トラウマゾンビっていうタイトルにする予定でしたがやめました。なぜそのタイトルなのかだって?………言いたくないよ(ガクガクブルブル)
とある一室。
「ではヒーロー科志望、真血狼の入学を認める。この決定に異論はないね?」
「「「「「はーい…………大丈夫です………」」」」」
「元気ないね。せっかく成績1位者が我が校に入学するんだ。普通喜ばないかい?」
「いえ……彼が入ることには異論ありません………。けど先輩が……先輩が怖くて………」
「彼には罪ありませんし、自分の勝手で決めるわけにはいけないのはわかってます……。けど……会いたくありません………」
「俺達……間違いなく死ぬんだろうな……。短かったなー……俺の人生……」
「というか、雄英ヒーロー科の奴らも全員死ぬんじゃねーか……?だってあの人絶対ここ来るじゃん……。そして絶対トレーニングに付き合わされる……。雄英高校終了のお知らせだよ……」
「あーもー何もいうな……。考えたくない……。考えたくないよ……」
雄英ヒーロー科の合格者決める会議、それは滞りなくかつブルーな雰囲気で行われた。
そして最後の合格者、真血狼の合格決定に関しては半分の教師が真っ白に燃え尽きるという異常事態まで発生していたのである。このような事態は雄英高校始まって以来であり、どれだけのヒーローがトラウマを植え付けられたのかは想像に難くない。
「あ、あの少しよろしいでしょうか?」
燃え尽きなかった一人である13号が手を上げた。根津はそれに頷き、13号は話を続ける。
「彼の合格には異論はありません。しかし、彼の義妹である真血被身子の合格はどうなのでしょう?彼女は未遂とはいえ殺傷事件を起こしています。彼女を育てるということがヴィランを育てるということに繋がるのではないでしょうか?」
「……その意見には俺も同意だ。現に試験前と試験中、彼女は他者の血を求め受験者を襲いました。彼女の持ちこんでいた刀が逆刃刀ではなく本物であったならば彼は死んでいたかもしれない。彼女は危険すぎます」
「校長、どうお考えなのですか?」
ついさっきまでのブルーな雰囲気は消え、室内に張り詰めた雰囲気が立ち込める。
「……確かに彼女は危険だ。一つ間違えばヴィランを育て、社会に一つ混乱を広げてしまう。……だが、ヴィランになりやすいということはヴィランに最も近い視線に立ち、寄り添える存在になれるかもしれないという可能性でもある。相澤君、彼女を頼めるか?」
「問題ありません。非合理的なことは嫌いですが、後の事件を作る方がさらに非合理的。責任を持って育て上げます」
「よろしい。それで、他の反論意見はあるかい?」
根津の声が響き渡るが誰もその声を返そうとはしない。
「それでは、これにてヒーロー科全42名の合格を確定する。各自合格発表VTRの制作に励んでくれ」
「では私はこれで帰らせてもらいます」
「おいおいつれねーな相澤!今夜は嫌なことは忘れてたっぷり飲むんだ!!お前も付き合えよ!!」
「離せマイク、俺はそういうのあまり好きじゃないんだ。あっ、それと一つ連絡が」
「んっ?連絡?」
「ブラッディーヒーロー血影からです。『私の息子と娘をこれからよろしく。それと私も帰り次第そっちに行くから覚悟しておけ』 だそうです。では帰ります」
相澤の足音とともに室内は凍りつき、誰も話さなくなる。そして
「雄英バリア!!雄英バリアを起動しろ!!!この学校が終わる!!」
「私辞職します!!今すぐ辞表を持ってくるのでちょっとお待ちを!!」
「AHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA」
「マイクが壊れた!!リカバリーガールを呼べ!!」
「もうダメだ………。雄英高校終了だァァァァァァァァァ!!」
その日、雄英校舎から響く二度目の大絶叫が辺りを震わせた。
これは雄英7不思議の一つ、『校舎から響く叫び声』として話題になったとかならなかったとか。
◆◆
「へックシ!」
「くしゃみなんて珍しいな。風邪か?」
「多分違うと思います。ついさっき狼もくしゃみしてましたし、誰かが噂してるんじゃないですかね?」
「だとしたら間違いなく母さん関連だろうな。絶対誰か絶叫してるよ」
「それどころか気絶してるかもしれませんよ?ありえないことじゃないですし……」
「そうだな……。ありえないことであってほしかったな………」
「そうですね……。ありえないことであってほしかったですね……」
全然ありえることに俺とヒミコは思わず乾いた笑いを浮かべ、冷や汗をを流す。
……母さん、帰ってこないといいな。今の聞かれたら間違いなく殺されるから帰ってこないといいな……本当に(切実)……。
そんな事考えていると呼び鈴が鳴り、俺とヒミコはビクッとする。
恐る恐るインターホーンのカメラを見ると母さんではなく、扉の大きさを簡単に超える大きさの大男が扉の前に立っているのが見えた。それも、知り合いの顔だ。
「おかえり父さん、仕事お疲れさま」
「おかえりなさいです爪牙さん。血を少し吸わせてください」
「おう、ただいま二人とも。遅くなって悪かったな。二人ともいい子にしてたか?」
「してたけど頭を撫でるな!身長が縮む!それとヒミコは噛み付こうとするな!父さん疲れてるんだぞ!」
「だってお腹へったですもん。どうしても爪牙さんの血が飲みたいのです」
「今飯持ってくるから少し待ってろ。父さんの血はまた後でだ」
「じゃあわかりました。狼の血で我慢します」
「何もわかってないだろ!俺の腕に噛み付くな!!」
キッチンの行く間何度も腕を振り回し、引き離そうとするが強く噛み付いてる為かなかなか離れない。
少しかがんで入ってきた父さんはヒーロースーツを片付けるため、バックヤードの方に行ってしまい止める気配はない。
友達への噛みつきグセは抑えてたくせに、なんで俺への噛みつきグセは治そうとしないんだ!!毎日噛まれるせいで俺の腕歯型だらけなんだぞ!!父さんも笑ってないで止めてくれ!!
「あっ、そうそう。こんなものがポストに届いてたぞ。雄英高校からだ」
俺が心の中で叫んでいると、父さんは思い出したかのように小包を出し、俺達に見せた。テーブルに置かれたそれを見るため、ヒミコも噛み付くのをやめる。
「これってまさか雄英の通知書?円盤状の機械が入ってるみたいだけど」
「そこのボタンを押すと映像が流れる。お前等なら多分大丈夫だろうから気軽に見ろ」
「気軽にって……。一応これ通知書だぞ?そんな気軽に見れるやつが──」
「ポチッとな」
「いたわここに忘れてた!!お前勝手にボタン押すんじゃねーよ!!まだ心の準備できてないんだぞ!!」
「どうせ大丈夫なんですから気軽に行きましょうよ。血でも飲みながら」
「さらっとまた人の腕を噛むな!大体こういうのは気軽なものじゃ──」
『私が投影されたのさ!!』
「めっちゃ気軽にマスコット出てきた!ほんと自由な奴らばっかだな!!」
「うるさいですよ狼。通知書見るんですから静かにしないと」
「俺悪いの!?」
ツッコミを何故か注意され、俺は静かに見ることとなった。
俺は周りにボケしかいないからツッコんでるだけなのになんで注意されるんだ?俺がいなかったら終わり……ってなに考えてんの?
わけがわからない自問自答している間にも白いマスコットは喋り、話を続ける。
『ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は…
校長さ!』
「あっ、これ校長だったんだ。てっきり白いネコのマスコットかと思った」
「ツッコミからボケに変わってますよ。大丈夫ですか?」
謎の心配をされつつも、俺は映像を見る。
『早速だけど結果を報告していくのさ!真血 狼、君の合否は考える間も無く決まったよ』
ゴクり……。
『筆記試験では平均85点以上をマークして全体を含めて上位の成績さ!マイナス30点されたのにすごいね君!』
「……これって、お前が騒ぎ起こさなかったら俺いち──」
「なにか言いました?」
「アッ、ハイ。スイマセン」
『さらに!実技成績もヴィランポイントも73ポイントと全体でトップの好成績!しかし僕達が見てたのはヴィランポイントだけじゃないのさ!救助活動Pレスキューポイント!しかも審査制!我々が見ていたもう一つの基礎能力さ!』
「私50ポイントぐらいだったのに、なんでそんなに溜まってるんですか?」
「0ポイントロボ周辺の雑魚倒してる内に溜まってた」
『君は危険が迫っていた受験生達を背負い救助していた!さらに居合わせた子に指示を出して避難を促していた!そんなわけで!敵P73ポイントに加え、救助活動Pが35ポイントの合計108ポイントで君は首席合格なのさ!』
まぁあれだけのことをしたし当然の結果だな。さすが俺って言ったところか(ドヤ顔)。
「嬉しいのはわかりますけどそのドヤ顔はやめて下さい。とてつもなく殴りたくなってきますから」
『続いては真血被身子、君の結果発表だ。筆記試験では平均57点、実技成績では敵P51、救助活動P47と悪くはない成績だ。……だが、未遂とはいえ君は事件を起こしている。それ故に君は危険だ』
「…………」
「ヒミコ……」
『だが、それは希望でもある』
「「………!」」
『君は志望した学生の中で最もヒーローに遠く、最もヴィランに近い人物だ。………だがそれは同時に君はヴィランに寄り添える数少ないヒーローになることができるかもしれないということでもある。よって私は真血被身子、君を雄英高校ヒーロー科合格を認めるよ。君が素晴らしいヒーローになれるよう我々もできる限り協力する。だから精一杯頑張ってくれ。ではこれで話はこれで以上、学校で会うことを楽しみにしているよ!!』
映像は完全に切れ、校長の姿は消えていった。
「……狼、私怖かったんです」
黙っていたヒミコが口を開き、話を続ける。
「こんな私を受け止めてくれる人なんてこの世にいない。そう思い生き続けてきました。けど、あなたが手を伸ばしてくれたのを始まりに全ては変わった。大切な家族に友達、そして私を受け止めてくれる学校……。私が夢見た普通を、あなたが見せてくれたんです」
ヒミコはこちらに駆け寄り、思いっきり俺を抱きしめる。
「だから私ヒーローになります。あなたみたいに誰かへ手を伸ばせる、そんなヒーローに私はなります。だから狼、これからよろしくお願いします」
そう言い、ヒミコはきれいな笑顔を俺に見せつけてくれた。
俺は何にも言わず、ただ彼女を抱きしめる。
………俺ももっと強くなろう。こいつの笑顔を守れる、こいつの当たり前を守れるぐらい強いヒーローになるために強くなる。
……だから頼む。罪深い俺を……どうか見ていてくれ。