うーん……またしてもいい感じのところで文字数が足りない。書きたいものがギリギリで上手く書けない………。
そろそろシリアスも増えてきたこの作品ですが、序盤はまだコメディ色強めなので、ご安心して御覧ください(ただし後半はシリアス強めかも。ブラド先生好きのみなさん。とりあえず、前半では色々すいません)。
拝啓。ブラドキング先生。本名、管 赤慈郎さん。
僕はあなたが変な噂(事実といえば事実)を流した事は許しませんし、ヒミコの生活を僅かでも揺るがしたあなたすを許すつもりはありません。
ですが、この噂はB組の生徒達を母さんと関わらないようにするために流した噂でそうですし、母さんの事は警戒させるべきなので納得はしています。
まぁ、とりあえず僕が言いたいことは一つ。
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「死ねとは言わないから毛根全部滅びろ!!!さっさと禿げちまえよクソ被害者が!!!!バルス!!!!!」
「待てやゴラアァ!!逃げるな!!!」
モード獣人になった事で凶暴性がマックスになった父さんは逃げる俺とヒミコをもの凄い勢いで追いかけながら電柱やら車を放り投げ、俺達は必死にその攻撃を躱しながらも必死に逃げ続けていた。
うん。なんでこんな状況になった?とりあえず、現実逃避もかねて時を30分戻そう。
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「それじゃあ、演習試験始めていくぞ」
ついにやって来た期末試験当日。筆記試験を乗り越えたことを喜ぶ暇もなく向かった演習場には、相澤を初めとする雄英の教師陣達が横一列に並んでいた。
「この試験でも勿論赤点はある。林間合宿行きてぇならみっともねぇヘマはするなよ」
「先生多いな?」
「5…6…8……9人?」
「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々分かってるとは思うが………」
「とりあえず、ロボ無双ではないよな」
「けど3日間の演習試験対策で準備万端だしいける!!いける!!絶対にみんなで林間合宿に行くんだから!!」
「ほほぅ!!そこまで情報を仕入れた上!!僕達教師に対して生意気な口を開いてくれるじゃないか!!それでこそ雄英生徒ってやつだよね!!!」
そう細くほほえみながら相澤先生の捕縛布の中から根津校長が飛び出し、他の先生もまた細く微笑んだ。セメントス先生がTDLにいたし、こういう反応があって当然だろう。
「校長先生!!具体的には何をやるのでしょうか!?」
「対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視し!!!諸君らにはこれから2人の1組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!!!」
「先…生方と…!?」
「予想はしてましたが、かなりハードな試験になりそうですね」
「どの先生も1級品の現役ヒーロー。かなりの強敵だな」
「尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度………諸々を踏まえて、独断で組ませてもらったから発表してくぞ。まず轟と八百万がチームで、俺とだ」
「「!!」」
「そして緑谷と爆豪がチーム」
「デクとかよクソがぁ!!足引っ張んじゃねぇぞ!!」
「う、うん!!精一杯頑張るよ!!」
「で相手は私がする!協力して勝ちに来いよ!!お二人さん!!」
「それぞれステージを用意してある。11組一斉スタートだ。試験の概要については各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間が勿体無い。速やかに乗れ」
対戦相手表
・イレイザーヘッド VS 轟&八百万
・オールマイト VS 爆豪&緑谷
・校長 VS 芦戸&上鳴
・13号 VS 青山&麗日
・プレゼントマイク VS 口田&耳郎
・エクトプラズム VS 蛙吹&常闇
・ミッドナイト VS 瀬呂&峰田
・スナイプ VS 障子&葉隠
・セメントス VS 切島&砂藤
・パワーローダー VS 飯田&尾白
・ブラドキング? VS 狼&被身子
「………えーっとブラド先生?全身包帯ぐるぐる巻になってますけど何があったんですか?ヴィランの襲撃があったとしても普通そんな姿にならないと思うんですけど」
「フガフガフガフンガ…………………。(昨夜B組の生徒達が先輩と関わらないようにと思って流した噂が先輩の耳に入ったらしくてね…………。夜明け辺りまで爆撃された上……………100回ぐらい殴られまくってたんだ………………。……………生徒を思ってやったこととはいえ……………君達の良からぬ噂を流したことには変わりないんだから自業自得なんだけどね……………。…………ほんと、変な噂流しちゃってごめんね)」
「完全に自業自得なんで同情するつもりはないですけど…………まぁ、お疲れさまです。母さんを警戒させるのは構わないですし、寧ろやってほしいんで、次からは正確な情報を流してください。母さんが大魔王っていう正確な情報を、お願いします」
「フガ…………フガ(うん…………本当にごめんね)」
ブラドは何とも言えない顔で自分を見つめている二人を包帯の下から見つめつつ、職員会議のことを思い出していた。
◆◆
「轟。一通り申し分ないが、全体的に力押しのきらいがあります。そして八百万は万能ですが、咄嗟の判断力や応用力に欠ける………。よって俺が個性を消し、近接戦で弱みを突きます」
「「「「異議なし!」」」」
「次に緑谷と爆豪ですが…………オールマイトさん頼みます。この二人に関しては能力や成績で組んでいません…………。ひとえに仲の悪さ!!先日からやっている演習対策で多少マシにはなったようですが、まだ完全には見極めきれていません。緑谷のことがお気に入り何でしょう?上手く誘導しといてくださいね」
「ふむ!わかったよ!!」
「しっかしイレイザー!!ここまでよくポイポイ上手い生徒の組み合わせを考えられるもんだよな!!よっぽど生徒達の事が好きで好きでたまんねーってとこか!!」
「俺はあくまで客観的に判断し、最適な組み合わせを決めただけだ。軽口は程々にしておかないと、生徒達に足元すくわれんぞ」
「なんだよこのツンデレめ!!好きなら好きってはっきり言えよ!!」
「けど、だからこそ私としては疑問ね。なんで真血 狼とヒミコの組み合わせを選んだの?試験の組み合わせとしては最悪な組み合わせじゃない?」
「長いことコンビで戦っているし、先日の保須襲撃でもその連携力をいかしてヴィランを撃退したじゃないか。なんでこの組み合わせを選んだんだ?」
ミッドナイトは何故かまったくわからないと言った様子で話し、ブラドの言葉に根津校長以外の教師も頷く仕草をした。少し考え込んだ様子で、相澤は口を開く。
「まず、真血 狼についての確認だ。間違いなく1年生の中で最も抜き出た生徒であり、普通の仮免試験よりも難しい試験である国際ヒーロー仮免試験を合格し、今までの雄英の歴史の中でも珍しい入学当初から仮免を持っている生徒だ。また指導力や指揮力にも長けており、言わずもがな演習対策でA組とB組の一体感を作り、その士気を大幅に高めたいわば傑物。下手なヒーローなんぞ、足元に及ばない存在だ」
「私も間近で見ていたからこそ言えることですが、彼の指導力や戦闘力はどれをとっても1級品。普通、教師に1年ヒーロー科全員の能力値データの算出を依頼し、その算出データから一人一人にあった演習試験用の冊子を独自で作るなんて事はできません。はっきり言って、その強さは異常と言えるほどです」
「次に真血 被身子。狼の義妹であり、彼女もまた生徒達の中でも抜き出た実力を持つ生徒の1人です。戦闘力や指揮能力、指導力に関しては狼に劣っているが、彼女の最もの強みはその戦術眼。周囲の状況や敵の情報を瞬時に判断し、的確な対策法と攻略法を的確に指示。他及び自らの強みを活かしての一方的な戦闘状況を構築できる恐るべき能力の持ち主です。また、緑谷同様個性の使い方がわかったためか、飛躍的にその実力を伸ばしているところから、将来性も十分保証できます」
「こないだの演習でも欠点だった機動力の問題を解決して見事狼少年との1、2フィニッシュを決めてたし、確かに飛躍的に実力を伸ばしているね。ヒミコ少女も少女で素晴らしい実力の持ち主だよ」
「………なんか、聞けば聞くほど組み合わしちゃいけない組み合わせだって思うのは俺だけ?」
「………いや、俺も同感だ。他の生徒と組み合わせたとしてもその実力を大いに発揮出来る姿は、まさにトランプのジョーカー。それを2枚揃えるっていうのは……流石に不味いと思うぞ」
「いや。それが案外そうでもない。この2人………いや、狼にはヒミコと行動する時に発生する大きな欠陥がある。それに気づかない限り、彼奴の飛躍もここまでだ。だからブラド。お前に1つ頼みがある」
◆◆
「制限時間は30分!君達の目的は『このハンドカフスをかける』もしくは『どちらか一人がこのステージから脱出』だ。また、こちらはハンデとして体重の約半分のおもりを装着する」
「脱出に関しては大きな実力差を視野に入れるため。おもりは戦闘を視野に入れるためってわけですね。わかりました」
「けどブラド先生……………。流石にその傷で戦闘をやるってのは流石に不味いと思います………。流石にそこまでのハンデありだと勝負になりませんし、俺達もそこまで弱くありません。他の先生を呼んだほうがいいんじゃないですか?」
「だからこそ、俺はお前達と戦わない。お前達の相手は別に用意してある」
「んっ!?なんですかあの鉄柱!?!?こっちに向かって飛んできてませんか!?!?」
「……………あれ?この光景………どっかで見覚えが……………」
ドオォォンッ!!!!!!
俺が首をかしげてる間にも鉄柱はこちらに飛来し、どこかで見たかのように深々とブラド先生の目の前に突き刺さった。
突き刺さった衝撃で舞った砂埃によって作られた砂のカーテンによりブラド先生と鉄柱周囲の様子は詳しく見えないが、男らしき人物が電柱から飛び降りるやいなやブラド先生は土下座をし、男はそんなブラド先生を見つめる仕草を見せる。
「いやー悪いな管。俺と刀花、どっちがこっちに行くかで揉めて少し遅れた。この鉄柱が突き刺さって壊れた道路の修繕費は、後のやつとまとめて払うから勘弁してくれ。それと変な噂を流したことを許すつもりはないが、刀花の説教と制裁をたっぷり喰らったようだから、今回は俺からの制裁はなしにしといてやる。次はないから、気をつけておくんだぞ」
「あっ………はい…………。この度は本当にすいませんでした……………」
「………あれ?この声、聞き覚えありませんか………?しかも今一番聞きたくない声な気がするんですけど…………」
「あれ?おかしいな。俺もこの声聞き覚えあるぞ。しかも今一番聞きたくない声だ。…………もしかして俺の耳。幻聴みたいなのが始まったのかな…………?」
「別に聞き間違えでもないし、幻聴でもないぞ。よぉお前等。今朝方ぶりだな」
その声が聞こえる共に砂のカーテンが開かれるとともに、その向こうで見慣れたヒーロースーツを身に着けている父さんがおもりを腕と足に付けている様子がはっきりと見えた。
俺とヒミコが迷わずもの凄い勢いでそっぽを向いて帰ろうとする中、父さんは俺達のヒーロースーツの裾を掴むとともに、馬鹿力で俺達を引き寄せる。
「なんだお前等?そんな逃げることないじゃないか。そんな怖いものが現れたわけでもないんだし、そんな恐怖のどん底に突き落とされた顔をしなくてもいいだろ」
「いやいやいや!!待て待て待て!!!」
「一体どうなっているんですかブラド先生!!私達の相手はあなたじゃなかったんですか!?!?この紙にもはっきりと明記され────ん?ちょっと待ってください!!これ一番端の方に『?』って書いてありますよ!!」
「しかもこれブラド先生のところだけシールみたいになってるじゃねーか!!おい!!ちょっと待て!!これはどういう事だ!?お前さては最初から仕組んでやがったな!?!?」
「いや………本当にごめん。相澤にけじめは謝罪じゃなくて仕事で返せって言われてな……………。それで今回申し訳ないと思いつつ………君達を騙していたというわけだ……………。…………本当にごめんね。2重の意味で…………」
「ふざけんなよお前マジで!!大魔王よりはマシだけど相手はかの魔王だぞ!?!?勝てる気まったくしねーよ!!!」
「しかも絶対この人脱出とか許さない屈指の番犬ですからね!!今年脱走しようとした人は全員3秒保たず即確保されたんですよ!?これって実質逮捕しかクリア条件ないじゃないですか!!!」
「戦いで逃げると書いてそのまま死という意味を表す。そんな当たり前のことがわかっている以上、脱出なんかさせるわけないだろ。現に脱出ゲートは跡形もなく既に破壊したし、これで脱出判定も不可能だから、頑張って俺を捕らえてみせろよ。じゃあ、その他のルールは全部管の奴が説明したとおりだから、さっさろ中に入って試験を始めよう。管。ゲートの方の開け閉めを忘れないようにな
」
「嫌だ!!助けて!!爪牙さんと刀花さんと書いて死と書きます!!!せめてゲートは閉めないで!!!!」
「てめぇ一生恨むからな!!死ねとは言わないけど禿げろ!!!さっさと毛根絶滅しろ!!!!」
「ごめんね…………。本当にごめんね…………」
そう言いながら無慈悲にもブラド先生はゲートを完全に閉め、父さんの両腕に荷物の様に抱えられていた俺達は適当に放り出された。
「それじゃあ早速、試験を始めるぞ。10秒経ったらモード獣人になるから、頑張って俺を捕らえてみせろよ。1………2…………」
「ど、ど、どうしますか狼!?!?このままじゃ私達120%の確率で死ですよ!!私まだ死にたくはありません!!!」
「と、と、とりあえずどっかの建物にダッシュ!!Harry up!!足を止めた瞬間に死ぬ!!!とりあえず走れ!!!!」
「…………なんだ。そんなに鬼ごっこがしたかったのか。父さん鬼ごっこの鬼は母さんより強いから、覚悟しておけよ。…………さてと………10秒経過」
待てよゴラアァ!!さっさと死ねぇ!!!逃げる悪い子は全員死じゃ!!!!
「「ヴィランの何倍もヴィランだ!!!!!!やっぱり魔王そのものだ!!!!!!」」
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そして現実逃避の時間は終わり、現時間に巻き戻る。
「あ、危ない!こ、これも危ない!フェンリルさん本当に私達を殺すつもりですか!?今の全部当たったら普通に死ぬ物ばっかりですよ!!」
「だから死ねって言ってるだろ!!俺は肩書上ヴィランなんだからどんな極悪非道なことやっても許される!!ここ死んでてめぇ等が死んだらそこまでのヒーローだってだけだ!!さぁ!!俺を止めてみろ!!!」
「だ、駄目だ!!完全にテレビに出しちゃいけない発言と表情だ!!モニターで見てる人!!今直ぐモザイク入れて!!うちの悪評がまた広がる!!!」
「待てやゴラアァ!!!」
そんな言葉を叫びつつも俺達は必死に逃げ、タワー状の建物がある分かれ道の狭い路地へと突き進み、そこで行き止まりに当たってしまった。
だが、このアクシデントも、ヒミコの計画の一つだ。
「フェンリルの強みは1対1で絶対に負けない事とその状況を無理矢理作り出す技術!!その強みを消したいのなら、物理的にその強みを消せばいい!!」
「大柄なせいで機動力が活かせないフェンリルに対しこっちの機動力は十分!!前にやった電撃速攻+多角的攻撃のセットってわけか!!………奇襲からっていう手札がなくなった以上、最初から全開いく!!…………魔血30%開放!!モード
「魔血………開放………!!!」
その声とともに俺達は自らの血を啜り、モード狼になった俺の周囲には赤い光が発生し、ヒミコの髪の一部が赤く染まった。
ヒミコは一足先に刀を抜いて突撃。それに続くようにして、俺も足に気をさせることで3式を発動させた上で向かって来たフェンリルに突撃し、攻撃を仕掛けていく。
「そうか!!向かってくるか!!だがこれじゃあ前の組手と同じで攻撃は俺に通らない!!機動力は封じられたとはいえ!!攻撃を捌く技術は俺の方が何倍も上だからな!!」
「ええそうです!!わかっています!!だからこそ!!ここに誘い込んだんです!!」
「俺達2人の攻撃だけで無理なら!!その捌く対象を増やせばいいってわけだ!!血闘術4式……!!『MGLダネル』…………!!」
一度人型に戻った俺は懐に隠していた父さんが俺達に向かって投げた幾つもの残骸をタワーの骨組みにある留め具に向かって投擲し、タワーの骨組みを完全に破壊した。
それによって重心を支えきれなくなったタワーは崩壊を始め、崩壊するとともに落ちてくる幾つもの残骸はヒミコの攻撃によってタワーの真下に縫い留められていた父さんに向かって容赦なく降り注いでいく。
「なるほど!!攻撃が捌かれるとわかっているのならばそれを前提として戦術を組み立てるというわけか!!確かにそれならば攻撃を捌ききれず!!俺には大いに隙が生まれる!!面白い手を考えるじゃないか!!!」
「わかっていると思いますが攻撃の手を緩めないでください!!この有利状況はタワーの崩壊が完全に終わるまでのたった数秒間!!それまでに削りきれなければジリ貧になります!!」
「ああわかっている!!この数秒で決めるぞ!!血闘術5式……!!『GAU-8アヴェンジャー』………!!」
「血闘術2式……!!『M9バヨネット』…………!!」
ヒミコは一度距離をとって刀を鞘に戻し、ワイヤー付きナイフでの高速斬撃を。俺はモード獣人になってでの高速連打の拳を徹底に父さんにぶつけた。
瓦礫の雨を防がないということもあってフェンリルは攻撃を捌ききれず、フェンリルのヒーロースーツの装甲が次々に壊れていく。
………しかし何故だ?父さんは何故余裕を隠さない?
「………ああ、強いよ。お前達は確かに強くなった。俺は確かに、お前達のその強さを認めてやるよ」
突如として父さんは攻撃を捌ききながらも、口を開いて俺達を深々と見つめた。幾手に及ぶ攻撃を受けているのにも関わらずやはり余裕の表情は一切崩れようとしない。
「………そんなにも強くなったのに関わらず、お前達はこれ以上先に進もうとするのか?お前達は、更に強くなろうとするのか?お前達は、本当にこれ以上強くなろうとするのか?」
「………ああ。当然だ。俺は更に強くなる。誰にも負けないため、全てを守るため、俺はいくらでも強くなる。当然の話だ」
「………はい。そうです。私は色んな人を助けるため、もうあんな涙を流す人が現れないよう、私は強くなります。当然の話です」
「なるほど………。驚くほど似た回答であり、驚くほど正反対な回答だな。…………これ以上強くなりたいっていうのであれば、そろそろ向き合ったらどうなんだ?お前は………一体何を恐れている?俺達に…………何を隠している?」
余裕の表情を崩さずに放ったフェンリルの言葉に対し俺は一瞬戸惑い、攻撃の速度が一瞬遅くなってしまった。
フェンリルはその隙に上空の瓦礫を全てを破壊し、タワーがあった場所の残骸の上に乗って俺を強く睨む。
「お前はいい加減ヒミコに向ける気持ちを依存ではなく、その気持ちを信頼に変えるべきだ。………お前が何を隠し、どう進もうと勝手だが、俺は絶対に自らと向き合おうとしないよう奴を認めるつもりはない。自らと向き合おうとしない奴に、これ以上の道ないんだよ」
「………うるさい。うるさいうるさいうるさい!!共に歩くことの何が悪い!?こいつを守り続ける事の何が悪い!?いつかの………夢の先を見ることの何が悪いっていうんだよ!!!」
「………狼?様子がおかしいですよ。一体どうしたっていうんですか?」
「うるさい………。俺は……俺は…………」
「間違った事をしようとする者の道を阻み、その道を正していくのも俺の仕事。………ここから、俺は少しばかり本気にならせてもらうぞ」
そういうとフェンリルは体内で高速で気を生成するとともに、生成した気を全身に高速で循環させていった。
次第にフェンリル体の周囲が青く輝き、黒い眼光が静かに開かれていく。
「血闘術7式……………。『SL-ランドウォーリアー』……………!!……………こいつを使うのは久しぶりだが………腕が鈍っているってわけじゃなさそうだ。………俺はヴィランなんだ。つまり、被害など気にせず、思いっきり力を開放することが出来る」
「瓦礫が全部破壊された以上引き続き近接戦闘を行うのは危険です!!1度散回し!!各自で状況を判断してから攻撃を仕掛けましょう!!私からの指示は出せませんがそこは狼の判断でなんとかカバーを──────」
ヒミコが口を開いている間にもフェンリルは青い閃光となって一瞬のうちにヒミコの胸元にまで接近し、拳による1撃を顎元に解き放った。
………だが、いつまで経ってもその攻撃による衝撃がヒミコに届く事はない。
「………理性を失わずにお前が出せる最大質力である55%の魔血開放で無理矢理俺の先回りをし、その攻撃を受け止めたか。だが、その代償としてヒーロースーツの装甲は全て粉々に砕けさったようだな。………これでもまだ、お前は向き合おうとしないのか?」
「うるさい………うるさい!!血闘術5式……!!『GAU-8アヴェンジャー』………!!」
「そうするのならば、俺も相応の力を持ってお前を倒そう…………。血闘術5式……!!『GAU-8アヴェンジャー』………!!」
全身に赤い痣を宿した狼と全身に青い光を纏ったフェンリルが放った血闘術の技と技とが大きくぶつかりあい、辺りの建物や街路樹などはその衝撃によって吹き飛んでいった。
しかし、一瞬均衡を保っていたぶつかり合いは次第に狼が劣勢となる形になっていき、ヒーロースーツだけではなく体すらも完全に壊す勢いでの攻撃が狼の体に容赦なく叩き込まれていく。
「流石に防御が硬いモード獣人でもこれ以上は流石に不味い……!!血闘術3式………!!『SAMスティンガー』………!!」
一度距離を取っていたヒミコは跳躍してフェンリルに対して蹴りを入れるが、フェンリルはその攻撃を片手で受け止め、いとも簡単といわんばかりにその攻撃を完全にいなした。
だが、これで終わりではないばかりに、ヒミコは刀とナイフを抜いて攻撃を仕掛け続ける。
「血闘術4式!!『MGLダネル』!!1式!!『D-101デリンジャー』!!!2式!!『M9バヨネット』!!」
体内で蓄積していた気を全て消費して放たれた技の連発に、さしものフェンリルも1度後ろに下がり体制を少し崩した。
しかし、技の連発の代償で体力を大幅に消費したヒミコは膝をつき、呼吸を荒げてしまう。
「ヒミコ………下がれ!!ここは俺が相手をする………!!これ以上はお前の………体力が保たない!!」
「私より………ボロボロなあなたが何を言ってるんですか!?今の衝撃で辺りの建物が壊れた以上逃げるなんて事はできませんし…………1人で行くなんて自殺行為です!!せめて2人で一緒に───」
「そんな話をしてる余裕がお前等にはあるのか!?!?『牙爪連爪牙』!!!!!」
青い光を纏った弾丸の如しフェンリルの突撃が迫ったことで狼とヒミコは急いで回避行動をとるが、跳弾する弾丸の如く迫る青い光がいつまでも2人は追いかけ、既に気を消費していたヒミコはその攻撃をもろに喰らう………はずだった
「狼!?その体で一体何を!?!?」
「魔血疑似完全開放!!『魔狼剛血壁』!!!」
全身に宿っていた痣を腕に集中させることで擬似的に100%の力を引き出した狼はヒミコを守るような位置に跳躍し、腕を合わせるような体制でフェンリルの攻撃を無理矢理受け止めた。
しかし、擬似的力を引き出した代償かのように狼の腕はみるみるうちに出久が力を使えなかった時のように内部から壊れていき、狼はフェンリルの攻撃を受け止めきれず車にはねられたかのように大きく吹き飛ばされてしまった。
「狼の唯一にして最大の欠陥………。それはヒミコに向けている感情が信頼から来るものではなく、依存から来るものであるという事だ。信頼が心から信じる気持ちから生まれたものに対して、依存は異常な執着心から生まれた感情である以上、狼は守るためならば自身の命など消費品ぐらいの価値しかないものとしか考えていない上、その命を軽々しく使ってしまう。…………ヒーローが誰かの命を守る仕事である以上………これを自覚しない限り………あいつはヒーローになることは出来ず………これ以上強くなることは出来ない。………真血 狼が目指す真のヒーローになるまでの道は…………ここで終わりだ」