鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

44 / 66
 
 あと1、2話で2人の英雄編も終わりかな?そして止まらないお気に入り登録者減少の嵐…………。
 
 散々煽っておいてもしわけないんですけど………最初から決めていたことなんです……………。
 
 これ挟まないと林間合宿編で事が片付かなくなるから仕方ないんです…………。
 
 あと数話で林間合宿編に行きますので………もう少しの辛抱を……………。
 
 


44 自業自得は忘れた頃に、やって来る

 

 

 

「本格的な手伝いは明日からやって貰おうと思ってはいたが仕方ない…………。ここまでやらかしちゃったとなれば…………流石に君達をパティーに連れていくわけにはいかないし……………これ以上誰かに迷惑かけるわけにもいかない…………。………君達は………僕と一緒に留守番をしてもらうよ……………」

 

「なんでですか!?全部この魚頭が悪いのに!!」

 

「いいえ!!さっさと負けを認めて死なないこの犬頭が全部悪いに決まってます!!元はと言えばあなたが負けを認めないせいでしょ!!一体この責任はどう落とし前をつけるんですか!?」

 

「それはこっちのセリフだ魚頭!!数少ないパーティー参加の機会を潰し上!!俺の貴重な時間を奪うとは何を考えていやがる!?この落とし前はお前の命で償ってもら─────」

 

「てめぇ等いい加減に黙れ!!!この馬鹿クソダブルが!!!!」

 

 

「「馬鹿クソダブルでまとめるな!!!」」

 

 

「うん。流石にこの様子じゃ連れていけないね」 

 

「ついさっきの騒ぎの被害だけでも十分だってのに………パーティーめちゃくちゃにさせれるわけにもいかないしな…………」

 

「自業自得ってやつだよ。自業自得」

 

 狼とヒスイ君の間に立って喧嘩を止めている爆豪君の姿にかなりの違和感を持ちつつも、あたりにまだ残る喧嘩の痕跡を見て、皆響香ちゃんの言うとおりだなと思うしかなかった。

 

「いつもは問題を起こすばかりの勝己君がストッパーになっている時点でかなりのやらかしをしたって事がわかりますし、どうせあなた達は隙を見て喧嘩するでしょ?」

 

「そんな状態のあなた達にパーティーを滅茶苦茶にされたらたまったもんじゃないし、今すぐ仲直りできるってほど、喧嘩の決着もついてないんでしょ?」

 

「何言ってんだヒミコ、メリッサ。もう決着は俺の勝ちで決着がついてる。こんな魚頭に、俺が負けるわけないだろ」

 

「ちょっと待って下さい犬頭。私の勝ちで決着はついているんですから、そこんところ間違えないでください。それとも何ですか?その年でもう耄碌したんですか?」 

 

「あんっ?なんだとやるのか?」

 

「今度こそけっち……………何するんですか爆豪さん。その手を放してください」

 

「これじゃあこいつを殴れないだろ勝己。さっさとその手を顔からどけ…………ちょっと?解原さん?なんでクレーンアームで持ち上げるんですか?ちょっと?」

 

「一応魚頭以外には理性効いてるみたいだが、少しでも近づけたら駄目だな、こりゃ」

 

「距離にして…………最低5メートルぐらいは放しておかないと大丈夫じゃないみたいだね……………。二人の言う通り………こりゃあ間違いなく連れて行ったら喧嘩するよ……………」

 

「だそうなので、大人しく二人は解原さんのところで手伝いやっててください。一応言っておきますけど拒否権ありませんし、強制ですから大人しくしててください。絶対に解原さんに迷惑かけないでくださいよ?いいですね」

 

「ヒミコの頼みでも………それはだな…………。自分でも抑えが効かないというか………なんというか………………」

 

「私もなんというか抑えが効かないのでなんともいえませんね……………。…………とりあえず、犬頭が死ねば話が早いんです─────」

 

「これは使いたくなかったんだけど、仕方ないわね。ヒスイ。これ以上迷惑かけるのなら、私あなたと絶縁するから」 

 

「!?!?!?!?冗談ですよね!?!?!?メリッサさん!!!!!」

 

「狼。私もあなたが少しでも迷惑かけるようなら直様あなたと絶縁しますので、覚悟しておいてくださいよ。一応言いますが、これは脅しじゃありません。本気です」

 

「わかりました!!!魚頭がすいません!!!!それだけは勘弁してください!!!!ほら!!!魚頭も謝れ!!!!」

 

「ごめんなさい!!!私が全て悪かったです!!!!もう喧嘩しないのでそれは勘弁してください!!!!ほんと犬頭がすいませんでした!!!!」

 

「これでようやく収縮は付いたみたいだし…………僕は一度ここから少し離れてる研究室に戻ってるから…………二人のことは………僕に任せて……………パティーに行っておいで…………………。お土産話…………楽しみにしてるよ……………」

 

「ふぅー………これでようやく静かになったな……………」

 

「というより………最初からこうしておけばよかったですね…………」

 

「殺し合うほど仲悪いって………彼奴等の間に昔何があったんだよ?やっぱり、衝撃的な事実みたいな事が発端?」

 

「ううん………。全然そういう凄い理由見たじゃなくて………ただ単純に組手の決着がつかなかったっていう理由がこじれて………今の感じになっちゃったの…………。どっちかが勝ちを譲れば終わるっていうのに………お互い意地っ張りだから譲らなくて…………」

 

「えぇぇー………。あんな死闘がそんなしょーもない理由で行われてたのかよ………」

 

「つーかそれに2度も巻き込まれた俺達って一体…………」

 

「落ち込んでた狼をそれが結果的に奮い立たせたから結果オーライといえば結果オーライなんだけどね………。………まぁ、解原さんがいれば大丈夫だろうし、あの2人の事は忘れて私達はパーティー楽しみましょ。理由がしょーもな過ぎて恥ずかしくなってきちゃった………」

 

「賛成賛成………」

 

「もうこの際飯食って忘れよう………。しょーもなすぎる理由で巻き込まれた自分が悲しくなってきた…………」

 

「あんたの場合は、いつもの行いが悪いからだと思うけどね」

 

「耳郎辛辣!!」 

 

 そんな事を話しながら解原さんの研究室とは逆方向にあるパーティー会場に向かい、ロビーでエレベーターを待っている最中突如として警報が辺りに鳴り響いた。

 

『I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより、I・エキスポエリアに、爆発物が仕掛けられたとの情報を入手しました。I・アイランドは、現時刻をもって厳重警戒モードへと移行します』

 

 そうアナウンスが行われるとともに、パーティー会場のタワー周辺に設置されたシャッターが一斉に閉じられ、狼に連絡しようと電話のアプリを開いていたスマホも圏外となってしまった。

 

 皆この場でできる限りの事はやってみるが結果は芳しく無く、全員の表情に不安が現れる。

 

「携帯は圏外だ。情報関係は全て遮断されてる」

 

「エレベーターも反応無いよ」

 

「外に配備されてるロボも動き出してるしている事からして、別れた狼達との合流も難しそうですね」

 

「おいおい……ここに来てトラブルかよ……」

 

「とりあえず、みんなレセプション会場に行こう。実は、オールマイトが来てるんだ」

 

「特に手がかりもないし、今そうするのが賢明だな」

 

「ならさっさと問題起こした奴ぶん殴りに行くぞ。つーかとりあえず10発は殴る」

 

「勝っちゃん!?それは不味いんじゃないかな!?」

 

「よほどあの二人のことでストレス溜まってるんですね、ストッパーボンバー」

 

「このタイミングで新しいあだ名出すのね」

 

 不安を打ち消そうとそんなジョークを交えながらレセプション会場に向かうが、そこで見えたのは最悪の事態。

  

 犯人と思われる銃を構える覆面の男達に拘束され、頼みの綱であったオールマイトも人質を取られ、何もできない様子だった。

 

 偵察に動いた出久君と響香ちゃんが暗い表情で帰還し、オールマイトがどうにか伝えてくれた伝言を話す。

 

「……オールマイトからの伝言は。……ヴィランが警備システムを占拠し、I・アイランドに居る全員を人質にしている、ってことだったよ。そして、"危険すぎる、逃げなさい"とも言ってた」

 

「……俺は、雄英教師であるオールマイトの言葉に従い、ここを脱出することを提案する」

 

「私も、飯田さんと同じ意見ですわ。我々はまだ、資格を持たない学生です」

  

「唯一資格を持ってる狼とヒスイもこの場にいないし、私も脱出が無難だと思うけど」

 

「Iアイランド一体がタルタロスと同じぐらいの警備力がありますから、脱出もかなり難しいかもですね」

 

「ウェッ!? それじゃ、救けが来るまで大人しく待つしかねーか……」

  

「上鳴、それでいいわけ? 救けに行こうとか思わないの?」

 

 弱気な電気君に対し響香ちゃんが思わず立ち上がり、口を開く。

 

「お、おいおい、オールマイトまでヴィランに捕まってんだぞ……! オイラたちだけで救けに行くなんて、無理すぎだっての!」

 

「あぁぁんっ?ビビってんのかアホ面?」

 

「……俺らはヒーローを目指してる」

  

 重苦しい空気の中で、外を睨むストッパーバンバーと、自分の手を見つめる焦冷君が、重い空気を破った。

 

「ですから! 私たちはまだヒーロー活動は──」

 

「こんな状況ヒーローなったらいくらでもある。それに、ここで黙ってんのはちげーだろ」

 

「本当に……何もしねえで良いのか……?」

 

 その言葉は私達の心に深く突き刺さるとともに、私達の心を大きく奮い立たせるには十分なものだ。

 

「……救けたい……!」

 

「絶対に……皆さんを助けましょう……!」

  

「そうと決まったら話は早い」

 

「どうにかして、ヴィラン全員ぶっ潰すぞ」

 

「緑谷オメー、USJで懲りてねーのかよ! ヴィランと戦うなんて無茶だぜ!」

 

「爆豪もヒミコも轟も!気持ちはわかるけど何も考えずに先行こうとするな!」

 

「流石に真正面から行くのは無理だよ!」

 

「だから、もう考えてるんだ。ヴィランと戦わずに、皆を救ける方法を」

 

「そんな方法どこに…………」

 

『意外とそれがそこら辺に転がってるんだよ…………。そんな夢みたい………楽観的な方法が………』

 

『魚頭!解原さんはともかく!お前飛べるんだからさっさと降りろ!!』

 

『ドローンに見つかるかもしれないんですから仕方ないでしょ!こんな状況じゃなかったら僕も君になんて乗っていません!!』

 

 緑谷君がそんな事を言った最中、私の赤いドレスと一緒についていた花の髪飾りから狼達の声が響き、全員の注目を集めた。

 

 私が急いで花飾りを外して少し調べてみると、そこには小型のマイクとイヤホンが付いている。

  

「もしかしてこれ通信機!?情報関係は全部ダメなのに何で!?」

 

『僕は一応ここの元関係者だよ…………?警備システムの事はある程度知っているし………最新のものならまだしもアナログなトランシーバー系の機器が使えることも熟知している………。…………念の為………ヒミコちゃんの花飾りに通信機を仕込んでおいて正解だった…………』

 

「そんな事より解原さん!」

 

「ヴィランと戦わずにみんなを助ける方法って!?」

 

『ここのセキュリティーシステム全てはこのタワーの一番上にある制御ルームで管理されていてね…………。ヴィランがシステムを乗っ取ったのならそこの頑丈なセキュリティーも解除されているはずだから…………君達でもセキュリティーを解除できるはずだよ……………』

 

「確かに………防犯セキュリティーが解除されているならここにいる私にでもシステムを止めれるはずだわ」

 

「ですが、ヴィランもそこは警戒しているはず。当然、警備も厳重では?」

 

「けど、逆説的に、連中の警備を掻い潜ることができれば──」

 

「プロヒーローが、オールマイトが動けるようになる!状況は一気に好転する!」

 

「やろう、デク君! このまま何もしないなんて、ヒーローになるならない以前の問題だと思う!」

 

「麗日さん……! うん、やろう! 人として当たり前のことを、出来ることを!」

 

「ウチも。このままってのはね」 

 

「俺も当然行くぜ!」

 

「こんなにお膳立てされて!黙っていられるわけないでしょ!」

 

『僕は一度ここに運んだ発明品を回収した後………君達と後で合流する…………。狼君とヒスイ君は今外のシャッターを無理矢理登ってそっちに向かっているから………君達はまず2人と合流してくれ…………』

  

「合流ポイントはどこで?」

 

『そこの階段を登っていった先にある途中にある植物ゾーンだ。メリッサがここの構図を知っているから、案内してもらってくれ』

 

『万が一ヴィランと遭遇したならば即気絶、または捕縛してください。下手に私達の情報が渡って、人質が危険になるのが一番不味いですから』

  

「………なるほど。それなら俺も行こう」

 

「ええ、私も。我々の安全を最優先に、それが、今の私たちにできる最善ですわ」

 

「勝ち目があるんなら、やるっきゃねえよな!」

 

「みんな………ありがとう!!」

 

「ちょっと待てよ!これじゃあ俺が情けないみたいになるじゃんか!あー! もう! わかったよ! 行けばいいんだろ!行けば!」

 

『よしっ。これで全員の意見がまとまったな』

 

『では、くれぐれもヴィランとの接触を避けて、安全に植物ゾーンに向かってきてください。…………メリッサさんを、お願いします』

 

『ヒミコのことをよろしく頼む』

 

 そうヒスイ君と狼が言うと通信は途切れ、場は再び静かになった。

 

 しかし、ついさっきの場とは売って変わり、この場に重苦しい空気は残っていない。

 

「ではまず狼達と合流する為、この先にある植物ゾーンに向かいましょ」

 

「その前にまず、このインカムを皆さんに配っておきます。いつでも使えるよう、耳に付けておいてください」

 

「おおいいな!こういうの!なんかスパイっぽい!!」

 

「これで一先ずははぐれても安心だね」

 

「おっしゃー!!燃えてきたぜ!!」

 

「全員まとめてぶっころ────」

 

「戦闘は避けろって言われたばっかだろ」

 

「気持ちはわかるけど落ち着いて、2人とも」

 

「では皆さん…………」

 

「行こう………みんなを助ける為に…………!!」

 

 出久君のその言葉に全員が頷き、私達はこのIアイランドを救うため動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

                                                    ◆◆

 

 

  

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「血闘術6式…………!!『M82バレット』……………!!!」

 

「血闘術5式…………!!『GAU-8アヴェンジャー』……………!!!」

 

 その声とともに、俺達は眼前に迫った残っていた警備ロボを破壊し、閉ざされていた道を無理矢理開けた。

 

 解原さんの個性『解析』によって、シャッターに覆われているタワーの抜け道を発見し、タワー内部に乗り込んだ俺達であったが、そこは不要になった警備ロボを廃棄する部屋だった。

 

 対して強くはないボロボロの旧式警備ロボ達であったものの、無駄に敷き詰められていたというか捨てられていたため想定よりかなり移動する時間が掛かり、大幅なロスタイムになってしまっている。

 

 下手に通信を繰り返せば電波が探知しかれないため通信できないヒミコ達の事を考えながら、俺達は先に進む。

 

「解原さんは下の階で降ろしてきたわけですが、大丈夫ですかね?武器一つない丸腰でしたし。やっぱり、私が着いていくべきだったのでは?」

 

「そんな悠長な事をしている時間があればな。敵の狙いが何なのかはわからないが、多くの発明品を保管してなおかつ、脱出しにくいタワーに狙いを付けたってことは、間違いなく逃亡の手段としてヘリとかを用意している。Iアイランドから出られたら、こっちは奴等を追跡できない」

 

「そんな事はわかっています。私はただ、解原さんが言っていた秘密兵器を早々に使えるものなら、使うべきだと言っているだけです。ヘリの事くらい頭に入っています」

 

「そう言っている奴に限って、言ってることは頭に入ってなかったりするんだ。どうせ頭に入ってなかったんだろ?」

 

「その言葉そのまま返します。あなたこそ、秘密兵器の存在が頭に入っていなかったんでしょ?」

 

「何だとおい?」

 

「ここで決着付けてやりましょうか?」

 

 遠くでやめろという声が聞こえた気がしつつも、お互いにそんな事をしている暇がないとわかっていたため、俺達は怒りをぶつけるとばかりに古い錆びたドアを蹴破った。

 

 このまま真っすぐ行けば、なんとか植物ゾーンに出れそうだ。 

 

「しかし、まさかあなたに義妹が出来ていたとは驚きです。僕はてっきり………凛さん一筋だと思っていましたよ」

 

「ヒミコはヒミコ。凛は凛だ。あいつの事を忘れたことだなんて事は………一時もない」

 

「そんぐらいはとっくにわかっています。僕はただ………彼処まで意気消沈していたあなたが………ここまで元気を取り戻すとは思っていなかっただけです」

 

「…………あいつは俺に救われたと思っているが…………本当に救われたのは俺の方だからな。もっとも、あいつの手を掴んだあの時、あいつが義妹になるだなんて事は全く頭に思い浮かんでいなかったけどな」

 

「そりゃそうでしょ。逆にそんな事を考えていたら、僕は既にあなたの事を徹底的に痛めつけた上で殺しています。……………まぁ、一種の変態(シスコン)になっているようですが

 

「ちょっと待て。誰の事がシスコンだ。俺はシスコンじゃない。あくまで保護者兼義兄兼相棒だ」

 

「長い。というか、そういうところですよ」

 

 深い溜め息を付き、魚頭は何故か呆れた表情を浮かべた。

 

 何故だ?何故最近ヒミコと鋭児、焦凍以外の周囲の人間にこんな表情を浮かべられる?俺は何もやっていない。

 

 ヒミコが背中を預ける存在になったことは嬉しい事だし、俺としても不満は一切ない。

 

 そしてそれを俺は言葉にして表しているだけなのにも関わらず何でしばらくぶりにあったメリッサや、魚頭にまでそんな表情を向けられなければならない?本当にどういうことなんだ?

  

「君が鈍感過ぎて頭が痛くなってきたので………この話はもういいです…………。…………僕が一番聞きたいのは、何故あの事を皆さんに話していないのかということです?………理解は十分できているはずでしょ?」

 

 ついさっきの呆れた表情を消し、ヒスイは真剣な表情で俺の方を見た。

 

 俺も少し、真剣な表情になる。 

 

「…………あと少しで装置は完成する。そうなってしまえばこんな話には意味はなくなるし、彼奴等に無駄な心配を掛けることはない。ヒミコはああ言ってくれたが…………俺の命なんて結局このスクラップ達と同様あってないもんだ。話すまでもない」

 

「そうやって自分自身に嘘を付き………真実を隠し続けては………何も守ることは出来ません。嘘なんてもの…………自身を蝕み続けていくだけです」

 

「…………お前まさか…………メリッサに生まれの事を話したのか?」

 

「ええ………そうです。さんざん隠していたのにも関わらず………彼女は何事もないように受け止めてくれましたよ」

 

 どこか嬉しそうな顔をしつつ、ヒスイは俺より少し早めに足を進めた。

 

 …………ヒスイは見た目こそ半魚人の異形型個性を持っているだけの人間に見えるが…………実際にはそうではない。

 

 こいつはアメリカにいたとあるマッドサイエンティストの下での細胞実験によって造り出された、魚と人間の交配種であり、こいつが持つ血を消費することで武器を作り出す母さんの血装に似た個性である『変幻血自在』と、精密に強弱つけて風をコントロールする『操風』という2つの個性も、その科学者の後ろにいた何者かによって与えられたもののそうだ。

 

 6年前、母さんと父さんが解原さんと共にアメリカに行った際、母さん達は現地のヒーローの協力要請を受ける形で研究所にいたその科学者を逮捕しに向かい、そこで科学者を守ろうと戦いを挑んできたヒスイを確保。

 

 科学者の下で様々な知識を得ていたヒスイではあったが、研究所の中でしか生活をしていなかったため知識が偏っていたため母さん達によって一度保護された。

  

「師匠達に保護されて………そこで世界の色んな事を知りましたが…………まさか自分があの人の背後にいる誰かの護衛をするために作られたとは…………思っていませんでした。…………いや。あの人が時々僕をゾッとするくらい不気味に笑って誰かを崇拝する姿から…………もうとっくにわかっていたのかもしれませんけどね」

 

「自分を産んでくれた親が悪だなんてことはありえないって自分に嘘ついて自分守っていたはずなのに…………その嘘が一番自分を傷つけていたってわけか」

 

「ええ………そうです。自分が生まれてはいけないものだっていう事は誰よりもわかっていたのに自分で選ばず…………僕はあの人を止めることが出来なかった。とっくに手遅れだったとしても…………手を伸ばすことぐらいは出来たのかもしれないのに」

 

「嘘を付いたら罰が当たるとはよく言うが、結局のところ罰じゃなくて自業自得だからな。そりゃ後悔もするだろ」

 

「そこまでわかっているのに………なんで自分に嘘を付き続けるんですか………?その苦しさは…………誰よりも感じているはずでしょ………?」

 

 俺は何も言わず、窓の向こうの空で浮かんでいる半月に目を向け、口を開く。

 

「人間だった俺は………あの時にもう死んだ。化物だった俺も………あの時にもう死んだ。そんな俺はヒーローでもヴィランでもない………ただの出来損ないだ。空虚な出来損ないが自分に嘘ついた所で苦しくはならないし、痛みなんてものはとっくに忘れた。とう死んだ何かが…………痛みを感じるだなんてことはないからな」

 

「あなたは十分人です…………。それに今生きてるでしょ…………」

 

「ああ、生きてる。人だった何かが、出来損ないとして生きているだけだ。…………お前は失くさなかったが…………俺はあの時に大切な何かを失くした。その何かを失くした以上生きていたとしても…………人間としても化物としてもとっくに死んでいる。…………ここにいるのは、真血 狼だった出来損ないだよ」

 

「あなた………まさか…………」 

 

「安心しろ。俺はそう簡単に終わるつもりはない。あいつのお陰で動き出した出来損ないの歯車を、ここで止めるつもりはない。俺が終わるのは……………全てを託した後だ。………そろそろ合流ポイントの植物ゾーンか。この話は、彼奴等には内緒にしておけよ」

 

 そう笑顔を見せると、俺はヒミコ達との合流ポイントである植物ゾーンに向かう足を少し早めた。

 

 こんな所で終わるつもりもなければ、真実を話すつもりもない。

 

 俺がやるべきことは……………ただ全てを守り、託すことだけなのだから。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 オリキャラ 人物紹介
 
 ・ヒスイ
 
 個性 変幻血自在
 
 自身の血液を消費して変幻自在の形状を与え操ることができ、操作性の自由度が高く、糸のように伸ばしたり、触手のようにしてものを掴んだり、切り離して網にする事ができる。ただし血装の様に銃火器を作り出すことは不可な他、外部から力によって得た個性なので血影達のように保有する血の量が多くないため、使いすぎると貧血を引き起こす。
 
 操風
 
 その名の通り風を操る個性であり、自身の体や武器に風を纏わせたり、足元に風を発生させることで飛ぶことが出来る。夜嵐イサナの個性『旋風』よりは威力こそ低いものの、より強弱を付けて風を使うことが出来る。
  
 
 AFOの事をひどく崇拝していたアメリカのマッドサイエンティストの科学者の個性『バイオテクノロジー』の細胞実験によって造り出された魚と人間の交配種であり、AFOの側近、或いは護衛として作られた人造人間。
 
 科学者の下で芸術や哲学、勉学、天文学、戦闘術など、様々な知識を学んでいた彼だはあったが、自分の存在や、時折狂気じみた姿を見せる科学者を保護されるまで疑問視。
 
 保護をした血影とフェンリルの、『君の身体も、命も、生き方も、君だけのもだ。君が選んでいいのだ』という言葉と与えられた『ヒスイ』という名の下、人のために戦うヒーローになることを決心。以降は彼等を師匠として慕い、血闘術の技術を身に着けた。
 
 彼の希望の通り、日本で本格的に修行させたい2人であったが、政府が彼に目をつけ、秘密裏に処分する事を危惧した結果、戸籍を偽造出来るまでの数年間、解原の親友であるデヴィットの下で暮らすこと命じ、Iアイランドで暮らしている。
 
 狼とメリッサとの仲は彼がやって来た6年前からであり、凛を亡くす4年前まで仲の良い兄弟子と弟弟子であったが、狼を元気づけるために彼が行った組手で決着がつかず犬猿の仲になり、お互いに実力こそ認めているものの、互いに死んでほしいと思うようになった。
 
 なお、本音の方では狼を心配しており、影でメリッサからツンデレと呼ばれている。
 
  
 
 
 
 
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。