鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 Warning!!!Warning!!!Warning!!!
 
 一部の人にとっては受け入れられない内容であり、人によっては見れないため、今回の話の閲覧は自己責任でお願いします。
 
 47.5話のネタ的な忠告ではなく…………本気の忠告です!!!
 
 もう一度言っておきます。本気の忠告です…………!!!自己責任でお願いします……………!!!!!
  
 
 
  
 


52 ウバエ

 

 

 

 狼達と一度分かれた私は爆豪さん、轟さんと何とか合流し、私達は共に凶悪ヴィラン【ムーンフィッシュ】の相手をしていた。

 

 地形が森ということもあってあまり爆発や炎も使えず、すばしっこいせいで中々私の攻撃も当たらないが、それ以上にヴィランの攻撃も当たらないという、ただただ時間が過ぎていくような戦いの中、突如としてそれは来た。

 

『ドケェェ!!!邪魔ダアアァァァァァ!!!!』

 

「まさかこれは………常闇さん!?」

 

 森そのものを破壊しようとする勢いで現れた黒影(ダークシャドウ)は私がつい先程までいた場所を粉々にしながら進み続け、眼前にいるムーンフィッシュを雑魚同然に吹き飛ばした。

 

 暴れる黒影(ダークシャドウ)の前を走っている障子さんと緑谷さんは必死に叫ぶ。

 

「爆豪!轟!どちらか頼む!!光を!!!」

 

「おい!!デクに触手!!鳥頭に何があった!?」

 

「常闇君の黒影(ダークシャドウ)が暴走した!!完全に見境なしだ!!!」

 

「じゃあ炎を────」

 

「待てアホ」

 

「肉ーーーーー駄目だぁああ!!!!」

 

黒影(ダークシャドウ)の攻撃をもろに動くのにまだ動くのか!?!?その子達の断面を見るのは僕だぁああ!!!横取りする─────」

 

強情(ネダ)ルナ!!三下!!!』

 

「見てぇ」

 

 爆豪さんがそう言って轟さんを止めた瞬間、黒影(ダークシャドウ)がつい先程まで私が戦っていたムーンフィッシュを過剰なまでに吹き飛ばし、ここら一体の木々が跡形もなく吹き飛んだ。

 

 合宿中に時折暴走しかけることはあったが、それでも抑えていたほうだったのかと、私は戦慄を隠せない。

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!暴れ足リンゾォ!!!!ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

 そう叫びながら今度は私達を倒そうと黒影(ダークシャドウ)は踵を返し、森を壊しながらこっちに向かって進撃した。

 

 常闇さんの個性は闇の中で凶暴性が高くなるという関係上、夜というこの時間の中では相性の良い個性を持つ者以外は容赦無くその餌食になっていただろう。

 

 だが、今この場には相性の良い個性を持つ者が2人もいる。

 

「ひゃん!」

 

「おい大丈夫か常闇!動けるか?」

 

「ああ………なんとか……………」

 

「てめぇと俺の相性が残念だぜ…………」

 

「………?すまん助かった………」

 

 黒影(ダークシャドウ)は爆豪さんと轟さんの出した爆発と炎の光によってなんとか静まり、黒影(ダークシャドウ)の中にいた常闇さんはフラフラとその場に座り込み、項垂れる。

 

「しかしまさか常闇さんの個性が彼処まで危険な側面を持つとは………思っていませんでした………。まさか私達が手こずっていたムーンフィッシュを一瞬で倒すとは…………」

 

「常闇大丈夫か?よく言う通りにしてくれた」

 

「障子………悪かった。緑谷も…………俺の心が未熟だった…………」

 

「常闇さん………」

  

「俺を庇った障子の腕が飛ばされた瞬間…………怒りに任せ黒影(ダークシャドウ)を解き放ってしまった…………。闇の深さ………それに加え俺の怒りに影響され奴の…………凶暴性に拍車をかけた…………。結果収容もできぬほどに増長し………障子を傷つけてしまった……………」

 

「そういうのは後だ………とお前なら言うだろうな」

 

「後悔するのは後にして、今はやるべきことをやりましょう。狼の予測ですが、ヴィランの目的が一応はわかりました」

 

「ヴィランの目的………?一体何だ…………?」

 

「生徒の誘拐、それも体育祭上位で知名度のある俺と爆豪、そしてお前と狼の誘拐だそうだ」

 

「俺達を………?何故………?」

 

「これも予測だけど、おそらく強力な脳無を作った上で、ヒーローの風当たりを強くするのが目的だと思う。脳無の原料は生きた人間。…………敵の戦力を削りつつ、ヒーローの信頼を割くには絶好のやり方だからね」

 

「チッ。胸クソ悪りい」

 

「狼もそれを防ぐため、こことは反対方向のポイントにいるはずの生徒達と黒影、ラグドールの救出に既に向かいました」

 

「自身が狙われているのにか」

 

「どうせあの馬鹿の事ですから、自分の事より他の誰かのことを優先したんでしょうね。全くもって馬鹿な奴です」

 

「とにかく、なら俺達も相澤先生達がいて一番安全な施設に────」

 

  

 

 

  

 

 

 

  

 

 

「みーつけた。探したましたよ。お兄様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟さんがそう言って指示を出そうとした最中、突如として白髪の女が現れてそう言うとともに糸らしきものを振るった。

 

 5人を風で浮かしてどうにか遠くに逃しつつ、不可視の風の刃を放って振るわれた糸を吹き飛ばしながら距離を詰め、槍の攻撃を現れたヴィランに放っていく。

 

「ヴィラン!?新手か!!」

 

「早い!!ついさっきの奴より強いぞ!!」

 

「皆さんは早く逃げてください!!ここは私が足止めします!!!」

 

「1人でやる気か!?無茶な事はよせ!!」

 

「無茶はこんな事をやってる時点で最初から承知です!!ついさっきも言いましたがヴィランの目的は生徒の誘拐!!さらに言えばあなた達3人の誘拐です!!!何もせず固まっていれば格好の餌食ですよ!!!」

 

「ヒスイ君の言う通りだ!!今は走って!!!早く行こう!!!!」

 

「ちっ……ここは任せるぞ!!!」

 

「助けられた礼は後で返す!!死ぬなよ!!!」

 

 そう言いながら5人はどうにかこの場から離脱し、残されたのは私と眼前のヴィランのみになった。

 

 何故か目的であろう爆豪さん達を追わないヴィランを警戒しつつ、私は右手の槍とは別に左手に刀を作り出し、更に攻撃を叩き込んでいく。

 

「へぇー。これがお兄様の戦いですか。つい最近までIアイアイランドに引きこもってたせいで全然情報が入らなかったから心配でしたが、中々強いですね。それでこそ私のお兄様です」

 

「あなたつい先程から私のことをお兄様、お兄様と言っていますが、私には兄弟などいません。そもそも、あなたの方が明らかに年上でしょう」

 

「女の子に大して年齢のタブーだって、ミハエル博士に教わらなかったのですか?それとももう忘れちゃいました?」

 

 不気味に弧を描きながら笑うその口からミハエルという言葉が飛び出すとともに、名前すらなかった頃の過去の記憶の映像が大量に思い出されていった。

 

 一度距離を取った私を更に笑みを浮かべながら、ヴィランは笑う。

 

「あら。ミハエル博士の事は覚えていたんですね。なら、OFA─G─89という名も覚えていますかね?」

 

「その名はやめてください。私の名前はヒスイ。師匠達から授かった名こそが私の名であり、そんなモルモットのような名はとうの昔に捨てました。あなた…………何故ミハエルの事とその名をの事を知っている!?!?」

 

「私はあなたのデータを元に作られた合成獣(キメラ)ですよ?知ってて当然じゃないですか。あっ、それと私の名前はアラクネ。以後よろしくお願いします」

 

「あなたの名などどうでもいい!!一体それはどういう事ですか!?!?」

 

 声を荒らげてその事を聞く私にため息をつきながら、アラクネは言葉を返す。

 

「私の名前をどうでもいいとは失礼なお兄様ですね。まぁいいでしょう。あなたは魚と人間を交配してできた交配種であり、様々な知識と戦闘の仕方を教えられて来たという事は覚えていますよね?」

 

「それがどうしたというんです?」

 

「それは全てある方を守るための兵隊を作るための実験であり、あなたは元々その方を守るため、その育てる過程で得られるデータから従順で頑丈な手駒を作るため、作られたんです。しかし…………あと一歩で計画は完成するところだったのに…………血影とフェンリルが博士を捕まえ、あなたをIアイアイランドなんて警備の厳しい場所にあなたを放り込んだせいで兵隊を作るという計画はおじゃんになってしまったというわけです。ですが………あなたの作る過程までの人体実験や製造方法などのデータは残っていたんです」

 

「まさか………」

 

「あとは恐らくはあなたの予想通り。そのデータを元にして私達合成獣(キメラ)が作り出され、最終的に完成形の兵隊である脳無が完成したというわけです。まぁ、私を含め3人以外の合成獣(キメラ)は実験の過程で壊れたか、脱走して殺されたか、戦わされて殺されたかで、もう全員死んじゃいましたが」

 

「あなた達は…………命を何だと思っているんですか!?!?」

 

「作り出されたあなたが命を語りますか。お笑い草ですね。所詮命なんてものは簡単は簡単に潰れて死ぬ虫と同じようなもの。誰に従わされ、搾取され、最後には殺されるという幾度も繰り返されてきた人間の歴史を見れば一目同然です。食うか食われるかの世界ならば、私は食う方を選ぶ。だからこの力手に入れただけですよ」

 

「許さない…………命をそんな風に扱うあなたを………私は許さない…………!!!風鎧!!!神風衣(ゴットウィンドメイル)…………!!!風武装!!!神風武器(ゴッドウィンドウェポン)……………!!!」

  

 そう私が叫ぶとともに、私の体と刀、槍の周囲に台風に匹敵する勢いの風が纏わり、風の鎧と風の武器が形成された。

 

 武器を構え、私はアラクネを睨む。

 

「例え作り出された命だとしても…………人でないとしても……………私には師匠達から授かった人としての魂がある……………!!!人としての魂がなくし堕ちた貴様等外道を…………私は人と認めない……………!!!あなたは…………私の罪でもあるあなたは…………私が倒す……………!!!!」

 

「外道が人でない?何を今更。人としての魂が元からないから私達は外道と呼ばれ…………人でないと呼ばれる……………。そう………私とあなたは同じ………!!人でない化物であり…………!!!人の魂など持てるはずがない……………!!!それを今……………思い出させてあげましょう…………!!!!」

 

「貴様…………!!!!」

 

「さぁ遊びましょう…………お兄様…………!!!!」

 

 背中から6本の蜘蛛の足のようなものを出したアラクネは、糸に絡まり足掻く獲物を見る蜘蛛のような捕食者の目で私を笑うとともに攻撃を放ち、次の瞬間竜巻の如き旋風と鋼鉄より硬い糸がぶつかり合い火花が散った。

 

 アラクネが6本の足で私を突き刺そうとするのを刀で防ぎ、距離が取られると直様糸玉の弾丸を風の鎧で防ぎながら、槍を打ち込んでいく。

 

「ハハハハハッ!!いいですね!!楽しいですよお兄様!!!」

 

「お前と話すつもりもお兄様と呼ばれるつもりはない!!!さっさと倒れるか大人しく拘束されてください!!!」

 

「嫌ですね!!せっかくのお兄様との逢瀬なんです!!!こんなんで満足できるわけがないじゃないですか!!!!」

 

「ならば………これでどうだ!!!」

 

 私は槍の穂先を剣状のものからこない手状のものに変えてアラクネを無理矢理掴み、そのまま槍ごと奴を宙に放り投げた。

 

 そして直様刀の形状を変化させて弓にし、そこから大量の矢を拘束されて動けない奴に放っていく。

 

 だが、それでも、奴は笑みを崩さない。

 

「悪くはありませんが…………甘い!!化物を殺すには…………甘すぎます……………!!!」

 

 アラクネは6本の足のうち3本を自ら引きちぎって拘束から脱出してネット状に形成した糸で矢を全て受け止めるとともに、お返しとばかりに竜巻状に渦巻く糸を私に放った。

 

 足元から風を放出して糸の竜巻を躱し、新たに作り出した槍でアラクネを攻撃しようとするが腕と足が何故か動かなくなる。 

 

「これは………ワイヤートラップ!?不味い………力が……………」

 

「やっぱりぬるま湯にいたせいで戦いの感覚が鈍っているようですね。こんな古典的な罠に掛かるだなんて!!」

 

「ぐっ…!」

 

 咄嗟に鎌鼬でワイヤートラップを切り裂き、槍を構えて防御態勢を取るがアラクネの異常なまでの威力の蹴りに押されて吹き飛ばされてしまい、私は岸壁に叩きつけられた。

 

 衝撃のあまり息が続かず、一瞬呼吸をして防御が緩み隙を作ったことで距離を詰められてしまい、防御しきれなかったアラクネの3本の足の突きが、私の頬から血を飛ばす。

 

「確かに強いですが………私には遠く及ばない。あんなに人の魂どうたら言った割には…………大した事ありませんね」

 

「まだ………私が動けているのに勝利宣言とは………余程余裕があるようですね」

 

「寧ろ余裕しかありませんよ。だって…………あなたの攻撃には殺気がない。敵を完膚なきまでに壊し………殺すという気持ちが………全くと言っていいほど感じ取れません。つい先程私を投げた時もそうです。風で威力を上げ、全力で放った突きを放てば私を殺せたかもしれなかったというのに、あなたはそれをしなかった。その理由は簡単………!!!」

 

 アラクネが自ら引きちぎった3本の足が再生し、風の鎧で粉々になりつつも私を攻撃する。

 

「自らが化物だという自覚がないからです。その作り出された命で人間の事を語る?笑わせるな。些細な傷ならば目を瞑る間に治り、魚の個性持っていないのにも関わらず半魚人の出で立ちと能力を持ち、人ならば死を迎える量の血を流しても絶命しないお前が、化物でないと?いいや、違う。お前は私達化物の仲間だ。ぬるま湯などでは生きれず、地獄でしか生きるしか生きるしか出来ない。守ることなんて出来ず、壊すことしか出来ない。それがお前だ。だというのに………少しばかり夢を見すぎているんじゃないですか?」

 

「例え夢だとしても!!壊すことしか出来ないとしても!!私は大切な仲間と友を守る!!例え化物だとしても笑って生きれる世界を私は知っている!!!貴様は私とは違う!!!!」

 

「守るね…………。……………なら…………これを聞いてもそんな事が言えるのかな?」

 

『開闢行動隊!!目標回収達成だ!!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に回収地点へ迎え!!!』

 

 アラクネが見せつけた通信機らしきものから声が流れ、私は足元が崩れるような感覚に襲われた。

 

 そんな私の体に触れ、体力といったエネルギーを吸い出した後、アラクネは再び笑い掛ける。 

 

「だから言ったでしょ。そんなものは夢だと。私達は壊すことしか出来ないと。もうちょっと遊んであげたいけど…………今日はここまでしておくわ」

 

「ま………待て…………」

 

「もう一度よーく考えてみてね。あなたが本当は何処にいるべきかを。一体誰に従うべきかを。私はいつでも…………あなたの事を受け入れます。あなたが再び化物となるのなら…………私は喜んで共に道を歩きますよ。では、また会う日に」

 

 そう言葉を残すとアラクネは夜の暗闇に消えていき、体力をほぼ全て全てを吸われ、動くことすらままらずいつ目を閉じてもおかしくない私だけが、その場に取り残された。

 

「ヒミ………コ…………さん…………………狼……………………」

 

 何故か頭に浮かんだ2人の名前を口に出したのを最後に、私は完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

                                              ◆◆

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

   

 

『開闢行動隊!!目標回収達成だ!!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に回収地点へ迎え!!!』

 

「なんだ………もう終わったんだ…………」

 

「ええぇぇ!?!?まだ遊び足りないのに!!!まだ私もあっちもどっちも死んでないのに!!!」

 

 突如敵2人の通信機から目標を回収したという声が聞こえるとともに、私と戦っていたドールと、お茶子ちゃん達と戦っていたマッドメン・ガールは後ろ大きくに下がり、何かを言い合いながらも撤退の構えを仕出した。

 

 目標回収という言葉に、私達は動揺を隠せない。

 

「目標回収って………まさか狼達の誰かが捕まったってこと!?」

 

「そんな………そんな…………」

 

「やれる事はやったのに………こんな事…………」

 

「あなたを殺しきれなかったのは残念ですが………命令ならば仕方ありません。今は静かに引くよ」

 

「嫌だ!!嫌だ!!もっと遊びたい!!!」

 

「駄目です。帰還命令が出た以上、それに従わなくてはなりません」

 

「ドールちゃんのケチ!!!」

 

「おや?お2人さんも今あっちに向かうところかい?よかったら一緒に行くか?」 

 

 私達が困惑してる中、突如反対側のルート辺りからマジシャンのような姿をした男がヴィラン2人の宙に現れ、2人対してそのような言葉を投げかけた。

 

 ドールは男に言葉を返す。

 

「【Mr.コンプレス】。目標は何人回収したの?」

 

「爆豪君に常闇君と2人だ。轟君の方も貰おうと思ったんだが、そっちには手が回らなかった。狼君の方はぬらりひょんが相手してるはずだが、ついさっきから連絡が取れない。まぁ、あのイカれ爺さんが負ける事はないだろうから、多分また通信機の使い方を忘れてたってところだろう。達成率75%なら、お前も十分満足してくれるだろ?」

 

「うん。お手際見事だよ」

 

「それはどうも」

 

「コンプレス君!!!私まだ遊び足りない!!!お茶子ちゃん達ともっと遊びたいよ!!!!」

 

「我慢して。命令は達成したんだ。早く帰還するよ」

 

「嫌だ!!まだ遊びたい!!!」

 

「待って!!!」

 

「………あんたは今回殺せなかったけど………次は必ず殺す。命令を邪魔したあんただけは………私が殺すから…………。…………それまで、精々死なないでよね」

 

「では!!これでさらばだ!!」

 

 Mr.コンプレスは空を飛ぶようにして素早く移動し、ドールは足でマッドメン・ガールを持ち上げると背中の翼で瞬く遠くに飛んで行ってしまった。

 

 私達が急いで岸壁を降りて3人を追いかけようとした最中、森を突っ切って現れた出久君達共に、3人を追いかける。

 

「どこかから現れた巨大なバッタのような脳無の相手をしている最中突如2人を奪われてしまった!!護衛を買って出たというのに情けない…………!!!」

 

「ちくしょう速え!!あの仮面………!!」

 

「ドールがまさか翼を持っているだなんて………!!このままじゃ逃げられる!!」

 

「絶対に逃しなんてしない………!!絶対に奪わせなんてしない………!!!」

 

「諦めちゃ………ダメだ…………!!っ………!!追いついて………取り返さなきゃ!!」

 

「けどどうやって!?」

 

「このままでは離される一方だぞ!!」

 

「麗日さん!!僕らを浮かして早く!!」

 

「!」

 

「梅雨ちゃんは浮いた私達を舌で思いっきり投げてください!!空から落ちた私を含め3人を引き寄せれる程の力です!!お茶子ちゃんのと合わせれば十分追いつけます!!」

 

「障子君は腕で軌道を修正しつつ僕らを牽引して!!」

 

「お茶子ちゃんは見えてる範囲でいいのであの3人との距離を見計らって個性を解除してください!!そのまま飛び付きます!!」

 

「成程。人間玉か」

 

「待ってよデク君!その怪我でまだ動くの………!?」

 

「これ以上動いたら大変なことになるよ!」

 

「お前は残ってろ。痛みでそれどころじゃあ………」

 

「痛みなんか今は知らない………!!動けるよ……早くっ!!!」

 

「…………出久君の事は私に任してください!!絶対に2人を助けて無事帰ります!!」

 

「────………!デク君せめてこれ………!」

 

 お茶子ちゃんはせめてもと自身の上着と添え木を出久君の両腕に巻いて、簡易的な応急処置をした。

 

 そして出久君と私、三奈ちゃんに焦凍君、目蔵君にお茶子ちゃんは個性を発動させ、梅雨ちゃんは私達を持ち上げる。

 

「必ず2人を助けてね」

 

「おっおおおおおお………お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!?!?!?!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

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 ヴィラン連合合流地点

 

 

「ごめん。待たせた」

 

「お待たっせー!!」

 

「予想はしてたが、ピンクイカレ野郎は半場ドールの奴に引きずられてここまで来たって感じか」

 

「うん。中々行こうとしないから」

 

「だからって足で持ち上げることないじゃん!!少し酔いそうになっちゃったじゃんか!!」

 

「あれ!?Mr.コンプレスの奴は何処だ!?一緒じゃないのか」

 

「遅かったから途中で置いてきた」

 

「一緒に行こうって言った割に、結構遅かったしね」

 

「翼あるドールちゃんと翼ないやつ比べたらそりゃそうなるわ!機動力違いすぎるもん!それよりドールちゃん。なんかやたら苛ついてるみたいだけどどしたの?何か落ち込む事でもあったのか!?」

 

「ヒミコの奴をまた殺し損ねた。本当に最悪………マジで死ねばいいのにあのクソ女…………」

 

「ヒッ!これが女子の闇!?俺にはそんな事言わないでね!!」

 

「というか、アラクネちゃんもぬらりひょん君も中々来ないね。もしかして迷子?」

 

「黙って待ってれば2人とも来るだろ。てめぇ等いい加減静かに……………」

 

 荼毘が3人を黙らせようとした瞬間、何かが激突する音とともに何かが落ちてきた。

 

 落ちた衝撃で起きた砂煙が晴れ、落ちてきたものの正体が徐々に顕になる。

 

「知ってるぜこのガキ共!誰だ!?」

 

「出久君に目蔵君に焦凍君だ!!それに三奈ちゃんもいる!!」

 

「真血 被身子………!!まだ邪魔をするのか…………!?」

 

「何度も言ったでしょ!!あなたを止めると!!!」

 

「Mr.、避けろ」

 

「了解!」

 

「バッカ冷たっ!!」

 

 全身継ぎ接ぎだらけの男は飛んで来た私達の下にいるMr.コンプレスに指示を出すと直様青い炎を放ち、私達全員はその炎の勢いで吹き飛ばされた。

  

 近くいるだけでも苦痛を感じる熱さを前に、私達は苦悶の声を上げる。

 

「確かなるべくは殺しちゃダメだけど邪魔なら殺していいんだよな!?」

 

「焦凍君と遊ぶのは始めてだね!!たっぷり殺し合お!!」

 

「チッ!!」

 

「バンッ!!バンッ!!」

 

「熱っつ!!冷たっ!!」

 

 焦凍君は迫るラバースーツの男とマッドメン・ガールに向って氷を放ち、マッドメン・ガールはそれに対応して大規模な爆発を2度繰り出した。

 

 一方私と美奈ちゃんはそれぞれ、ドールと継ぎ接ぎだらけの男に肉薄して攻撃を仕掛ける。

 

「すばしっこくて厄介なのなら!!近距離戦で一気に詰めればいい!!あなたには何もさせません!!」

 

「これ以上は何もさせない!!2人を返してもらうよ!!」

 

「ホント邪魔………!!最後まで邪魔するのかよ…………!!」

 

「面倒だな………オイ…………」

 

 私達が他のヴィランを足止めしている間に出久君と目蔵君はMr.コンプレスを攻撃し、豆粒状の大きさにまで小さくされて奪われた2人を取り返そうとしている。

 

「俺はこういうの苦手だってのに!!2人を相手しなきゃいけないだなんてな!!」

 

「常闇君と………勝っちゃんを返せ!!」

 

「卑怯同行を言うつもりはないが!!一先ず倒させてもらう!!」

 

「おっと!!止めだ止めだ!!エンターテイナーはこういうのする仕事じゃないんでね!!!」

 

 2人を攻撃をどうにかかわし切り、Mr.コンプレスはどうにか最後方に後退する。

 

「Mr.2人は?」

 

「もちろ………!?」

 

 美奈ちゃんの攻撃を捌きながらそう言った継ぎ接ぎだらけの男の言葉に従い、Mr.コンプレスは右ポケットを探す素振りを見せるが、入れていた二つの球が無いらしい。

 

「4人共逃げるぞ!!今の行為でハッキリした…!個性は分からんがさっきお前が散々見せびらかした…………。右ポケットに入っていたこれが、常闇・爆豪だなエンターテイナー」

 

 そう言いながら目蔵君は手から2つの玉を取り出し、私達にそれを見せる。

 

「障子君!!」

 

「あの状況でよく取ってくれました!!」

 

「───ホホウ!あの短時間でよく…!さすが6本腕!!弄り上手め!」

 

「っしでかした!!」

  

「じゃあこれ以上戦う意味もないね!!早く逃げよ!!逃げよ!!」

 

「アホが…」

 

「今すぐ障子 目蔵を射撃───」

 

「いや待て」

 

「アラクネちゃんが来たみたい」

 

 私達が走って逃げようとする最中、白髪の女が現れて行く手を阻み、手から放った糸で私達を一瞬の内に拘束した。

 

 木に貼り付けにされ、全員身動きが取れなくなってしまう。

 

「すいません。兄妹同士の遊びに夢中で少し遅れてしまいました」

 

「こんな糸………私の酸で────」

 

「動くな。頭飛ばされたくなかったら何もするな」

 

「三奈ちゃん!」

 

「ちなみに君が持っていたそれ、プレセントなんだ。悪い癖だよ、マジックの基本でね。ものを見せびらかす時ってのは…………トリックがある時だぜ?」

 

 Mr.コンプレスがそう言いながら目蔵君から取り上げた球が、突如氷に変わった。

 

「ぬっ!!?」

 

「氷結攻撃の際に『ダミー』を用意し、右ポケットに入れておいた。まさか口にあるだなんて思いもしないだろうからな」

 

「通りで目蔵君の持っている玉からオーラがしないと思った!違うなとは思ってたけどそういう事だったんだ!!」

 

「私が来なくても最初から完全敗北だったというわけね」

 

「お後が宜しいようで………」

 

「くっそ!!!」

 

 最初から手のひらの上で遊ばれたということに気づいた出久君は歯を食いしばって悔しがり、私もまた手を強く握りしめて地面に叩きつけた。

 

「最初から回収目標だった轟 焦凍は当然回収するとして、あとの4人はどうするんだ?」

 

「連れて行っちゃえばいいんじゃない!?そうすれば沢山遊べるもん!!」

 

「はあぁっ!?余計な4人も連れて行くのかよ!?いいぜ!!俺は大賛成だ!!」

 

「他の生徒もできれば連れて行けって話だったしな。いいんじゃねーの?」

 

「私もそれで異論はありません。最も………ドールが納得していないみたいですが」

 

「当然でしょ。ヒミコの奴は今すぐ殺したい。けど連れて行く命令があるから出来ない。だからイライラする………」

 

「………で?どうするんだ?」

 

「脊髄に弾丸を打ち込んで四肢を使い物にならなくする。それなら生かしたままイライラをなんとか出来るし、これ以上抵抗も出来なくなるしね」

 

「そんな事─────」

 

「状況見て言葉発したらどうだ?」

 

「あなた達もそうなりたいですか?」

 

 私以外の全員が首に手を当てられて動けなくなり、私もまたドールのスナイパーライフルを脊髄に突きつけられた。 

 

 突きつけられ当たるヒンヤリした銃口が、汗よりも異様に冷たく感じる。

 

「……………会うのはこれで最後になると思うけど、最後に言いたいことはある?」

 

「……………こんなこと………これ以上やらないで。誰も…………殺さないで」

 

「………最後までそれか。まぁ………あんたらしいといえばあんたらしいかもね」

 

「ヒミコさん!!!」

 

「やめろ!!やめろ!!!」

 

「放せ!!放せ!!!」

  

「ヒミコちゃん………!!!」

 

「Iアイアイランドから続いたあんたとの因縁も…………これで最後だ…………!!さっさと…………消え────」

 

『その場にいる生徒並びにヴィランに警告する!!警告する!!全員この声を聞いて!!!』

 

 吐く息と緊張が最高潮に達し、今引き金を引かれようとした瞬間、マンダレイの声が全員の頭に響き、ドールは一度引き金から手を放した。

 

 うざったるそうにマッドメン・ガールは叫ぶ。

 

「もう何!?うるさい!!!いいとこだったのに!!!あの年増女のせいで台無しじゃんか!!!!」

 

「流石に今のは無粋ですね…………。今すぐ殺しに─────」

 

「待て。何かおかしい」

 

「何でヴィランの俺等にまでヒーローが警告してんだ!?もしかして俺のこと好きとか!?」

 

「それは間違いなくないけどな」

 

『あなた達は………とんでもないものを目覚めさせてしまった…………。もう………あれは誰にも止められない……………。あれは………ヴィランの敵でも…………ヒーローの敵でもない……………!!!あれは…………災害よ…………!!!!今すぐ全員逃げて……………!!!!あれは…………もうそっちに来て────────』

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

   

 

 

 ドオオォオォォォッォォォオォォォォッォォンッ!!!!!!!!!!!!! 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何が起きたのか、誰にもわからなかった。

 

 マンダレイの声が途中で途切れるとともに視界が真っ白となり、意識が戻る頃には私達もヴィランも関係なく、全員20メートルは軽く吹き飛ばされていた。

 

 目を開けてみると、つい先程まで私達がいた場所の森は完全に消滅しており、消滅した場所辺りは隕石が落下したかのような痕が刻み込まれている。

 

「はっ………はっ……はっ……はっ…………」

 

「何が…………起きた…………………」

 

 衝撃の影響か、Mr.コンプレスに捕まっていた2人が元の状態で近くに放り出されており、少し離れた場所に放り出された出久達も含め、生徒側は全員どうにか無事のようだ。

 

 少し離れた場所で、ヴィラン達が目を覚ます。 

 

「一体…………何があった………?ヒーローの攻撃か………………?」

 

「いえ………それは間違いなくありません……………。こんな威力の攻撃…………オールマイト以外誰も出来ません………………」

 

「オールマイトのオーラなんて何処にもないし……………そもそもヒーローはこんな事やらないでしょ…………………」

 

「じゃあ何だ……………?隕石でも落ちたか…………………?」

 

「ありえないと言いたいですけど…………この状況じゃありえないことないですね…………………」

 

「とりあえず…………俺が何かが落ちた場所を確認してみる。お前等は彼奴等を捕らえ──────」

 

「何このオーラ…………!?!?コンプレス君避けて!!!!」

 

「えっ──────」

 

 ザッ………ザアッァァァァ………………。

 

 ……………マッドメン・ガールの声は間に合わず…………突如爆心地から黒い何かが放たれるとともにMr.コンプレスに向かって跳んでいき…………目を開けるとそこには……………Mr.コンプレスのあったはずの左腕が……………完全に消えてなくなっていた。

 

「あっ…………あっ…………アアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「コンプレス!!!何が起こった!?!?」

 

「(今放たれたのは…………動物の体毛…………?その硬さは恐らく鋼鉄以上………………)」

 

「(鷹の目を持つドールが何も言わないってことは……………今放たれた何かを完全に判別に出来なかったって事。…………私の中にある蜘蛛の勘が告げている。あれは……………悪意のないただの排除行動)つまり…………眼の前にいたという理由だけで

…………殺そうとしたみたいね」

 

「これは………面白い。まさかあなたがそんな姿になって来るだなんて……………!!」

 

「狼……………?」

 

 爆心地の中心にいたのは金色の目を持った黒い狼…………。

 

 …………いや、モード狼になった狼であり…………Mr.コンプレスを殺そうとしたのは………………紛れもない狼だ。 

 

「コワセ……………ウバエ…………ニクメ……………ナクセ………………………コロセ………………!!!!!!

 

 鎖は遂に壊れ…………悪魔は…………魔獣は今……………完全に解き放たれた。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 
 なお、青山君は既に宿に逃げたため、葉隠ちゃんと上鳴を含め全員無事です。
 
 ほんと…………よかったね………………(白目)。
 
 

  
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