鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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34 ダークヒーロー推参

  

 

 

「血闘術2式………!!『M9バヨネット』……………!!!」

 

 フェンリルの手刀が投げられた車ごと筋肉の脳無の腕を切断したことで、脳無は腕の再生のためその一瞬動きを止めた。

 

 その一瞬を見逃すほど、俺はそう甘くない。

 

「血闘術1式………!!『D-101デリンジャー』…………!!!」

 

 弱点である剥き出しの脳への攻撃が深く刺さり、脳無は腕の再生を終わらせる事すらできず、崩れ去るように仰向けに倒れた。

 

 俺とフェンリルの戦いが終わるの同様、ヒミコと黒影の戦いも終わりを迎える。

 

「翼さえなくなればあなたはおしまいよ!!『黒流閃刃』………………!!!」

 

 翼の脳無の死角から現れた黒影の一閃によって翼が断ち切られ、飛ぶ力を失った脳無は落ちる鳥のように墜落していった。

 

 しかし、それで終わりではないとばかりに脳無は脚部と手から獰猛な爪を輝かせ、地上で構えていたヒミコに向かって突撃していく。

 

 …………が、その動きをも読んでいたヒミコは攻撃を軽々躱し、脳無の背後をとった。

 

「これで………終わりです…………!!!」

 

 閃光が如し速さの峰打ちは脳無が攻撃を防ぐ為に構えた爪を一瞬で破壊し、弱点である剥き出し脳に絶大な一撃を与え、脳無を完全に沈黙させた。

 

 遅れて駆けつけたアイアン•ラッシュがグラントリノさんとエンデヴァーさんが脳無を含めた、全脳無を拘束したことで一旦は戦闘終了。

 

 俺は力を抜いてゴーグルを一旦外し、口を開く。

 

「これでようやく全体拘束か。………脳無ってことだけあって頑丈だったけど、本当にそれだけだったな。ヴィラン連合は一体何で、こんな使い捨てみたいな使い方を?やっぱ、何かしらのデータ収集のためとかか?」

 

「俺も戦闘中何度も考えてみたが、こればかりは俺にもわからん。貴重な戦力を無駄遣いするほど敵のバックが馬鹿とは思えんし、被害を出すのが目的であればもっと人通りの多い時間を狙っていだろう。まぁ、少なくとも、こんなものを送ってきた時点で、敵は俺達を舐めきっているようにしか思えんがな」

 

「再生の個性も、最初のと狼が相手していた脳無だけしか持っていませんでしたし、肝心の再生速度も前回のと比にならないぐらい遅いものでしたしね。となると狼の言う通り、ヴィラン連合のバックにいる誰かが何かしらのデータを今回の襲撃で採取。また新たに強力な脳無を作る気なのかもしれませんね。仮面の男も、また作れるどうこう言っていましたし、確率的には高いと思います」

 

「そうだとしても、やはり今回の脳無は前回のと比べて弱すぎますよ。渡されていたデータの元に私が考えた作戦、

 

『脳無の体の中に手榴弾を数個投げ込み、それを爆破。内蔵やら筋肉がグチャグチャになったところを一気に拘束大作戦』

 

をお披露目する機会があっという間になくなってしまいました。………いつ出くわしてもいいよう、大量の手榴弾を懐に隠していたというに………とても残念です…………。作戦………考えた意味なかったですね…………」

 

「まぁまぁ、そう言わないで下さい鉄田さん。この人の前で作戦どうこうやろうとしても無駄になる、ってことはもう日常茶飯事じゃないですか。そう落ち込まないで下さいって」

 

「わかっています……それはわかっているですけどね………。何というか出番がほとんどなかったなーって………思いましてね………。いつもいつも裏方仕事ばかりで表立つことはなく………静かに静かに仕事をしてるだけで目立たなかったが今回こそは………!!………と張り切っていたんですけどね。まぁ………対した被害が出ない分にはいいんですけども………」

 

「いやいやいや!!爪牙さんが色々とおかしいというか規格外すぎるだけで!!化物を一瞬拘束することが出来るあなたもかなりおかしいですから!!あとヒミコちゃんと狼君に爪牙さん!!この脳無が弱いみたいな言い方してますけど全然弱くないから!!あなた達全員が色々とおかしいだけだから!!」

 

 

「「「(いやいや、あんなことをやっている時点で、あんたもだいぶおかしいぞ)」」」

 

 

 と他のヒーロー達は内心思っているのだろうなと思いつつ、鉄田さんの拘束で口以外(6本腕の脳無は口から舌らしきものを出して攻撃できるため、口の部分も拘束されている)をガチガチに拘束された脳無を改めて見た。

 

 こいつ等についてわかっていることは少なく、父さんを通じて知ったことといえば、こいつ等の体野中には通常であれば1つであるはずの個性因子が複数あり、幾つもの薬物投与の末に生まれた改造人間であるというぐらいだ。

 

 脳の隅々にまで行われた改造は脳無になる前の人間の知性を完全に奪い、こいつ等を完全なマリオネット仕立て上げたのだ。少し想像するだけでも吐き気が体を襲い、ヴィラン連合に対しての怒りがこみ上げてくる。

 

「一体、何を考えてこんな残酷なことを?ヴィラン連合は何を考えているんだ」

 

「それは大方、俺達ヒーローを恐れ、恐怖したが故の行動なのだろうさ。この程度のもの、恐れるに足りないというのにな」

 

 俺が静かにそう呟いているとエンデヴァーが現れ、俺にそう言葉を掛けた。

 

 グラントリノさんが後ろから続くように現れ、そう言ったエンデヴァーを睨みつける。

 

「轟、敵さんのことをどう思おうと勝手だが、極端に舐めきった様な言葉は関心せんのう。何をしてくるのかわからぬ以上、警戒を怠れば足元をすくわれる。事が起こってからでは遅いのじゃぞ」

 

「あくまで本当の事を言っただけだ。この程度の相手、加勢はこのエンデヴァーだけで事足りた。だというのにフェンリル…………貴様、勝手な真似を」

 

「お前だけじゃあ市民や建物に被害が出てた。俺達ヒーローがまず考えなくてはならないのは市民の安全と財産の守護。それが守れるなら、応援が多い分にはまったくの問題はないだろう?」 

 

「それはそれ、それはそれだ。それにしても………焦凍の奴はどこで何をしてるんだ………。俺の勇姿見せてやろうというのに………どこぞで油なんぞ売りおって…………」

 

「そういえば、焦凍君はエンデヴァーさんのところで職場体験をしてたんですね。こういう騒ぎには必ず来そうだというのに、どこに行ったんでしょう?」

 

「なんじゃ。お前さん等緑谷の奴が話しとった狼とヒミコか。道理で学生の割に、やたら現場慣れしとると思ったわ」

 

「もしかして、あなた緑谷の職場体験先のヒーローですか?緑谷の奴はどこに?」

  

「さーの。轟の息子同様どっか行ってしもーたわ。まったく、どこに行ったというのやら」

 

「じ、実は!!君達と同じクラスの飯田君もどっか行ってしまったんだ!!お兄さんがヒーロー殺しに襲われたって言うし!!もしかしたら………ヒーロー殺しを────」

 

 マニュアルさんが次の言葉を紡ごとしたその時、空が異様に黒く染まり、上空から脳無特有の気持ち悪い匂いが放たれた。

 

 空に展開された巨大なワープゲートを確認した俺はゴーグルを付け直してモード獣人となり、ヒミコは刀を抜いて、ワープゲートの方を強く睨みつける。

 

「あれはUSJの時に霧の男が作っていたワープゲートで間違いありません!!やはり!!今回の事件に関わっていたのはヴィラン連合でしたか!!」

 

「ワープゲートの先の匂いの数は3………?…………いや、この匂いは何かがおかしい!!1度引いたほうが───」

 

「くだらん!!敵がいるというのならば全て燃やし尽くすまで!!こちらに来る前に燃やしてくれるわ!!!!」

 

「待て!!敵の正体がわからないまま攻撃するのは───」

 

「もう遅い!!これで全て終わりだ!!『矍鑠熱拳!!ヘルスパイ────』」

 

 自身の炎を集約させたをレーザーの様に放とうとした瞬間、USJの時の脳無にも似た2体の脳無はワープゲートから恐るべき速度で飛び出し、息のあった拳をエンデヴァーにぶつけた。

 

 急な攻撃に反応できず、エンデヴァーは建物の一角にめり込んでしまう。

 

「ぐっ……なんだ………!?この威力は………!?これはまるでオールマイトの────」

 

「言ってる場合か!?しゃんとせい!!轟!!!」

 

「大丈夫ですかエンデヴァーさん!?ちゃんと息はしてますよね!?!?」

 

「人の心配もいいがこっちにも意識を強く向けろ!!こいつ等は匂いからして間違いなくUSJの時の脳無と同じ存在だ!!気を抜いた瞬間やられるぞ!!」

 

 意識が朦朧となっていたエンデヴァーを攻撃しようとしていた脳無2体を俺達はどうにか受け止め、朦朧としていたエンデヴァーはグラントリノさんによって助け出された。

 

 後ろからフェンリルが迫り、奴等に拳を強く構える。

 

「決闘術6式………!!『M82バレット』……………!!!」

 

 1式とは比べ物にならない量の気を腕に蓄積させ、放たれた拳は脳無2体の弱点である脳を貫通するようにして破壊。10メートル先にまで奴等を大きく殴り飛ばした。

 

 助け出されたエンデヴァーの上着を脱がせ、ヒミコは怪我の状態を確認する。

 

「………肋骨の3本が骨折、他の6本にはヒビが入っています。吐いている血の量が少ないので幸いなことに、肋骨は肺に刺さっているということはないと思いますが、それでも戦うには危険な状況です。一度後方に引いたほうが………」

 

「やられっぱなしで下るなど無様な真似出来るか!!この程度の怪我など気にするほどではない!!邪魔だ!!さっさと離れろ!!」

 

「あんな一瞬でやられといてまだそんな口開けるのか!?彼奴等のことは父さんと俺達に任せて!!早くあんたは───」

 

「狼!!ヒミコ!!そっちに1体行ったぞ!!」

 

 俺とヒミコが振り向く頃にはもう脳無は眼前に迫っており、俺達の対応が追いつかない速度で拳を振るおうとしていた。

 

 だが、そんな脳無の拳は傷だらけのエンデヴァーによって受け止められ、灼熱の炎を纏った拳によって脳無は再び殴り飛ばされた。

 

 フラフラと立ち上がり、エンデヴァーは脳無に向かって戦う構えを取る。

 

「これでつい先程の貸しはなしだ。これでも何だ?まだ戦うなと言うつもりか?」

 

「ええ、言いますよ。1発当たったら終わりの病人を、戦場に送り出す馬鹿がどこにいるんですか」

 

「痩せ我慢してるだけで、息がもう上がっているはバレバレなんだよ。助けてもらったことには感謝するが、さっさと後ろに下がってろ。俺達だけで事が足りる」

 

「つい先程の対応が、まったく追いつかなていなかったお前達が何を言う?お前達こそ、俺の後ろに下がっていろ。俺だけで事が足りる」

 

「若!!お嬢!!そしてエンデヴァーさん!!そんな事言ってる場合じゃありません!!また敵の援軍が現れました!!」

 

「な、なんじゃこいつは!?最早人の形を留めておらんぞ!?!?」

 

 上空に開いていたワープゲートを警戒していたグラントリノさんとアイアン・ラッシュ言う通り、直径10メートルの巨大な肉塊と言うしかない脳無らしき何かが、大空を浮遊する形で現れた。

 

 肉塊の脳無は全身に貼り付けられた顔のような部分から、黒い人間の様なものを大量に投下させ、顔のような部分がない場所に、取り付けられた幾つもの腕からはレーザーや弾丸などを次々に放っていく。

 

「な、何だこいつ等!?動く………動いているぞ!!こいつ等!!」

 

「き、気味が悪い!!来るな!!来るな!!」

 

 投下させた人間の形をした何かはゾンビのようにフラフラと立ち上がり、状況が変わりすぎてわけがわからず、呆然となっていたヒーロー達に襲いかかった。

 

 吹き飛ばされては再生し、また突撃するという動きをしていた脳無をどうにかを投げ飛ばし、俺は黒い人間らしきものに目を向ける。

 

「何だあいつ?脳無とは匂いがまったく違うし、彼奴等に漂っている匂いは………火薬かニトロか?」

 

「明らかに脳無とは形状が違いすぎますし、あれは間違いなく脳無とは違う別の何かです。………ですが、どうも知性はないようですし、目立った戦闘力もないようです。一体何が目的で………」

 

「まさか………あれは……………。……………不味い」

 

「エンデヴァー?何かあれについて知って────」

 

「この野郎!!ヒーローを舐める────」

 

「やめろ!!下手にそいつに攻撃をするな!!!」

 

「えっ─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バアァァァンッ!!!!!

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 エンデヴァーの警告は間に合わず、襲われたヒーローの1人はその黒い人間らしきものに攻撃をしてしまった。

 

 それとともに黒い人間らしきもの体は膨張、ヒーローの1人に掴み掛かったまま大爆発を起こした。

 

 爆炎の中からズタボロになったヒーローが現れ、辺りの恐怖をより煽っていく。

 

「………おそらく奴は、数年前鳴羽田で起こった大事件、『鳴羽田ロックダウン』を引き起こしたヴィランが使用していたという爆弾ヴィランと同様の存在だ。攻撃を加えたら最後、奴は近くにいる人間を巻き込むようにして大爆発を引き起こしてしまう。くっそ…………ここにきてまさか………奴が現れるとは……………」

 

「えっ……つまり………俺達は攻撃出来ないってこと………?」

 

「ナンバー2ヒーローエンデヴァーを殴り飛ばす奴もいるし………これって、かなり不味い状況じゃないの………?」

 

「あの浮いている肉塊みたいな奴も………全身にある腕からレーザーやら弾丸やらを飛ばしてるしこれって………もう詰みな状況なんじゃ…………」

 

 逃げ惑っていたヒーロー達に恐怖という感情が迫り寄り、ただでさえ不安定だった平常心というものを完全に刈り取った。そして………

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

「ちくしょー!!こんな奴等に勝てるわけ無いだろ!!ふざけるな!!!」

 

 

「私こんな状況想定してない!!もう嫌だ!!!!」

 

 

「俺は辞める!!ヒーローなんてもんやっていられるか!!!」

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 ………何人ものヒーローが悲鳴を上げ、我先にと無様に逃げ去っていった。

 

 エンデヴァー事務所のヒーローや、それでもと戦うヒーローはまだいるが、敵の数に対して数があまりに少なすぎる………!!

 

 フェンリルはもう1体の脳無を相手にしてるし………グラントリノさんは市民の救助に手一杯…………。アイアン・ラッシュと黒影は遠距離攻撃とヒットアンドアウェイでどうにか多数を相手にしてるけど………このままじゃ…………。

 

「(くっ………ここにきてついさっきのダメージが………!!不味い…………!!!)」

 

 

「「エンデヴァーさん!!!」」

 

 

 脳無の攻撃を受けて徐々に徐々にダメージが蓄積されていたエンデヴァーさんの動きが一瞬鈍り、脳無はその隙を突いて攻撃を仕掛けた。

 

 咄嗟にヒミコが腕を切り飛ばし、俺が頭を殴り飛ばすが、USJの脳無には劣るものの、恐しい速度の再生能力で回復されてしまい、俺とヒミコは後方に吹き飛ばされた。

 

 どうにかエンデヴァーは動きを取り戻し、攻撃を仕掛けるが1対1ではついさっきの損傷のハンデが大きすぎるらしく、じわじわと追い詰められてしまっている。

 

「(このままじゃ全部が終わる………!!また全部が終わることになる………!!!………くっそ!!!使うしかない…………!!!!)」

 

 暴走のリスクがある魔血完全開放しか勝ち目がないと見た俺は、腕を強く噛み、血を少しずつ啜った。

 

 全身の筋肉に負荷がかかる魔血完全開放を使えば最後、俺はよくて1ヶ月、悪ければ5ヶ月の間病院送りになっちまうが今はそんな事どうでもいい!!

 

 また失うわけにはいかない!!また目の前で手を掴み損ねるわけにはいかない!!また失うぐらいなら……俺は───────

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  ドオォォンッ!!!!!!ガラッ………ガラララッ………………

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が魔血開放を発動させようとしたその時、何故か飛んできた電柱はエンデヴァーが戦っていた脳無の腹を深々と地面に突き刺し、辺りにシンッとした空気を作り出した。

 

 それを行った張本人は乗ってきた電柱から飛び降り、ヒーロー達に笑顔を見せる。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「よくやってくれたねあんた等!!!お陰で間に合わせる事ができたよ!!!だが、もう心配はない。何故って?」

 

  

   

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 私達が(ダークヒーロー)来た!!!!!

  

  

  

  

  

  

  

 

 

 

 

 

 

  

  

  

 明らかにオールマイトを意識した掛け声とともに腕組をして現れた母さんは私服姿であり、どっからどう見てもヒーローには見えなかったが、その声とともに安心感が広がった。

 

 数分前に連絡を受け、移動用高速ドローンで現場に向かっていた二人も飛び降り、それぞれの武器を振るう。

 

 

「狂一、出番だ。暴れろ」

 

 

「患者を多数確認。オペを開始します」

 

 

 

「血闘術5式…………!!『GAU-8アヴェンジャー』……………!!!」

 

 

 

「血闘術4式…………!!『MGLダネル』…………………!!!」

 

 

 

 ドローンから飛び降りた荒記 光良こと『ムネーモシュ』は恐ろしい速度の槍の突きの連打で、病 操佳こと『ペスト』はメスを投擲することで、弱点である心臓部をピンポイントで攻撃し、爆破させることなく、大量の爆弾ヴィランを戦闘不能にした。 

 

 白いつなぎに付いた埃を払い、母さんは俺達に近づく。

 

「あんた達久しぶりだね!!会ってそうそうやってくれるじゃないか!!流石私の息子と娘だ!!誇りに思うよ!!!」

 

「そ、そんなことより刀花さんはどうしてここに!?新幹線に乗って東京駅に向かってたんじゃ…………」

 

「途中で新幹線が脱線してね!!そこで病と荒記の連絡を受けてここまで飛んで来たんだ!!途中でヘリに乗っていたマスゴミにぶつかりそうになるわ、貯水タンクに乗っていた二人組にぶつかりそうになるわで散々だったが、どうにかここまで来ることが出来た!!あんた達!!本当によくやってくれたよ!!!」

 

「飛んできたというか………投げた電柱に飛び乗ってここまで来たの間違いだろう…………。………まったく、相変わらず無茶苦茶な」

 

「ああそうだ!!逃げたクソコスプレイヤー共!!!ヒーローでありながらビビって逃げるとは何事だ!?!?通信を傍受してたからお前等の無様な会話は全て丸聞こえなんだよ!!!なんだ!?そんなに私のトレーニングを受けたいのか!?!?アンッ!?!?どうにか言ってみろよゴラァ!!!!」

 

「母さんやめて!!それをやらせたら流石に死ぬから!!ヴィランじゃなくてあんたに殺される事になるから!!」

 

「おーい、ちょっと待て。俺のことを忘れるな」

 

「爪牙さん!?なんですかこの状況!?!?何がどうなったらブリッジの状態で固まれるんですか!?!?」

 

「いやー、ちょっとな。脳無のやつ殴っても全然効果ないから仕方なくジャーマン・スープレックスでコンクリに埋めて動きを封じることにしたんだ。そしたら腰をグキってやってしまってな。お陰で全然動けないんだ」

 

「あー………これはかなりやっちゃってますね。とりあえず、痛み止めの軟膏縫っておきますね」

 

「イテテテッ…………助かったよ病…………。あと数日あの体制を覚悟していたから本当にありがとう………。………それでもやっぱり、腰がまだ痛いな」

 

「ヒャッハー!!暴れ放だ───/暴れ放題じゃないから!!あくまであの黒い奴と脳無だけだから!!そこはちゃんと考えてくれよ!!狂い───/うるさい!!俺に命令するな!!光良!!!」

 

「な、なんじゃこいつ?攻撃しだしたと思ったら自分を殴りだしたぞ」

 

「はいはい荒記、落ち着いて。こいつ、個性の関係で2重人格なんですよ。いつもの人格が光良、戦闘狂の人格が狂一です。ほら、挨拶して」

 

「どうも、こんに───/干物ジジイに言う言葉はない!!さっさと死ね!!/狂一!!何言ってんだ!?この馬鹿!!」

 

「な、なんか一気に緊張感なくなったね……この現場………」

 

「この人達が揃ったらいつもこうなんですよ………マニュアルさん………。我慢して………慣れてください………。…………お願いします」

 

「トレーニング!!!!」

 

「駄目だ母さん!!落ち着け!!!」

 

 俺達がギャーギャー騒いでいる間に敵はどうにか持ち直し、2体の脳無は完全回復し、肉塊の脳無は新たな爆弾ヴィランを作り出した。

 

 目つきを鋭くし、母さんはヴィランを睨みつける。

 

「通信で傍受した通り、まさか半分以上のヒーローが腰抜けとはな。まったく、話にならない。全然ヒーローっぽくない、この爆熱脳筋ゴリラの方が100倍ヒーローやってるじゃないか」

 

「誰のことが爆熱脳筋ゴリラだ!?!?」

 

「それより刀花、状況は理解しているな?」

 

「ああ、今大方把握した。最優先殲滅目標はあの肉塊脳無、第2殲滅目標は2体の劣化版USJの脳無、その他殲滅目標は爆弾ヴィランだな。爆弾産み落とすあいつを頬って置けば時期に防壁は崩壊し、さらなる被害が出ることとなる。現在の市民の避難状況は?」

 

「もう全員壁の向こうに避難させておいた。これで思う存分暴れられるってもんだろう?」

 

「いい仕事するじゃないかあんた!!伊達に年は食っちゃいないね!!となれば、もう出し惜しみをする必要はないな?フェンリル?」

 

「ああ、当然だ。俺と血影が肉塊の脳無、ペストとムネーモシュ、エンデヴァーが劣化版USJ脳無2体、その他の全ヒーローは全力で爆弾ヴィランを撃破しろ。心臓部を攻撃すれば爆破させることなく、安全に撃破することができる。絶対にそれ以外を攻撃するなよ。わかったな?」

 

「りょ、了解!!わかりました!!」

 

「ふむ、わかった」

 

「何故お前が指揮権を取っている……………?そして誰に向かって指示を出しているんだ……………」

 

「手柄でもなんでも、後で好きなだけくれてやるから今は従ってろ。そう長く話してる時間はないからな。それとアイアン•ラッシュお前は…………」

 

「いつも通り全体の援護、そして突っ込むあなた達の戦う場の形成でしょ?もう何度繰り返し同じ事やってると思ってるんですか?嫌でも内容はわかりますよ。後ろでドンッと構えてますから、思いっきり突っ込んできてください」 

 

「理解が早くて結構、流石はうちの事務所のナンバー3だ」

 

「じゃあ全部指示は出し終えた!!全員さっさと殲滅を開始しろ!!手加減なんてものは当然なし!!!徹底的にヴィランをぶちのめし!!!私達ヒーローに喧嘩売ったことを後悔させてやれ!!!!」

 

 その掛け声と共に母さんと父さんは肉塊の脳無の攻撃を躱しながらビルを足場にして突っ込み、各ヒーローも与えられた役割を果たそうと戦闘を始めた。

 

 俺はモード獣人状態での出力30%の魔血開放、ヒミコは自身の血を吸ってでの魔血開放を発動させ、他のヒーロー達同様爆弾ヴィランを殴り、突き飛ばして次々と爆弾ヴィランを行動不能にしていった。

 

 その傍らでムネーモシュとペスト対脳無の戦いが行われ、脳無の血しぶきと体の一部が炎で焼かれていく匂いが辺りに広がった。

 

 槍で脳無の体を刳り、メスで急所を切り裂きながら3人は口を開く。

 

「劣化版とはいえ!!流石対オールマイト用のバケモンって言ったところか!!!槍で抉ってもすぐに回復しやがる!!!/しかも、武器に気を込めてないと全然攻撃が入りやしないな。これを攻略するとなるとかなり面倒だぞ」

 

「ええ、その通りね。これを真正面から攻略するとなるとかなり面倒ね。……………けど」

 

「俺達は別に/真正面から戦うタイプじゃないからな」

 

 そうニヤッと3人は笑うと、ペストは後ろに下がり、ムネーモシュは脳無の拳の動きに合わせて突っ込んだ。

 

 槍の薙ぎ払いで無理矢理作り出された一瞬の隙に、ペストは個性を発動させる。

 

「………被害者の方には悪いけど、これ以上何かやらせるわけにはいかないの。少しばかり………ウイルスの恐怖を味わってもらうわよ」

 

 そう言って放出された黒い霧が脳無を包み込むとともに、脳無は突如として苦しみだし、その動きが目に見えて遅くなった。

 

 ペストの個性は『ウイルス』。自らの体の中で独自のウイルスを培養、それを自由自在に放出するという個性だ。

 

 血影で下で働いた結果、他者を攻撃するウイルスだけではなく、他者を癒やすウイルスも生成できるように彼女ではあるが、攻撃性のウイルスの威力が弱まったなんて事は一度もなく、その威力はウイルス散布未遂事件で逮捕時の倍の威力にまで高まっている。

 

 また、今放出しているウイルスは吸い込んだ者の筋肉という筋肉を破壊し、内蔵を腐らせるという恐ろしいものだが、彼女が脳無に触れれば散布したウイルスの症状は解除される。

 

 しかし、脳無に掛ける敵であるに対しての情など持ち合わせているはずもなく、ペストが更なるウイルスを散布結果脳無は更に苦しみだし、余裕が一切ないといった様子で無茶苦茶に腕を振り回した。

 

 そんな攻撃をゆうゆうと躱し、ムネーモシュは脳無に接近する。

 

「ペストだけに見せ場取られる訳にはいかねーな!!さっさとぶっ殺し───/お前は記憶流し込めれないんだからさっさと人格変われ!!!それと人に対して殺すとか言うんじゃねーよ!!お前のせいで俺まで怖がられ───/うっせーよ!!黙ってろインテリ馬鹿が!!テメーは奴の攻撃躱せねーんだから黙って人格渡してろ!!目の前の敵を殲滅する!!俺達の今の仕事はそれだけだ!!!だからぶっ殺すつっても問題はねーだ───/問題しかねーんだよ!!この脳筋馬鹿が!!黙ってさっさとこいつをぶっ倒すぞ!!!/そんな事はとうの昔にわかってるわ!!!」

 

 ガスマスクを被り、ムネーモシュは人格を度々入れ替えながら弱った脳無の攻撃を躱し、徐々に接近して脳無の頭を強く掴んだ。

 

 ムネーモシュの個性は『メモリー』。触れた相手の記憶を読み取り、自身の記憶を相手に送り込むことできるほか、他者の記憶を一時的に抹消出来る個性だ。記憶を読み取り、送り込むのを担当としているのが光良。記憶を抹消するのを担当しているのが狂一だ。

 

 個性の発現とともに第2の人格である狂一が発現。戦闘狂の2重人格を持つことや、人の記憶を覗き見る事が出来る個性故に何処へ行っても爪弾きにされたという経験から、彼の頭の中には並大抵では耐えられない量の苦しみの記憶が宿っている。

 

 そしてそれは容赦なく、脳無の脳内にへと送り込まれ、言葉にもならない絶叫と共に脳無は苦しみだした。

 

 冷酷な瞳とともに、彼等は口を開く。

 

「何故君がそんな姿になったなんてことは知らないし、君自身には悪意はないかもしれない。/だが、俺達に喧嘩打った時点で結果は決まってんだよ馬鹿が/………幾万の苦しみの記憶と共に、安らかに眠れ」

 

 彼等のその言葉とともに、打撃ではなく、脳に直接響く痛みに耐えられなくなった脳無は倒れ伏し、ビクンッビクンッと体を痛みで震わせた後、完全に機能を停止した。

 

 時を同じくして、エンデヴァーと脳無との戦いも白熱化していた。

 

 つい先程の損傷や、長期戦からくるオーバーヒートで時間がないとわかっていた彼は、体温を可能な限りにまで引き上げ、攻撃をより激していく。

  

「まさか俺がこんな泥臭いをするとはな!!血影にフェンリル!!後で覚えていろよ!!」

 

「グルウッ────」

 

「つい先程の電柱で開いた大傷のダメージはまだ残っていないようだな!!!悪いが!!速攻で決戦でけりをつけさせてもらうぞ!!!!」

 

 赤々と燃える拳で脳無を殴ると共に焼き尽くし、彼は今出せる炎を一気に開放した。

 

「つい先程邪魔された礼だ!!燃え尽きるがいい化物!!!『矍鑠熱拳!!ヘルスパイダー』!!!!」

 

 集約された炎は今度こそ解き放たれ、焼かれた傷を回復させていた脳無を完全に燃やし尽くした。 

 

 全身に幾つもの穴を空けられ、体という体を燃やれた脳無は自身の再生を止めると共に気絶した。 

 

 残る優先殲滅目標が肉塊の脳無だけとなり、戦いの様子を背後で見ていたアイアン•ラッシュは割いていた意識を爆弾ヴィランと肉塊の脳無に集中させる。

 

「…………若達の背後に3、マニュアルの前方に4、グラントリノの横に2」

 

 いつの間にか浮遊していた鉄の弾丸が爆弾ヴィランの心臓部を貫き、やられたという自覚を与える暇もなくヴィランを気絶させた。

 

 徐々に徐々に浮遊していく弾丸は増えていき、ヴィランというヴィランを次々に貫いていていく。

 

「…………フェンリルさんと血影さんは無事、上空にいる奴のもとにまで辿り着いたか。…………なら俺も、奴の死に場所に相応しい処刑場を作り出さなくてはな」

 

 浮遊していた弾丸が全て青空にへと舞い上がり、脳無を囲むようにして展開された。

 

「封緘………………!!『鉄流処刑場(アイアン•エクスキューション)』……………………………!!!」 

 

 展開されていた弾丸が溶け出し、近くの溶けた弾丸と繋がった結果、上空に巨大な球体状の処刑場が構築された。

 

 この檻はアイアン•ラッシュが個性を解除、もしくは一撃で防壁を完全に破壊しない限りは何度でもに修復され、攻撃を受ける度に強度を増していくという特性を持っている。一撃で檻を壊せなかった以上、脳無が外に出ることは不可能だ。

 

「…………これを使えと言ったということは、つまりはそういうことなんでしょうね。まったく、毎度毎度あなた達も人の事言えないお人好しですよ…………。…………だからこそ………俺達はあなた達に付いて行っているんですが」

 

「何やってんだアイアン•ラッシュ!?さっさとこっち手伝え!!」

 

「量産型?ということもあって無駄に数が多いわね。細胞破壊ウイルスを散布してるってのに、全然数が減らないわ」

 

 アイアン•ラッシュがそんな独り言を言っていると、背後からムネーモシュとペストがアイアン・ラッシュの直ぐ側に近づき、自爆しようと体を膨張させた3体の爆弾ヴィランのうち2体を何もさせる間もなく直様倒した。

 

 視線を二人の方に向けながら、自爆しようとする残りの1体の爆弾ヴィランの体を全身を鉄で囲い、圧迫することで対処をこなしたアイアン・ラッシュは口を開く。

 

「ああ、わかってる。俺達の今の仕事は爆弾ヴィランの殲滅だ。あの人達が仕事を終わらす180秒以内に残りを片付けるぞ」 

 

「数はあと180。1体辺りに掛けられる時間は調度1秒っていったところね」

 

「爆熱脳筋ゴリ───/エンデヴァーといえ。怒られるから/どっちでもいいだろそんなもん。とにかく、あれがもう動けねー以上あとは俺達の手柄だ!!速攻で全部ぶっ殺すぞ!!!」

 

 

「「「了解!!!」」」

 

 

 端的に話せば十分といったばかりに、4人は残る脳無に近づき、それらを次々に一掃していった。

 

 圧倒的絶望を表した状況は突如としたイレギュラーの登場によってめちゃくちゃになり、ヴィラン達の希望を粉々にするが如く爆弾ヴィランは殲滅されていった。

 

 

 

  

 

 

 




 
  
 
血「おい、ちょっと待て。私達の戦闘シーンはどこいった?電柱以外殆ど書かれてないじゃないか」
 
熊「あっ……あのですね…………。文字数制限がきそうなので次回ということで───ってちょっと待て!!!殴らないで!!!今書くから!!直ぐに編集するから!!!」
 
 というわけで、肉塊脳無 対 血影&フェンリルの戦いは次回です。なるべく早くに書きます。
 
 
 
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