鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 何故か長くなった職場体験編。まぁ、やらないとうちの主要キャラを全員出せないのやっちゃいますけどね。(だとしても長すぎる)
 
 あっ、ちなみにステイン戦はカットなのご了承を。
 
 ス「えっ」
 
 
 
 


33 悪の昇華

 

 

 

「魔血……開放…………!!!」

 

 自身の血を飲んだヒミコの髪の一部が赤く染まり、掛け声とともに闘気が一気に放出された。

 

 たった2日で最終目標であった、個性をいつでも発動できるようにするという課題をこなしたヒミコに、俺と父さんは感嘆の声を上げる。

 

「まさかここまでの速さで個性の本質を掴むとはな………。………これが若さというやつか」

 

「自分の血を吸って自身の体を再構築、それで一時的に筋力などの強化してるってわけか。………っていうか、なんで俺の技の名前パクってんだ?自分の技なんだから1から自分で考えろよ」

 

「パッと思い浮かんだ名前がこれでしたし、これが技の名前として定着しちゃったんですから仕方ないでしょ。細かいところ気にしてたら剥げますよ」

 

「全然細かい問題じゃないし!俺の毛根はまだまだ存命中だ!!そしてさらっと俺の腕を噛むな!!無駄に力強くなってるから全然離れねー!!」

 

「長時間使いすぎると筋肉が繊維が傷ついて、筋肉痛みたいになるからほどほどにしとけよ。それと、吸う血の量は狼が死なないぐらいの量にしとけよ」

 

「はーい。了解でーす」 

 

「ちょっと待て!!何勝手に血を吸うのを許可してんだ!?ヒミコはいい加減血を吸うのをやめなさい!!」

 

 もの凄い力で噛みつくヒミコをモード獣人になることでどうにか引き離し、軽い貧血でフラフラになりながら椅子に深く座り込んだ。

 

 ………ヒミコが成長したことは嬉しいし、精神的にもなにか乗り越えたみたいだから良かったよ。けどよ……これって俺が今まで以上に血を吸われる展開になるんじゃないの?

 

 だって力が強くなるモード獣人でようやく引き離せるってことは今まで以上に血を吸われないようにするのは難しいし、常時ヒーロースーツを着てるってわけでもないからモード獣人にいつでもなることは出来ない(反動で服が破れるからな)。……これ………わりとつんでね? 

 

「狼、ヒミコ、なるべく急ぎ目で外出の準備をしてくれ。東京駅に行くぞ」

 

「なんでですか?なにかそっちの方に用事ありましたっけ?」

 

「ついさっき名古屋駅にいた刀花が新幹線に乗って、今こっちに向かってるそうだからな。あっちの方は車の出入りが激しいし、1時間前ぐらいから行かないとまともに車も止められやしないから早めに行くんだ。あっちに着いたら実地訓練も兼ねてパトロールもするから、ヒーロースーツの装備一式も持っていけよ」

 

「そ、そういえば刀花さんは今日に帰ってくるんでしたね…………。………それって、私達も本当に行かなきゃ駄目ですか?」

 

「パトロールでのお前達の動きを見て、明日以降のトレーニングメニューを決めるからな。行かなかった場合は強制矯正トレーニング行きだから、お前等に拒否権はないぞ」

 

「そうだ………そういえばそうでした………。今晩に刀花さん帰ってくるんでした…………」

 

「じゃあ俺は先にエンジンかけてるから、お前等も早く来いよ」 

 

「血を吸われないようにするためにはやっぱ人型でも魔血開放を使えるようにするべきか?いやけど、30%でも筋肉痛みたいになるし………」

 

「何をブツブツと言ってるんですか?早く準備しますよ」

 

 ヒミコに手を引かれたことで俺はハッとなり、部屋の荷物を持って急いで来て車に乗り込んだ。

 

 父さんの運転のもと旧式の装甲車(エルクレス)はノロノロと走り出し、俺は車内でスマホを操作した。ラインには数件の出久からのメッセージが送られている。

 

「へー、出久の奴、遂に怪我せずに個性を使えるようになったのか。そんでもっとそれを使いこなせる様に、エネルギーを全身に送り出す感覚を教えて欲しいってわけか。ヒミコといい、出久といい、どいつもこいつも成長早いな」

 

「出久君いつもブツブツ言って、どうすれば個性を上手く使えるかって悩んでましたもんね。職場体験でその感覚を掴めるようになって何よりです」

 

「出久君って確か、障害物競走競争で1位になった子だっけ?トーナメントでボロボロになってたけど、もうその問題は解決したんだ」

 

「若いうちにしか大きく成長することは出来ませんからね。若とお嬢もこれに負けず頑張ってくださいよ。俺達はいつでも応援してますから」

 

「応援してくれるのはありがたいんですけど、なんで鉄田さんと黒江さんがここにいるんですか?迎えに行くにしても人多すぎません?」

 

 何食わぬ顔で乗っていたヒーロースーツ姿の黒江さんと鉄田さんに、俺は思わずはてなマークを浮かべた。

 

 東京駅周辺のパトロールをするにしても父さんと俺、ヒミコがいれば戦力的には十分だし、荷物持ちにしても父さんというゴリラがいる以上人手はいらない。うちは年中人手不足なのに、なんで二人はいるんだ?

 

「実は、保須のヒーロー事務所から応援要請がかかっていてな。ヒーロー殺し騒ぎに乗じた騒ぎ防止の為に人手を貸してほしいそうなんだ。自分達が担当している地域のことは自分達でけりをつけろといつもは言って、断っているところだが、もう既に保須でインゲニウムがやられている。これ以上被害を拡大しないためにも、用心に越したことはないさ」

 

「そういえば天哉君のお兄さんも先日やられたんですもんね………。………天哉君、大丈夫でしょうか?」

 

「………もっと上からの指名もあったてのに、あいつは職場体験先を保須にしていたからな。………良からぬことを考えてなきゃいいんだが」

 

「そんなに心配なら飯田君と少し顔を会わせてくるか?ほら、保須にもうつ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゴォンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………父さんが車の窓から指を指してた先が突如として爆発し、大炎上を始めた。

 

 父さんは大量の手汗を流し、俺達は父さんを見つめる。

 

「………爪牙さん、何をやったんですか?」

 

「………父さん、悪いことは言いわない。自首してくれ………」

 

「俺は何もやってないぞ!?多分………。そもそも、あんな爆破起こせるわけないだろ!!多分……きっと……

 

「爪牙さんの指指した場所がちょうど爆発しましたし………爪牙さんしか犯人いないでしょう………」

 

「化物じみたことを毎日やっている爪牙さんが爆破ぐらい起こせないわけありませんし………間違いありませんよ………。………一人のファンからのお願いです。自首してください………」

 

「だから爆破なんてものをこの距離から起こせるわけ無いだろ!!これはたまたま!!俺が指した場所で爆破が起きただ─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゴォンッ!!!ドゴォンッ!!!ドゴォンッ!!!

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………またしても父さんが指指した場所が全て爆発し、高速道路の下から吹っ飛んできた車が大きな音を立てながら街灯にめり込んでいった。

 

 俺達はもう一度父さんを見つめ、父さんは全身から汗を流しながら顔に手を当てる。

 

「………鉄田、110番通報をしてくれ。刀花への連絡も………よろしくな………」 

 

「はい……。了解です………」

 

「短い間でしたが………大変お世話になりました………」

 

「俺ら……これからどうなるんだろうな……ヒミコ………」

  

「三奈ちゃん達に………なんて連絡をすれば────」

 

 

  

 

 

 

 

 

「た、助けてくれ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車内がすっかりお通夜モードになっている中、突如として外から叫び声が上った。

 

 窓から乗り出して外を確認すると、そこにはUSJで俺達を苦しめた怪物、『脳無』が駆けつけたヒーローと市民に対して猛威を振るっていた。

 

 突然の脳無襲撃に、俺は声は荒げる。

  

「あれは脳無!?なんでここに!?」

 

「USJで見たのと違い固体ですが、間違いなくあれは脳無です。まさか……敵連合(ヴィラン連合)が………!?」

 

「『アイアン・ラッシュ』!!『黒影』!!わかっているな!?」

 

 

「「はい!!了解です!!」」

  

 

「お前等!!全員捕まってろ!!!」

 

 鉄田さんと黒江さんのヒーロー名を言い、いつもののんびりとした姿から『フェンリル』になった父さんは、車のアクセルを全開にしてそのまま脳無に思いっきり突っ込んだ。

 

 突如として行われた横方向からの攻撃に、脳無は反応できず高速道路の壁に叩きつけられる。

 

「『鉄流檻(アイアン・メイデン)』!!!同個体でない以上わからないが、警察の情報が正しいならこいつも間違いなく個性の複数持ちだ!!何もさせるなよ黒影!!」

 

「わかっています!!『黒雷切』………!!!」

 

 上のハッチから飛び出したアイアンラッシュの液体状の鉄を全身に浴び、拘束されたことで筋骨隆々の6つ目脳無は何もできず、影からものすごい速度で飛び出した小太刀の一撃を受けて脇腹から大量の血を流した。

 

 だが、これでも脳無は戦闘を続けようと動き続けた。自身の体を引きちぎってアイアン・ラッシュの拘束から無理矢理脱出し、大砲に変化させた二本の腕をこちらに向けた。

 

 通常であればこの弾を発射してヒーローを撃退、街を破壊していたのだろうが、今回は流石に相手が悪すぎた。

 

「血闘術1式……!!『D-101デリンジャー』…………!!!」

 

 人型のまま恐るべき速度で突っ込んだ父さんの1撃を急所であるむき出しの脳に喰らい、今度こそ脳無は動きを完全に止めた。鉄田さんの放出した鉄により、全身隈無く拘束されていく。

 

「市民の負傷者は7名!!ですが全員軽症で命に別条なし!!応急処置で大丈夫です!!」

 

「レオポルドさんも1撃受けているけどヒーロースーツが上手くクッションになって、打身と足をくじいた程度のダメージみたい。レオポルドさん、立てますか?」 

 

「あ、ああ……。大丈夫だ…………」

 

 何故か呆然となっていたレオポルドさんを立たせ、俺は改めて周囲を確認した。

 

 高速道路のあちこちには穴が空き、車こそ煙を上げて燃えているが、高速道路を支える柱自体にダメージはない上、どの車にも人はいない。脳無に襲われた被害としては十分少ない被害だろう。

 

「フェンリル、応援要請受けてくれた上、この化物なんとかしてくれてありがとう。お陰様で被害を最低限に留めることができた」

 

「そんなことよりレオポルド、保須で一体何が起きている?敵の個性は?一体何ために事を?」

 

「俺も何がなんだか理解していないんだ………。………パトロールをしていたらこの脳味噌むき出しの化け物が現れて………必死に応戦しているうちに奴の一撃を受けてここまで吹き飛ばされたんだ。匂いからして少なくともあと3体はいるようだが………これ以上のことは………何も………」

 

「いや、情報としては十分過ぎるぐらいだ。ありがとう。………それで一応聞いておくんだが、ついさっきの建物爆破はこいつの砲撃のせい、もしくは他の脳無のせい、なんだよな?

 

「あ、ああ。こいつともう一体の奴が爆破していたが、それがどうかしたんだ?」

 

「いや、なんでもない。それならいいんだ………それなら…………」

 

「(ずっと心配してたのか………父さん…………)」

 

「(ずっと心配してたんですね………爪牙さん………)」

 

「(何もやってなかったんですね………爪牙さん………)」

 

「(仕事…………なくならなくてよかった……………)」 

 

 少し安心しつつも、フェンリルは同情的な空気を咳払いで消し、真剣な表情でフェンリルは口を開ける。

 

「敵が残り3体であるとなれば話は早い。今すぐに急行し、これ以上被害が広がる前に殲滅するぞ。アイアン•ラッシュ、お前は車の中にある高速具でこいつを完全に拘束した後現場に急行、市民の救助及び道路を封鎖していってくれ。それと念の為、フェンリル事務所に応援要請の連絡を」

 

「了解。今すぐに取り掛かります」

 

「黒影、ルプス、ヒミコは俺と共に脳無を各個撃破。臨機応変な判断を下し、速やかに殲滅しろ。いいな」

 

「了解」

 

「了解です」

 

「わかりました」

 

「すまないがレオパルド、お前はここで拘束した脳無の見張りしといてくれ。こいつの情報が少ない以上、目を離した瞬間に何をするかわからない。勝手悪いが……よろしく頼む」

 

「頭を上げろフェンリル。俺は彼奴等に一度負けてるし、俺以上の速度でこいつを倒し、状況判断を下したお前達を行かせるのは俺としても賛成だ。………この街を、よろしく頼む」

 

「よしっ!!ここからは時間との勝負だ!!各人、戦闘を開始しろ!!これ以上奴らの好き勝手やらせるなよ!!!」

 

 

 

「「「「了解!!!」」」」

 

 

 

 戦闘の開始の声とともに俺達は速やかに動き出し、ビルというビルを足場にして飛び移り、脳無が集中していると見られる通りへと足を進めた。

 

 スマホに着信が来たが、それを今見る暇はない。重要な情報が来ないことを、今は祈るしかないだろう。

 

「居ました!!あそこです!!ご老人とエンデヴァーさんが戦っている奴が1体!!飛行型が1体!!ついさっきの奴と似ている奴が1体!!全員を発見しました!!」

 

「6本腕はエンデヴァー達に任せる!!黒影とヒミコは飛行型!!俺達はあの筋肉ダルマを畳むぞ!!」

 

「了解!!とりあえず、まずは1撃!!」

 

 俺はモード獣人になってそのまま突撃。着地の勢いをそのままぶつけた一撃には流石の脳無も一歩下がり、掴み上げていたヒーローを手放すしかなかった。

 

 先日脳無と違い当たった手応えもあり、ちゃんと攻撃も入るようだ。 

 

「あなたは雄英の!?なんでここに!?子供は下がっていなさい!!」

 

「そうしたいけど、こんなのがいたら下がりたくとも下がれませんよ!!何より、下がったら母さんに殺されかねませんしね!!」

 

「口を開く暇があったら攻撃を叩き込め!!血闘術3式………!!『SAMスティンガー』………!!」

 

 俺と同様に突っ込んできた父さんの蹴りがもろに入り、脳無は頭を何度もぶつけながら街灯に叩きつけられた。

 

 つい先程同様急所である脳味噌への攻撃を喰らい、ボロボロではあるが、6つめの脳無より回復速度が速く、あっという間全回復した。

 

 敵は間違いなく耐久型、一撃で決めなければ意味がないだろう。

 

「だが、どっからどう考えてもこいつは前の脳無の完全劣化。対した相手じゃない」

 

「ついさっきの奴にしろ、他の2体にしろ、おそらくは前回の脳無の下位の存在で間違いはないだろう」

 

「ヴィラン連合は一体何を考えてるんだ?俺達に対する牽制?それとも何らかのデータ収集?」

 

「さーな。だが、油断はするな。戦いってのは攻める方が基本は不利。それを承知で来たってことは、何らかの勝機を持って来たってことだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

                                          ◆◆

  

  

  

   

  

  

  

  

   

 

 

 

 

 

  

  

 

  

「またあの狼のクソガキ………!!そしてあの金髪………!!俺の脳無をよくも!!よくも!!よくも!!」

 

「死柄木 弔、落ち着いてください。あの場にはナンバー2ヒーローエンデヴァーがいる上、あの方がオールマイト以外で警戒している人物の一人であるフェンリルが相手では仕方ありません。今は一度、落ち着くのが先決かと」

 

「くっそ………!!くっそ…………!!」

 

 現場から僅かばかり離れた場所で事の元凶である弔は地団駄を踏み、忌々しげに首を何度もかいた。

 

 今回のヒーロー殺しが気に入らないとして始まった脳無の襲撃。複数の個性を持つ上に恐怖を一切感じない怪物を前にヒーローは為す術なく倒れ、ヴィラン連合はヒーロー殺しの存在をも消し去る恐怖を植え付けるはずだった。

 

 だが、その結果はどうだ?脳無のうち一体は高度な連携を前に為す術なく拘束され、うち1体は無名のヒーローとエンデヴァーにあしらわれ何もできず、残りの2体はオールマイトを倒すはずだった脳無を倒した子供達によって一矢報いる事すらできず倒された。

 

 あいつらは一体何なんだ!?あの明らかに普通の学生と実力が違うバグ2体は何だ!?!?俺の邪魔を2度もしたあの狼と金髪は何なんだ!?!?!?

 

「………あの4体は倒されましたが、私達の手札はこれだけではありません。残りの3体を全て投入しましょう」

 

「くっそ………!!全てはあの仮面男の予想の通りってわけか……………!!!」

  

 手に持っていた双眼鏡を破壊し、弔は憎しげに先日のことを思い出した。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

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「先生…脳無は何体出来ているんだ?」 

 

「雄英襲撃時程の奴はいないが、10体までは動作完了、4体がいつでも動かせる状態になっているよ」

 

「じゃあその4体をよこせ」

 

「何故?」

 

「ヒーロー殺しの奴が気に入らないからだよ。気に入らないモノは全部ブッ壊していいんだろ?先生!」

 

「うーん……そうだね………。どうしようか………」

 

『ヒーロー殺しの存在が気に入らないってのはわかったけどよ。そのための準備は念入りにやるもんだぜ?死柄木 弔君』

 

 突如先生の部屋にあるモニターの1つからした声に、俺は憎しみと苛つきを顕にした。テーブルの上のコップを粉々にし、地面にそれを思いっきり叩きつける。

 

『おいおい、命の恩人に対して失礼な態度じゃないか。少し俺が助言してやるってんだ。少し落ち着いて話を聞いたらどうなんだい?』

 

「命の恩人!?何を言ってやがる!!お前のせいで俺の右腕は裂けてこの有様なんだぞ!!お前の話なんか聞いてたまるか!!!」

 

「まぁまぁ、落ち着き給え。彼は古くからの親友の一人でね。今回の話が面白そうだからと言って君に助言をあげようと来てくれたんだ。君の感情うんぬはともかく、利用できるものは全て利用するのが吉ってやつだよ」

 

「こいつの話なんて聞く価値はない!!先生!出来たっていう脳無4体を俺に───」

 

『待てよ死柄木 弔。俺は、こいつが君に『嘘』を言っているからそれを教えに来てやったんだぜ?もっと脳無は動かせるんだろ?どうなんだ?我が友よ?』

 

 先生が俺に嘘を?何を言っているんだこいつは?と思っている最中、先生は突如腹を抱えて大笑いをしだした。

 

 困惑を隠せない俺をよそに、今までにない笑顔で先生は口を開く。

 

「君の言う通りだよ我が友よ。やはり君に隠し事なんて事は出来ないね。そうだ。その通りだ。弔に今あげる事が出来る脳無は『この4体だけではない』………!!まだまだたくさんいるんだよ………!!!全く、これは隠しておこうと思っていたんだがね。恐れ入ったよ」

 

「せ、先生……!?俺に嘘を言ったのか……!?!?」

 

『こいつはお前に何も嘘は言ってねーよ。お前は『脳無が何体出来ているんだ?』と言った。こいつはその問に答え、そして君は『その4体をよこせ』と言った。君は一度たりとも『使えるは脳無が何体いるんだ?』と1度たりとも聞かなかったからね………!!そりゃあこいつも4体しかお前にあげないに決まっているさ………!!なにせ1度たりとも聞いていなかったんだからね………!!まったく、そこらへんがおつむが足りないんだよお前は。だからいつまで経っても『悪ぶってる子供』から『悪い大人』になることが出来ないんだよ………!!!』

 

 先生と同等か、それに近しい迫力に俺は思わず1歩下がった。

 

 先生以外にもこんな奴がいるのか!?何だ!?何なんだ!?こいつは!?!?

 

『さてと、君のおつむが足りないとわかったところで、ここからお取引の時間だ。我が友よ、お前はなんでこいつに全ての事実を教えてやらなかったんだ?仲間である以上、教えてやっても問題ないはずだろう』

 

「それはだね。脳無を作るために必要な個性因子のコピーの持ち合わせが今ないからだよ。コピー元である脳無はいるが、それが倒されてしまったら最後、その個性を持った脳無はもう作ることは出来ない。わかりやすく言うのであれば、ゲームの切り札を序盤で使ってしまうようなものなんだよ」

 

「………なるほどな。つまり使えるには使えるが、今使うべきではないって事か?」

 

「そういう事だ」

 

「なら結局はあの4体の脳無しか使えないじゃないか。お前……俺に嘘ついたのか?」

 

『侵害だな。俺は誰に対しても嘘を言ったことは一度たりともない。弔、よく考えて見給えよ。ゲームでよくある正規品が作られるまでに作られる物の事を』

 

「ゲームでよくある正規品が作られるまでに作られる物………?………。…………。………!?………まさか……プロトタイプの事か……!?」 

 

「大正解だよ。死柄木 弔」

 

 俺の答えに対し、先生は画面の向こうで嬉しそうな笑みを浮かべた。楽しそうな口調で、先生は話を続ける。

 

「今の脳無を作り出すまでに作った失敗作1体……!!対オールマイト用脳無を作るまでに作った失敗作2対………!!これら3つの駒を、今君は4体の駒の中に加えることが出来る。………まぁ、失敗作とだけあって、あくまでそれは使い捨てみたいなものだけどね」

 

『だが、その分他の脳無4体とは一線を介し、完成品には及ばずとも素晴らしい力を持っている。………お前が、ヒーロー殺しの存在を否定するには打って付けの存在ってわけだよ』

 

「……………わかった。その3体も貰っていく………。だが、それはもしもの時だ………!!俺が貰った最初の4体が完膚なきまでにやられ、なんの恐怖を植え付ける事が出来なかったときだけだ………!!わかったな………!?」

 

『ああ、それで構わない。だが、君が新たに貰った3体は必ず君の意に沿うような活躍を見せてくれるだろう。なにせ、俺の傷が告げているからな。奴が来る。出来損ないが来る。って告げているからな』

 

「………何を言っているのかはわからないが、喜んでそうさせてもらうよ。………それと……俺はやっぱりお前のことが嫌いだ」

 

『ああ……!!それも構わない……!!君が素晴らしい惨劇の祭りをもたらしてくれるのならそれで構わない………!!頑張り給え死柄木 弔………!!新たな惨劇を………!!新たな祭りの夜を作り出すために………!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「思い出しただけで腹が立つ……。考えただけで腹が立つ………。あの男の手の平で踊っていると思うと………心底腹が立つ………!!!」

 

「………死柄木 弔」

 

「わかっているさ黒霧。それとこれとは話が別だ。………あの男が言っていることは腹が立つが正しい!!認めるよ!!そしてあのガキ共が心底腹が立つほど腹が立つほど強いってのもな………!!だからもうここからは手加減はしない………!!!ここからは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺だけの祭りだ…………!!!!

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                         ◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 「お客さん!!起きてください!!お客さん!!」

 

「私は起きてるし、もう少し静かにしてくれ。これじゃあ何にも聞こえないだろう」

 

「何を馬鹿なことを言ってるんですかこの非常事態に!?変な脳味噌むき出しの化物が現れて新幹線は脱線!!どこもかしこもパニック状態で危ないんですよ!!こんなところで呑気にしている場合じゃないんですって!!」

 

「非常事態だからこそ、呑気している場合なのさ。情報がなきゃ慌てふためくことしか出来ないし、慌てふためいたところで何も出来やしないからね。………くっそ、マスゴミの奴ら、被害だけじゃなくて状況も伝えろよ。これじゃあ何もわからずパニックになるだけだろ、まったく」

 

 そう呟きながら、私はアイマスクとスマホのニュースを流していた右のイヤホン、近くの通信を傍受するための左のイヤホンを外して立ち上がった。

 

 ずっと座っていた事でくる痺れを伸びでなくしつつ、辺りを見回す。

 

「えっと、ここは大体楠木市と倉方市の中間にあるデルタ橋のど真ん中、ってところか。事が起きているのは保須市中央通りだから………距離は大体40キロ………走っていくには少し遠すぎるな」

 

「お、お客さん?電柱を眺めて一体何を…………」

 

「フンッ!!」

 

「ちょっ!?お客さん!?なんで急に電柱折ったんですか!?折れるだけでも十分すごいですけども!?」

 

 新幹線の乗務員が何故か驚いている事を疑問に思いつつ、折った電柱を片手で持ち上げ、保須市の方に狙いを定めた。

 

 古典的な方法だが、現状これが一番早いのだから仕方がない。鉄道局には後で連絡を入れ、頭を下げなくてはな。

 

「さてと、私はこれから保須に行くわけだが、脱線した新幹線の中に怪我人はいないか?もしいるのなら軽い応急処置をしておくが」

 

「は、はい。数人が止まった衝撃が転んで軽い怪我をしましたが、特に大きな怪我を負った者は誰も………」

 

「それならば特に問題はないな。脱線したこいつの復旧で人手がいるのならばここの会社に電話するといい。少し荒っぽい前科持ちばかりだが、人手は多いし、何より元気が有り余っている。力仕事だけで言えば誰にも負けないだろう」

 

「そこまで考えてくれるのはありがたいんですが、あなたは一体何なんですか?もしかして、プロヒーローの方とか?」

 

 名刺を渡し、今にも保須に向かおうとしていた最中そう乗務員は私に問いかけた。少しニヤッと笑い、私は口は開く。 

 

「私なんかがヒーローに見えるかい?私は少しばかりお節介な主婦。ヒーローなんて堅苦しい肩書には似合わない人間だよ」

 

「しゅ、主婦にしては力がありすぎるとは思いますが………」

 

「まぁ一応荒っぽい仕事は毎日やっているからね。嫌でも力がついちまうのさ。………もし、私のことに聞かれたらこう言うといい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダークヒーロー(殲滅女王)が来た!!

 

  

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

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