鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 このままだと内容が暗すぎることになりかねない為、三者面談とお部屋披露などは書かないこととしました。(そっちを読みたい人は!!是非原作本を呼んでね!!)
 
 最初からこうしようとは思ってたけど………前回とは別のベクトルで辛い………。
 
 頼む………。早くシリアス終わってくれ…………(まだ多分……当分終われない………)
 
 あっ、それと、ヒロアカの公安が好きな皆様(ホークスは今回一切関与してない)。本当にすいません。
 
 
 
 


仮免試験編
55 喪失の日常


 

 

 

 林間合宿から3日。雄英高校会議室。

 

「ヴィランとの戦闘に備え………生徒達を守る為の合宿で襲来。………恥を承知で宣おう。”ヴィラン活性化の恐れ”………という我々の認識は甘すぎた。奴等は既に戦争を始めていた。ヒーロー社会を壊す戦争をさ」

 

 何時にもなく暗い表情で話す根津の言葉に、いつもは明るいヒーロー達の表情も自然と暗くなる。

 

「まず、状況を整理しましょう。今回の合宿での被害と、神野区での奇襲作戦の結果を」

 

「………神野区での奇襲作戦は………私としては失敗だと思っている。死柄木 弔及び………アジトは逃げてきたヴィランを全員逃した上………あの仮面の男を捕らえることが出来なかった。ナンバー1だというのに………多くの命を奪ったヴィラン達を逃がすとは………情けない!!!」

 

「そう言わないでくださいオールマイト!!あなたや血影………フェンリル達多くのヒーロー達の奮闘があったからこそ………奴等のバックであったOFAを捕らえることが出来たんです。それだけでも………ヴィラン連合の力を大きく削げたと思います」

 

「だがこの一件の戦闘により………オールマイトがマッスルフォームを30分程しか維持できなくなったのもまた事実。まだ発表こそはしてないが………今後はヒーロー活動を引退して………教育活動に尽力してもらうしかない。………君が思う所も沢山あると思う。けど………今の君に出来ることだって沢山ある。今はその出来ることを………精一杯やっていってくれ」

 

「はい………わかっています」

 

「では次に林間合宿の被害ですが…………これは奇跡と言っていい程少ない被害と言っていいでしょう」

 

 書類の言葉を読み、少し安心したような口調で話す塚内に対し、プレゼント・マイクは立ち上がって怒りを顕にする。

 

「少ない被害?生徒は意識不明の重体者16名………重軽傷者14名…………。プロヒーローも3名が重体で………12名しか無傷で済んでなかったのにか!?これが少ない被害だって言うのかよ!?!?」

 

「山田落ち着いて!…………私としても………確かに少なくない被害ではないと思っているわ。けど……あれだけの手練と脳無がいたのにも関わらず………生徒が誰も死なず……攫われなかったことは………奇跡だとも思っているの」

 

「ミッドナイト!!お前までそんな事言うのかよ!?」

 

「マイク落ち着け。お前だってこれが奇跡的な被害だってことはわかってるだろ?………何も出来なかった事に苛つくのはわかる。だが……今は落ち着け」

 

 そう言いながら、イレイザーヘッドは無力だった自身に対する怒り震える自らの手を抑え、静かに視線を机に落とした。

 

 そのことに気づいたプレゼント・マイクはハッとなって怒りの矛先を収め、静かに椅子に座る。

 

「…………すまねー。少し苛ついてた………。…………話を1度切って悪かったな」

 

「………わかったならいい。塚内さん。話を続けてくれ」

 

「今回現れたヴィラン及び脳無の数は約18名。バッタのような脳無が作り出した小型脳無については割愛しますが、その17名のうち脳無1体を含め4名が現行犯逮捕。1名が精神崩壊が起きていため警察病院に入院。そして………1体の脳無が下半身を残して…………上半身が完全に消滅していました」

 

「1人が精神崩壊で……1体の脳無の上半身が消滅とは…………全く持って笑えませね」

 

「しかし、最も奇妙な事は、その2名をそのような状態にしたのはヒーロー側でもヴィラン側でもないということです。これは、突如合宿場所に現れ、ヒーローに対してもヴィランに対しても無差別に攻撃し、森の半分を消滅させた未知のアンノウンヴィランと言える者の犯行によるものです」

 

「それが………今回の会議の最重要事項の内容の一つか」

 

「このアンノウンヴィランの名を、我々は【デイモン】と呼称。そしてこれが、近隣住民の遠距離望遠カメラによる撮影によって撮られた、デイモンの写真となります」

 

 塚内がそう言いながらパソコンのコンソールを叩くとともに、会議室前方に設置されたスクリーンに一枚の写真が大きく浮かび上がった。

 

「これは………黒い狼?上空に飛び上がって………口から空気砲のようなものを発射しているのか?」

 

「体のあちこちから………赤黒いエネルギーみたいなのが漏れ出してやがる…………。そのをエネルギー利用して………森一体を消滅させたって感じか」

 

「その場にいた生徒の話によると、デイモンは集合したヴィランと捕まっていた生徒達の所へ突如襲来し、ヴィラン達を逃がすようにして現れた仮面の男と戦闘をしていたそうです。全身の毛を飛ばして辺り一帯を爆撃し………仮面の男に対して『カエセ』と何度も言っていたとか」

  

「カエセ?家族でも………仮面の男に殺されたとか?」

 

「生徒達の話によると仮面の男は複数の個性を使い………何度殺されても直様復活したと聞く。そんな奴が誰かを殺していたとしても………何らおかしくはありません」

 

「仮面の男はデイモンを倒すと直様退却したそうですが………倒されたデイモンはその後どうなったんですか?」

 

「それが………何とも………」

 

「何とも?それってどういう事?」

 

 ミッドナイトの言葉に対し、ずっと下を向いていたブラドキングとイレイザーヘッドは一度顔上げて互いに目をしばらく合わせ、その後お互いやはりと言った表情でため息を付く。

 

「実は………誰も覚えてないんだ。デイモンが倒され後駆けつけたイレイザーも…………その場にいた生徒も…………その事を何も覚えていないんだ」

 

「何も覚えていない?それはないだろ。あんな事が目の前であった以上、多少は誰か何かしら覚えているだろ?」

 

「それが………本当に何も思い出せないんだ。記憶にモヤが掛かったようで………デイモンの事を思い出したくても思い出せないんだ…………」

 

「それが………デイモンの個性?記憶操作まで出来るっていうの?」

 

「その事すらも………誰も覚えていないんです………。生徒達にも何度も話を聞きましたが………全員イレイザーヘッドと同じ返答しています。デイモンの足取りの手がかりは…………今の所何もありません」

 

「真実は闇の中………というわけか」

 

「まぁ全員生きてるんだ。いつかしらのタイミングで思い出すだろうよ」

 

「思い出せないことをいつまでも話しても仕方ありませんし、今後の雄英の対応について話し合いましょう」

 

「幸いなことに、生徒とヒーローの死亡者も行方不明者もどちらもゼロ。今までの『屈しない姿勢』を維持することは出来るだろう。まぁ、それでも、雄英最大の失態ではあるし、メディアの批判は受けるしかないけどね」

 

「メディアなんてうるさいだけです。今は頬っておきましょう」

 

「学校が今行わなければならない事は生徒達の安全保障。今回被害にあったヒーロー科”43”名は当然として……他の科の生徒達にも同様の事をね」

 

「校長。人数間違ってます。”43”名ではなく”42”名です。生徒の数を間違えるのは流石に不味いですよ」

 

「おっと!これはすまない!生徒達には内緒にしておいてくれよ!」

 

「しっかりしてくれよ校長!!生徒達に失礼ってもんだぜ!!」

 

「ではこれは前から考えてた事なんだけど─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……それで、お前これからどうするんだよ?我慢し続けるのも無理だろ」

 

 …………また………この夢だ。

 

 誰かが………独りだった私に………何かを言っている。

 

「……行くのか?」

  

 …………駄目だ。

 

 幾ら耳を傾けても聞こえない…………。幾ら………その人の顔を見ようとしても………霧がかかってよく見えない。

 

「……なぁ、お前、生きにくいのが嫌ってついさっき言ってたよな?それは……本心なのか?」

 

 こんな出来事………なかったはずだ。

 

 こんな事………言われなかったはずだ。

 

 けどなんで…………こんなに焦がれてしまうの?なんで…………泣きたくなってしまうの?

 

「できないのなら見せてやる。見れないのら作ってやる。この俺が、お前を、普通に生きれる場所に連れて行ってやる。だからヒミコ、こんなところから出よう。こんな、クソみたいな世界から」

 

 誰………?誰なの………?

 

 私と約束をしてくれた人は誰………?私を暗闇から連れ出してくれた人は…………誰…………?

 

 こんなに会いたくなるのは──────

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

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 ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

  

「…………またです。また………私泣いてました。」

 

『ヒミコちゃーん!そろそろ起きないと学校遅刻しちゃうよ!!』

 

『早くしないと置いてくよ』

 

「す、すいません三奈ちゃん!響香ちゃん!今起きたので直ぐ行きます!!」 

 

 夢で見た淡い記憶と淡い感情を振り切るように、私はベットから起き上がり、大急ぎで髪を整え制服を身に着けると慌ただしく部屋のドアを開けた。

 

「昨日念の為…………起こしてもらうよう頼んで正解でした………。前は一人で起きれたのに………こないだから何故か起きれなくって…………」

 

「ちゃんと目覚ましは昨日の夜セットしてたし、念の為スマホのアラームも付けてけてみたいだけどね」

 

「そんな朝苦手だったっけ?」

 

「それが何故か………いつの間にか苦手になっちゃったのです………。…………ここ最近変な夢も見ますし………もしかしなくても多分……………それが原因です」

 

「この部屋に幽霊とか、そういう類がいるとか?」

 

「もしかしたらそうかもしれません………」

 

「や、やめてよ2人とも!朝っぱらかそういうしないでってば!!」

 

「あっ!!そんなことより早く教室行かないと!!!」

 

「相澤先生に怒られるのだけは勘弁なのです!!!」

 

「ちょっと!!私を置いていかないでよ2人共!!!」

 

 林間合宿から2週間。

 

 勝己君と踏影君がヴィラン連合に捕まり、それを助けようとした最中私達も捕まったという絶望的な状況で現れたアンノウンヴィラン、デイモンの襲来により、あの場にいた私達7人は入院生活を余儀なくされ、攻撃を最前線で防いでいた焦凍君と踏影に限っては意識が戻らないという自体にまで陥った。

 

 だが、リカバリーガールと病さんの頑張りにより、ガスで倒れた人を含めた私達は何とか3日で退院。そして2人も私達の退院から1日遅れなものの意識を取り戻して回復し、どうにか全員無事で事を終えることが出来たというわけだ。

 

 しかし、メデイアというものは本当に面倒で、オールマイトが力不足だったからこうなったのでは!?やら、何故かヴィラン更生を行っているプリティー・ラブリーマンガ内通していたのではないのか!?やら、訳のわからないことを言い出しては広めたこともあってか、家庭訪問での許可を下すかの確認をした後、雄英高校は完全寮生となり、私達は昨日からここで寝泊まりする運びとなった。

 

 ………未だ意識の戻らないヒスイ君や黒江さん、ラグドールさんの事は気がかりではあるが………いつもの切磋琢磨する日常へと………少しずつ私達は戻っていっている。

 

 けど………それが何処かちぐはぐで………何かが足りない気がするのは………何故なのだろうか。

 

「では、先日から通達している通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」

  

 

「「「「「はい!」」」」」

 

  

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然取得する為の試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」

 

 

「仮免でそんなきついのかよ!?」

  

「お前等はヒーロー科学生な為筆記試験なしとなっているが、外部から試験を受ける場合は筆記試験も受けなきゃならん。そういう意味じゃ、まだだいぶ楽だとは思うがな」

 

「うちの受刑者でヒーローを目指してる投球君と葉子さんはその試験内容がめちゃくちゃ大変だーって、いつもぼやいてましたからね。国際仮免資格の方は絶対に筆記をやらなきゃいけないですし、だいぶ楽ですよ楽」

 

「おおっ……マジか………。一応筆記試験は免除になってるのか………」

 

「というか、国際仮免資格の方についてもヒミコちゃん詳しいんだね」

 

「ずっと前に、教えてもらったんですよ。ただ………それを教えてくれたのが一体誰だったか………全然思い出せないんですけどね…………」

 

「何だよ?この年で物忘れか?」

 

「まぁとにかく、多少楽とはいえ、無策で試験に挑むのは無謀だという他ない。そこで………君らには1人最低でも2つ……必殺技を作ってもらう!!」

 

  

 

「「「「「「学校ぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」」」」」」」

 

  

 

 誰も一度は考えた事のある必殺技の実現とばかりに皆思いっきり盛り上がり、それを煽るように入って来たミッドナイト、エクトプラズム、セメントスが、説明をする。

 

「必殺!コレ スナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

 

「その身に染みつかせた型・技は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

 

「技は己を象徴とする!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合だ」

 

 そして皆早足気味に移動し、場所は体育館γ。

 

トレーニングの台所(TDL)!!略してTDL!!!」

 

「久々に来たな、TDL」

 

「演習対策以来だな」

 

「つーか、演習対策って誰が提案したんだっけ?」

 

「あれ?ヒミコじゃなかったっけ?」

 

「俺は爆豪だと思ってたけど」

 

「とりあえず俺じゃねー」

 

「私でもありませんね」

 

「おい、そこ。無駄話は適当にしとけよ」

 

「前に説明したと思うけど、ここは俺考案の施設。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

 

「なーる」

 

「というか俺、この事を爆豪と誰に説明したんだっけな?」

 

 私達やセメントス先生が何かを忘れた時のように首を傾げていると、天哉君が手を上げる。 

 

「質問をお許しください!何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか意図をお聞かせ願います!!」

 

「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災....あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。仮免試験では当然その適正を見られる事になる。情報力・判断力・機動力・戦闘力・他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適正を毎年違う試験内容で試される」

 

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」

 

「状況に左右される事なく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」

 

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ…飯田クンノレシプロバースト。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル。マタ血影ヤヒミコサンが使う魔血開放モ一時的トハイエ十分ナホドニ身体強化ヲスルコトガ出来ルコトカラ、アレモ必殺技卜呼ベルナ。…………ンッ?アト一人………魔血開放ヲ使ッテイタモノガイタヨウナ……………」

 

「また先生首傾げてる」

 

「まぁ要は…自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型を作ろうって話か」

 

「そ!先日活躍したシンリンカムイの『ウルシ鎖牢』や血闘術の『型式』なんかも模範的な必殺技よ。まぁ後者は普通できないから………参考にはならないけど………」

 

「まぁ、100回は殺されないと型式は実践に出せないから仕方ありませんね」

 

「やっぱこえーよ魔王大魔王」

 

「中断されてしまった合宿での『個性伸ばし』は…この必殺技を作り上げる為のプロセスだった。つまりこれから後期始業まで...残り十日あまりの夏休みは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」

 

 セメントス先生が地形を作り、エクトプラズム先生がの個性で分身体を生成した事で、訓練の準備が整った。

 

「尚、個性の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も並行して考えていくように」

 

「先生!!最後に質問が!!!」

 

「お前が質問とは珍しいな上鳴。それで、質問は?」

 

「圧縮トレーニングって言ってましたけど……………林間合宿の時みたいに爆弾マラソンとか!!オカマ襲来とかありませんよね!?!?」

 

「あと人が入ったゾーブでキャッチボールとか!!!」

 

「頭皮をなくす勢いで毟るとか!!!」

 

「当たったら気絶するゴム弾が飛んでくるとはないんですよね!?!?」

 

 

「「「いやいや、流石にそれはない」」」

 

 

「ソレハ発案者卜実行者ノ神経ガオカシイダケデ…………普通ソンナ事ハヤラナイ」

 

「そもそもそんな事したら普通死ぬよ?スパルタといっても………そこまでやったら体罰だから」

 

「雄英はヒーローを育てる学校であって………処刑場じゃないからね?………私も昔やらされたから………気持ちはわかるけど……………」

 

「まぁ、とにかくついさっきの試験説明にしかり、上には上が、下には下が沢山あるって事だ。お前等は最下層を楽しんだわけなんだから、安心して努力を重ねてくるといい」

 

 

「「「嫌な教訓だなー……………」」」

 

 

「さて、これで説明は終わり。ここからはプルスウルトラの精神で乗り越えろ。………準備はいいか?」

 

  

「「「「当然!!ワクワクしてきたあ!!」」」」

 

 

「じゃあうちは各自分裂したエクトプラズマの所に行き、訓練を始めていけ。”22”名を相手するのは大変だと思いますが、エクトプラズマさん、後はよろしくお願いします」

 

「先生。”22”じゃなくて”21”です」

 

「あんた自分のクラスの人数も覚えてないわけ?校長がこないだ注意されてたじゃない」

 

「あれ?確かに22だったと思うんだが………」

 

「というか、この真血 狼って誰ですか?そんな生徒いましたっけ?」

 

「モシヤコノ名簿………印刷ミスガアルノデハナイノカ?」

 

「先生何してるんですか?組手の相手をお願いしまーす」

 

「アッ、スマン。今行ク」

 

  

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………本当に…………誰も彼のことを覚えていないんだね。わかってはいたが………やはり寂しいという他………言葉がないよ」

 

『そうは言いますがね根津さん。彼がやったことを考えれば、これが一番誰も傷つかない最善の行動だったはずです』

 

『ただでさえヴィランではないかと嫌疑が掛けられていたのにも関わらず…………彼はヒーローヴィラン連合の対応に追われる雄英を襲撃して…………ヒーロースーツを無断で持ち出し…………ましては止めに入ろうとしたイレイザーヘッドを倒して逃走しました』 

 

『本来ならば彼を指名手配してでも捕らえなければならないというのに…………私達は今それをしていない。そこを考えた上で………言葉を発して欲しいものですな』

 

「あなた方がやったことには微々たるですが………多少………納得もしていますし………やらなければ収集の着かない騒ぎが起きていた事は事実です。ですが……1人の大切な生徒がヴィランの道に落ちようとしているかもしれないのもまた事実…………。……………どうか………教師達の記憶だけでも戻し………我々にも彼の捜査を行う権限を………………」

 

『だから駄目だというのだ!!あなた方はあの化物に情が情が湧き過ぎている!!』

 

『ヴィランの近くにいればヴィランの思考も移る。そうなるだろうから、私はヴィランの更生など反対だったのだ』

 

『これは公安委員会の幾度も会議を重ねてようやく決まった決定事項。例えあなたが数多のヒーロー育成に関わってきた偉人だとしても、この決定に異議を唱える事を許しませんよ根津。状況というものを考えなさい』

 

 別の画面で生徒達と教師達の様子を見ていた根津は、残り半分ほどになっていた紅茶を一気に飲み干すとともに、校長室の巨大スクリーンの公安委員会役員達に向き直った。

 

 紅茶を飲んだのにまだ、苛立ちはまだ抑えきれないななどと冷静に考えながら、根津は口を開く。

 

「彼が今回引き起こした事は彼の個性が暴走して起きたただの事故。そして彼が国際仮免資格を持ってる以上、ヒーロースーツと個性の使用も認められていおりますし、雄英を襲撃したなどというのは語弊です。………無人だった雄英に勝手に入り込み…………それを咎めようとしたイレイザーヘッドを気絶させた事は………多少罰するべきですが」

 

『国際仮免資格があるからといって!!プロヒーローを気絶させて逃亡など度が過ぎている!!』

 

『しかも今回の犯行は学校だけで罰する範疇を越えているかいないか………首の皮一枚繋がる所を見抜いた上で………行ったことだ。ヴィランの近くにいると思考だけでなく…………悪知恵も移るようで』

   

「犯行などというには壮大過ぎますし、今回の事とヴィラン更生は関係ありません。なりよりこの国は法治国家。周囲の人間から彼の記憶を消すなどということは明らかに犯罪です…………。あなた方のやったことの方がよっぽど度が過ぎている」

 

『そのくらいのことをしなければ公安ヒーローも自由に動けず、他の誰かに事が露見してしまう可能性も出てくる。我々は持てる記憶干渉を行えるヒーローを総動員して下準備を整えただけであり………それに何よりたかだか記憶です。その程度で消えるなら………それまでといった所です』

 

「人は他社の中に自らの記憶があるからこそ………生きていると言える。…………そんな記憶を消したあなた達は………十分な人殺しですよ…………!?」

 

『貴様!!実績があるからと言って会長になんて口を!?我々の力がなければ暴走するメディアを抑え生徒達を守れなかったのだぞ!?』

 

「抑えた?それは生徒達の為ではなく、あなた方がこの国からヴィラン更生を排斥する為行った事でしょう?ヴィラン更生を行っているヒーローの息子が犯罪を犯したとなればその信用はガタ落ち。彼をあなた方が捕らえそれを報道すればこの国からヴィラン更生を一掃出来ますからね。何より生徒達の為というのならば…………何故彼等からも記憶を消したのです!?あの子達は………彼の事を永遠に思い出せないんですよ!?」

 

いつもの飄々とした雰囲気を一切捨て、根津は息切れを起こすほど、彼等に対して怒りを向けた。

 

 だが、その怒りなどどうでもいいとばかりに、会長は口を開く。

  

『犯罪者の記憶など不要。我々は正しい事をやっただけです。それと、我々は彼捕縛に動かなくてはならない為、そろそろ話を終わりにする事とします。教師達から確かに記憶が消えてることが、確認できたことですしね』

 

「勝手に現れて………勝手な事を…………」

 

『下手に動き、雄英高校全体を危機に晒すなどという事は、誤ってもしないようお願いします。……血影達のように勝手な動き、自身の大切なものを危険に晒したくないのならばね』

 

「待て!!まだ話は─────」

 

『では、私達はこれで失礼します。全てはよりよい社会の為に』

 

 こちらの言い分を一切聞くことなく、役員達はスクリーンから消え、彼等を相手した事で大きく体力を消費した根津は深く椅子に座り込んだ。

 

事を扉の外で見ていたリカバリーガールが、新しい紅茶を持って入って来る。

 

「あんた………柄にもなく怒っていたね。私としても………今回の事は怒り狂っているが………」

 

「…………あんなの聞いたら………嫌でも怒りたくなるさ。あんなに声を張り上げるつもりはなかったというのに………たかだか記憶などと…………言われてはね」

 

「これで………あの子の事を覚えて心配している大人は………私とあんた………あの2人だけになってしまったね」

 

「…………病院に行ったんだろう?…………やっぱり………覚えてなかったかい?」

 

「ああ………誰も………。義妹であるヒミコちゃんですら………覚えていなかった。入院したての時はみんな必死になって様子を聞こうとしていたというのに………人間ってのは残酷だね」

 

「だがせめて………彼が守りたかったものは………必ず私達が立派なヒーローに育て上げよう。彼も………心からそれを望んでいたからね」

 

「不思議なもんだね………。失くすまでは特別聞きたいと思っていたわけじゃないのに………失くしてからはこんなにあの元気な笑い声を聞きたくなるだなんて…………」

 

「それが………人の性ってものさ」

 

そう言いながら根津は太陽が空にあるにも関わらず浮かぶ月を見上げ………ただただ静かにカップの紅茶を寂しそうに啜った。

  

 

 日常は確かに、光ある所に戻って来た。

 

 だが、それは真の夜明けではない。

 

 日常の仮面を被った暗闇が光に出てきただけであり、まだ夜明けが訪れることはない。

 

 その事実を誰かが気づくまで………夜は永遠に………明けることはないのだから…………。

 

 

 

 

 

 

  

 

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