鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 ようやくこれにて仮免試験編が終了………。
 
 なんとか文字数いっぱいにまとめることができました!!  
 
 いや、ほんとに焦った!!文字数限界に達しそうでまじでマジで危なかった!!!
 
 ここまであと1話で終わらせる宣言しといて………終わらせないのはマジで無責任のはヤバいですねからね………。
 
 本当に………無事終わってよかった………(これで終わらなかったら大魔王に殺されるところだった模様)
 
 あっ、それと、今回の描写にあたり、あまり慣れない書き方をしたので少し伝わりにくい部分があるかもしれません。
 
 今後もそういうことがあるかもしれませんが、今後とも熊も小説の書き方等々などを勉強していく所存なので、これからもどうか生暖かい目で見守ってください。
 
 それでは、長い前書きはこれぐらいにして、仮免試験編最終話の方を………どうぞ(最近これで前書きを締めないと落ち着かなくなってきてる。………ワンパターン過ぎないか?これ)
 
 


62 失われし記憶との邂逅

 

 

 

『あり、えない。ありえ、ない!脳無が!それも最高傑作1号のこの子がやられるなんてそんな事!ある訳ないよ!!』

 

「…………残念、ですが、全て起きた、事実、です。あなたが、負けた、事も、私達が、勝っ、た、事も。全、て………事実で─────」

  

 そう言葉を言い切る余力もなく、魔血開放が解除された私は膝から崩れ落ちるようにして膝を付き、持っていた刀もまた何処か遠くに跳んでいった。

 

 頭から地面に倒れそうになるのを、ギリギリで芦戸に支えられたことで何とか意識をすんでのところで保ち、どうにか口を開く。

 

「すいま、せん。また……助け、て、もらっ………て」

 

「気にしなくていいよ。あんな怪我であんな戦い方したらそりゃボロボロになるし、私も十分助けて貰ったしね。………とりあえず、これでお互い様ってことで」

 

「へへっ、そうですね。これでまた、貸し借りなしの、お友達ってことで」

 

「何言ってんの?最初から貸し借りなんかしてないでしょ」

 

「あっ、そうでした。すいません」

 

「そうやって直ぐ謝らないの」

 

『何、これ?このままハッピーエンドで終わり?誰も死んでないのに?何も壊れてないのに?冗談じゃないよ!そんなのつまんないったらありゃしないよ!!』

 

「つまらないも、何も、少なくともこの戦いは、もうおしまいです」

 

「理由はよくわからないけど、ここら一体にあったはずの霧も少しずつ晴れてきてるし、その脳無はもう動けない。もう、全部終わったの」

 

『ふざけないでよこんなの!!ハッピーエンドなんて最悪!!バッドエンドじゃないと全く面白くない!!ねぇ動けよ!!動いてよ!!欠陥品とはいえ最高傑作1号なんでしょ!?ねぇってば!!』

 

 マッドメン・ガールはそう声を荒らげ、脳無を動かそうと何かしているが、頭から真っ二つにされた脳無は流石に再生もすることも出来ず、ただ黙っているだけであり、マッドメン・ガールの思い通り動く事は全くなかった。

 

 これ以上何をやっても無駄だとわかったのか、マッドメン・ガールは1度黙り込む。

 

『あーあ。ほんとに無理だ。ほんとに何にも出来ない。何やっても無駄。敗北者決定。ほんと…………今までの中で1番最悪気分だよ』

 

「………あなた、この後に及んで何を言って────」

 

『だからさ。私も最悪な手段使うことにするよ。これほんと渡されたときから気に入らなかったし、こんなんでおしまいとかほんとに嫌なんだけどさ。何も出来ないんだったら仕方ないよね。あーあ、ほんと最悪』

 

 その声とともに、脳無の体からカチリッという音がし、目に見えるほどの蒸気が発生して、脳無の体のあちこちが膨張を始めた。

 

 この光景を………私は職場体験のときに見たことがある。

  

 爆弾ヴィランが爆発したときと………これは全く同じ光景だ。

 

 間違いない。これは……自爆だ。

 

 そう何処かで私は確信し、マッドメン・ガールに向かって声を荒らげる。

 

「あなたここに来て自爆させる気ですか!?なんて往生の悪いことを!!」

 

『先に往生が悪かったのはそっちでしょ?それに、私だってこんなので終わらせるなんて性に合わないよ。けど、それが一応負けた時の約束だし、他の脳無ならともかくこの子を解析されるのはこっちからしたら面倒だからね。証拠隠滅は当然するに決まってるでしょうが』

 

「どんだけの威力かはわかんないけど!とりあえず爆破させるのはどう考えてもヤバい!!早くどうにか──────」

 

『そうなった以上触んない方がいいよ、その子。全身にボマー細胞仕込んでるから、今のまま下手に触れたら即爆発だし、何より美奈ちゃん酸はもう出せないじゃん。ヒミコちゃんに至っては動くのすら出来ないし、もう全部諦めたほうがいいよ。ちなみに余裕で2人のいるところは余裕で爆破範囲の中に入ってるから、急いで逃げたほうがいいかもね』

 

「ど、どうする!?急いで逃げる!?」 

 

「逃げるにしてももう遅すぎます!!どんどん体が大きくなってることからもう爆発まで恐らく10秒も時間がありません!!………仕方ありません。美奈ちゃんはなるべく遠くに走って逃げてください!!これ以上大きくなって爆発規模が大きくなる前に私が爆破させ──────」

 

「何言ってるのヒミコちゃん!!貸し借りなしって言ったはずでしょ!!それにこんなので生き残っても嬉しくないよ!!もっと別の手段があるはずだって!!」

 

「ですが、もう時間が─────」

 

『爆発まで、5、4、3、2』

 

 死のカウントダウンを前に、私達はお互いを庇いようにして前に出た。

 

 今更こんな事しても無駄なのに、どっちが死んでも嫌なのに、咄嗟に2人共体が動いてしまった。

 

 マッドメン・ガールの1のカウントを前に2人とも目を閉じ、次に来る衝撃に備える。

 

 

 

 

「記憶乱荒狂!!!/オバー・リマインド!!!!」

 

 

  

 

 だが、次の瞬間にあったのは、何処からともなく現れた荒記さんこと、ムネーモシュが脳無に対して個性を使っている姿であり、脳無はムネーモシュの精神干渉を受けて、一瞬膨張を止めた。

 

 その隙に、被っていたペストマスク投げ捨てながら現れた病さんこと、ペストは口から大量の凶悪ウイルスを放出し、それで脳無の体を覆う。

 

 

 

 

「人体完全破壊ウイルス!!!ドグマ87H59!!!!」

 

  

 

 

 完全に脳無の体を覆いきったウイルスは、一瞬のうちにして脳無の体に侵入。

 

 侵入した対象の細胞という細胞を急速にめちゃくちゃにした上で完全に破壊するという、凶悪極まりない特性を持って、脳無の体のボマー細胞を全て破壊した。

 

 それに伴って、脳無の体の膨張もみるみるうちに収まっていく。

 

『あれ?あんた達もしかしなくても、ペストとムネーモシュ?何でこんなとこいんの?というか、そもそも狼君のこと忘れてるならここまで辿り着けないよね?何で狼君の記憶が残ってんのさ』

 

「ムネーモシュ………いや、狂一の記憶が公安の【記憶屋】の手違いで残っていたからよ」

 

「2重人格とはいっても結局は1人の人間。1回の記憶改竄で綺麗サッパリ忘れるだろうと思ったたんでしょうが、狂一と私の人格も記憶もそれぞれ完全に別。片方の記憶が消えても片方が覚えていればいくらでも元に戻せますから、どうにか記憶が残っていたというわけです。………もっとも、公安の監視の目を掻い潜りながら他の人の記憶を元に戻すのにはかなり苦労しましたが」

 

『形だけでもご立派な組織を相手にするのは、お互い苦労するね。こっちも無駄に脳無消費することになっちゃったし、こればかりは本当に同情しちゃうよ』

 

「………やはり、あなた達の今回の目的には、仮免試験襲撃以外の目的も含まれていたというわけね」

 

『まぁ、そういうわけで、今回は戦いは勝者なしの痛み分け。そろそろこの子も限界だし、私はお暇させてもらうよ』

 

「待てやクソアマ!!狼の野郎は今一体何処にいる!?てめぇ等が知っていることを今直ぐ話せ!!!」

 

「おおっ、こっわ。そんな事言われても、私達だって全力で狼君探してる真っ最中何だから知ってるわけないじゃん。公安の方も一時期は足取り追えてたみたいだけど、途中から足取りが完全に途絶えちゃったみたいだし、今狼君が何処にいるかを知ってる人は多分本人以外何処にも存在しないと思うよ。まぁ、公安や私達っていう2大勢力に追われてる以上、どうせ直ぐに見つかって、どちらかに捕まるか殺されるかのオチになる思うけどね」

 

「待ってマッドメン・ガール!!公安とヴィラン連合に狼が追われてるって…………一体どういうことですか!?足取りが途絶えたって………何を言っているんですか!?」 

 

『ん?何?ヒミコちゃんまで私に質問?まぁ正直、その問い対して今この場で答えてもいいんだけどさ、その答えは私より昔の狼君を知ってるその人達に聞いてみたほうがいいと思うよ。今の狼君の知らないヒミコちゃんじゃ話に入る資格もないし、何より理解なんて出来るわけない。………まぁ、知った先にあるのがヒミコちゃんにとっての希望なのか、絶望なのかまでは、私も知ったこっちゃないんだけどね』

 

「狼の…………秘密?それに全て関わっているっていうんですか?」

  

『さぁ?それは全て知ってからのお楽しみってことで………って、おっと、そろそろマジで限界だ。今回は人形を通した遊びだったけど、今度会うときは生身で一緒に遊ぼうってことで、じゃあーね」

 

 最後まで私達を置いてきぼりまま話を終えると、マッドメン・ガールの声は脳無から完全に消え、その場には私達の戦闘とペストのウイルスで全身ズタボロとなりはてた脳無の残骸だけが、その場に取り残された。

 

 マッドメン・ガールの言葉に心底苛ついていたのか、荒記さんの2つの人格うち狂一さんは槍の柄を地面に叩けつけるとともに、脳無の頭を踏み潰して舌打ちをする。

 

「…………チッ、くっそ、面倒事になってきやがった。公安の奴らは案の定使えねーし、これで完全に手がかりはゼロ。全部振り出しじゃねーか」

  

「けど、私が動いたことと、2人が頑張ってくれたお陰でどうにか被害はゼロ。盤面が完全に崩れるのを防げただけ、今はよしとしましょ」

  

「被害はゼロなのはわかったがそれはそれ、これは別の問題だ。この2人、ここまで関わった以上このままここに置いてくってわけにもいかねぇし、連れて行ってもぜってぇこいつ等は後で面倒になる。…………いっそのこと、今この場で記憶を────/駄目だ。ここまで関わった以上、2人には知る権利がある。記憶を消すなんてことするべきじゃない/じゃあ、こいつらをどうすんだ。記憶を消さないってなると一先ずどっかに逃さねぇとなんねぇし、傷が深くて治療用ウイルスが残り1人分しかない以上、どっか処置ができる場所に連れて行かなきゃならん。………まさか、アジドに連れてく気じゃないよな?こいつ等」

 

「ええ、そのまさかよ。医療施設以外で処置ができる場所と言ったら彼処ぐらいしかないし、何より姿を隠すに彼処はとってもうってつけ。脳無と戦闘したなんて事が知れ渡らないようにしないといけない以上、連れて行くのが一番の得策だわ。………今回ばかりは、あなたも子供嫌いをちゃんと我慢してちょうだいよね」

 

「あーくっそ、面倒くさ。ここに来てガキのおもりかよ/お前が来て早々幻覚の霧を出す脳無を逃さなきゃ、ヒーローも脳無襲撃に事前に気づけたし、話がこんなこじれるなんてことになかったんだ。諦めてそんぐらい腹くくれ/ケッ。誰がそんなもんくくってたまるか」

 

「あっ……あの………すいません…………。彼処の瓦礫のところに………女の人がいて…………早く治療しないとヤバいです。それと………狼に………一体何が起こったんですか?」

 

「何処にいるってどういう事ですか?公安とヴィラン連合に追われてるってどういう事ですか?それと………狼って一体────」

 

「わかってる。わかってる。色々多くのことがあって、気持ちと心が追いついてないのはわかるけど、一旦落ち着いて。…………色々と聞きたいことがあるだろうし、色々と言いたいことがあるのはわかってる。けど………今のあなた達にとって、1番必要なのは休むこと。女の人の治療はやっておくし、後であなた達にも全部話すわ。だから、今は目を閉じてゆっくりと休みなさい。…………これからあなた達に何かが起こるにしろ………起こらないにしろ…………こうやってゆっくりと休める時間は………多分しばらくはないだろうから」

  

 病さんの諭すような声で、今まであった緊張が嘘のようにほぐれ、激闘による疲れが一気に出た私達2人は共に気絶し、その意識を今度こそ暗い闇の中へと放り投げた。

 

 そして、きっと目覚めた時、私達はもう、後戻りができない場所にいるんだろうと、何処かで確信しながら。 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  

 

 

                                                 

 

 

            ◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「あーあ、つまんない。変にムカムカするし、変に感情的になっちゃったし、やっぱ誰かに対して揺さぶりかけるの私苦手なのかな?ヒミコちゃんも美奈ちゃんも全然ブレようとも、諦めようとしなかったし、やっぱあの人みたいにはいかないな。………ここで堕ちてくれたら、色々後で面白かったかもなのになー」

 

 そう呟きながら、人気のない裏路地にいたマッドメン・ガールは何とも言えない気持ちをぶつけるように、脳無をコントールするための端末を放り投げつつ、大きなため息をついた。

 

 今回の仮免試験襲撃作戦。

 

 マッドメン・ガールに与えられた役目は自らのオーラを見る個性と、線をなぞり対象の場所を爆破させる個性を生かした、量産型脳無数10体に及び、本命のハイエンドの指揮とその援護。

 

 オーラを見る力をつことによって警備の薄い位置を割り出しそこから脳無を一気に侵入させて、脳無を会場に突入。

 

 そのまま脳無を暴れさせながら、ハイエンドに仕込んでいたカメラから線を視認してなぞり、公安関係者や各ヒーロー高校のヒーロー達がいる場所を爆破。

  

 ヒーローの卵であるヒーロー高生徒を殺害、若しくは脳無改造用の材料にするために誘拐。

 

 そして襲撃の騒ぎに紛れてあわよくば、国の中枢組織の人間とヒーローを育てるためには欠かせないヒーロー高教師を最低でも重体にするというのが、今回の彼女の役割であった。

  

 しかし、そう現実は上手くいかない。

 

 数10体の脳無は侵入させたはいいものの、それら全ては突如として現れたペストとムネーモシュによって、その全てが戦闘不能。

 

 ならばハイエンドだけでもと、謎のヒーロー達がいない場所から突入させたのはいいものの、今度はヒミコと芦戸と戦闘となって、ハイエンドもまた戦闘不能。

 

 結果として、十分過ぎる戦力と計画を立てたのにも関わらず、それを全て水の泡にさせられてしまったのだから落ち込むのも当然である。

 

 まぁ、もっとも、いつものマッドメン・ガールであれば、失敗もまた面白いと笑い飛ばすところではあるし、今回の何とも言えない気持ちの理由はもっと違う場所に、あるのだが。

 

「あっ、いた、マッドメン・ガール。………なんか、ため息ついてるみたいだけど、そっちで問題でもあった?」

 

 マッドメン・ガールが苛ついて放り投げた端末を拾い、そう言いながら、街灯のある表通りから士傑の制服を着たフードを被った人物が彼女に近づいた。

 

 士傑高校は雄英高校と並ぶヒーロー高屈指のエリート校ではあるし、当然その生徒もまたそれ相応の実力を持ったヒーロー。

 

 そして何より、ヴィラン連合はヒーロー達共通のお尋ね者であるし、本来ならば直様戦闘になっているはず。

 

 しかし、ヴィラン連合の組員であるマッドメン・ガールに一切その人物は攻撃しようとはせず、マッドメン・ガールもまた攻撃をしようとはせず、寧ろようやく来たと感じで立ち上がる。

 

「まぁ、問題は問題で起きたけど、そっちの邪魔はしなかったし問題ないでしょ?それに脳無の襲撃は元々あくまで陽動だったし!そっちはちゃんと仕事してくれたって顔で何より!!何よりだよ!!」

 

「できることなら、今後邪魔になる生徒も教師も公安関係者も全部、殺してほしかったってのは本音だけどね。…………まぁ、実際メインの目標は全て達成したから、この際どうでもいいけど」

 

「だよね!だよね!!脳無全部の戦闘データはちゃんと取ったし!!ヒーロー達のデータも取った上!!メインもクリアして目標は8割達成!!さっすがはスゴ凄腕殺し屋ドールちゃんだよ!!ほんと!!さっすが!!さっすが!!!」

 

 そう言いながらマッドメン・ガールはその人物のフードを脱がし、フードの下からは同じくヴィラン連合のドールその人の姿が現れた。

 

 フードを脱がし、飛びついてくるマッドメン・ガールをうざったらしそうに、引き剥がしながら、ドールは口を開く。

  

「私はただ、クライアントの弔の指示に従っただけ。別に大したことしてないし、やるべき仕事をただやっただけだ。そんな誇ることも、褒められるようなこともしていない」

 

「またまた。そんな事言って。ドールちゃんがやったことってかなり凄いこと何だから自信持ちなって。だって、どう考えても凄いでしょ。公安所属ヒーローのデータなんていう雲でも掴むみたいなレベルで、ゲットしにくい情報を、意図も簡単にゲットしちゃうんだもん。これ下手したら、簡単に国1つをひっくり返せるような凄いことだよ?もっと誇りなって」

 

「何度も言けど、やるべき仕事をやっただけで、私は全部どうでもいい。………ただ国の中核を担っている関係者の1人ともあろう奴が、彼処まで口が軽いとは思ってなかった。まさか、たかが10分程度の拷問口を割るとは」

 

「そうは言ってあげないでよ。10分は10分でも、受ける側からしたら何、100年激痛に苛まれたような感覚なんだろうからさ。寧ろ10分耐えたことを褒めるべきだよ。で?その拷問した相手は殺したの?」

 

「ああ、当然。バラバラにして殺したから見つかったとしても死亡確認にもかなり掛かるし、監視カメラも全て破壊して、目撃者もそいつ以外誰もいないから、しばらくは行方不明っていう感じになるだろうね」

 

「うーわっ、エゲツな。変装のために閉じ込めた士傑の子はちゃんと生かしたのに、老害にはめっぽう容赦ないんだね」

 

「容赦あるないじゃない。ヒーロー側との全面戦争をまだ起こさないための処置だ

 

『公安は組織が組織なだけに、脳無の件も行方不明者の件も内密にするだろうが、ヒーロー高となればそうとはいかない。遠くない日、ヒーローとヴィランの一大戦争が起きるだろうがまだ、それを起こす時じゃない』

 

…………って、あの人も弔も言ってたしね」

 

「さっすがは我々のボス。考えることのレベルが断然違いますわ。弔はあの人に多少入れ知恵されたとはいえ、少しずつ育ってるし、もしかしたら更に化けるかもね」

 

「さぁね。私はどちらにしろ仕事をやるだけだよ」

 

「やっぱり、つまんない返し。もっと自分に正直なったほうがいいって。ドールちゃんは」

 

「正直も何も、そんなの全部どうでもいいよ。ところで、ハイエンドの方はちゃんと爆破して、情報が残らないようにした?あんな組織とはいえ、ハイエンドの情報を与えたら後々面倒くさい。そっちの方はどうなの?」 

 

 その言葉に対し、何処か楽しそうだったマッドメン・ガールの表情が苦々しくなり、そんな表情の彼女をドールは睨みつける。

 

「………まさか、爆破できなかったの?たとえ仕込みのカメラが壊れてあんたが線見えなくなっても、最悪遠隔操作で爆破できるようにしてはずなのに、それもやってないの?」

 

「だって仕方ないじゃん!!魔王大魔王のとこの4天王の4人?3人?のうち2人?3人が来ちゃったんだからさ!!これはどうしようもないってやつだよ!!っていうか、ムネーモシュって結局1人換算でいいの?2人換算でいいの?一体全体どっち!?」

 

「そんなの知ったこっちゃないよ。…………けど、そうなるとそうか。ヒミコがここまでこっちに関わり、狼の過去を知る者と会った以上、遂に知ることとなるのか。狼の秘密を」 

 

「あと、美奈ちゃんもいることも、お忘れなくね」

 

「奴の秘密なんてどうでもいいけど、それを知るっていう事はあの人のことを知るという事でもある。全てを知って、それでもなお、彼奴は本当にヒーローのままでいられるのやら、いられないのやら………。………まぁ、その程度終わるのなら、殺すまでまでもなかったってことだけど」

 

「…………ねぇ、ドールちゃん。前から思ってたけどさ。ドールちゃん何かにつけてヒミコちゃんの事考えてるし、今絶対ヒミコちゃんのこと心配したよね?…………もしかして、そういうあれだったりするの?」

 

 マッドメン・ガールの突如とした突拍子もない言葉に、ドールは思わず、はっ?という表情になり、マッドメン・ガールは何かを察した表情を作る。

 

「あー、そういう事ね、ドールちゃん。大体わかったから大丈夫、大丈夫」

 

「大丈夫って何が?というか、私は真血 ヒミコを殺したいと思ってるだけで、心配なんて微塵もしてない。あと、何かにつけても考えてないから」

 

「あー、はいはい、わかった、わかった。私はちゃんと、そこんところの秘密は守るタイプだから、話したくなったらいつでも話してね。因みに、私はどっちもいけるタイプで、あっちのタイプはドールちゃんだから、そこんとこは安心してね」

 

「何を安心すんの?っていうか……何?その生暖かい目。苛つくからやめてくんない?」

 

「まぁまぁ、そう言わないで、今後とも仲良く行きましょうよ」

 

「ならくっつくな、邪魔臭い。そんなことより、依頼した記憶屋の奴がいつになっても来ないがどうした?まさか、公安の奴等にやられたのか?」

 

「んーにゃ。やられたはやられたけどその相手はアイアン•ラッシュ。イレイザーヘッドの記憶を消しつつ記憶を抜き取ろうとしたけど失敗して、ガッツリ攻撃喰らって気絶しちゃったみたいだよ。まぁ案の定先生は何も知らなかったみたいだから、別にいいんだけどさ」

 

「だが、そいつが依頼を失敗したことには変わらない。下手な情報を吐く前に、殺さないといけないけど…………」

 

「ああ、そっちの方の心配は大丈夫。もうとっくに爆破して殺したから」

  

「そうか。なら情報漏洩の心配はないね」

 

「私ってば結構こういうとこ気利いてるでしょ?ちゃーんと仕事をした私を褒めてくれたって別にいいんだよ?ほれほれ」

 

「誰が褒めるか。というか、仕事を完璧にやるのは当たり前の事だ。最初から真面目にやれ」

 

「褒めないって言ったのに褒めてんじゃんドールちゃん。ほーんと照れ屋なんだから」

 

「うっさい。黙ってろ」 

 

 そんな軽口を叩きながら、ドールとマッドメン•ガールは路地裏の奥へと脚を進め、更に深い闇の中へと姿を消していった。

 

 そして、この瞬間、ある1つの世界を支える柱に小さくも致命的、緩やかながら確実に全てを壊していく楔は確かに打ち込まれ、今ある社会が崩れる時を報せる時計の針はまた1つ、その針を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                

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『あんまひっつくなよ暑苦しい。俺もそういう個性だから何となく分かるんだよ。そういう感情は。だから俺はエスパーでもなんでもない』

  

 ………そうだ。そうだった。

 

 あなたと最初に出会った時……あなたはそんな事を言ったんだ。

 

 なんで………私は忘れてたんだろう。

 

『なに?そんなに説教喰らいたい?1時間コースになるけどいい?』

 

 あなたと一緒に学校に行って………美奈ちゃんや耳郎ちゃん………鋭児君や電気君達と出会って…………怒られたこともあったけど一緒に入れて、当たり前に生きられて………私………思いっきり笑うことが出来たんだ。

 

 なんで………そんな大切な思い出にいた………あなたのことを忘れてたんだろう。

 

『………俺だけが傷つけば………もう誰かが傷つくことはない。もう………失うこともない。もう………泣くこともない。だから俺は………強くなりたかった。全てを守るための力が………全てを生かすための力が………もう………何も失わないだけの力が………俺は欲しかった』

 

 今思えば………あなたはずっと………何か辛いことを抱えていたんですね。

 

 ずっと辛かったはずなのに………ずっと悩んでいたはずなのになんで…………私なんかの手を取ってくれたの?

 

 なんで………何も言わずずっと側にいてくれたの?

 

『できないのなら見せてやる。見れないのら作ってやる。この俺が、お前を、普通に生きれる場所に連れて行ってやる。だからヒミコ、こんなところから出よう。こんな、クソみたいな世界から』

  

 私は………あなたはお陰でここに来ることが出来た。

 

 普通に生きれる世界に…………誰かと笑える世界に…………来ることが出来た。

 

 けど………今のこの世界は………少し物足りないんです。

 

 だって………側にいて欲しい人も………ずっと一緒にいたい人も………ここにいないから………少し物足りないんです。

 

 ねぇ………何処?

 

 あなたは………今何処にいるの?

 

 何を………一体考えてるの?

 

 一体何に………苦しんでるの?

 

 私は…………あなたに一体何を………────

  

 

  

  

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

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「して………あげることが………でき………るの………?」

 

 そう呟くとともに、私は意識を取り戻して腕を天井に突き上げ、遠くにいってしまったような何かを掴もうとした。 

 

 しかし、当然掴もうとしてもそこには何もなく、その手は空をきって何も掴めず、私はその手をゆっくりと下に降ろして周りを見渡す。

 

「ここは………会場じゃ………ない…………。…………そうだ………私………あの後気絶して………!!美奈ちゃん!!美奈ちゃんは一体何処に─────」

 

「ちゃんといるよ、ここに。ほんと………目が覚めてくれてよかった」

 

「美奈ちゃん………!!…………よかった………無事でいてくれて。では………ここは一体………────」

 

「ここは私達の隠れ家兼、私の極秘研究所の医務室の中。結構危ないものもあるし、あまり見せたくはなかったんだけど、まさかこんな形でヒミコちゃんを招くことになるとはね」

 

「病さん………あの人は………あの女の人は………」

 

「大丈夫。医療用ウイルスを投与して治療した上でヒーロー達に発見されやすいところに置いてきたから、今頃ヒーロー達に保護されてるはず。………あなた達頑張ってくれたおかげで、なんとか治療を間に合わすことができたわ。本当に………ありがとうね」

 

「いえ………それなら良かった…………」  

 

 そう言うとともに私は力を抜き、一先ず美奈ちゃんと女の子人が無事だったことに一先ず安心して大きく息を吐いた。

  

 しかし、それとともに狼の事が私の頭をよぎり、私はベットから降りる。

 

「病さん………今度こそ教えて下さい。狼に………一体何があったんですか?それと何で…………私達は狼の事を………忘れてしまっていたんですか?」

 

「………それは───」

 

「記憶の件に関しては俺としても聞きたい。1個人が記憶をなくしてるんだったらともかく、雄英生徒や教師、彼奴の周囲の人間全てが忘れてるなんてことはどう考えても異常過ぎる。明らかに組織ぐるみで俺達に何かをしたとしか考えられない話だ」

 

「相澤先生!?どうしてここに!?それと………もしかして記憶が…………」

 

「ああ。アイアン・ラッシュに助けられてここに連れて来られたあと、ムネーモシュの個性で記憶をもとに戻してもらった」

 

「あと私もさっき、記憶をもとに戻してもらった。もう全部思い出したよ」

 

「相澤さんは俺達とヒミコさん以外で最も、狼と関わりが長い人ですので、ヴィラン連合もそんな相澤さんなら何か知っているのではと考え、記憶屋を放ったようです。何とか助けが間に合い、こうやって無事に連れてくることが出来たわけですが」 

 

「鉄田さん。それに荒記さんも」

 

「よっし、これで一応記憶が戻ってる奴らは全員集まったようだな/では何処から話すべきですかね………今回………いや………これまでに起こったことをどう説明するべきか………/順を話すしかねぇだろ!!さっさと話せ!!まどろっこしい!!/今回ばかりは狂一の意見に賛成ですね。わかりました。順を話します」

 

 荒記さんがそう言いながら、鉄田さんから貰ったブッラクコーヒーを飲み、少し考えるような素振りを見せるように、少しコーヒーに視線を向けた。

 

 そして考えがまとまったのか、荒記さんは口を開く。

 

「………まず、今回起こった集団記憶抹消事件の犯人。これはほぼ間違いなく、公安の記憶屋が行ったもので間違いない/この馬鹿も、街で買い物してる時の通りすがらの一瞬の隙に記憶を消されちまった。俺が昼寝こいてる間に何やってんだこの間抜け!!/悪かったって、その件は」

 

「公安が………!?国家組織の一つが………そんな事を…………」

 

「あの、スイマセン。ついさっきから言ってる記憶屋って?」

 

「記憶屋というのは名前の通り、記憶操作系の個性持ちが裏の世界で記憶の抹消及び、奪い取った記憶の売買をしている仕事です。データの情報の何倍も正確かつ、安全に情報を得れることから、大きな組織で尚且、裏に繋がっている組織には必ずいると言っていいほど、古く存在している組織や人物の総称のことでです」

 

「そんな奴等が………何で狼の記憶を…………」

 

「簡単な話さ。公安の連中が狼を捕まえるに当たって邪魔になるかもしれない、って思ったからだけさ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「かもしれないって………それだけですか!?!?人の存在をなかったことにしてるのと同じ事なんですよ!?!?」 

 

「大体ここは法治国家!!!そんな事許されるわけないって!!!!」

 

「許される、許されるの話じゃないの。彼奴等からは昔からかもしれないっていうだけで………色んな命や記憶………人生を奪ってきた。今に始まったことじゃない…………」

 

「てめぇ等は知らねーかもしんねーが、公安は………いや、この国の組織の殆どはとっくの昔から腐ったミカンのバーゲンセール。自分達の利益しか考えてないのさ。今回の狼を捕まえようってのも大方、自分達の邪魔になって尚且、国の維持の邪魔になるかもしれないヴィラン厚生を世論と国の力で無理矢理なくそうって、腹の中だ。それに彼奴等昔から

 

『ヴィラン厚生何かに掛ける金は無駄だ!!そんなものより予算を公安に回すべきだ!!』

  

って、何かに付けて言ってたしな。どうせこれ以上予算がヴィラン厚生に回されたら、自分達が贅沢できなくなるかもしれないって、思ったんだろうよ。まぁ確かに、ヴィラン厚生の一人者である刀花と爪牙の息子がヴィラン犯罪を犯したなんて知れ渡ったら、世論は大きく傾くだろうしな」

 

「何だよ………それ。…………そんなもん………どう考えてもおかしいだろ………………!!!!」

 

「それが……あなた達の知らないもう一つの現実です」

 

「おかしいことがおかしくなくなり………理性と狂気の見分けもつかない」

 

「…………全部とは言いませんがこの国は………表面上以外/とっくの昔に………終わってるんだよ」 

 

 何処か諦めと軽蔑がこもった声で3人はそういい、今までそんなことを知らなかった私達は一種の吐き気に襲われた。

 

 ………何、それ。

 

 自分達がいる現実が実はハリボテで………その裏のもっと暗くて吐き気がする場所が…………本当の現実…………?

 

 …………じゃあ、何?

 

 私達は…………何も知らないで………誰かの血と骨と肉で出来ている現実を………のうのうと生きて、たっ、て………事?

 

「…………話の初めとしては、少し衝撃が大きすぎたみたいですね。………ここで話をやめますか?」

 

「…………いえ。………話を………続けてください」

 

「私達3人はどうにか狂一のお陰で記憶を取り戻した後、真っ先に今どういう状況になっているかを探ってうちに、今回の記憶が抹消したものの正体が間違いなく公安の仕業だと確信したわ。それでさらにその動向を探ってるうちに、狼君が数日前から失踪したっていうことを知って、同時に公安だけでなくヴィラン連合も彼を追っているとも知った」

 

「そしてその過程で今回の襲撃事件の計画と、相澤先生とお嬢から記憶を記憶屋を使って抜き出し、若の行方を探ろうとしている事もまた知り、それを防ごうと動いていたわけです。そしてその後の事は、お嬢達が知っている通りかと」

 

「そう………ですか」

 

「ヴィラン連合まで何故狼を?」

 

「そりゃ公安よりもっと簡単な話、狼を捕えれば情報の取得に人体実験の材料、交渉の材料、ヴィラン連合の凶悪性を知らしめる見世物にと、やれる事がごまんとあるからに決まってる。公安なんぞより、こっちの方が単純でまだマシに見えてくるってもんだ/どっちかがマシじゃない。どっちもどっちもどっちなだけだろ/うるせぇ。細かいことは気にすんな」

 

「あの、ちょっと、いいですか?」

 

「はい。何です?」

 

「根本的な疑問なんですけど、何でそういう事が起こるかもしれなかったのに、狼は何で失踪なんかしたんですか?大体、理由もない失踪なんかあるわけないですし………私達が知らなくて、皆さんが知ってる何かがあるって、私でもわかります。それは………一体何なんですか?」

 

 足場が崩れるような感覚にまだいた私の代わりに、美奈ちゃんは口を開いてそう言ってくれた。

 

 しかし、これまで直様言葉を返してくれたにも関わらずみんな黙ってしまい、相澤先生までもが下を向く。

 

「………話して、いいことなんですかね、これは?」

 

「けど………話さないと先に進まないわ」

 

「だが、込み入った話なのもまた事実………。どうしたもんか…………」

 

「んなもん簡単だ。自分達の目で何が起こったかを、全部まとめて見てくればいいのさ。俺達ならそれが出来る」

 

 そう言うやいなや、誰も喋ろうとした空気の中で狂一さんが立ち上がり、私達を見下ろした。

 

 だが、光良さんの人格はあまり賛成的な反応ではない。

 

「………あれをやるのか………狂一。あれは………あまりにも2人の負荷が大きすぎる。これでもし耐えられなかったら───/いいじゃねぇか、そんぐらい。あの女も言ってたろ?

 

『知った先にあるのが希望なのか、絶望なのかまでは、私も知ったこっちゃない』

 

 

ってな。知れて希望持つのか、絶望するのは、こいつら決めてくればいい/だが────」

 

「見るっていうのがどういうことがわからないんですけど………それを使えば私達は………狼について………知ることができるんですよね」

 

「ああ……それはそうだが…………」

 

「なら、私達をそれにやってください。私達は狼について今………何知らない。何も………狼に追いついてない。このままじゃ………もっと遠く………手の届かない場所に狼が行ってしまう気がしてならないんです」

 

「私からもどうかお願いします。狼に昔何が起こったかについて………どうか………教えて下さい」

 

 私達はそう言うとともに、荒記さんに対して深々と頭を下げた。

 

 その言葉に荒記さんは眉を一瞬ひそめるが、少し考えるようにコーヒーをいっぱい飲むと、私達の言葉に頷く。

 

「…………そう言うのなら仕方ありません。今の私があなた達に言うことは一つ。………後悔はしても構いませんが、絶望だけは絶対にしないでください。どうかご武運を/言質はとった以上、もう後戻りなんて許さねぇ。精々足掻いて、全部知ってきな/じゃあやるぞ、狂一/ああやるぞ、光良」 

 

 そう言うとともに、荒記さんは私達の頭に手を置き、個性を発動させていく。

 

「今、我は我等が身に宿る記憶の海の時を戻し、その者の時を蘇らせる/蘇りし時が、かつての者の記憶を呼び覚まし、我等はその者の過去を、振り返らせん」

 

 そう言葉を2人が呟くとともに一種の浮遊感が私達の体に伝わり、辺りの光景が黒く、様々な光が映る光景へと徐々に徐々に変わっていく。

 

  

 

  

「メモリー•オーバー•ディスタァーブ/回帰……時逆…………!!」

 

  

  

 

 その声が頭に響き渡るとともに、私達の浮遊感は宙に放り出されるような感覚に変わり、辺り一帯の景色が一気に完全に暗くなった。

 

 そして暗い景色の奥からは幾つもの光が流れ出ており、その光には様々な映像が目まぐるしく映っている。

 

「えっ!?何これ!?私達今落ちてる!?っていうか何あの今の映像!?」

 

「落ちてるというよりは………どちらかというと浮いてる感覚に近いみたいで…………今の映像はヒーローとヴィランの戦い…………?………一体………これは────」

 

「ここは私達の脳内に保存されている記憶領域。今私達は、4年前の時間の仮想記憶空間に向かっています」

 

「あ、荒記さん?何で、2人に増えてるんですか?それと4年前の記憶ってどうい──ヘブッ!?」

 

「ヒ、ヒミコちゃん!?ちょっと何を───ってちょっと!!私まで頬を引っ張んないでくださいよ!!」

 

「黙れ八重歯クソ野郎に、クソ角黒目女。俺はやったらめったら質問してくる奴がほん………っとうに嫌いでな。だから実体化した以上俺は質問返してやるつもりはねぇし、説明もする気もねぇ。さっさと行って、自分達でどうすればいいか考えるんだな」

 

「行くって言っても………だからどこに向ってって……あぁ!!何でていうかいつの間に空の上に!?まさかここから行けって言うんですか!?」

 

「狂一!!2人から手を離せ!!まだ説明もしてないんだぞ!?」

 

「別にいいだろ、説明なんて省いて。まぁ、俺は優しいから、光良の意見も聞いて、ざっくり説明すっと、ここで死んだら、本体死ぬ。だから、死ぬな。OK?」

 

「NO OK!!それなんの説明にもなってません!!!」 

 

「そりゃそうだろ。説明する気なんて最初からないんだからな。まぁ、っつうことで、時間来たら迎えに来てやっから、精々頑張って生き残んだな。じゃあ、そんなわけで、さっさと行ってこい、クソ女×2」

 

「ちょっ!ちょっ!ちょっ!急に押さないでって────ああぁぁぁぁ!!!!!」

 

「本当にすいません2人共!!後で叱っておくのでどうか許してやってください!!本当にすいません!!!」

 

「こんなの許せてたまるかぁぁぁぁ!!!!!」

 

 こうして、私達は何もわからぬまま、何も知らないまま突如して来た世界に向かって文字通り突き落とされ、狼のことを知るための世界に向かって足を進めていった。

 

 そう……ここから始まるのは失われし過去の追憶。

 

 4年前………全てを失った狼の…………壊されし過ちの………物語。

  

  

  

 

 

 

 

 

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