鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 うーん………ギリギリ終わらない。ギリギリこの章が終わらない…………。
 
 まぁ書きたいものは書けたんだけど………手が届きそうで届かない痒い所みたいな感覚……………。とりあえず、あと1話続きます。
 
 


36 化物の死と罪人の始まり

 

 

 

 

「おいっ!!こっちで間違いないのか!?焦凍のいる裏路地は!!」

 

「間違いないですけど黙っててください!!ちゃんとまだ治療終わってないんですから!!」

 

「だいたいエンデヴァーさんはその傷で動けるんですか!?普通は倒れて病院行きの重傷人なんですよ!?あっちの仮設テントで休んでてくださいって!!」

 

「俺の傷なんてものはどうだっていい!!今は焦凍の事だ!!それで坊主!!この通りを右だな!?」

 

「はい!!そうです!!出久達がいるのはこっちです!!」

 

 戦闘が終わり、一段落した俺達ではあったが、つい先程のSOS着信を見て俺達はいてもたってもいられなくなり、出久の送った路地裏に大急ぎで急行していた。

 

 マニュアルさんの話によると天哉の奴はやはりステインを倒すつもりだったらしく、ここらの裏路地を念入りに調べていたらしいのだ。

 

 それで大方、天哉のいないことに気づいた出久の奴はそこに直行。焦凍の奴もSOSを見て、ステインがいるという現場に向かったのだろう。

 

 何やってんだ彼奴等は!?ヒーロー殺しなんてもんを無計画に相手にするなんて何を考えてんだあのバカ共は!!せめて父さんとかの魔王とか!!母さんとかの大魔王辺りをパーティーに入れて戦え!!あの大馬鹿共!!

 

「ろ、狼君!?ヒミコさん!?なんでここ────」

 

「なんでじゃねーよ!!この馬鹿たれが!!無計画に突っ込んでそのざまか!?あんっ!?やるならやるで計画的にやれよ!!計画的に!!」

 

「ろ、狼君落ち着き付き給え!!一応緑谷君は怪我人だ!!そんな彼にドロップキックをすることは────」

 

「黙れ真面目アホ眼鏡が!!てめぇに限ってはなんだ!?人がご丁寧に忠告してやった上に!!マニュアルさんに忠告されたのにも関わらず突っ込みやがったな!?あーくっそ!!てめぇの腕がズタボロじゃなかったら鉄拳だけじゃなく!!モード獣人での1式を見舞いしてたからな!?あんっ!?なんか言ってみろよゴラァ!!!」

 

「ル、ルプス君落ち着いて!!まずは治療と現状確認が先だから!!」

 

「狼のはやり過ぎだとしても何やってるんですかあんた達は!?天哉の怪我に限ってはパッ見でも後遺症が残りかねない大怪我です!!今この場に病さんがいなかったら間違いなく後遺症残ってましたよ!!あぁもうっ!!医療の知識がなかったら私も殴ってるところですよ!!」

 

「つーかてめぇ等もなんでそんなズタボロなんだ?あっちで爆発音が大量にしてたが、もしかしてそれか?」

 

「わしもお前達に小1時間説教入れたいぐらいじゃが、とりあえずは轟の息子の言う通りじゃ。ついさっきまで脳無やら爆弾ヴィランやらなんやらがウヨウヨしていたせいで、こっちはこっちで大騒ぎだったんじゃ。幸いなことに重傷者は何人かいるが、奇跡的に死者は誰も出とらんがな」

 

「そんなことよりあなた達…………。後ろこの人って…………」

 

「ああ。俺の記憶を確認したが間違いない。/こいつはヒーロー殺しステインだ」

 

 天哉の腕に治療用ウイルスを打ち込んでいた病さんと、倒れていたヴィランを確認していた荒記さんの言葉に、皆少し身構えて、倒れ込んでいるステインの様子を確認した。

 

 ヒーロー殺しステイン。テレビやらなんやらの一部では、こいつのお陰で犯罪発生率が下がったやら、ヒーロー社会を正すやらなんやらと言っているが、それははっきり言って大間違い。

 

 人を殺した時点で何を言おうがなんだろうが、こいつが何人もの人間を死に追いやった殺人鬼といことには代わりない。正当な裁きを受け、幾万の贖罪させるべき存在だ。

 

 俺達がそんな奴に対して何とも言えない視線を向けていると、後ろから現場確認と弔いをしていた母さんと父さんが早足でこちらに着き、難しい表情で、父さんと母さんは口を開く。

 

「…………不味いぞ、これは。はっきり言って、君達よりステインの方が重体だ。このまま放置しておけば間違いなくこいつは死ぬ」

 

「………折れた肋骨が肺に刺さって、そっから大量の血が流れてるのか。まずは血の流れを操作して、内臓の損傷を塞ぐところからだな。病。治療用ウイルスをこっちに。こいつの応急処置を急いでするぞ」

 

「はい。了解です」

 

「おいおい………その3人はわかるが………ヒーロー殺しの方まで治療するのかよ。………万が一、襲ってきたらどうするんですか?」

 

「全身火傷に骨折で動けないし、あくまで治療するのは内臓だけだ。それにこの騒ぎで道路はめちゃくちゃ。救急車が来るまで時間も掛かるしな」 

 

「………そっか。まだ事件が始まってから終わるまで10分程度の時間しか経っていないんだ。めちゃくちゃな道路が復旧していなくても当然か」

 

「………まぁ、俺達にとっても、お前達にとっても、とてつもなく長く感じる戦いだったからな。………お前等には後で説教するが、今はとりあえず救護テントで休んでろ。もう、とりあえずは終わったんだからな」

 

「………2人とも…僕のせいで傷を負わせた。本当にすまなかった… 何も…見えなく…なってしまっていた……!」

 

「言っただろ。アンタが本当に困った時は頼れって」

 

「僕もごめんね、君があそこまで思い詰めていたのに全然見えてなかったんだ。友達なのに…」

 

「ーーー…!」

 

「しっかりしてくれよ、委員長だろ」

 

「……うん…」

 

「………邪魔して悪いですが、早くあなた達もテントの方行ってください。ここじゃちゃんと処置できませんから」

 

「泣くのは人前じゃなくテントとかの人目につかないところでな。泣いてたんじゃ、せっかくのいい男もだいな───────」

 

 俺がそう言おうとした最中、突如向かって来た匂いに思わず顔を向け、収まったであろう現場の方をもう一度確認した。

 

 父さんは匂いで、母さんは気の流れで気配を察知したのか、二人も同じ方向に顔を向ける。

 

「おい、ちょっと待て!!爆弾ヴィランは全員機能停止させたんだな!?」

 

「は、はい!!確かに全員機能を停止したはずです!!」

 

「じゃあなんで向こうから爆弾ヴィランの匂いがするんだ!?確かに全員やったはずなのに…………」

 

「………狼、ヒミコ。爆弾ヴィランを倒した時、捕縛した脳無はどこに置いていた?最後にその姿を確認したのはいつどこだ!?」

 

「えっと………。確かこっちに向ってくる時には動かなくなった脳無は警察の方々が回収してい──────。………!?まさか、そういうことですか!?」

 

「ヴィラン連合!!奴等に事前に仕込んでったってわけか!!!」

 

「全員戦闘態勢!!あの脳無はまだ生きている!!いや!!脳無に潜んでた爆弾ヴィランがまだ生きてるぞ!!!」

 

 母さんの言葉を証明するように2体の黒い劣化版USJ脳無現れ、あっちにいた鉄田さんと忍さんの攻撃を受けながらもこちらに向かっていた。

  

 2体の脳無の再生スピードが早すぎることに違和感はあったのだが、脳無の個性による再生と、爆弾ヴィランの再生能力が合わさっていとなれば、全て説明がつく。

 

 爆弾ヴィランを体の奥に隠しておけば再生は早くなるし、いることに気づけもしないからウイルスによる破壊や、炎による破壊などから核を守れる上、最悪宿主である動けない脳無の代わりに、生き残っている爆弾ヴィランが隙を見計らって脳無の体を動かす事ができる。まさに、相性ピッタリの最悪な組み合わせというわけだ。

 

 咄嗟に動いた焦凍や母さん、父さんや忍さん、鉄田さんの攻撃で1体なんとか倒すことに成功したようだが、俺と出久、天哉にグラントリノさん、エンデヴァーさんやヒミコとともに相手している方は殆ど攻撃が核に当たらず、有効打が一撃も入っていない。

 

「くっそ!!ここまで市街地が近くて俊敏となると母さんは重火器をを使えないし!!父さんは個性を使えない!!何とか俺達だけでやるしかねーぞ!!」

 

「せめて核の位置さえわかれば話は別じゃが!!直ぐ再生して攻撃が上手く当たらん!!早く片付けねーと爆発するってのに面倒くさい相手だ!!」

 

「エンデヴァーさんはボロボロで火力出せないし………飯田君ももう限界だ…………。どうすればいいか早くかんが────」

 

「緑谷君!!くっそ!!早く手を放せ!!」

 

 飛び回って攻撃を与えていた緑谷が掴まれ、爆弾脳無は爆発しようと膨張を始めた。

 

 急いでヒミコは脳無の腕を切断し、天哉が蹴り上げたことで放り上げられた出久を俺がモード狼でなんとか救出したものの、爆弾脳無の膨張は止まらず、脳無は不気味な笑い声を辺りに響かせている。

 

「守装!!血月剛壁!!(この距離なら脳無を切断できるが、それでは爆発が緑谷君と狼に当たる!!盾で囲って完全に爆破する前に射撃で爆発させれば多少威力は弱まるが………それでも盾の強度が保つか…………!?)」

 

「(鉄流盾(アイアン・シールド)は熱に弱く爆破とは相性が悪い!!刀花の盾でも防ぎきれるかわからないが4式の投擲で爆破させるしか被害を縮める方法はない!!……………爆破が狼達に届かないことを祈るしかないか!!)」

 

 ものすごい速度で頭を動かし、最善とは言わずとも最良の手段を考えた二人は祈りながら攻撃の構えをとった。

 

 大きさからしてこのままでは半径900メートルに大穴が出来る上、あの二人でも防ぎきれるかどうかわからない攻撃に全員は構え、その男から意識を割いてしまった瞬間、また事態は動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偽者が蔓延るこの社会も………!!徒に力を振りまく犯罪者も…………!!全て粛清対象だ……………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 荒記と病に治療を受けていたステインが隠し持っていたナイフで拘束を解き、地面に落ちていた爆弾脳無の残骸から血を啜ったことで、自爆しようとしていた脳無の膨張が突如として止まった。

 

「………!!血闘術6式………!!『M82バレット』……………!!!」

 

「血闘術3式………!!『SAMスティンガー』………!!!」

 

 突如とした事態に反応できず、殆どが動きが止める中で2人は状況を直様判断し、脳無は刀花の槍の一撃と爪牙の蹴りの一撃で核を破壊されたことで今度こそ地面に倒れ伏した。

 

 敵であった脳無2体は倒れたものの、縄を切って脳無撃破の手助けとも取れる行動をしたステインに対し、プロヒーロー達は動揺する中、母さんがステインに対して口を開く。

 

「……………ステイン。……………いや、戦いが終わった今、お前のことは赤黒 血染と呼んだ方がいいのか?とりあえず、どっちの呼び名がいい?」

 

「赤黒 血染の名は捨てた…………。俺の名はステイン……………。正しき社会の為に動く者だ…………」

 

「………なるほど、わかった。じゃあ、お前のことはひとまずステインと呼ぼう」

 

「血影!!一体何をする気だ!?」

 

「今は黙って見ていてくれエンデヴァー。私はずっと、こいつとサシで話しをしたかったんだ。ついさっき治療したのも、私が出張の間こいつを調べてたのも、そのためだ。救急車が来るまででいい。少し黙っていてくれ」

 

「まさか貴様……!!ステインと手を組む気じゃなかろうな………!?」

 

「落ち着けエンデヴァー。俺達は誓ってそんな事はしない。………それに、ステインの傷はそう浅くない。これ以上下手に動けば大量出血で死ぬし、奴もそれを理解した上で動いていた。……………ステイン。お前も、話したかったから俺達に手を貸したんじゃないか?」

 

 その問の答えが真実であると言わんばかりにステインは黙り、エンデヴァーは奴と母さんと父さんからくる圧力で口を完全に閉じた。

 

 静かな緊張感を持ったこの場に、母さんはステインに言葉を投げかける。

 

「私がまず、お前に聞きたいのはここまでのことをした事についての動機だ。正しき社会の為にとお前は言っているが、はっきり言ってお前のやったことは人殺しと何ら変わらない外道の所業だ。こんな事で世界は変わらないし、もっとマシな方法もあったはずだ。…………何故、こんな事を?」

 

「…………俺は元々ヒーローを目指していた。だが、今の教育体制から見えるヒーロー社会の腐敗に絶望し、ヒーローの道を捨てた…………。…………言葉ならば人を動かせるのではと期待し、街頭演説も行ったりもしたが…………そこで言葉になんてものには力がないといと思い知らされた……………。…………お前達ならばわかるだろう?この国の闇と社会の腐敗を…………間近で見てきたお前たちならばな…………。この腐った社会はヒーローの本質を忘れ…………何故ヒーローがヒーローであるのかと考えるのをやめてしまった………。……………この国のヒーローの殆どは………腐りきっているんだ」

 

「………まぁ確かに、否定はできんな」

 

「ついさっきもどこぞのコスプレイヤー共が、ヒーロー名乗って逃げ帰った事だしね。…………もっと言うなら、今のヒーロー社会を受け入れている全てが駄目、って話だろ?」

 

「ああ……そうだ………。ヒーローは見返りを求めてはならず、自己犠牲の果てに得られる称号でなければならない………。それを愚民はヒーローを当たり前にいる存在だと誤解し………!!国はシステムという形で称号を汚し………!!偽物は英雄を語る偽物を増やし続ける………!!これをわからせなければ………!!理解させなければ腐った偽物が増え続ける…………!!俺を殺していいのは『本物の英雄』(オールマイト)だけだ……………!!!」

 

「…………なるほど。力による変化にでしか何も変わらず、誤ったものを正さなければ間違いが増え続けると理解したから、お前はこの事件を起こしたってわけか。質問の応答をありがとう」

 

「次は俺からの質問だ血影……フェンリル………………。何故………敵であるヴィランを助けようとする…………?何故…………お前は俺を助けたんだ…………?」

 

 ステインの言葉に、母さんは少し考えた素振りを見せた後、父さんを一瞥すると口を開いた。

 

「お前は『ヒーローは見返りを求めてはならず、自己犠牲の果てに得られる称号でなければならない』と言ったね。その言葉を否定するつもりはないし、私もその通りだと思うところはあるよ。………だが、そんなものはこの世に存在しない。お前が本物呼ぶ、オールマイトを含めてもね」

 

「貴様………!!やはりステインと手を組む気だったか…………!!!」

 

「はいはい落ち着いて。話はまだ終わってないだろ」

 

 母さんのステインを支持するような発言にうちの事務所を除いたヒーローはどよめき、エンデヴァーは憤怒の表情を浮かべ、今にも殴りかからんと体温を急激に上昇させた。

 

 父さんがエンデヴァーを止めるなか、ステインは母さんを今にも殺さんとする表情で睨みつける。

 

「貴様は………!!オールマイトを含め………!!この世に贋物しかないとでも言うのか……………!?」

 

「ああ………そうだ。人は脆く、醜く、浅ましく、不実で、横暴で、堕落的で、傲慢で、強欲で、利己的で、憤怒で、狡猾で、残酷な…………この世で最も醜い生物だ。この世にヒーローはいない。この世に英雄はいない。この世に………正義なんてものは存在しねーんだよ」

 

「ならばお前は動く…………!?自身が贋物であると知りながら…………!!何故………ヒーローをしている!?!?」

 

「ここまで来るまでに、多くの人間が小さな炎を私に灯してくれたからだ。贋物だった私を………少しでもいいものに仕上げようと………色んな意志を、私に注ぎ込んでくれたからだよ」

 

 そう言うと母さんはステインに近づき、奴が向けたナイフを片手で握り潰して口を開く。

 

「この世界にはヒーローは存在しない。この世界には英雄は存在しない。当然の話だ。ここはアニメの世界でも漫画の世界でもなく、完全完璧無欠、完成された人間なんていないんだから当然の話だ。そこが、お前を間違わせた前提であり、要因だ。完璧なものが存在すると信じ、崇拝し、誰にも完璧を求め続けるているガキなんだよ、お前は」

 

「英雄がいないのであれば誰が悪を裁く………!?誰が正義を決めるんだ……………!?」

 

「完璧じゃないから力貸して、完璧じゃないから力貸されて、助けて助けられて馬鹿やって…………みんなで何が正しいのかを少しずつ考えていくに決まってるだろ。あと、裁くとか決めるとか絶対的な考えは抜きな。誰だって間違えんだからそういうのは全部適当な考えぐらいが丁度いいんだよ」

 

 そう言いながら笑い、握りつぶしたナイフの粉を払いのける母さんを見て、ステインに漂っていた執念じみた何かが、少しずつ消えていった。

 

 つい先程までの険しい表情を消し、ステインだった赤黒 血染を口を開く。

 

「…………俺は、間違えたのか?」

 

「…………ああ、そうだ。少しでも前に向かっていこうとする意志の火を消し、まして自身のみが正しいという傲慢な考えを持ったこと。………それが、お前の罪だよ」

 

「…………俺はどうすればよかった?どうすれば…………世界を少しでもよく出来た?」

 

「お前が諦めず中からヒーローを変えてくのもよし。ヒーローにならずとも迷子の子供の案内をしてやるとかの小さな人助けをするのもよし。小さな行いを、積み上げていけば少しでもよくは出来たはずだよ。…………だが、お前は道を間違えた。死ぬ瞬間まで消えない罪を、お前は背負った。時は戻らず、死んだ者も戻ることはない。………もう、やり直すことが出来ないところまで、来てしまったんだ………お前は」

 

「………俺は、間違いなくタルタロスに送られるだろう。罪を償う機会はなく、死ぬまでそこで罪を数え続ける運命だ。………だが、許されるのなら。………せめて、心の中での贖罪は………許されるのだろうか?」

 

「………ああ、きっとね。贖罪の気持ちがいつ届くかはわからないが、それぐらいのことは地獄の閻魔様も許してくれるだろうさ」

 

「なら血影。お前が終わらしてくれ。正しき社会の為、多くの人間を殺し続けたヒーロー殺し『ステイン』を………ここで終わらせてくれ」

 

「………いいのか?お前をを殺していいのは『本物の英雄』(オールマイト)だけなんだろ?」

 

「もう………そんなものはどうでもいい。自分の間違えがわかった以上………そんなものはどうでもいい。それに………社会のためにと力を張っているのは………もう疲れた」

 

「………そうか、わかった。時刻、21:17(フタヒトヒトナナ)。ヒーロー殺しステイン。お前を、公務執行妨害及び殺人の罪により、逮捕する」

  

 その声とともに掛けられた手錠で気が緩んだのか、赤黒 血染は母さんに寄りかかる形で気絶し、ヒーロー殺しステインは完全に死んだ。

 

 立ち尽くしていた警察官に血染を引き渡している中、エンデヴァーは母さんを憤怒の形相で掴みかかる。

 

「貴様はあの時同様ヴィランを許すというわけか!!それについ先程の声明は明らかな政府への反抗声明だ!!フェンリル!!血影!!お前達を俺の権限を持って逮捕させてもらうぞ!!」

 

「あんた、まだ鳴羽田の苦労マン事件で私があんたのいいとこを横取りしたことを根に持ってんのかい。それと政府に対しての反抗声明どうこう言っているが、私が政府に喧嘩売ってんのはいつものことだ。そう怒ることでも咎めることでもないだろ」

 

「まぁ確かに、あれはやりすぎだがな。勢いで言ったのかもしれないが、オールマイトの事どうこう言うのは流石にアウトだろ」

 

「流石にあれはアウトだったか………。つい勢いで言っちまったが、オールマイトには後で謝罪の電話入れとかないとな…………。あとエンデヴァー。私と爪牙に手錠をかけるんじゃない。これじゃあ動きにくいだろ」

 

「動きにくいどうこうで犯罪者の手錠を外すわけ無いだろ!!それと!!俺が言ってるのはそういうことではない!!政府に対しての発言が問題だと言ってるんだ!!」

 

「間違ってるものを間違ってると言って何が悪い?今の政府や社会のシステムに問題があるからこそ、溢れ落ちる命と人生がある。私はそれを指摘しただけだ」

 

「というか俺たちの逮捕どうこうのどーでもいいことよりも、この子達を病院に搬送する方が先にするべきことだろ?」 

 

「ヒーローなんて大層な肩書背負うつもりはないが、やれることはたくさんあるんでね。そんなに成果上げたきゃ他所でやってろ。そんな奴相手にするほど、私達は暇じゃねーんだよ」

 

 そう言いながら掛けられた手錠を二人はひきちぎり、俺達は二人の誘導の元、救急車に乗せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

             ◆◆

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

『それでは、次のニュースです。今回の保須市襲撃事件に際し、ヴィラン連合と名乗るグループがUSJ襲撃時に使っていた脳無と呼ばれるヴィランが多数目撃されており、ヴィラン連合の驚異が市民の不安を煽っています』

 

『血影とフェンリルに倒された脳無が現れた際、脇目も振らず逃亡したヒーロー全員が辞職を提示したことということがわかりました。この不祥事に関し、日本ヒーロー委員会は現代ヒーローの質の低下が深く起因していると考え、誠に遺憾であると、表明を発表しました。また、ステイン逮捕時に血影が発した声明がネット上などで議論となっており、多くの評論家達の間でこの発言についての物議が行われているようです』

 

『今回の脳無達の確保に大きく貢献したフェンリル事務所所属のヒーロー達!!彼らの殆どが元ヴィランって話じゃないですか!?この貢献度から考えて!!ヴィランの社会復帰は社会活動に大きく貢献する!!と、考えてよろしいんでしょうか?公安委員会所属、久留さん』

 

『いやいやいや、それはないでしょ勝臣さん。いくら更生したといってもヴィランは結局ヴィラン!いつ社会に牙を向いてもおかしくはない存在だ!!いくら世界で認められているヴィラン更生とはいえ!!これを大きく政府として認めるわけには────』

 

『ちょっと待って下さいよ久留さん!私の知り合いの息子は元ヴィランで、今は無事更生して静かに社会人生活を謳歌しています。今の発言は必死になってやり直そうとしている人達に対して侮辱に当たるじゃないでしょか!?』

 

『今回の事を踏みしたヴィラン更生を認めるかどうかについてのアンケートの結果として、認めないと考えた人が50%、認めると考えた人が20%、どうするべきかわからないと考えた人が30%という結果になりました。これは前回のアンケートの結果を大きく塗り替えるものであり、世論のヴィランの更生に対する意識の変化が考えられ─────』

 

 ピッ。

 

 チャンネルを何回か変えていたテレビの電源が消され、つい先程までのうるささが嘘のように静かになった。

 

 リモコンを置き、首を何回かかきながら先生達の写ったモニターに対し、弔は口を開く。

 

「今回の件………全部が全部上手くいったとは言わないが…………大方俺達の恐怖を植え付けるって意味では上手くいったらしいな……………。…………全部、あんたの考え通りってわけか」

 

『………………いや、お前の言ったとおり、全部が全部俺の考え通りってわけじゃない。寧ろ予想外もいいとこだ』

 

『流石は『平和の象徴』と対を成す『殲滅王』と『殲滅女王』ってところだね。ヴィランというヴィランに絶望を与え、ヴィランの悪意を殲滅するとは、とても洒落が効いている二つ名だよ』

 

「だが、今回の襲撃でヴィラン連合の力と恐怖を見せつけ…………ステインの存在を消し去ることは十分出来た…………。どちらかといえば………今は俺の方に風が吹いているよ……………」

 

『理解が早くて結構、結構。なら、やることはもうわかっているな?』

 

「ヴィラン連合の恐怖という話題が消える前に交渉し………少しでも多くの強力な手駒を揃える…………。…………それが今、俺のやるべきことだ」 

 

『君がそう言うと思って、ブローカ達にはもう話を通してある。もう夜遅いし、君はもう寝なさい。明日からはとても忙しくなる』

 

「先生、念の為ブローカの方には人材をよく選べって言っといてくれ…………。下手な人材を持ちこまれて………面倒が増えるのはこっちだからな………。じゃあ………後はよろしく………。俺はもう寝る…………」

 

 そう言うともに、弔は自分の部屋に向かい、バーには黒霧とモニターにまだ映し出されている仮面の男、そして先生と呼ばれる男だけがその場に取り残された。

 

 少し驚いた様子で、黒霧は口を開く。

 

「まさかたった一夜で………死柄木 弔がここまで成長を見せてくれるとは…………。…………あなたの今回の教育に恐れ入りました」

 

『俺はただあいつの間違いを指摘し、その悪意を少しばかり煽っただけのことしかしてないさ。今回の成長に関しては、後継を選ぶこいつの目利きが良かった、ってところじゃねぇのか?』

 

『君にそう言ってもらって、僕としては感謝の極みだよ。ただ………僕としてやはり気に障ることが一つあるね』

 

「……………やはり、あの声明ですか」

 

『この声明はある意味、オールマイトより厄介なもんだからな。…………ステインの悪意という話題を、ステインの贖罪という形で話を変えるとは、めんどくせー事をしてくれたぜ、まったく。お前が話を通したブローカも、どこか歯切れが悪かったんだろ?』

 

『ああ、そうだね。ステインの悪意に集中して流れるはずだった悪意の多くが失われ、弔の糧となるものは少なくなってしまった。これは……かなりの誤算だよ』

 

「だとすると……かなり不味いのでは……………」

 

 

『いやまさか』『寧ろ此処からが面白いところだ』

  

 

『手に入れられる悪意は少なくなったことは誤算ではあるがそれはそれで結構結構…………!!これでより濃い悪意が弔に流れるというものだからね…………!!!彼はその悪意を糧にさらなる成長を見せてくれるはずさ……………!!!!』

 

『これは正しく蠱毒……………!!悪意という虫がお互いを食い合い………………!!!さらなる悪意に飲み込まれてさらに悪意を高めていく…………!!!それでこそ祭りが面白くなるってもんだ……………!!!!』 

 

 

 

 

『賽は投げられ血と惨劇を祝う祭りの夜は近い………!!!次こそは手に入れられさせてもらうぞ!!!!OFA………!!!!!』

 

 

 

『お前の絶望の表情はどんなものなんだろうな……………!!!楽しみにしてるぜ……………!!!!今度こそ全てを失ったときのお前の表情をな…………………!!!!!』

 

  

 

 

 

  

 

 

 

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