鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 やばかった……!!久々の超難産でヤバかった………!!どうも、1ヶ月間投稿間隔が空くことに戦々恐々していた熊です。
 
 この物語を書き始めてからある程度はどのような話にするかは決めていたものの、現実と理想のギャップは難しく、どうするかで散々迷った結果これほど間隔が空いてしまいました。
 
 やはり1から物語を作るのは非常に難しいですし、これほどの苦労の中様々な小説や漫画を、現実との兼ね合いをしながら世に発信している数多の小説家さんや漫画家さん達が改めて凄いと思い知らせるばかりです。
 
 このような人達に及ばずとも、今後とも熊が出来る限りの精一杯で毎度小説を作っていくつもりなので、今後とも投稿間隔がマチマチになりますが、どうか応援よろしくお願いします。
 
 
 ………さてと。前置きはこれくらいにして………大魔王が来る前に避難の準備を…………
 
大魔「逃げられると思っているのかこの熊野郎?前回あんな痛い目あったのに予告もなくこんな事するとは………余程お前ボコられたいらしいな?」
 
 お、お助けください!!どうか次を!!次のチャンスを───── 
 
大魔「次のチャンスなんぞあるか!!さっさと書け馬鹿野郎!!!」
 
 
 
 


過去回帰編 : 真血 狼 Lost of the origin
63 もう一人の妹


 

 

 

 私は………確かに思った。

 

 狼の事が知りたいと、狼の過去に一体何が起こったかを知りたいと確かに思ったし、そのために頭も下げた。

 

 狼の過去が複雑なのは他の皆さんの反応から嫌でも伝わってくるし、知るに当たっての危険もある程度覚悟していた。

 

 けど、これだけは、全くもって許容できない。 

 

「や、や、ヤバいって!!マジで死ぬ!!今度こそ死ぬ!!!助かったばっかなのにマジで今度こそ死ぬってこれ!!!」

 

「お、お、落ち着いて下さい美奈ちゃん!!多分死ぬませんよ多分!!だってこんな状況にした張本人には一応ヒーローの狂一さんですよ!?確かにあの人子供嫌いですし、私が近づく度に嫌な顔はしてましたけど、ヒーローが人を殺すなんてあるわけじゃないじゃないですか。た、多分これはドッキリ的なあれですよ。よく出来たCG的なあ─────ゲフッ!!!」

 

「今絶対飛んでた鳥にぶつかったよね!?絶対CGでもドッキリでもなかったよね今の!?っていうか!!狂一さんが私達に嫌がらせする理由が十分今の発言にあったし!!絶対に私達への嫌がらせでこんな状況にしたよね!?絶対殺す気満々だよねこれ!?だって落とした瞬間めっちゃニヤけてザマァみたいな顔してたもんあの人!!」

 

「ああぁぁ!!それは言わないでくださいよ美奈ちゃん!!私だって考えないようにしてたのに!!!」

 

「やっぱりヒミコちゃんも薄々嫌がらせだって思ってんじゃんか!!!」

  

 狼の事を知るためと何処か、見覚えのある街の上空に連れて来られた後、突如として狂一さんに上空から落とされて数秒間。

 

 翼のある鳥や、そういう個性を持った人と違い、翼など生えていない私達は重力に逆らう事ができず、ただひたすら叫び声を上げながら地面に向かって勢いよく落下し続けていた。

 

 落とされた理由については、考えるだけ悲しくなるのでなるべく考えないようにしてるのだが、やはりどう考えてもこの状況は酷い。

 

 せめてパラシュートや飛行用の装備がある格好ならば、まだある程度許容できたかもしれないが、私達の今の格好は何の特徴もない、一般的なスーパーに売られてる半袖短パンの服装。そんな装備などあるわけがない。

 

 このまま落下するのであれば、私達が落下の衝撃で死ぬことはほぼ間違いないだろう。

 

「ど、ど、ど、どうしようマジで!?このままじゃ私達本気で死ぬ!!やっぱり無限変化之型で翼出して飛ぶこととか今できないの!?」

 

「無理です!!使用限界である20分をとっくに過ぎてしまいましたから翼は疎か個性すら今使えません!!もう完全に打つ手なしですよ!!!」

 

「何にもわからずこのまま死ぬのは絶対にいやぁぁ!!な、な、なにか、助かる方法考えないと!!」 

 

「え、え、え、えっと、そ、そうですね!!えっと、じゃあまず、今までお世話になった人への感謝を…………」

 

「それ死ぬ直前の人がやる行動!!生きる為の行動考えて!!例えば………そう!!周りをよく見るとか……────」

 

「あれ?何だか川とお花畑が見える………。あっ、地獄の閻魔様とか鬼もいる………。あれ?あと今まで起きた事が全部一気にフラッシュバックして…………」

 

「それ全部見えちゃいけないもの!!っていうか前に言ってたでしょ!?死んでも諦めないって!!だからお願い!!何か考えて!!このままじゃ本気で死んじゃうから!!私達何でもするから!!」

 

「えっ………何でもいいんですか?………じゃあ、腕少しこっちに貸して下さい」

 

「うん、わかった、それで?」

 

「それで少し、血を飲ませてもらいますね」

 

「ちょっと痛いけど、まぁわかったよ。………で、血を飲み終わったみたいだけど、それで一体何を…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の生涯………ある程度の後悔なし…………。ある程度は諦めも肝心…………」

 

「完全に諦めてただけ!?後悔がないよう血を吸っただけかい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 悔いがある程度残らぬよう、美奈ちゃんの血を飲み終わった頃にはもう何もすることは出来ず、私達は叫び声を上げながらそのまま地面に吸い込まれていった。

 

 急に落とされ、何もできず、諦めて現実逃避するしかない、圧倒的理不尽な状況。

 

 しかし、そんな中ではあるが運だけは良かったようで、奇跡的に落ちた場所はとある山の中の木々の上。

 

 木々と葉っぱが何とかクッションになって落下の衝撃を弱め、その後木から落ちた先でも、何故か木々の下にあったクッション?らしきもののおかげで2人ともどうにか大して怪我をせずに済んだ。

 

 木から落ちる時に何どか幹に体をぶつけたせいでところどころ痛むところはあるがあの高さから一気に落ちてきたのにも関わらず、動けないというほど体が痛いというわけでもないし、骨が折れてるというわけでもない。

 

 ほんと………よく生きてたというか………運がよかったというか………何というか…………。

 

「いっ………ててってて………。………何とか、どうにか、私達生きてるみたいだね。ほんと……今日何回目の命の危機よ……これ?」

 

「多分……3回目とか……4回目とか………そんぐらいとかじゃないですかね………。ここまで連続で死にかけたのは………刀花さんと爪牙さんの訓練以外で初めてかもしれませんよ………………」 

 

「日常的に死にかけてるのも………それはそれでどうかと思うけどね」

 

「全くもってご尤も………反論の余地がありません………」

 

「それでよ。一応私達生き残ったわけだけど…………一体全体ここどこ?とりあえず多分、外国っていうわけじゃないと思うけど」

 

「確か、光良さん4年前の時間の仮想記憶空間に向かっていると行っていましたしから、多分ここが4年前の日本の何処かっていうのはほぼ間違いないありません。ただ……流石に何処の県の、何処の街かっていうのは流石にわかりませんね。…………何というかこの景色………何処かで見たことがある気もしないでもありませんが」

  

「見たことある?テレビとかでここの街の景色見たってこと?」

 

「いえ。テレビよりもっと、身近だった気がするんですが」

 

「………重い。いい加減……さっさと降りろ」

 

「………んっ?今下から声聞こえなかった?」

 

「というより……ついさっきから私達が座ってるこのクッションみたいなものは一体……───ってあぁ!!人!!人です!!私達思いっきり人をクッションにしてます!!」

 

「んげぇマジだ!!えっ、えっと、声がするってことは生きてるよね!?私達来て早々人殺しになってないよね!?」

 

「人殺しにはなってないし………一応は生きてる。………けど………けど………重いんだよあんた等!!!いい加減に降りろ!!この脳なし野郎共がぁぁ!!!」

  

 ずっとクッションにされていた苛つきを吹き飛ばすように、クッションにされていた女の子はその怒声とともに馬乗りになっていた私達を振り落とし、私達はその勢いのまま地面に放り出された。

 

 今の今までずっと気づいていなかったのだが、どうやらこの子は私達が落ちて来た時に調度私達が落ちた木の下にいたようで、急に落ちてきた私達に反応できるわけもなく長らくずっとクッションされていたようだ。

 

 全くもって知らない人間にクッションにされた挙げ句、声を掛けるまで気づかれなかったとなれば、誰だって怒りたくなるだろうし、私だって多少怒りたくはなる。

 

 そしてそれは例外なく、クッションにされた子にも当てはまるようで、現に私達はその子の鬼気迫る表情に気圧され、明らかに年下の女の子に対して思いっきり正座させられているのだが…………

 

「で?何を考えたら空から落ちてきた挙げ句、私をクッションにしようと思うんだ?………どうした?さっさと答えてみろゴラァ」

 

「ど、どうして………と、言われましても………」

 

「じ、事故と偶然でそうなったとしか…………」

 

 

 

「アンッ?言い訳の前にけじめどうした?けじめは?謝罪の一つも出来ないのか?どうなんだ?ハッキリ言ってみろゴラァ」

 

 

 

「す、すいませんでした!!!急に落ちてクッションにしてしまって!!!!」

 

「本当にすいません!!!本当にすいませんでした!!!!」

 

 

 ………はい。

 

 今の会話で大体わかると思いますが………この子かなり怖いです…………。

 

 流石に魔王や大魔王の恐怖とと比べたら遥かにマシで、まだ遠く及びませんが、それでも下手なことを言ったら命を取られる覚悟をするぐらいには怖いですし、現に私も美奈ちゃんもこの子の圧に圧され、正座させられてから体の震えが止まらない………。

 

 ………どうしよう。多分、これから会話で下手なことを言うなんてことしたらほぼ間違いなくこの子に殺される………!!

 

 ………嫌だ。まだ何も知れてないのに、多分悪いことはしてないのに、こんなところで死ぬのは絶対に嫌だ……………!!!

 

「まぁ、事情うんぬはこの際どうだっていいし、興味はない。………だが、あんた等明らかにここらじゃ見ない顔だし、何か事情がない限り、空から急に現れて落ちてくるなんて事はありえない。それで、単刀直入に聞くけど、あんた等。一体全体何者?ヴィラン?それともヒーロー?それとも事故で落ちてきた可愛そうな一般人?まぁ、どう考えても事情があるのは間違いないだろうけど」

 

 私達が女の子が何してくるのかと身構え、震えている最中、女の子は私達の顔を覗き込むように何度も見つつ、そう尋ねた。

 

 女の子の言う通り、人が空から急に現れて落ちてくるなんて普通ありえないし、偶然とはいえそれに巻き込まれたのだからそれを聞く流れになるのは当然の帰結なのだろう。

 

 …………もっとも。多少はマシになったとはいえ未だに圧は凄いし、十分に怖いのだが。

 

「えっと、とりあえず私達はヴィランでもないし、怪しい類の人間でもない」

 

「ただの、何処にでもいる、色々あって空から叩き落されただけの普通の高校生、ってだけです。………叩き落された理由については………悲しくなりそうなので聞かないでほしいんですけど」

 

「…………既に色々ツッコみたいけど………それでツッコんだらかなり面倒くさいことになりそうだから聞かないでおくよ」

 

「それで、一つお聞きしたいんですが……今日って何月何日で、ここは一体何処ですか?落ちてきたショックで、少しそこら辺が曖昧になってしまっていて」

 

「そりゃあ、日が4月9日で、場所が東京の鬼住街に決まってるだろ。………というか………ここが何処か知らずド派手に空から落ちてやってくるなんて………あんた等余程のバカか、底のなしの運の悪さだね。初対面で悪いけど、空から叩き落された事に心底同情するよ」

 

「えっ、どういうこと?この街そんなヤバい場所なの?」

 

「私一応この街に昔……もとい今住んでましたが、そこまでガラが悪い街ってイメージありませんでしたよ?それに仮にも、ヒーローランキングしているヒーローが所属しているフェンリル事務所がこの街にあるのである程度は安全なはずなんですが………」

 

「………まぁ、あるにはあるけど、彼処も彼処で十分ならず者の吹き溜まりよ?というか、この街自体が日本のならず者達の千両箱。時代が進むに連れ生き場所を追われたヤクザに侠客、闇医者からなるゴロツキ集団。とあるオカマヒーローによって、徐々に傘下と勢力を伸ばし、街をオカマ色一色に染め上げようと暗躍するオカマ軍団。仕事を抜け出しては、街で大規模の喧嘩をという名のじゃれ合いを引き起こす厚生中の受刑者達。そして、この街の覇権を握り、武力、統率力、恐怖と畏怖を持ってそれら3つの勢力を抑え、この街を実質的に支配する魔王軍もといフェンリル事務所。………これら4つの勢力が常に争い、諍いや喧嘩の絶えない日本トップの治安の悪さを誇る街。それがこの街鬼住街だ」

 

「や、ヤバっ……。想像以上に色々世紀末な街というか………明らかにこの街だけ出る世界間違ってるし………支配に魔王軍って………もはやそれヒーローじゃないでしょ………。………ヒミコちゃん。よくこんな街で怪我なく過ごしてきたね………」

  

「おそらく、そっちの金髪あんたが住んでたって場所は、この街でも極少数に限られる安全地帯のフェンリル事務所周辺。彼処は魔王、大魔王の影響で歓楽街レベルの騒ぎは殆ど起きないし、起きても魔王、大魔王が1秒ぐらいで騒ぎ終わらすから、基本平和な場所なんだよ。あと多分、あんたの家族の誰かしらが、そういう騒ぎが起きやすい場所にあんたを連れて行かないことを徹底しながら、かなり気を配って一緒にいてくれたんだと思うよ?あんた何というか天然っぽいし、そういう騒ぎに直ぐ巻き込まれそうだからね」

  

 ………そういえば、狼基本的に私を歓楽街とか人の集まりやすい場所に連れて行ったことありませんでしたし、買い物とかもなるべくこの街以外で済ます事を徹底してましたね。

 

 そう考えると私………昔から狼に助けられていたってことなんでしょうけど………私ってそんな騒ぎに巻き込まれそうな顔してますかね?

 

 狼と一緒に電車に乗る度やたら……騒ぎが後ろの方で起きている気もしないではありませんが…………。

 

「あんた等の反応からして、あんた等がほぼ間違いなくヴィランじゃないってことはわかったし、かなりの訳ありってこともわかった。………けど、その様子じゃあんた等ここら辺に知り合いはいるって感じでもなさそうだし、金をある程度持っているっていうわけでもないだろ?普通なら真っ先に警察突き出すとこ何だけど…………」

 

「警察はちょっとご勘弁下さい………」

 

「何もやってないのに捕まるのは嫌です………」

   

「………まぁ、訳ありじゃあ、そんな反応になるわな。………とりあえずこの山降りて、あんた等は私と一緒に─────」

 

 来てもらう、という言葉を女の子が紡ごうとした最中、突如大気を震わす爆発と雷音のようなが辺りに響き渡り、木々に止まっていた鳥が慌ただしく飛び去った。

 

 私と美奈ちゃんが警戒して辺りを見渡し、女の子は落ち着いているというか、静かに怒り狂った表情で山の木々の影から街を見下ろす。

  

「………最悪。待ち合わせしてたってのに………あの馬鹿共…………また喧嘩してる…………!!昨日も腹パン制裁喰らわしてやったってのに………あの馬鹿共いつになったら喧嘩しないっていう考えを持つんだよクソがぁ………!!!ガチでいい加減殺したろかぁ…………!?!?」

 

「ひっ!怖い!!また言葉遣いがヤクザみたいになってる!!」

 

「………彼奴等アホはアホだけど、無駄に頭回るアホだから刑期伸ばさないよう街に被害は出さないはずだし、どこぞの馬鹿犬も法子ちゃん達の事ほっぽり出して動いてるはずだから、5分ぐらいでとっ捕まるだろうけど………今直ぐ彼奴等の顔面か腹ぶん殴らないと私の気が収まらない………!!!………ということで、私少し野暮用出来たから、ちょっとあっち行ってくるわ」

 

「えっ、あっちの方行くんですか!?あと、今の話に出てた馬鹿犬ってもしかして────って、ちょっと!?話聞いてくださいよ!!ちょっと!!!」

 

 私の話など意にも介さず、女の子は私のものより1回り大きい巨大なコウモリの翼を背中から出現させると、そのまま騒ぎの中心地に向かって飛んでいってしまい、私達は山の中に取り残されてしまった。

 

 あっという間のこと出来事に一瞬2人とも啞然となってしまうが、直ぐにハッとなって、私達は女の子を追いかけようと山を急ぎ降りていく。

 

「ちょっと!!待って!!待ってください!!少しの間でいいのでお願いですから待ってくださいよ!!」

 

「っていうか何あの子!?流石に早すぎない!?少なくともあの子私達より4歳は絶対年下なのに色々とハイスペック過ぎ!!!このままじゃ影も形も見えなくなっちゃうよ!!!」

 

「ここまでスピード差があるとなれば仕方ありません!!追いつくのは諦めましょう!!幸いなことにあの子が向かっている目的地はわかってますから、上手く行けば先回りは出来なくても追いつくことは────」

 

「んだとてめぇやんのかゴラァ!?叔父貴の車に泥付けといて詫び入れねぇとは何考えてんだ!?このカマ野郎共!!」

 

「詫び入れんのはそっちだろうがヤクザもん!!あんた等車をこんなど真ん中でかっ飛ばすせいでこっちはママのヒールが折れちゃってるんだよ!!てめぇ等こそどう落とし前ってもんをつけるんだゴラァ!!」

 

「何だと!?ここで長年の因縁の決着つけたろか!?!?」

 

「上等よかかってらっしゃい!!オカマの底力見せて上げるわよ!!!」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!!喧嘩は絶対によくないでお互い我慢してください!!」

 

「話せばわかる!!お互い多分話せばわかるはずだから!!!」

 

「行くぞ土竜組!!!奴等に目に物見せたれ!!!」

 

「行くわよてめぇ等!!ゴミ野郎どもをゴミ箱送りにしてやれ!!!」

 

 

「「駄目だ!!話全く聞く気がない!!!」」

 

 

 私達の静止をやはり意にも介さず、突如としてオカマ軍団と土竜組の抗争が始まり、私達はその騒ぎに巻き込まれもみくちゃにされ、私と三奈ちゃんは人の波に飲まれそれぞれ別の場所に押し流されてしまう。

 

 ………確かにこの街に時折、爆音やらヒャッハーなどの奇声が聞こえた時はあったし、駅近くの露店で働くリーゼントの集団全員の顔が何やらあざだらけになっていることもあったから、この街で時折喧嘩が起きているんだろうなということはなんとなく察していた。

 

 けど……私の身近でまさか……こんな直様警察沙汰になりそうな事が起きてるだなんて夢にも思ってなかったし………正直思いたくもなかった………。

 

 この抗争を見てる人たちの様子も迷惑がっているというか……どちらかといえばスポーツ観戦しているような雰囲気ですし………もう何というか………色々とぶっ飛びすぎです…………。

 

 狼のことも含めてあといくつ………一体私の知らないことがどれだけあるのやら…………。

 

「待てやコラ神速!!てめぇよくも俺のコヒーゼリー盗み食いしやがったな!?!?いい加減にしねぇとガチでぶっ殺すぞゴラァ!!!」

 

「殺す?何言ってるの爆炎刃!君遅すぎて僕に追いつくことすら出来てないし、君の低脳脳みそじゃ何やっても、逆立ちしても僕を捕まえることなんて無理だよ!!素直に諦めた方が身のためだって!!弱いんだからさ!!」

 

「殺す!!てめぇだけはぜってぇの殺す!!!」

 

 ………ここまで来ると最早驚かないが、どうやらあの女の子が喧嘩をしていると言った人達は私の知り合いで、うちの厚生所の受刑者でもある投球君と俊雷だったらしく、今も昔も変わない様子であちこちの建物の天井を足場にしながら、爆音と雷音ともにあちこちを飛び回っていた。

 

 喧嘩をしてお互い頭に血が登っているといっても、女の子の話通り建物に被害を出さないよう気は使っているらしく、確かに何処の建物も傷一つもなく、既に壊れてしまったもの見渡す限り何もない………が、あちこちに2人が響かせている戦闘音は何せ爆音に雷音。

 

 限りなく近所迷惑で、うるさいことこの上ない。

 

「………人というのはなかなか変わらないものと言いますが………まさか4年前の2人がここまで4年後と殆ど変わらない様子とは思いもしませんでした。………いや、4年後の2人は殆ど街で喧嘩はしなかったはずですし………そこは成長………してるん……です……かね?」

 

「おいあんた何やってる!?そんなとこいたらこっちに来てるあの2人の喧嘩巻き込まれてふっ飛ばされるぞ!!さぁ早くこっちに───」

 

「いえ、心遣いはありがたいのですが、別にそんな事しなくて大丈夫です。それに私一応あの2人の知り合いですし、このままあの2人の喧嘩を眺めてるってわけにもいかないんです。どうにかして、あの2人を止めないと」

 

「はぁ!?あの2人をこの街の人間でもヒーローでもなさそうなあんたが止める!?無理だってそんな事!!死にはしないだろうが大怪我くうのがオチだ───ってもうこっちに来た!?あんたも早く逃げろ!!!」

 

 親切なヤモリ顔の大学生はそう私に言い残すと、逃げるように路地裏の影に隠れ、オカマ軍団と土竜組の抗争を見ていた見物人達もまた大急ぎ建物の方に寄って、2人の喧嘩の余波から逃れようと体を建物に押し付けた。

 

 まぁ確かに、2人の動きは早く目で追うのが困難ではあるし、訓練を受けていない一般人が真正面から2人の前で仁王立ちなどしようものならふっ飛ばされてしまうのも必至だ。

 

 だが、それは訓練を受けていない人に言える話ではあるし、大魔王、魔王の攻撃の嵐を日常的に受けてる私にとっては十分隙がある。

 

「ほらほら!!追いついてみなって───ってちょっと!?そこの君どいて!!急な方向転換も急停止も出来ないからこのままじゃ君にぶつかっちゃう────ってうぉっ!?!?」

 

「し、神速!?ってやっべぇ!?俺もこのままじゃ止まれねぇ───っておおおおぉぉぉ!?!?」

 

 真っ直ぐ突っ込んで来る2人を投げて、勢いをそのまま別方向に吹き飛ばし、急な事に反応できなかった2人はそのまま何も出来ず、それぞれ吹き飛んでいった方向にあった電柱と建物の柱に頭をぶつけ、大の字で地面に倒れるようにして白目をむき、そのまま気絶した。

 

 昔だろうが今だろうが、自身の無意識の動きの癖が変えることは難しく、その癖変わることは殆どない。

 

 故に、長らく一緒にいた相手ならば動きの癖から相手の行動を読みやすく、それに対応した行動もまた当然出せるというわけだ。

 

 まぁ、動きが読めるということは逆に自分の動きも読まれる危険性もあるため、今回のようにここまで上手くいくことはなかなかないのだが。

  

「………あの馬鹿共があんた向かって突っ込む前にぶん殴って止めるつもりだったんだけど………まさか私がなにかする前に、あの馬鹿共を止めるなんてね。正直どっか抜けてそうだなって思ってたんだけど、人とが見かけによらないとは、正にこのことだね」

 

「あっ、どうも。ついさっきぶりです」

 

「さっさとこいつらのして、事を終わらせるつもりだったんだけど、こことは別の通りで窮鼠組が酒に酔った挙げ句、そのまま酔っ払った勢い任せて暴れてる通報が入ってな。それでそっちの対処やったと思えば別の場所で騒ぎが起きて、その騒ぎをどうにか終わらしてこっちに来たら来たわであの馬鹿2人以外も暴れてるもんだから、こっちの対処がかなり遅れた。………成り行きとはいえ、あんたもピンク髪の方も、この街のいざこざに巻き込んで悪かったな。本当に申し訳ない」

 

「いえいえ、頭上げてください!元はと言えば私達があなたを勝手に追いかけてしまったことでこうなってしまったんですから、あなたが私謝ることなんてありませんよ」

 

「例えそうだとしても、巻き込んだ以上頭下げなきゃこっちの筋が立たないからな。………まぁ、巻き込まれた側のあんたがそう言ってくれるのなら、こっちとしては本当にありがたい限りなんだが」

 

「おーい、こっちの処理は終わったぞ。全く、毎度の事ながら1ヶ月に10回は必ずしょうもない理由で喧嘩して、ヤクザの方もオカマの方も、よくもまぁ飽きずに楽しそうに喧嘩するもんだ。後処理と鎮圧に奔走する羽目になる、こっちの気持ちも少しは汲んで欲しいよ」

 

 私と女の子が話していると、つい先程まで土竜組とオカマ軍団の抗争が行われた場所の方から、白髪の小学生ほどの年齢の少年が声をかけながらこっちにやって来た。

 

 私がやって来た少年の容姿と今呼ばれた女の子の名前に驚愕してる中、何気ない様子で凛と呼ばれた女の子は少年に言葉を返す。

 

「毎度毎度言ってくるけど、あんたはまだ仮免資格持ってないし、父さんと母さんからもまだ現場に立つには早いって言われてるんだから、大人しくそこら辺で体育座りでもしててよ。正直言って、戦闘に勝手に乱入するあんたのおもりの方が、後処理の何倍も面倒くさい」

 

「毎度毎度暴れるだけ暴れて!!後処理を一向にしようとしないお前の代わりの後処理を毎度毎度してるのは誰だと思ってる!?つーかお前はいい加減兄に対して尊敬の念ってものを持とうっていう気はねーのか!?」

 

「はっきり言って、そんな物は一生持つ気はない。それに兄つっても、私より5秒早く生まれただから年上ってわけでもないし、私より遥かに弱くて、勉強も私より全然出来ないし、身長も私より低いあんたに尊敬の念なんか持てるわけ無いでしょ。寝言は寝てから言え」

 

「んだと!?言わせておけば…………」

 

「あ、あの、すいません。あなたの名前は…………」

 

「ん?誰だあんた?お前の知り合い?」

 

「いや。ちょっと前に色々あって知り合って、成り行きでこの馬鹿2人を止めるのを手伝ってもらった人。………そういや名前も聞いてなかったし、こっちの自己紹介もまだしてなかったな」

 

「俺の名前は真血 狼。一応この男女の兄で、いつの日か日本一ヒーローになる男だ」

 

「私の名前は真血 凛。一応この馬鹿犬の妹で、いつか世界一のヒーローになる女。改めて、これからよろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 
「いやマジで……今日だけでどれだけ死にかけるのよ………。あと少しあの子来るのが遅かったら………もみくちゃにされて潰されるところだった…………」
 
 ↑ 凛ちゃんが来るまでずっとオカマとヤクザの大群にもみくちゃにされていた美奈ちゃん。
 
 
 
 

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