皆さん。2021年最後の投稿でございます。やり残した事はないでしょうか?
熊は宿題の処理を血の涙を流しながらやってしますが、来年は投稿も勉強もとにかく計画的にやっていきたいと願うばかりです。
そして皆さん、年明け直前に重要なお知らせです。
この度………redapppleさんが提案してくれた3人のキャラのうち、1人がこの小説に登場します!!!
熊が前にキャラを提案していいよと言ったのですが、その時の前より実はredapppleキャラを提案したいっていうメールをいただいていました。
それでメールを見たのですが熊が考えるより100倍くらい丁寧で細かいキャラ設定で殆ど変更点がなく………もう少しオリキャラを作る時はそのキャラの設定をよく練ろうと思い知らされました…………。
今回頂いたのは細かいキャラ設定があるメールでしたが、キャラの名前と個性、大まかな性格さえ提案してくれれば、全てとはいきませんが採用させていただきますので、ご気楽にメールしてください。
redappleさんが提案した残り2人は、後々直ぐ出てきますのでどうかご期待を(ちゃんとキャラを動かせているかのプレッシャーがすごい)。
人は、眠る度に時折夢を見る。
自身がなりたいものの夢、好きなものの夢、過去の淡い記憶いったものを心が失わない様にするため、人は無意識の中でそれらを振り返る。
『狼!!君はなんで授業中に毎回寝るんだ!!これで今月50回目だぞ!!50回目!!』
『へぇー……以外だね………狼君がお花好きだなんて…………。………これ………売れ残りのマリーゴールドとディアスキアの花なんだけど………よかったら貰ってくれない?』
『やべぇ!!勝手に機械に触った事が親父にバレちまった!!少しでいい!!帰ったら絶対に怒られるから少しの間家に置いてくれよ狼!!!』
『痛ってぇ…………。やっぱお前には全然勝てねーな…………。………けど!!絶対にいつかはお前に勝つからな!!覚悟しておけよ狼!!』
…………夢の中でずっと眠ることができればどれほど幸せなのかは…………考えるまでもない事だ。
だが…………夢は必ず終わりを迎える。自分を現実に引き戻そうと…………確かな現実を突きつける。
『おい!!おい!!しっかりしろよ!!!なぁ!!!しっかりしてくれよ凛!!!!』
『ごめんね…………なかなか謝ることが出来なくて………………。ごめんね………あんな事で怒っちゃって……………。……………私の分まで…………最高の…………ヒー…………ローになってね。大好き…………だよ…………おにい……………ちゃ…………ん……………』
『凛起きろよ………。なぁ………起きてくれよ………おい………。こんなの夢だ………。こんなの全部夢だ……………。頼む………。頼む……………!!起きてくれぇぇ…………!!!』
◆◆
「はあぁぁっ…………!!はぁ………はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ………はぁ…………はぁ…………はぁ…………。…………なんだ………ただの夢か。…………フェンリルは…………試験は………………ここは一体………?」
「ここは、ついさっきのところから少し離れた廃病院を模した施設の中です。狼が吹き飛ばされた先にたまたまあったガスタンクが上手く爆発と強烈な匂いを発生させたお陰で、なんとかフェンリルさんを振り切ってここまで逃げることが出来たんですよ」
俺が夢から覚めて周囲の状況を判断できず、混乱していると、腕に大量の包帯を抱えたヒミコが奥から現れた。
ヒミコの言っていた爆発のせいか、ヒーロースーツである茶色いニットの1部は焦げてボロボロだし、焦げた場所から除き見える服の内側に付けられた防弾防刃チョッキも一部ヒビが入っているようだが、安心なことにそれ以上の怪我らしい怪我はしていないようだ。
寝かされていたベットから立ち上がろうと腕を動かそうとするが激痛が走って上手く動かせず、俺は苦痛の声を上げる。
「………廃病院を模してるってこともあって、ここには腕の傷の治療に必要な様々なものが置いてあったんです。…………ですが治療用ウイルスも流石にここにはないですし、腕にはめる安全の為のアーマーもない以上、あなたが戦闘することを認めることはできません。気絶している間ずっとうなされてましたし………今は安静に───────」
「いや、何分寝ていたかはわからないが………それでも相応の時間が経っちまった………。うっ…………腕の傷は確かに痛いが、我慢できないほどじゃない……………。フェンリルをどうにか確保し…………なんとしてでも試験に合格するぞ………うっう…………………」
「そんな大怪我で試験なんか出来るわけないでしょ!!治療したといってもあくまで応急処置の範疇を出ない大怪我ですし!!これで戦闘すれば余計に怪我が悪化します!!…………この際、赤点を取ってでもリタイアしてリカバリーガールの治療を────」
「負けるぐらいなら今直ぐこの場で死んだ方がマシだ!!!!負けることは絶対に許されない………!!負けた瞬間俺はただのゴミ以下のガラクタだ…………!!…………俺みたいな命!!!!今この場で死んでもいくらでも替えがき─────」
「あなたの命の替えが効くわけないでしょ!!!私を救ってくれたあなたがそんな事言わないで!!!!…………死んだ方がマシだなんて…………もう二度と言わないでください!!!!」
声を荒げて言い放つ俺と同じ様に、ヒミコもまた声を強く荒げ、俺の頬を強く叩いた。
その声でようやくはっとなって顔を上げると、そこには顔に大粒の涙を浮かべているヒミコの姿があり、俺は押し黙って外に出ようとする足を止めるしかなかった。
俺とヒミコの間に気まずい空気が流れ、俺はただ無意味とわかっていながらギプスの下にある腕の傷を見つめるしかない。
「………ねぇ狼。私……あなたがうなされている間……何度も『凛』っていう人の名前を言っているのを聞いたの…………。………フェンリルさんが狼に言ってた隠していることって………もしかして………その凛さんに関係が………あるんですか?」
ヒミコは少し戸惑いながらも俺にそう言い、俺はそれが答えという様に押し黙るしかなかった。
そんな俺に、ヒミコは首元を掴んで掴み掛かる。
「お願いします!!私に隠してることを教えて下さい!!あなたは過去に何があったんですか!?一体なんで自分の体を考えないで私の事ばかり守るんですか!?………なんで私の事は知ってるくせに!!なんであなたのことは私に教えてくれないんですか!?…………ねぇ答えて!!凛って誰!?!?いつかの夢の先って何なんですか!?!?答えてください!!!狼!!!!」
そう俺に叫びながらヒミコは俺をベットに突き飛ばし、俺はその問のどれにも答えられず、ただ押し黙るしかなかった。
………俺は今まで一度もこいつに対して俺の過去を語った事はなく、聞かれる度にその事をずっとごまかしてきた。
………こいつは確かに今、俺の過去の事を知りたがっている。俺を心配しているからこそ、本当の事を知りたがっている。
………だが、あの事だけはヒミコに言うわけにいかない。誰に対しても………この事を言うわけにはいかない。
………その事を知ったら………そいつの人生は俺同様狂うことになる。俺と同じ様に………人生の歯車が………狂い落ちてしまう。
だから何を言われても………俺はその事を言うわけにはいかない。言っては………ならないのだ…………。
「………わかりました。答えたくないっていうのは………嫌でもわかりました。…………じゃあせめて………この問いに答えてください。なんで………あの日…………あなたは私の手を取ったんですか……………?なんで…………手を取った相手が私だったんですか…………?私は…………その凛っていう人の………代替品なんですか…………?」
ヒミコは少し震え、少しの怒りと悲しみを持った表情で俺を少しに睨みつけてそう言った。
俺はその言葉に反応してベッドから立ち上がり、ヒミコを真正面から見つめる。
「何を馬鹿げた事を言っている………。お前が………あいつの代替品のわけがないだろ………。あいつの代わりも………お前の代わりも………存在するわけないんだ」
「………そんな事言って私を助けた理由は、どうせ私をその人に重ねたとかの理由でしょ?私をあの人の代わりとでも思ったんでしょ」
「………あいつはもう戻ってこない!結果は変わらない!時は巻き戻らない!あいつの死を!糧にして後悔のないように生きるしかない!………確かに始まりはあいつの姿を重ねたからだったが、あいつのことはとうに吹っ切ってんだよ!!」
「とうに吹っ切っている?笑わせないでください!今の話で全て確信しました!あなたが負けたくないと異常なまでに願うのはその過去の行いを繰り返さないため!………そんな思いを抱えたあなたのどこが!!過去を吹っ切ってるっていうんですか!!!」
「誰だって過去を後悔する!!生きている者の為!!その間違いを犯さないようにと生きる!!過去から逃れることは出来ないからこそ!!俺は全部背負って生きているだけだ!!」
「ならなんでその重荷を私に背負わせてくれないんですか!?なんで全てを背負おうとするんですか!?あの人の代わりじゃないって言うなら私にもその重荷を背負わせてくださいよ!!それが信頼ってもの何じゃないんですか!?」
「これは俺の罪であってお前の罪じゃない!!お前が背負う必要なんてないだろ!!!」
「あなたは私の罪を背負いながらも進み!!私に普通に生きれる場所を見せてくれた!!!だから今度は私が!!!あなたの罪を背負いながらも前に進みたいんですよ!!!!」
お互いに掴み掛かっての激しい言い合いはヒミコのその言葉によって一度終止符を打たれ、お互いに押し黙った。
だが不思議と、そこについさっきまでの息苦しくさはない。
「…………あなたの過去に何があったのかは、この際もう聞きません。ですが、あなたの言うその罪をあなただけが背負う必要はありません。それに私はもう………あなたに守られるだけの存在じゃありませんし………もう………あなたと隣で歩けるだけの力はあるはずです。もう………一人で闘う必要ないんですよ」
「………俺だけが傷つけば………もう誰かが傷つくことはない。もう………失うこともない。もう………泣くこともない。だから俺は………強くなりたかった。全てを守るための力が………全てを生かすための力が………もう………何も失わないだけの力が………俺は欲しかった」
「人は………完璧じゃない。人は………どこまでも弱い。だからこそ………助けて助けられてを繰り返しながら前に進んでいくんです。もう………私は一人じゃない」
「もう………俺は一人じゃない」
「「もう俺達は…………一人じゃない………!!」」
◆◆
「…………タイムアップまで残り5分。ゲートが壊されている以上脱出は出来ない上、他の建物は全て壊したからもう逃げる場所もない。そんななか……その戦力差でなお………お前達は俺に向かってくるのか?」
俺達が戦う準備を整え、外に出るとそこには俺達を待っていたとばかりに病院の入り口で仁王立ちをしていたフェンリルが待ち構えていた。
包帯でガチガチに固めた腕を替え、俺は意気揚々と口を開く。
「ああ、向かっていくよ。俺は………いや、俺達は絶対に負けない。俺達は今ここで必ず………あんたを超えてみせるよ」
「………その様子だと、ようやく自らと向き合ったようだな」
「ああ………父さんの言う通りだった。俺がヒミコに向けていた感情は失いたくないという気持ちで塗れた………信頼というには程遠い執着というべきものだった。俺は………ヒミコを心のどこかでまだ、守るべき存在だと思い込んでいたよ」
「ですがもう、私達は一人じゃない。完璧じゃないからこそ、私達は2人で1人のヒーローです。2人で………あなたを必ず超えてみせます」
「ならばそれを今ここで証明してみせろ。お前が自らを乗り越えた事を………お前達が2人で1人でヒーローだという事を………今ここで証明してみせろ………!!!血闘術7式……………。『SL-ランドウォーリアー』……………!!!!」
「いくぞ、ヒミコ」
「ええ、わかってます狼」
「「魔血………開放!!!」」
フェンリルがモード獣人となって青く輝くとともに、俺達は互いの腕を噛んで血を啜り、魔血開放を発動させた。
拳と拳を一度突き合わせ、顔を合わせるともに、俺達はフェンリルに向かっていく。
「まずは回り込んでからの多角的連打攻撃とともにフェンリルの動きを阻害!!血闘術の技によって変わるリーチの変化に気をつけながら突撃してください!!」
「俺は右下!!お前は左上に突っ込んで攻撃!!その後の事はお前の判断で臨機応変に決めて攻撃を維持し続けろ!!」
「………何をするかと思えば、これは完全にあの時の組手の再現じゃねーか。そんな策!!とっくに破って────」
「狼刀を!!」
「おう!!わかった!!」
端的な声でヒミコの作戦を理解した俺は投げられた刀をキャッチしながら攻撃を躱して刀による斬撃を仕掛け、ヒミコは俺に攻撃しようとするフェンリルの攻撃を阻害するような位置にナイフを投げ、それに対応しようとしたフェンリルに3式による蹴りを浴びせていった。
お互いの動きを知り尽くしているからこそできる連携にフェンリルは防戦一方になるとともに余裕の表情は崩れ、何処かに楽しそうな表情が表れていく。
「次は迫撃によるラッシュ!!その次はナイフによる斬撃!!」
「回り込んでからの蹴り!!懐に飛び込んでからの投げ!!回避してからの投擲!!」
「武器を持ち替えながら攻撃を仕掛けていけば俺は対応しにくい上!!おもりの重さと回り込みながら攻撃をされちゃあ動きも取りづらい!!!この短期間でまた面白いもんを考えてくれるじゃねぇか!!!」
「ああそうだ!!これがあんたを攻略するために2人で考えた策だ!!!」
「血闘術がどんな状況に対応できる技とはいえ、常に状況が変化してはその対応速度はどうしても遅れる!!それに加えて武術の戦いにおいておもりというハンデは埋めようのない絶対的な差ですから戦力差を埋めるには十分というわけです!!!」
「なるほど!!確かにこれが組手だったら俺はなす術がなく終わっていた!!だがこれは組手ではない本当の戦闘!!おもりが邪魔だっていうならその重みを逆に活かしてやればいい!!多少大きく動いて無駄に体力は消費しちまうがこれなら絶対的な差を埋められるっていうわけだ!!血闘術3式!!『SAMスティンガー』!!血闘術2式!!『M9バヨネット』!!」
おもりの重さを活かした不規則な動きから突如放たれた3式と2式を躱せず、俺の左腕はバキバキという音を立てながら壊れていくギブスとともに使い物にならなくなり、ヒミコの手に握られていた残りのナイフは無惨にも真っ二つとなり、足から鮮血が走った。
だが、それでも、俺とヒミコは止まらない。
「まだ………まだ!!まだ止まるのはここじゃない……!!!」
「まだ証明していない……!!まだ何もなしていない……!!!まだ何も………超えていない!!!」
俺達が一度引くと考えていたフェンリルは何も出来ず俺達を懐に入れてしまい、俺達は体に残る何か全てを拳と刀に乗せた。
「…………!?!?これは……………!!!」
「これが俺達が今出せる………………………!!!!」
「これが私達が今出せる………………………!!!!!」
「「全てだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」」
その叫び声とともに出された俺達にとって最後の一撃は今まで全く動こうとしなかったフェンリルの体を確かに大きく動かし、フェンリルのヒーロースーツが粉々に砕け散けちるとともに、フェンリルの血が宙に飛び散った。
だが、それでもまだ、フェンリルは動き続けている。
「グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………!!!…………血闘術8式!!!!!『M18A1 クレイモア』!!!!!!!!!!」
フェンリルの体内にある気を爆発させるようにするとともに放たれたカウンターによって俺達の攻撃がそのまま10倍となって返されたことで、俺達はつい先程の廃病院の壁に大穴を開けながらふっ飛ばされた後、大きな音とともに柱に叩きつけられて完全に意識を失った。
「はぁ………はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ………はぁ…………はぁ…………はぁ……………。………今のは………もしかすると…………」
『タイムアップ!!!!期末試験これにて終了!!!!!!つーかフェンリル!!!!!あんた何やってんだい!?!?!?!?!?!?!?』
モニター室で今の状況の全てを唖然となりながら見ていた後、憤怒の表情でコールを行ったリカバリーガールの声によって、俺達は結局父さんに勝てないまま、期末テストを完全に終えたのだった。
◆◆
「…………終わった。もう…………完全に燃え尽きたぜ……………………」
「お土産話……………楽しみにして待ってますね…………………」
「まっ、まだわかんないよ!どんでん返しがあるかも知れないよ……!!」
「緑谷……それを口にしたらなくなるパターンだ………」
体のあちこちに大量の包帯巻きながら教室に戻った俺とヒミコであるが、試験をクリア出来なかった絶望で真っ白になり、教室の隅で体育座りをしながら林間合宿への未練を小声でずっと垂れ流していた。
「………うん。やりきった感はあるよ………。けど……よくよく考えたらこれ一応ガチの戦闘じゃなくて試験なわけだからカフス掛けなきゃ負けなわけだし…………結局あんな事を言い放ったにも関わらず少し父さんを動かしただけって何………?………うん………俺もう切腹する。ヒミコを林間合宿に行かせてやれなかった申し訳無さでもう死にたいから切腹する………。…………ヒミコ。介抱を頼む……………」
「はい……わかりました。じゃあ百ちゃん………私の刀は粉々に砕け散ったので新しい刀を…………」
「今の話聞いて出せるわけありませんわ!!!狼さんは白装束に着替えるのやめて!!!!ヒミコさんは切腹場所を作るのをやめてください!!!!」
「ていうかあんた達はどっからそんなもの取り出したの!?そんなところまで手際よくなくていいから!!」
「つーか記録映像見たけどよ…………。………何?あれ?魔王そのもの?」
「USJにいたヴィランの100倍怖いし………戦ってる姿完全にバーサーカーそのものだったたよ………。………うん。オールマイト相手だった緑谷君達の1000倍運が悪いよ………あれは…………」
「いやいや、なに言ってんだ耳郎………。もっと怖えーのは血影さんがさらにヤベー大魔王っていうとんでもない肩書を持っている事だ…………。あれは個性関係なしにバーサーカーなんだろ………?…………あれの倍以上の絵面となれば、そりゃああれだけ強くてもヒーローランキング低いわけだよ。完全に絵面が凶悪ヴィランそのものだもん……………」
「まさに悪鬼羅刹修羅の如し…………」
「まぁまぁ二人共、一旦落ち着けって。わかんねぇのは俺もさ。峰田のお陰でクリアはしたけど、結局最後で寝ちまって俺は最後の方なんにもしてねー。………お前達に限っては試験うんぬ前に、脱出するっていう前提が跡形もなく粉々だったわけだから採点基準めちゃくちゃだし、とにかく採点基準が明かされていない以上は………」
「黙れ瀬呂………お前の話は聞いていない………」
「あれだけ見栄を張っといてクリア出来なかった絶望で私達はもう死にたいんです…………。とりあえず瀬呂君………黙っててください」
「慰めてやってんのにひでーなお前等!!!そして何で急に名字呼び!?!?」
「予鈴が鳴ったら席に着け。それとお前等は何で着替えてるわ、切腹場所のセット取り出してんだ?さっさと着替えて、そんなもんしまえ」
勢いよく開けられたドアとともに、結果という名の絶望を持った相澤先生は、意地でも体育座りを実行し続けようとする俺達を適当に放り投げて席につかせ、話を始めた。
「おはよう。今回の期末テストだが………残念ながら赤点が出た。したがって………」
「切腹を………」
「介抱を………」
「林間学校は全員行きます!!!!」
「「どんでん返し来たぁぁぁぁぁ!!!!」」
意地でも抱えていた白装束を俺は放り投げ、ヒミコは少しずつ準備を進めていた切腹場所のセットを適当にそこら辺にいた優雅に投げつけて、大歓喜して喜びのあまり絶叫した。
そんな俺達を尻目に、相澤先生は話を続ける。
「今回の試験の筆記の方はゼロ。実技ではヒミコと狼がクリア判定になってはいなかったが、映像をリアルタイムで見ていたリカバリーガールと、その映像を視聴した校長を含めた全員から同情と申し訳無さから合格判定が特別に出た。ちなみに、赤点者は瀬呂だ」
「俺ボッチ赤点かよ!?クソ恥ずかしい奴じゃねーか!!!」
「今回の試験、我々
「本気で叩き潰すと仰っていたのは…」
「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点を取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽って奴さ」
「ちょっと待て相澤先生」
「あれを合理的虚偽と言うには流石に無理がありすぎます。間違いなく本気で殺す勢いでしたよね?あの人」
「ああ………あの人は論外だ………。本人と血影が言うには………
『課題に向き合わないようなら一度殺すのも致し方なし。まぁ、最悪引きずり戻せば戻ってくるし?愛の鞭ってやつだよ』
………だそうだ。ほんと………せっかく焼け野原になった演習場を校長が血の涙を流しながら直したのにも関わらず………それを30分で跡形もない廃墟にするし………あの人達はどこまでいっても規格外というか凶悪ヴィランだ…………。………校長に頼んでこの際、血影とフェンリル侵入禁止の看板を立ててもらうか」
「(助けてもらったのにも関わらず………今の小声の言葉にどこかで納得している自分がいる…………)」
「(マジでやってもらった方がいんじゃね………?たとえどれだけカッコよくて凄いヒーローだとしても凶悪ヴィランと同等のヤバいバーサーカーを入れるのはヤバいって…………)」
「(狼………今までよく生きてたな………)」
「(ヒミコちゃん………今までよく生きててくれたね…………)」
「で、ですが相澤先生!二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!それとそれは一度よく会議した上で………可能であるならば実行するべきかと…………」
「あの飯田君が本気でやるべきかで揺れている!?」
「確かにな。省みるよ。ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ。なので瀬呂。お前には別途に補習時間を設けてある。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツいわけだが、血影さんとフェンリルさんの地獄と比べたら100倍マシなわけだからな………。頑張ってくれ」
「もう今の聞いたら全部マシに見えますよ………。諦めて頑張ります…………」
「じゃあ、合宿のしおりを配るから後ろに回してけ」
結局どの先生からも生徒からも同情と憐れみの視線を向けられつつも、俺達は無事放課後を迎えた。
「まぁ何はともあれ、全員で行けて良かったね」
「一週間の強化合宿か!」
「結構な大荷物になるね」
「暗視ゴー………いや!!やったら今度こそ死!!やったら今度こそ死!!」
「峰田ちゃん。ギリギリで踏みとどまったわね」
「水着とか持ってねーや。色々買わねえとなぁ」
「あ、じゃあ明日休みだしテスト明けだし…………って事でA組皆で買い物行こうよ!」
「おお良い!!何気にそういうの初じゃね!?」
「たまにはそういうのもありかもな。勝己も当然行くに決まってるだろ?」
「誰が行くか。かったりィ」
「まぁまぁ、そんなデレないでみんなで行きましょうよ。みんなで行くの絶対に楽しいですって」
「誰が行くか!くっつくな!そういう荷物はな!1ヶ月前に全部揃えておくのが常識何だよ!!」
「何でいかねーと思ったらただの真面目君だっただけか」
「あはは…轟君も行かない?」
「休日は見舞いだ」
「今度こそやったら死!!今度こそやったら死!!……けど、見るだけならいいのでは?」
「狼。こいつ元に戻ってきてるよ」
「………一応、ファティーグ伯母さん連絡はしておく」
ってな感じな事がありつつも、轟以外のA組全員は木椰区ショッピングモールにやって来た。(ツンデレな爆豪は意地でも行かないと言い続けたため、俺とヒミコ、そして鋭児が当日に自宅訪問して無理やり引っ張って連れて来た)
ここ数年はトレーニングばっかで休日もあんまこういう場所には来てなかったし、なんだか結構ワクワクする。………なに?持ち運び便利な浮遊小型大容量冷蔵庫?………ヒミコの人工血液を運ぶのにも役立つかもだし…………少し高いけど買うか?これ?
「なんで犬顔は家電製品売り場に釣られてどっか行ってんだ!スニーカー売り場こっちだろうが!!」
「………はっ、わりぃ。久々に来るもんだから少しはしゃいだ」
「なぁなぁこの靴どうよ?割と似合ってね?」
「似合ってるは似合ってるが、運動って意味なら合ってないだろ。ここはいっそのこと、俺がよく使っているものの初級者向けであるこの5キロおもりシューズを………」
「へぇーいいな!!これに………するか馬鹿!!お前毎回トレーニングの度にこれ履いてランニングしてんの!?両方合わせて10キロだから持ち上げられるのもつれーってのに………これ履いて運動なんか出来るか!!」
「いや、これが毎日履いてると慣れてだな。それに最近は何かと物騒だから────」
「ギャンッ!!」
「こういう風に飛び道具にもなるから便利なんだ。道端で財布泥棒の被害に合いそうになっても、これさえあれば簡単に撃退可能ってわけだ」
「あっぶね!俺の財布盗まれてた!!」
「あっ!俺の財布も盗まれてる!!」
「あれ雄英の生徒か?財布泥棒捕まえたぞ!」
「ご協力感謝します!!最近やたらここら辺にいた客や店員の財布が盗まれていたのでどうすればいいのか困っていたんです!!お礼として!!1万円商品引換券どうぞ!!」
「マジか!?じゃあ早速飯奢れ!!俺は彼処の1番クレープで!!」
「じゃあ私はあの一番端高いソフトクリームで!!」
「芦戸に上鳴。流石にそんな高いの奢らせるのは駄目だろ。ここは少し妥協して安めやつを多めに…………」
「てめぇ等なにチンタラチンタラ道草くってんだ!?さっさと次のもん買いに行くぞ!!」
「俺達が勢いで置いてった荷物を持ってくるって、お前は真面目か」
うん。めちゃくちゃ楽しい。買い物って人助けすればタダでもの買えるし(これはこいつと周囲が異常だからです。良い子はそんな事考えないでね)、ワイワイするのめちゃくちゃ楽しい。
ヒミコの方も方でかなりワイワイやってるみたいだし、また来てもいいな。これ。
「しっかしよ。お前とヒミコの間の雰囲気って、こないだからなんか変わったよな。前は保護者って感じだったけど、今は相棒って感じでさ」
「わかるわかる。ヒミコちゃんといい感じになってるよね。それで?同じ家に住んでるっていうし?実際のところはどうなの?」
結局俺のおごりで飯を喰って休憩をしていた最中、電気と三奈が目を輝かせて突如そんな事を言いだした。
何を言い出してるんだこいつらは?と思いつつも食べていた杏仁豆腐を飲み込み、俺は口を開く。
「確かにあいつは強くなったし、守る対象から背中を預けられる存在へとこないだランクアップした。それがどうかしたんだ?」
「そうじゃねーよ!俺達が聞いてんのはそこじゃねーよ!」
「ヒミコちゃんとどういう関係かって聞いてんの!こないだ聞いた話では血は繋がっていない義兄妹だっていうし?つまりそういう事よ」
「?よくわからんが、俺はあいつの保護者兼義兄で相棒で、あいつは妹兼相棒だ。それがどうかしたんだよ」
「こいつもしや、超鈍感なのか?芦戸さん」
「間違いないね上鳴さん。確かに相棒っていう言葉が加わってるけど、私達が聞きたいのはそこじゃないんですよ。もっと重要なことなんですよ。こいつの数少ない弱点って、もしやシスコンと超鈍感ってところ?」
「ちょっと待て三奈。今俺の事をシスコンって呼んだか?俺はシスコンじゃない。あくまで保護者兼義兄兼相棒だ」
「なげーよ。つーかそういうところだぞ超鈍感」
「そういうところよ超鈍感」
「なんかよくわかんねーけど、お前わかるか爆豪?」
「こいつの鈍感さなんぞ知るか」
何故俺はディスられている?別に俺は鈍感じゃないぞ。
一度嗅いだことのある匂いが接近すればすぐ感知できるし、最近察知できるようになった気で敵の敵意とかも感じられるし、感知と察知に引っかかった人物の名前まで言い当てることが出来る。ほら。今ここに接近しているしている奴は───
「嘘だろ!?!?なんでここにいるんだよ!!!」
「狼?どこ行くんだよ!買い物まだ終わってねーぞ!!」
まだ唐揚げを食っている鋭児の静止を振り切り、俺は出久とUSJを襲った時の死柄木と呼ばれている男がいる場所にまで全力で走った。
なんの目的か意図かはわからないが、死柄木は出久を触れることが出来る位置にまで接近している。こんな白昼堂々とやらせるほどバックの奴は馬鹿ではないだろうが、あの男が何をしでかしているかわからない!!なんとしてでも捕まえて────
「あいつの情報を聞き出すってところ?あいつから話は聞いてたけど、わかりやすいぐらい顔に考えてることが出るね、あんた」
全力で走っていた俺の横から突如、女のそんな声が聞こえた。
横を向いて確認するとそこには確かにピンク色のロングストレートの髪型の女がおり…………そいつからは気持ち悪い敵意かそうじゃないか判別できない独特の気配と、炎の中で燃えていく時の血の匂いが感じ取れる。
………間違いない。こいつはヴィランだ。
「ちょっと待って!ちょっと待って!タイム!!私は君と戦いに来たってわけじゃなくって、弔君と出久君の会話の邪魔をさせたくないだけなんだよ!だから邪魔をしなければなんにもしないし、大人しく帰る帰る。………それに、私はこんな日常的でThe当たり前って感じなところは好きじゃないしね!もっと行くならスリルとデンジャラスなとこじゃないと!!」
「お前の趣味は知らねーし、両方を諸共捕縛させてもらう。………何のことを言っているかサッパリだが、洗いざらい連合の情報を吐いてもらうぞ」
「おおっ、怖い怖い。流石は『殲滅王』と『殲滅女王』の息子ってところだね。私も見てて大好きなんだ。あの人達。あの刺激的な戦い見てるだけで高揚しそうになっちゃうもん。………けど、だからこそ残念だよね。ヴィラン更生をおもしろくもないつまらないことやってるだなんてさ。スリルとデンジャラスが減っちゃって、刺激的なものが見れなくなっちゃうもん!!ほんとつまんないよね。あの2人」
「………てめぇ黙って聞いてれば減らず口を!!」
「おっと、これ以上は近づいちゃ駄目。でないとみんな、バーンッ、だよ」
そう言いながら女が宙で何かをなぞるような動作をすると、突如空中で爆発が起きた。
殆どの人がその爆発に視線を向けるなか、俺はより警戒心を強めて女を睨む。
「今の爆発………それがお前の個性か」
「大正解。私の個性は『発火導火線』。人には見えないエネルギーの線を指で辿って、発火や爆発を産み出す事が出来るんだ。ちなみに個性はもう一個あって、それは単純明快『エネルギー感知』。その名の通り、生物や生命のエネルギーをオーラとして感知できる個性だよ。」
「………エネルギー感知の方で俺の位置を索敵して接触し、発火導火線の方で今の爆発を起こしたってわけか。何故人一人に個性が2つもある!?まさかお前ヴィラン連合の仲間か!!」
「ピンポーン。またまた大正解。ヴィラン名は【マッドメン・ガール】。本名は【源 彩子】。あんたと同じ16歳。入った理由はスリルとデンジャラスをたっぷり感じられるって、変なおっさん紹介されたから。趣味の方は───」
「お前なんのつもりだ!?そんな容易く貴重な情報を相手に渡すだなんて、一体何を考えている!?!?」
「だってその方が面白いじゃん!!自分の事を知り尽くした相手が自分の事を殺そうと襲いかかってくるんだよ!?刺激とスリルとデンジャラスな感覚が感じられる事間違いなし!!考えただけでも心が踊るよ!!」
「どこまでもサイコな奴め…………!!」
「サイコで結構なんとやら。自己紹介は終わったし、弔君も話終わったみたいだから私行くね。次会う時はちゃーんと殺して殺されの最高の日常を作ろう!!」
「おい待て!!」
「あっ、そうだ。忘れてた、忘れてた。君が死ぬほど会いたがっているあの人から伝言だよ
『血と惨劇を祝う祭りの夜は近い………!!!あの時見れなかったお前の絶望の表情が楽しみにしてるぜ……………!!!精々俺を満足させる表情と演出を作れよ………………!!!!』
…………だって。あの人もあの人でほんと良い趣味してるよね。じゃあ、今度こそは全部守れるといいね。
俺が憤怒表情を浮かべて首根っこをつかもうとするのを必死で抑えているなか、女はどこまでも嘲笑うかのような笑みを浮かべたまま、暗闇にへと消えていった。
敵の悪意と俺の過去と罪が動き出した夏始め。俺の日常は今一度、崩れようとしていた。