鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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60 染まるか染まらぬか

 

 

 

「おいおい嘘だろ!?正気かよ!?ハードル高くねーか!!?」

 

「しかもここ!!救助所の真ん前にたくさん出て来たから直ぐこっちにも来るよ!!」

 

「仮免試験でヴィラン出すって…………今回の試験難易度高すぎるでしょ!!!」

 

 デパートを模した建物から救助者を助けて救護所に来た最中、突如として彼方此方から爆発が起こるとともにヴィラン役であるギャングオルカとそのサイドキックが現れ、あまりの難易度高さに私はそんな声を出してしまった。

 

 いや、けど、言い訳はさせて欲しい。

 

 ヒーローがこういうあんま言っちゃいけないだろうけど、言い訳はさせて欲しい。

 

 オールマイトの引退とか、神野区事件とかもあったから、それに応じて試験の内容が難しくなるは仕方ないし、そこは乗り越えていかないとなと思う。

 

「けど………絶対今回の試験内容の難易度は色々とおかしいと思う…………。絶対に去年難易度の倍どころの話じゃないと思う………。乗り越えるにしても………壁がデカいどころの話じゃないでしょ………これ…………」

 

「まぁ、とにかくあっちを見て見ぬ振りをするふりは出来ねぇ」

 

「轟!!行くのか!?」

 

「緑谷と傑物の奴がもう先に行った。彼奴等だけじゃ数に押されるし、何より俺は”個性的”に救助より戦闘の方が得意だ。俺が彼奴等の脚を止めてる間、急いで避難を進めてくれ」

 

「おい!轟!!………くっそ。1人で行っちまった」

 

「けど、轟ちゃんの言うことも確かだと思うわ。緑谷ちゃん達だけじゃ数で押されるだろうから、ヴィランを足止めする人も必要よ」

 

「ならば一先ず俺と尾白、芦戸の3人が応援に行こう。この中であればこの3人が戦闘に秀でて尚且、機動力もある。避難が終わるまでの間、敵を足止めするには最適なメンバーだと思う」

 

「じゃあ、それ以外のメンバーは避難を手伝って、それが終わり次第応援に行くわ。あっちもあっちで人手が足りてないだろうから」

 

「よし。じゃあ、その案でそれぞれ早速動こう」

 

 尾白の言葉に皆が頷き、梅雨ちゃん達は避難をする救護者達のところに、私達は轟を追うようにしてギャングオルカ達のいる場所に急いだ。

 

 そして少し走った最中、フィールドの端の方で大きな爆発音が響く。

 

「何?今の爆発?まだサイドキック来るの?」

 

「……いや、そのような気配はない。大方、ギャングオルカが現れた時に起こった爆破の仕掛けの1つが遅れて作動したんだろう」

 

「あんな所に人はいないだろうし、ギャングオルカ達のところに行く方が優先だ。あんなの頬っておいて早く行こう」

 

 2人はそう言うと止めていた脚を進め、私も1脚を遅れて脚を進めていった。

 

 けど、何度も響く爆発音の方がやたらと気になり、私は走りながらもずっとそっちの方のことばかり意識してしまっていた。

 

 そしてそんな最中、視界に一瞬見慣れた人影が移る。

 

「今の………ヒミコちゃん?しかも……手奥の手の翼まで今生えてた?………見間違いじゃないとしたら………何であんな所に……………」

 

 私が悶々としてる間にも爆発は何度も起こり、何度も何度もそちらを気になって目を向けてしまった。

 

 そして、いつの間にか何故か、私は脚を止めてしまう。

 

「芦戸?どうした?具合が悪いのか?」

 

「あと少しでギャングオルカ達のいるところだ。具合が悪いなら避難誘導の方にまわったほうが………」

 

「………いや、別に具合の方は悪くないから大丈夫大丈夫。………けど、あっちがどうしても気になってしょうがないの。だから………ごめん!!そっちは任せた!!」

 

「芦戸!?何処に行く!?そっちには何もないぞ!!」

 

「戻るにしても逆方向だって!!ちょっと!!何処行くんだよ!?芦戸!!!」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

  

 

 

 

             

                                         ◆◆ 

 

 

 

  

 

 

 

  

 

 

  

 

 

 

 

「アソボ!!ネェアソボ!!ネェネェアソボウヨ!!ネェ!!」

 

「くっ………なんて量の弾幕…………。けど……刀花さんの弾幕の量と比べたらまだまし…………!!ならこれで─────」

 

「アソボバナイノ?マダアソビタリナイヨ?マダアソビタリナイイヨ!!ネェ!!!」

 

 弾幕を何とかを潜り抜け、ギャングオルカのサイドキックの姿をした何かに刀を振ろうとした最中、突如としてその何かは腕を私のいない別方向に向け、そのままミサイルを放った。

 

 そして放たれたミサイルがある方向にあるのは…………戦闘に巻き込まれないよう物陰に隠れた女性のいる建物の残骸だ。

 

「…………!!血闘術3式!!『SAMスティンガー』移動特化!!血闘術4式!!『MGLダネル』!!」

 

 敵を蹴りつけ移動して建物に飛んでいくミサイルを追い、直様取り出したナイフを投げることで、どうにか建物に迫るミサイルを爆破。

 

 何とかミサイルが建物に当たる前に撃ち落とすことは出来たが…………息をつく暇なんてない。

 

 爆炎に紛れ接近していた、謎の敵がもう目の前に迫っている。

 

「ネェシンデ!!ソッチノホウガモットタノシイカラ!!ネェ!!シンデ!!!」

 

「死にませんし!!ここで引くつもりもありません!!私の目の前で………誰かを殺させは絶対にしない!!!魔血………開放!!血闘術2式!!『M9バヨネット』!!!」

 

 迫る敵の拳と私の振るう刀がぶつかり合い、お互いの力と力が一瞬拮抗するが、一瞬早く振るった私の刀がどうにかその競り合いに押し勝ち、斬撃による衝撃で敵は入ってきた場所に向かって勢いよく飛んでいった。

 

 だが、敵の攻撃の余波で私の脚からは鮮血が走り、私はそのままその場に座り込んでしまう。

 

「(一体………あの敵の正体は何?こっちに敵意を持って殺しかかってきていることは嫌でもわかりますが………わかってないことが多すぎる…………。全国のヒーローが集まっているこの場所に…………どうやって入り込んだの?)」

 

 あの敵が爆発と共に現れて数分。

 

 私は状況を理解する暇も、誰かにこの事を伝える暇もなく、執拗に私を狙うあの謎の敵と私は闘いを続けていた。

 

 幸いなことに、あの敵の狙いが私のみなお陰で女性を建物の残骸に隠すことが出来、私も全力で応戦することが出来ているが、どういうわけか、ヒーローはおろか主催者側の公安もこの自体に気づいていない上………大怪我を負った女性の様体が予想以上に酷い。

 

 あの女性の怪我の応急処置を事前にしていたお陰で多少は時間は稼げてはいるが………それでも多く見積もっても女性の体力が持つ時間は約15分。

 

 敵が私を執拗以上に狙い続けているお陰でどうにか守りきれてはいるものの、いつ狙いを変えてもおかしくない上、言わずもがな時間も掛けられない。

 

「(下手に時間を掛ければ………あの女の人の治療が間に合わなくなる…………。けど………これで下手に女の人を連れて後ろに下がったら………何も知らない受験者がやられて………最悪パニックになるどころの話じゃない…………。一番いいのは………あの敵を早々に倒すことですけど……………)」

 

「ネェマダダヨネ?マダシンデナイヨネ?マダアソベルヨネ!?ネ!?ネ!!」

 

 瓦礫で崩れたフィールドの壁の奥からそう言いながら敵は現れ、破れたスーツの彼方此方から飛び出た触手を動かしながら、ゾッとした笑みを再び浮かべた。

 

 そして伸ばした触手を全身からあらかた出し終え、準備運動が終わったとばかりに敵は飛び出し、再びこちらに向かってくる。

 

「(やっぱりさっきの攻撃の衝撃を体を晒して受け流してた上でまだ全力を出していなかった!!速さもパワーも段違いで躱しても受け流しても衝撃が体に走って軸がぶれて攻撃が上手く出来ない!!)」

 

「コノテイドジャナイヨネ!?マダアソビタリナイヨ!!マダタノシミタイヨ!!!」

 

「(こっちが攻撃などお構いなし突っ込むに様子は何処か脳無に似ていますが………そうだとしても何かがおかしい。これまで見てきた脳無と比べられないほどの力に速さに硬さ…………言語を一応とは言え話せる知性…………。そして………この敵は───)」

 

 突撃してきた敵の猛攻をどうにかいなし、躱しどうにか懐に飛び込み、私はもう一度全力の2式を奴に向けて放った────

 

 が、その刃を敵は右腕を避けかけながらも受け止め、刀はその圧倒的な力で握り潰されてしまった。

 

 即座に刀を捨てて後ろに下がるが、鞭のように振るわれる触手に脚を掴まれ、そのまま投げられて建物の残骸の1つに叩きつけられてしまう。

 

「グウゥッ……!!(頭は……ギリギリ大丈夫ですけど………その分全身が死ぬほど痛い!!)」

   

「イマノハ、キイタ。ケド、ケッキョクツイサッキトオナジヤツ。コンナンジャツマンナイ!!モットタノシマセテヨ!!」

 

「(間違い……ない。この敵は………考えている…………。敵の取る動きを予測し………こっちが一番嫌がる行動して………こっちに対応している!…………もしこれが本当に脳無だとして………これが試験会場に行ったら………ここにいる全員が………殺される!!)」

 

「マダタリナイ!コノテイドナノ!?コレジャアスグシンジャウ!!マダ!!マダシナナイデヨ!!」

 

「絶対に……ここから先には行かせない!!誰も………死なせは……─────」

 

 懐からナイフを2本取り出して敵に向かっていこうとしたその時、脚が上手く動かず私は上手く立ち上がる事ができなかった。

 

 全身の血が冷たくなる感覚を感じながら脚を見ると、そこには真っ赤な血の水溜りが広がっており、脚が軽く裂けてしまっている光景が広がっていた。

 

 だが、そんな私などお構いなしとばかりに敵は私に向かって拳を放ち、ゆっくりとそれは眼前近づいていく。

 

 

 あっ、死んだ。

 

 こんな簡単に、人は死ぬんだ。

  

 嫌だ。まだ、やり残したことが沢山ある。

 

 まだ、何も思い出してない。まだ、みんなと一緒にいたい。

 

 まだ………死にたくない。

 

 体の内側から湧き出す後悔や過去の光景を頭に浮かべながらも………死ぬという絶対的な事実が私を満たし………眼前に迫る死神の鎌は私の首に向かって確かに鎌を振り下ろした。

 

 

 あっという間な出来事で始まり、あっという間な出来事で終わる人生。

 

 私………真血 被身子の人生は…………ここで終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………いや、終わるはずだった。

 

 何度も私を捕え、今度こそ私を終わらせようとした死神の鎌は確かに振り下ろされた、はずだった。

 

 

「ふざ………けるな…………!!私達の…………私の………友達に………!!指一本………手を………出すな…………!!!」

 

 

 死神の鎌を壊した張本にである三奈ちゃんは、今まで見たことのない色んな感情でグチャグチャになった顔になりながらもそう言い放ち、溶解度100%の酸で右腕を溶かされた敵はそのまま大きな音をたててその場に倒れ伏した。 

 

「みな………ちゃん………?どうして………ここに………?」

 

「ひみ………こちゃん………。よか………った………。本当に………よ……かった…………」

 

 傷など何処にもないはずの美奈ちゃんはそう言いながら崩れ落ちるようにして地面に座り込み、何度も息を吐き出しては吸ってを繰り返しながら小さく震えた。

 

 自分の手を何度見ては震える美奈ちゃんにどうにか私は近づいて手を強く掴み、目を放したら消えてしまいそうな友達をどうにかここに繋ぎ止める。

 

「大丈夫!!私は大丈夫です!!美奈ちゃんのお陰で私は生きています!!!大丈夫!!落ち着いてください!!!」

 

「私……ヒミコちゃんがこっちにいる気がしてこっちに来て………進んだ先にあった変なモヤを見つけて…………それでその先に行ったらヒミコちゃんが殺されそうになってて………それで─────」

 

「あのままだったら私は殺されていました!!それだけじゃありません!!あのままあの敵をそのままにしていたら死人が沢山出ていたかもしれない!!美奈ちゃんは………私を助けてくれたんです!!それだけなんです!!!」

 

「ヒミコちゃんが殺されそうになった瞬間に………変な見たことのないことのない過去の光景みたいなのが頭に浮かんだの…………。林間合宿のときに誰かが目の前で仮面の男に殴られて…………苦しんで………悲鳴を上げてた…………。私………その場で何も出来なくて…………また何も出来ないのが嫌で…………それで!!!それで!!!!」

 

 

「美奈ちゃん!!!」

 

 

 言ってはいけない言葉を言おうとした美奈ちゃんの言葉を打ち消すように私は大声を出して、肩を強く叩き、私達2人は何度も息を吸っては吐いてを何度も繰り返した。

 

 数秒間無言のまま私達はそのまま息を吐き続け、息が整って再び小さく震える美奈ちゃんのピンク色の手を強く掴み、その目を強く見る。

 

「美奈ちゃんは……何も悪いことなんてしてません。ヴィランなんかじゃありません。ヴィランなんて言わせません。美奈ちゃんは………私にとって誰よりもヒーローです………。これ以上は………言っちゃいけません…………」

 

「私………怖かった………。背負うって言ったのに何も出来なくて………怖かった…………。友達なのに何も出来なくて………怖かった………。全部グチャグチャになって…………自分が自分でなくなるじゃないかって…………怖かった…………」

  

「ここに来てくれて………ありがとうございます。助けてくれて………ありがとうございます。とにかく………上手く言えないけどその…………本当に………ありがとうございます」 

 

「…………上手く言えないって………もうちょっと何か………言える言葉ないの?一応私命の恩人なんだけど、もうちょっと言う言葉ないの?」

 

「…………だって………本当に思い浮かばなくって…………ただ……ありがとうとしか思い浮かばなくてその………感謝はしてるんですけど………その……………」

 

「何それ。結局思い浮かんでないんじゃん。本当にありがとうって思ってるの?」

 

「思ってますって!誰よりも思ってますって!なら美奈ちゃんは言葉にできるんですか!?」

 

「いやー………それとこれとは話が別で………ヒミコちゃんが考えるべきことというか何というか…………」

 

「結局美奈ちゃんも言葉に出来ないんじゃないですか」

 

「だって!言葉にするって難しいんだもん!!」

 

 そう言いながら私達は思わず笑いあい、全身に降り掛かった恐怖と狂気を振り払った。

 

 ………ヒーローとは一歩間違えばヴィランと何ら変わらない存在であり、その2つを大きく分ける点は、多分こうやって一緒に笑い会える人が近くにいるかいないかの違いだと思う。

 

 狂気と正気の合間で自分を保っていることほど苦しいことはなく、1人ではきっと狂気に飲まれ、狂気を狂気と思わない何かになってしまう。

 

 だから………美奈ちゃんと出会えてよかった。

 

 一緒に………笑うことが出来てよかった。

 

「………ねぇ、ところで話は変わるけどさ。あの敵は一体何だったの?明らかにヒーローではなかったし………何で誰もこの自体に気づいてないの?」

 

 ある程度気分が落ち着いたお陰なのか、美奈ちゃんは少し不安げな顔で倒れた敵を見つめながらそう言った。

 

「それが……私もあまりわかっていないんです。ここに倒れてた女の人を助けてたら急にあの敵が現れて………何が何だかわからないまま戦っていましたから何もわかりません。………けど、変な話ですよね。ここまで大きな戦闘音が響いて、カメラもきっとあるはずなのに誰も気づいていないなんて、どう考えてもおかしな話です」

 

「うん………そうだよね。まるでここら辺だけが別の場所にあるみたい感じ」

 

「………?今なんて言いましたか美奈ちゃん」

 

「えっ?ここら辺だけが別の場所にあるみたいだって」

 

「…………確か、美奈ちゃんはここに来るまでに変なモヤを見かけたんですよね?けど、私の記憶が確かなら、元々そんなモヤなかったはずです。………もしかして、そのモヤは幻覚を見せるような個性によるもので、そのせいで誰もこの敵に気づけなかった………とか?」

 

「………それ、もし本当ならかなり不味くない?さっきの敵以外にここを襲いに来た奴がいても………誰もそれに気づけないってことじゃ………!」

 

「早く女の人を連れてモヤを出ましょう!この事を早く伝えないと!!」

 

『それは駄目だよ面白くない。ただでさえ変な邪魔で面白くなくなってるってのに、この子の事伝えたら本当に台無しになっちゃうじゃん。ヒーロー志望のたっくさーん人間が………急に現れた脅威によって無残に散っていくのが…………一番面白いってのにさ』

 

 突如背後で立ち上がった敵の口から聞き覚えのある女の声が響き、私達は思わず目を見開く。

 

「嘘………何で生きてるの!?腕一本溶かされたのに!?」

 

『こんなんで脳無が死なない事は、あなた達が一番知ってるはずでしょ?それにこれは遂に完成した最高傑作第1号らしいからさ。びっくりするぐらい頑丈らしいよ。名前は確か………ハイラル………ハイド………肺炎…………何だったっけな?』

 

「脳無って事はやはり………今回の件はやはりヴィラン連合の仕業!?そしてその声………あなたはまさか………………!!」

 

『やっほー!久しぶり!!林間合宿ぶりだね!!私マッドメン・ガール!!覚えてる!?直背会えないのは残念だけど………会えてとっても嬉しいよ!!美奈ちゃん!!ヒミコちゃん!!』

 

 悪い予感は正確に当たっていたらしく、脳無から私達を見て笑ってるだろうマッドメン・ガールはそう不気味に笑い、彼女の仕草を真似するようにケタケタと脳無は笑う仕草を見せた。

 

『あなた達の予想は大方大正解!!こんな彼方此方から未熟な卵が集まってるこの状況を私達が見逃すわけないじゃないですが!!いやー、ほんと、ヒーローって馬鹿だよね。どうか貴重な卵を、どうぞまとめて壊してくださいって状況を自ら作っちゃうなんて!!馬鹿すぎてお腹痛いよ!!マジでさ!!!』

 

「じゃあ………別の場所からもう他の脳無が…………」

 

『いやいや、それは大不正解。ついさっきも言ったでしょ。変な邪魔が入ったって。何か公安のヒーローでもヒーロー校のヒーローでもない別のヒーロー?みたいなのが彼方此方に準備してた脳無の邪魔をしてるみたいでさ。結構やられちゃってるみたい。まぁ、その邪魔してる奴等の人数は2人程度みたいだし、残りの脳無を集中させたから直ぐに死ぬと思うけどね』

 

「誰かが………事前にヴィラン連合の動きを察知していた?」

 

「一体誰が?」

 

『さぁね。まぁ、そんなわけで、今使えそうなのはその子だけなんだよね。だからさ、早くそこどいてくんない?哀れなヒーロー志望の子がこの子を見てどんな顔をするかを早く見たいからさ。そうすれば、2人含め雄英の人達全員の安全は保証してあげるよ!我ながら出血大サービス!!大サービス!!』

 

「ふぜけないで!!そんな要求聞くつもりもないし!!こいつを行かせるつもりもあるわけないでしょ!!」

 

『人を殺したーって、勘違いしてビクビクしてばっかなのに?初々しい事何よりだけど、そんな事ビクビクしてる美奈ちゃんが?この子を止める?笑わせないでよ』

 

 マッドメン・ガール声のトーンがストンと落ちるとともに、溶かされた腕を再生させ、マスクの下から1つ目を顕にした脳無は私達に向けてミサイルを放った。

 

 咄嗟に2手に分かれてミサイルを躱すが、脳無は爆炎に紛れて美奈ちゃんに接近し、美奈ちゃんは触手であっという間に拘束されてしまう。 

 

「何!?この触手!?酸で全然溶かせない!?」

 

『その触手は『変触手』って名前の個性のものらしくてね。受けた攻撃を分析して、瞬時にそれに対抗する組織に変異するんだって。まぁ、要は、1度受けた攻撃は絶対に効かないってこと。最初の気合の入った攻撃のお陰で、酸の対策はバッチリだよ』

 

「あなたはこんな事をして一体何がしたいの!?人を殺して楽しいわけ!?」

 

『前に言ったでしょ。『世界一楽しい遊びだって』。美奈ちゃんも感じたでしょ?人を殺したって確信した時の、高揚感、をさ』

 

「………そんな………事…………」

 

『いーや。感じたはずだよ。絶対に。あのまま真っ黒に染まっていく感覚に身を任せちゃえば、今よりずーっと楽になれたはずだよ。こっちはいいよ?何の我慢もしなくていいし、好きなことを好きなだけやれる。なのに……その機会を自分からふいにする何て………馬鹿以外の言葉が見つからないよ。ばっかじゃないの?そっちにいて楽しい事はあったかもしれないけど………それ以上にルールに規則、面倒な期待に勝手な押しつけとか………嫌の事方が沢山あったはずだよ?何でそんなの感じなきゃいけないの?おかしくない?自分に正直になりたいのに………それを勝手な価値観で邪魔するなんて………おかしいと思わない?』

 

「美奈ちゃん!!そんな奴の言葉に耳を貸しちゃ駄目です!!」

 

『うるさいな。私は今美奈ちゃんと話してるの。少しヒミコちゃんは黙っててよ』

 

 そう不機嫌な言葉が発せられるとともに、いつの間にか発射されていた大量のミサイルが私に向かって降り注いだ。

 

 ワイヤーナイフを振り回すことで、何とか直撃を避け、ミサイルがこっちに到達する前に爆破させることは出来ているが、防ぐので手一杯で、近づくことが出来ない。

 

『ヒーローなんてのは結局の所は自己満足の塊。自己満足に生きてるヴィランと何が違うの?寧ろこっちの方がずっと楽なはずだよ。ねぇ………どうする?こっちに来る?そうすればもっと自由になれるよ?どうする?』

 

 頷かなければ殺すという雰囲気を、何処か漂わせながら、マッドメン・ガールは美奈ちゃんに対しそう言い放った。

 

 少しでも考えが揺らげば、あっという間に気圧され、圧迫され、頷いてしまう空気。

 

 だが、そこにあったのは、全く揺らがない、いつもの姿。

 

「………確かに、嫌なことは沢山あったよ。面倒だなって思ったこともあったし………もっと楽になりたいなって思ったこともあった。…………でも、それが押し付けでも、それが自己満足でも、私は一人勝手な満足で誰かが笑えないなんて絶対に嫌だ。誰かと一緒に笑えない何て………絶対に嫌だ。私の………私達のいたい居場所は………あんたのいる1人の世界じゃない!!!」

 

 圧迫する空気を押しのけるようにそう言い放ち、その言葉に一歩たじろいだ脳無の隙を突いて、ナイフで美奈ちゃんを拘束していた触手を切り裂いた。

 

 私達2人は、一度脳無から距離を取る。

 

『………そっか。わかってはいたけど………結局のそっちにいるんだ。つまんな。せっかく機会を作って…………真っ黒に染まるかなって期待してたのに………それが答えなんだ。そっか』

 

「ちょっと前に、ヒミコちゃんに1人は嫌だって、教えてもらったばっかりだからね。それに友達裏切るわけにはいかないしね」

 

『結局は水と油。どんなに寄り添ってもわかってはくれないか』

 

「あなたの思い通りになる気も遊びにも付き合うつもりはありません!私達がこの場にいる限り………誰も傷つけられると思わないでください!!」

 

『いいよ。なら付き合ってあげる。そっちのやり方のお遊びに。どっちがあってて………どっちが間違ってるか………はっきりさせてあげるよ……!!』

 

 

 

 

  

 




 
 
 …………あれっ?
 
 元々この回で仮免試験編終わらせるつもりだったのに、何で続くことになってるんだ?あれっ?あれっ?
 
 …………んっ?何だこの紙?
 
マッド『久しぶり出たから頑張っちゃいました!!しわ寄せの調整お願いします!!』
 
 何やってんだよあいつ!!!

 というわけで、あと一話続きます。
 
 
 
 
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