よしっ!!ようやく書き終えられた!!文字数ギリギリだったけどなんとか終わったぞやったぜ!!
ヒミコちゃん覚醒回は元々1話で終わらせる予定だったのですが何故か3話構成となり、どの回も文字数が多くなりました。
まぁ、その分掘り下げが出来ましたし、熊としても満足出来たので結果オーライというやつです。結果オーライ。
よし、これから期末テスト編の作成を………えっ?ステイン戦がまだあるの?…………嘘だと言ってよバーニィ。
※注意 今回はマスコミの扱いが酷く、読んでる方の中に不快となってしまうかもしれません。これはあくまでフィクションであり、個人を攻めるという考えは一切ございません。マスコミ関係者の皆様、本当にすいません!!!!!
「…………一角君の個性因子は安定、エネルギーの過剰の放出も収まったからひとまずはこれで大丈夫ね。黒江さん、もうデータ取り終えていいわよ。ごめんね、こんな夜遅くに仕事させちゃって」
「私の担当でしたし……これぐらいは大丈夫ですよ………」
「そうは言ってもさ、個性因子のデータ測定に関しては人手がどうしてもいるからって無理矢理手伝わせてあんたの時間を無駄に使わせちゃったわけだし、こんぐらいはちゃんと誤っとかないとこっちも申し訳ないのよ。残業代の方はちゃんと振り込んでおくからそこんところは安心しといてね」
「病、一角の脳波データ取れたけどこのデータファイルはどこに送っておけばいい?制御装置開発ファイル?受刑者データファイル?それとも病の個人ファイル?」
「受刑者と個人の方にはとりあえずデータ送っといて。開発ファイルの方はだけど………………。………………解原、このデータ送っといたほうがいい?」
「個性因子の分裂が過剰に行われてるわけだからまずはそれを抑制、そして次に問題となるのはやはり個性因子の過剰エネルギー生成条件だな………。………デヴィットの方にデータを転送してとりあえず意見を送ってもらうとして、私の見解についてまとめなければやはりだめか。ニューテージ博士のザルデット理論から考察した個性発展論、氏子達磨博士の個性終末論の見解、サウザーデル博士の個性因子発生理論のどれから詰めていくか悩みどころだな……………。いやしかし、ここはひとまず私独自の理論の観点から──────」
「………やっぱり駄目だ。あと8時間は話しかけても無駄ね、あれは」
「まぁとりあえず解原の方にもデータは送っておくよ。黒江さん、コーヒー入れるんだけどミルクと砂糖いる?」
「あっはい………。どちらもお願いします…………」
「どうしたのよ、そんなテンションだだ下がりで。もしかして、夜はテンション上がらないタイプ?」
「だって………フェンリル事務所初期メンバーの上層部の中に新参の私が何故かいるんですよ………?震えないわけないじゃないですか……………」
そう苦笑いするとともに、改めてなんでこうなったんだろうと私は思わず天井を見上げた。
眠らされた一角君と攻撃を喰ったヒミコちゃんを救護室を連れて来た成り行きで、私は一角君の検査の手伝いをすることとなり、何故かフェンリル事務所初期メンバーであり、救護統括である【病 操佳】さん、学術統括である【荒記 光良】さん、そしてこのMIPデックス社長で技術統括をしている解原 栄一さんという錚々たるメンバーの中に放り出されることとなった。
本人達はそんな震えることか?などと言っているが、普通自分が務めている場所の古株、それも重役と共に仕事をやるのなれば自身にかかる緊張の度合いは通常の比ではない。
なんでこんなことになったの………?私………悪いことでもした………?なんでこんな小心者に全く似合わないことばかり起こるんだろう…………ここは………。ほんと……私の胃にはあと何個穴が空くの………?
「悪い、少し遅れた」
「皆さんお疲れ様です。これ、差し入れのどら焼きなのでよかったら」
私が空を仰ぎ真っ白になっていると、少し小走りをして息を切らせている爪牙さんと看守統括をしている鉄田さんがやってきた。コーヒーを中央のテーブルに置き、荒記さんが口を開く。
「よしっ、これでようやく全員揃ったな。じゃあ、これからの受刑者達の方針について、今日も話し合っていくか。つっても、まずは金銀君をこれからどういうふうに扱っていくかについて話さないと駄目だがな」
「金銀君をどういうふうに扱っていくか…………ですか?」
「ああそうだ。解原が少し言っていたと思うが彼の逮捕歴は特殊でね。病、彼のデータをプロジェクターに」
「了解」
爪牙さんと鉄田さんが椅子に腰を掛けるとともに部屋は少し暗くなり、中央のプロジェクターに金銀君のデータが浮かび上がった。ここに来て見えてきた社会の闇の一つに、私は表情を強張らせる。
「改めて彼の経歴の確認だ。金銀一角13歳、罪状は個性暴走による30件に及ぶ建築物の破壊、5名の重症者、17名の中症者、16名の軽症者を出したことだ」
「そしてこれは世間一般的に公開されていない情報だけど、彼は8歳頃、借金に追われた親によってIGBサービス、いわゆる人身売買組織に売られ、長らく見世物としての人生を過ごしてきた。そしてこの個性暴走事件を起こした際………彼は四肢を切断させれかけたみたいなの…………」
「四肢を………切断…………」
「彼の金の角にはレアメタルが含まれている上、その角は切られても1ヶ月ほどで生え変わる。あのゴミ屑共にとって、資金源となる角さえ取れれば四肢など逃げる要因にしかならない邪魔な物だったんだろな。………彼の記憶を覗き見たが、その惨状は酷いものだったよ。共に牢にいた仲間が次の日起きればいなくなっているという恐怖、自らを化け物と呼び蔑む者達の絶え間ない声、そして四肢を切られまいと逃げる彼を抑え鋸を構える奴らの目……………あの子の精神が崩壊しなかっただけ奇跡と呼べるものだ」
「彼の角を調べた結果、彼の角には神経、つまり痛覚ある上、少なくとも50は超える切断痕の痕跡があったわ。つまり角を折れる時の痛みは通常の人間が骨を折った時の痛みと同等………考えたくもないわね……………」
彼の悲惨な過去を話した荒記さんと病さんの表情は暗く、少しばかり手が震えていた。私も話を聞いて起こった怒りで手を震わせずにはいられない。
「元々彼はエネルギーを発することはできなかったみたいだが、恐らく四肢を切られる時に感じた恐怖と怒りで個性が覚醒、今のエネルギーを操る性質を得たようだな。そしてその後は大方察しの通り、監禁されていた施設とその関係者を攻撃して施設から脱出、住宅街で暴れてところをヒーローによって確保され、留置所に運ばれたっていうのが彼の経歴だ。そして彼は留置所で隔離処置を受けていたわけだが………荒記、留置所での彼の様子は?」
「人が来た瞬間個性の暴走を引き起こしそうになるし、食事用のナイフを渡したときなんかはパニクって壁に大穴を開けたりと、かなりひどい状態だったよ。俺の催眠治療と病の薬物治療を半年続けて今の状態にはなってくれたが、それでも今回のような事態が今後起こらないとは断言できません」
「なるほどな………。では鉄田、今回の事態を間近で見ていた受刑者の様子は?」
「彼のことに関してでの騒ぎは起きていないですし、怪我人も殆どいないから恨みの声を上げている奴もいなかったですね。ですが、今回の騒ぎの発端である俊雷は流石に意気消沈しているようで、いつもなら考えられないほど静かにしています」
「まぁ流石にあいつも今回のことはこたえたか………。まぁ、それぐらいの影響なら、受刑者達のことに関しては他の3人に任せておけば大丈夫だな。病、彼の麻酔の残り効果時間は?」
「あと1時間程で完全に解けるかと」
「…………そこまで時間が少ないとなると、流石に彼専用の部屋や処置を用意する暇はないな。…………黒江、最後にお前が金銀君を見ていて思ったことを教えてくれ。なんだっていい。お前が、思った本心を教えてくれ」
いつもののんびりとは違う真剣な表情で、爪牙さんはこちらに目を向けた。
他の3人や、パソコンのキーボードを触っていた解原さんもまた私に視線を向け、その答えを待っている。
「………………私は、彼はヴィランなんて大層なものではなく………どこにでもいる寂しそうな子供の様に思えました。その訳を………と言われると………説明出来ないかもしれませんが…………」
「少しずつ、ゆっくり考えた上で言ってもらっていい。その訳はなんだ?」
「………今日一日の上級受刑者達は皆無茶苦茶で…………私の理解が及ばないようなことばかりしていました。ですが………その場には一切の悪意はなく…………ただただ普通の笑い声が………そこにありました。そして彼がヒミコちゃんと一緒に仕事をしてるとき……彼は時折こっちを羨ましそうに見つめていたんです。公園で遊んでいる子供達の輪に混ざりたそうにこちらを見ている………そんな寂しそうな子供のように………」
「………公園で遊んでいる子供達の輪に混ざりたそうにこちらを見ている………寂しそうな子供か。なんとも………詩的な表現だな」
「ううっ………。だからうまく説明出来ないかもしれないって………言ったじゃないですか………」
「いや、彼を知る上で十分過ぎる説明だ。彼が化物ではなく、ただただ普通に笑いたいだけの人間と知れただけで、私達にとっては十分だ」
爪牙さんは少し安心した様な顔で、少し笑った。コーヒーを少し啜り、モニターを見ながら話を続ける。
「これは半年前、彼が暴れたことを大々的に報じたニュースの切り抜きだ。異形型個性排斥組織の情報などは一切上げようとせず、彼だけが悪人であり、彼に全ての全ての非があると、皆口々に言った。………おかしな話だよな。誰にだって笑いたい時もあるし、泣きたい時もあるってのに、それさえ許してはならないだなんてな」
「たとえ罪があったとしても………彼にも笑って………泣いて………馬鹿をやって………。………そんな当たり前が………彼にあっていいはずなんです………!輪の中に入りたがりそうにしている彼の手を………掴んであげていいはずなんです………!」
「ああ、当然だ。誰かが掴めなかった手を掴み、もう一度当たり前に笑えるようにするための場が、更生所なんだからな。………黒江、彼が自分から手を伸ばしたそうにしていた時、その手を掴む手伝いを、君にはしてもらいたい。彼がぎこちなくとも着実に、少しずつ自然に手を差し出すことができるようにできる日まで………彼を見守ってほしいい。…………やってくれるか?」
「はい。必ずやり遂げてみせます」
「そうか………ありがとう。では、話は以上だ。寮に帰ってゆっくりと休んでくれ」
そう言われるとともに立ち上がり、私はその会議の場から立ち去った。
私に出来ること、それはわからない。けど、誰かに対してもし出来ることがあるのなら、私は少しでもやってあげたい。それが無力な私が、ヒーローになった理由なのだから。
◆◆◆
「やめなさい!何をしてるの!?」
「その笑い方をやめなさい!不気味な顔だ!まるで…………異常者だ!」
……………普通とは一体何なのか………当たり前に生きるとは何なのか。…………化物と言われ続けた私にとって、それは一切の考えが及ばぬものであり……………それが一体何なのかを考えなかった日は………ない。
「そんくらい気にしてないってーの。あんたが好きでやったわけじゃないのは目を見れなわかるし、何より私達友達でしょ?」
三奈ちゃん、あの時あなたが言ってくれた言葉で………私がどれだけ救われたか………あなたは知らないでしょう。
拒絶されない事を求め続けていた私にとって、あなたが私の存在を肯定してくれたことがどれだけ嬉しかったか………考えただけでも………胸が熱くなります。
『君は志望した学生の中で最もヒーローに遠く、最もヴィランに近い人物だ。………だがそれは同時に君はヴィランに寄り添える数少ないヒーローになることができるかもしれないということでもある。よって私は真血被身子、君を雄英高校ヒーロー科合格を認めるよ。君が素晴らしいヒーローになれるよう我々もできる限り協力する。だから精一杯頑張ってくれ。ではこれで話はこれで以上、学校で会うことを楽しみにしているよ!!』
あの日、私を受け止めてくれる人が他にも沢山いると知れたあの時………私は死ぬほど嬉しかったんです。普通に夢を見て、笑うことができる人間になれるんだなって………そう思ったんです。
「嫌だ………あ゛の゛暗い部屋にい゛るの゛は……………一人で入る゛のは……………痛み゛を堪え続ける゛のは゛嫌だ……………。ヒーローが助けて゛くれるん゛じゃな゛いの…………?どうして゛だれ゛も゛助゛けてく゛れな゛いの゛……………?俺が普通じゃ゛ない゛から゛………………?どう゛し゛て……………?どうし゛て…………………!?」
なのに私は………貰ってばかりで………あの子に対して何もできなかった…………。誰かがしてくれるのを見ているだけで………彼を救うことができなかった…………。
「私は………一体何ができるの?あの子に………何をしてあげれるの…………?」
誰もいない暗いリビングで、私はミルクを飲みながら、そんな嗚咽を一人、漏らしていた。
2日目の職場体験が終わり家に戻りベットに入ったのだが眠れず、リビングのソファーに座っていたのだが
彼にしてあげれたことはなんだ?彼を救うには何をすればいい?彼を受け止めるにはどうすればいい?
そんな考えが………頭の中を埋めていくばかりだった。
再び訪れた後悔を押し流すように、私は牛乳を口の中に流し込んだ。………それで、この後悔が押し流せるわけがないのだけど。
「ただいまーって、なんでヒミコ起きてんだ?もう夜の1時だぞ」
私がそんな事をずっと考えていたからだろう。職場体験の深夜パトロールが終わった後、日課であるランニングと筋トレをしていた狼がジャージ姿でリビングに入ってきた。
暗くしていた顔を隠し、私はいつもの笑顔の仮面を被った。
「少し眠れなかったのでホットミルクを飲んでいたんですよ。狼もいりますか?ホットミルク」
「いや、俺にはこのプロテインがあるから大丈夫だ。運動が終わった後はどうもこれしか体が受け付けないからな。ホットミルクは別にいいや」
「何かに付けてプロテイン、プロテイン、プロテインってどこの筋肉バカですか?そんな事言ってると脳まで筋肉になりますよ」
「いや、筋トレには脳を活性化させるということが最近わかりつつあってでだな、記憶力を良くするのであれば筋トレをやるのもいいっていうこともわかっているんだ。それにそもそも脳は筋肉ではなく、何万ものニューロンで構成されているというわけで、筋肉できているというわけでは─────」
「ご得意の筋トレ談義は受け付けておりませんので結構です。結局は鍛えたいだけであって、脳の活性化について知ったのは最近でしょう。さっさとプロテインでも飲んで、その喋りたそうな口を閉じてください」
狼の筋肉談義に呆れつつ、ささっと作ったプロテインを狼に手渡した。
狼は美味しそうにぐいっとプロテインを飲み、コップを机に置き、こちらをじっと見つめる。
「なんですか?こっちをじっと見て。なにか私の顔にでも付いていますか?」
「………今日の職場体験、お前何かあっただろ?笑顔の仮面付けてるのだなんてバレバレなんだよ」
プロテインの入っていたコップ洗いながら、狼は真剣な表情で、こちらをじっと見つめ続けた。
…………狼は隠し事が多いくせに、こちらがなにか隠しているということを直ぐに察して問いかけてくる。それも、察した事の内容は全て的中しているのだからたちが悪い。
………なんとなくそんな事を聞かれるだろうと思っていた私は笑顔の仮面を脱ぎ、つい先程の暗い顔になる。
「…………一角君がトラウマを思い出して暴れだした時、私は彼に麻酔を打ち込もうとしたんです。けど……彼の表情や言葉を聞いているうちに手が震えて…………私は彼を止めることができなかったんです」
空のコップの持ち手を手が白くなるほど掴みつつ、話を続ける。
「化物だった私は………これまで色んな人に様々なものを貰って…………ここまで来ました………。なのに………私は………あの子に何かをしてあげる事ができませんでした………。あの子が泣いている涙を……止めることができませんでした………。誰よりも辛いのはあの子なのに………私は………あの場で何もできなかったんです……………。私は………やっぱり何も────」
パチンッ!
最後の言葉を紡ごうとした最中、狼は私の頬を軽く叩いた。
「これ以上は言うな。これ以上は、言っては駄目だ。これ以上……自分を拒絶しちゃ………駄目だ」
いつにもなく優しい目で、狼は私にそう言い放った。
それともに、私は話してる間まともに息を吸っていなかったことにようやく気づいた。ゆっくりと息を吸い、途絶え途絶えだった呼吸を整えた。息を整えるとともに、体が少し楽になる。
「お前は、もう心をなくした化物なんかじゃない。お前は、貰ってばかりじゃない。どんなに辛いことがあろうとそれに逃げず、ここまで来たお前が、何もできないはずがないだろ」
「けど私は………彼に何も…………」
「…………あいつ何をしてやれるかって、お前はずっと言ってけどよ。出来るできない関係なく、あいつに『お前は』何してやりたいんだよ?」
「……………私が、彼に、ですか?」
考えもしなかった言葉に、私は狼をまじまじと見た。狼もまたそんな私を見つめながら、話を続ける。
「結局、ヒーローのやってることなんてものは全て偽善でしかない。ヒーローが行ったことで傷ついた者もいるし、逆にヒーローの行ったことで助けられた者もたくさんいる。……………俺がお前の手を取ったことも、全ては偽善だ。だが、それでもお前はここまで来た。なら今度は、お前が真に誰かにやってやりたいことをやってやれ。それがきっと、金銀にとってのオリジンになるはずだからな」
あまりの狼の言いように、私は開いた口をしばらく閉じることができなかった。
けど、頭の中の考えはようやく消え、私が見たかったものがようやく見えた気がする。
そんな思いが私の体を多い、一種の満足感が広がった。
「そう……ですね………。私の………した……い………こと……………は……………」
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「ヒミコちゃん、ヒミコちゃん、そろそろ起きて。もうMIPデックスに着くわよ」
「……………あれっ?ここは……………」
「受刑者護送車の補助席の上。いくら揺すっても起きないし、いつになっても起きないから仕方なく寝間着のままで車に乗せちゃったの。昨日のことで色々あって疲れてるのかもしれないけど仕事は仕事だからね。そう簡単には休めないのよ」
黒江さんの言葉でハッとなった私は、車の時計と自分の着ている服を見て顔を赤くさせて頭を抱えた。
どうやらあの時に訪れた安心感のせいで寝落ちしたらしく、狼に何かを言いおうとした先の記憶が全く思い出せない。
あんなことを吐露した挙句、寝落ちして、寝坊して、寝間着で車に乗せられるだなんて恥ずかし過ぎる……………。もう……この際殺して…………。私の顔がこれ以上熱くなる前に殺してください………………………。
「まぁ………たまにはそういう失敗は誰にでもあるし…………仕方ないんじゃない?そう気にしてたらきりがないよ」
「はいっ…………本当にすいません………………。ご迷惑かけて…………申し訳ありません…………………」
「そこのバックに一式の着替えとヒーロースーツ、それと諸々の荷物が入ってるから裏の更衣室で着替えてきなさい。受刑者達の護送は私の方でやっておくからさっさと準備しちゃって」
「はいっ………わかりました……………。………………本当に…………すいません」
申し訳無さと恥ずかしさでいっぱいいっぱいになりつつも、どうにか気持ちを切り替えた私は建物の裏の更衣室に小走りで向かった。
大急ぎでヒーロースーツのニットを身に着け、刀とナイフ、そしてゴーグルを付けて行く頃にはもう業務は始まっており、完全に出遅れた形となってしまった。
ゼーゼーと息を吐き、私は疲れのあまり手を膝につける。
「おおっ………ようやく来たねヒミコちゃん……………。じゃあ…………早速で悪いけど業務を始めてもらうよ………………」
「はい………わかりました…………。本当にすいません…………………」
「昨日の騒ぎで工場は流石に使えないし……………今日はここ周辺の街灯の修理と点検をやってもらうよ………………。…………最近………何処ぞのマスコミ達が街灯の中に隠しカメラを設置して…………MIPデックスにいる受刑者達の様子を撮ろうだなんて馬鹿なことをするせいで明かりの調子が悪いんだ…………。もしカメラを見つけたようなら全て回収してこっちに渡してね…………。後でまとめて警察に提出しておくからさ…………」
「業務の方はわかりました。けど彼、一角君はどこにいるんですか?彼に話したいことがあるんですけど」
「ああ…………彼は研究棟周辺の街灯担当しているよ…………。けどやっぱり………昨日の事もあって………彼は人と接する事を極度に避けているね………。爆炎刃君達も気にかけて…………彼と話そうとしたみたいだったけど駄目だったみたいだ…………。…………彼と何を話すつもりだい?」
「別に、大した事を話そうなんて事は最初から思っていません。ただ、彼と他愛のない普通の話をしようと思っているだけですよ」
「そうかい………そうかい…………。そうと決まっているなら早く彼のもとに行ってあげるといい…………。彼に今必要なのは力を出来る限り抜いて………ゆっくりとすることだらね………。…………彼のこと、よろしく頼むよ」
解原さんに挨拶すると、私は研究棟の方に小走りで向かった。
少し周囲の街灯を見回っていると、一人脚立に乗って街灯と悪戦苦闘している金銀君を見つけた。説明書を片手にどうにかやろうとしているようだが上手くいっていないらしく、説明書を何度も見ては手を止めるというのを繰り返している。
「えっと………この図がこうなっているから…………ここを………えっと…………」
「お仕事、お疲れ様です金銀君。ここはS配線とD配線をコンデンサに付けた後、電球を取り替えれば終わりです。他にわからないところはありますか?」
急に現れた私にギョッとなり、金銀君は座っていた脚立から落ちそうになった。どうにか体制を取り直し、私の方を困惑の表示で見つめる。
「な、なんでお前がここに………。今日は来ないんじゃ………………」
「大した怪我もしてないですし、そりゃあ普通に来まってますよ。私が遅れたの単純に寝坊して着替えるのに手間取っていただけですからなんの問題もありません」
「そうじゃねーよ!!俺は!!お前等を攻撃した!!なのになんで俺を構う!?なんで俺に普通に接する!?頭おかしいんじゃないか!?ここの奴らはどいつもこいつも!!」
「たかだか一度攻撃されたなんて事、ここでは誰も気にしません。私も含め、ここの人達は全員あなたと同じような境遇の人ばかりですからね。さぁ、そんなことより早く仕事の方に取り掛かりましょう。そんなぼさっとしてると日が暮れちゃいますよ」
かなり困惑している一角君を無視し、私は彼の担当している街灯の一つの点検を始めた。仕込まれていたカメラとマイクを取り出し、袋の中に放り込んでいく。
「本当に意味わかんねーよ………ここは………。看守は俺達と一緒に仕事をやってるし、他の受刑者の奴等は無駄に活き活きとしているしよ。…………俺は、何の罪もない奴等を自分の勝手で傷つけたヴィランなんだぞ。なのに………どうしてこんな事してくれんだよ…………」
「…………罪を償って、もう一度やり直してもらうためです。どの大人やヒーローもヴィランを許すな、ヴィランは悪だ、って言ってますけど、私はそうと思いません。どんな人にだって過去はありますし、そうせざるを得なかった理由があります。…………そう考えたら………悪は悪だって割り切れないと思いませんか?」
「………流されるままに親に売られて………流されるままに仲間殺されて…………流されるままに罪を被ってここに来た。…………流されに逆らって、力が欲しい、彼奴等を殺せるだけの力が欲しいって、願った結果がなんだ?俺を売った彼奴等…………。弄んてどいて飽きたからとゴミみたいに殺した彼奴等…………。俺や他の奴を金の為にと傷つけ………物のように扱おうとした彼奴等と…………。人の皮を被った化物と………俺は同じになっちまったんだ…………。これが悪と割り切れなくて一体何なんだよ…………!?こんな化物でも!!お前等は救おうってのか………!?!?」
少しずつ紡がれ、ぶつけられた彼の言葉に、私は一瞬怯んだ。
私を知る者から化物と化物と言われ続けた過去を………少し思い出してしまったからだ。
だが、私はそれでも、彼に向き合い続ける。
「私も…………化物と言われ続けた、人間だった化物です。罪は消えない。過去は変えられない。環境は選べない…………。…………けど、私はあの人に手を掴んでもらった。多くの人に色んな物を貰った。自分が本心から笑える場所を見る事ができた。だから………私はあなたを笑わせたいんです。あなたを…………救いたいんですよ」
そう迷わず、彼に言い放った。
彼は困惑し、押し黙ってしまったが、つい先程まで彼にあった張り詰めた空気は消えていった。
「……………俺は…………やり直していいのか?俺は…………ヴィランじゃなくなって…………いいのか…………?」
彼はかすれ声で少しずつ、けど、確実に、私にそう言った。
自身にの罪に対する問に、私は─────
「おい居たぞ!敷地外ギリギリのとこに居る受刑者が居たぞ!これでようやく取材ができるってもんだ!!」
その問の答えを邪魔するとばかりに突如マスコミが現れ、次々とカメラやマイクを一角君に向けた。
一角君を後ろに隠し、マスゴミを可能な限り睨みつける。
「なんのようですかあなた達。これは明らかな業務妨害です。今すぐ立ち去らないのであれば、今すぐ警察に通報し、捕縛させてもらいます。これは脅しではありません。警告ですよ」
「学生の君が口を挟むことではない!私達は彼にようがあってここに来たんだ!!」
「半年前に君が起こした香第古市壊滅事件を起こした理由は?今も病院にいる被害者達に対する言葉はないのかい?」
「真血ヒミコちゃん君にも質問だ!世間一般的にヴィラン更生は、ヴィランを再び世に送り出す愚かな行為と言われているわけだけど君はどう思ってる?オールマイトという絶対的象徴いる中でやる意味はあるのかな?」
「どうか質問の答えをお願いします!!」
あまりに自分勝手で吐き気がする行為にものの数秒で嫌気をさした私は、スマホを取り出して迷わず110番へとダイヤルした。
流石に敷地との境を示す外壁より向こうまで入っては来ないだが、外壁にすり寄ってマイクやカメラを構える姿は死ぬほどウザい。仮にも大人がやることじゃないだろう。
「化………物……………」
私がダイヤルし終わる直前、彼は呟くようにしてマスゴミに対してそう言った。既に腕は震え、目は虚ろになりだしている。
「君それが被害者に対する言葉かい!?被害者の事を考えたことはないのか!!」
「あなた達は黙ってください!!一角君大丈夫だから!!とりあえず解原さん達のところに行こ!!もう大丈夫………大丈───」
「少しは話を聞いたらどうなんだい!!質問に答えまえ!!」
息が断続的になっていく彼を守るように抱え、私が解原さん達のところに連れて行こうとする直前、大柄な男が腕を伸ばす個性で一角君に、それも彼の角に触った。
急いでその人の手を払い除けるが、一角君の目は完全に虚ろとなってしまう。
「彼奴等と………同じだ……………。俺を………彼奴等を物のように扱った彼奴等と同じ………化物だ………。嫌だ………嫌だ…………」
「一角君だめ!!」
「嫌だぁぁぁぁぁ……………………!!!!」
私の声は届かず、彼の角から発せられたエネルギーは彼を包み込み、黄金の鎧を作り出した。
急に現れた鎧に反応できず、振り下ろされる鎧の拳の前に棒立ちとなってしまったマスコミなど知らないとばかりに、鎧はその拳を振り下ろした。
キーーーンッ!!!
マスコミ達の前に立ちはだかる形で飛び出し、振り下ろされる彼の拳を刀で受け止めた。だが、刀を通じて伝わったエネルギーが体を襲い、私は膝をついてしまう。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
彼が苦しみながら叫ぶ彼の攻撃を転がることでどうにか躱し、ナイフを右脚部に当てることで気を引くことで彼とマスコミとの距離を離した。
邪魔だったマスコミがいなくなったことで多少動きやすくはなったが、私には彼の鎧を切るだけのパワーがない。かといって、いつものように細かく攻撃しては刀越しでも伝わるエネルギーで動けくなる。何か手は………最善の選択は…………。
「せーのっ!!」
ものすごい速さで回されていた私の思考を止める形で、横方向からの鋭い一撃が一角君を吹き飛ばした。一角君を蹴り飛ばした張本人である俊雷君は、手持ちの乾電池から電気をチャージして再度突撃する。
「ヒミコちゃん金銀は大丈夫なのこれ!?とりあえず止めるために一発入れたわけだけど!!」
「鎧の外装が驚くほど厚いので大丈夫だと思います!けどなんで俊雷君がここに!?投球君達と反対側の場所で業務をやってたんじゃないんですか!?」
「ちょっと金銀に謝ろうと思って業務を抜け出したんだ!!そしたらマスゴミがうようよいるし、またこの鎧が出てくるわで出るタイミング失っていたわけだけどね!!前みたいに麻酔はないの!?」
「残念ながら今晩完成する予定だったのでありません!!そんなことより俊雷君!!あなたの個性じゃ彼を止められません!!早く引かないとあなたが───」
「そういう話はここではなし!!一応僕もヒーロー志望だからね!!止められないなら今この瞬間金銀を止めれる奴になるだけだ!!さぁヒミコちゃんも手伝って!!止められないなら今止めれるようになるんだよ!!!」
俊雷はそう言うとともに、隠し持っていた大容量バッテリーからチャージした大量の電気を使ってでの超加速を発動させた。
つい先程までの蹴りにソニックブームが加わることで生み出された連続の大威力攻撃には鎧もたまらず防御態勢をとり、つい先程とは打って変わって防戦一方での戦いが繰り広げられた。
私が援護とばかりにワイヤー付きのナイフを振り回したことで鎧の動きを制限され、鎧は外壁の方にみるみるうちに追い詰められていく。
「よしよしいい調子いい調子!!あとは腕をどうにかして金銀の首をクイってすればいけるいける!!」
「けど、私達にはあの強固な腕を切るほどの力ありません。どうするつもりですか?」
「そんなの適当に木をへし折ってぶつけて隙を作るだけだよ!!ヒミコちゃんも作戦を練るのならもっと周り見て柔軟にできるようにならないとね!!じゃあ早速実演を─────」
「おい、お前等こっちに来い!ついさっきの鎧がこっちに来た!!これは最高の写真が取れるぞ!!」
またしても、邪魔とばかりにマスゴミが無謀にもこちらによって写真を撮ろうと外壁にすり寄ってきた。危険な距離にまで近づいてくる彼等に対し、私達は焦りと憤りを隠さずにはいられない。
「あんた達この事態を引き起こしといて何を考えてるの!?早くそこからどいてよ!!」
「今この瞬間、鎧があなた達を巻き込んで攻撃としてもおかしくはないんです!!早く離れてください!!」
「ヴィランのくせに個性を使っておいて私達に対して何様のつもりだ!!邪魔をしないでくれ!!」
「私達には報道の自由がある!!何より、鎧は君たちの手で────」
「ちょっと!!鎧がこっちを向いたわよ!!」
マスコミ達の声に反応してそちらを向くと、鎧は背中からエネルギー弾を発射してでの大規模攻撃を開始した。
大忙ぎで私と俊雷君は攻撃を受けそうになっているマスコミを救出し、攻撃の範囲外に放り投げていった。これまでの攻撃を受けているとあって、前回ほど攻撃を躱すのが難しいというほどではない。
だが、ここは実践の場。何が起こるかは最後までわからない。
「(くっそ………!!足がやれた………!!流石に連続充電での疲労がここに来て来たか………!!)」
「俊雷君これでマスコミは最後です!!もう攻撃の範囲外にでて大丈夫ですよ!!」
「わかってるわかってる!!ちょっとやられたけど全然動いてる!!まだま」
そう言い終わる直前、突如俊雷君の動きが遅くなり、その足を止めてしまった。
「(嘘だろ!?ここで電気切れ!?!?まず────)」
彼の思考はその隙を見逃さなかった鎧の一撃で吹き飛ばされ、俊雷君は頭を打って完全に意識を失った。
鎧、は彼に止めを刺そうとゆっくりと近づいていく。
「やめて下さい一角君!!正気を取り戻して!!」
彼に近づいていく鎧にナイフを振り回し、投げつけていくが、そんなの意に介さないとばかりに彼に近づいていった。残されていたナイフは全て折られるか、突き刺さるかして使えなくなり、残るは有効ではない刀のみとなってしまう。
「(私にできることは何だ!?俊雷君を、一角君を助ける方法は何だ!?考えろ!!考えろ!!!)」
私が考えている間にも鎧は腕を掲げ、その腕を振り下ろそうとしていた。そんな死のカウントダウンを前に、無駄と思えることばかりが思い出されていく。
「(なんでこんな時に関係のないことばかりが頭に浮かんでくるの!?今必要なのは出来ること!!思い出じゃない!!私に………出来ることは───)」
『強いて言うなら『個性の持つ本質を掴め』………ぐらいしか掛ける言葉はないな』
『さぁヒミコちゃんも手伝って!!止められないなら今止めれるようになるんだよ!!!』
『出来るできない関係なく、あいつに『お前は』何してやりたいんだよ?』
突如として思い出された思い出を前に、私の中に馬鹿げた仮説が思い浮かんだ。だが、これで助けられるのなら………!!!
「ぐっ…………!!」
振り下ろされる腕を前に、私はつい先程と同様刀で拳を受け止めた。刀を通じて伝わるエネルギーが体を襲う。
「けど………この程度………あなたが感じた痛みと比べたら痛くも痒くもない………!!私は無力だ………。私は弱い………。けど………それでも………私はあなたを救う!!!だって私の力は………出来ないことを出来るようにする力………。
『したいことをするための力』だから………!!!」
私は腕を噛み、自らの血を啜った。体に力が漲り、髪の一部が赤く染まっていく。
「魔血………開放………!!!」
そう言うとともに発生した闘気を前に鎧は一歩後ずさりし、体制を大きく崩した。
「ハアァァッ!!!」
自然と口から出た私らしからぬ声とともに、つい先程まで傷を与えることすら難しかった鎧の両足を両断し、動きを完全に封じた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!!」
彼の苦しい声ともに、鎧の最後のあがきとばかりの拳が私を襲うが、もう迷うことはない。
迫る腕を切り裂き、鎧の中央にいた彼以外の物を一閃のうちに切り捨てた。そして、その衝撃で放り出された彼を両腕で受け止めた。鎧から開放された彼はゆっくりと目を覚まし、私の方をゆっくりと向く。
「………本当に俺を助けてくれたんだな。こんな………化物の俺を………」
「あなたを笑わせたい、救いたいって………言っちゃいましたからね。これでも私、約束は一度も破ったことはないんです。約束を破るなんてことは絶対にしませんよ」
「なぁ………ついさっきの続きなんだけどさ………」
「はい、もう答えは決まっています。あなたは、絶対にやり直すことができます。もう、ヴィランである必要はないんです。だって、ここは、『普通に生きれる世界』なんですから」
私の言葉とともに一角君は大粒の涙を流し、ヴィランだなんて誰にも言わせないほどの笑顔を作ってくれた。
そんな彼の手を、彼が泣き止むまで固く、私は手を握り続けた。
彼の物語が、ここから始まってくれることを心から、願いながら、私は空の向こうにあるであろう景色を見つめた。
黒江さんの出来た事
「……そんなわけで、フェンリル事務所はあなた方全員に今回の損害賠償を要求します。理由はもう、おわかりですね」
「私達は報道の自由に従っただけだ!!」
「こんな法外な値段!!払えるわけないじゃない!!!」
「法外?何を言っているんですか?明らかな業務妨害の上、許可のない私有地への侵入、街灯への無断カメラ及びマイク設置、警告を無視してでの無許可での戦闘行為の介入の上、負傷者を出したとなればこちらも本気になるしかありません。今回の市街地の被害及びMIPデックスの損害は全てあなた方が払ってもらいます。これは法外ではありません。法に則った正当な請求です。耳揃えてとは言いませんが、借金をしてでも払ってもらいます」
「こ、こんなのヒーローがやることじゃないぞ!!」
「こ、この場でヒーローが法外な値段を請求したってネットに告発したって────」
「黙れよマスゴミ。ひき肉にするぞゴラァ」
「「「「「「ヒッ、ヒイィィィーー!!!!!!!」」」」」」
「雄英高校の方々はみな優しく、あなた達を大して咎めなかったかもしれません。ですが、私達は違います。地獄の番人として間違いを正し、罪を徹底的に裁くのが私達の仕事です。公正な罰は徹底的に受けさせ、この罪を永遠に後悔させるのが私達の仕事です。………何かご質問は?」
「「「「「す、すいません!!!!この度は本当にすいませんでした!!!!!!!!!!!」」」」」」
「(ファンってことだけあって………黒江さんは本当に刀花のマネが上手いな……………)」
その後黒江は恥ずかしさのあまり悶え苦しみ、医療統括である病が呼ばれる事になったのだが、これはまた別のお話。