。

 

 金色の鎧が光となって消えていき、光が一角君の角に全て吸収されていく。

 

「ヒミコちゃん大丈夫!?怪我はの方はない!?」

 

「あっ、はい………。一応は…………」

 

「新入りが倒れた!早く担架呼んで救護室に運べ!少しでも怪我した奴もさっさと行け!!」

 

「新入りの子の脈拍ともに以上はなし………。一応は大丈夫みたいね」

 

「そこ何をボサッとしてやがる!?ボサッとしてねぇでさっさと被害状況の確認だ!!急げ!!」

 

 

「「「は、はい!!」」」

 

 

 私がボヤッとしてる間にも被害状況の確認と片付けは進み、私は黒江さんに付き添われる形で救護室連れて行かれた。

 

 ………彼に対して何もできなかった。その感情だけが私の中に残り続け、その日の職場体験は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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