最近の日常生活での忙しさに忙殺されているうちに、気づけばこの小説の1周年を迎えていた、どうも熊です。
1ヶ月に1話投稿できるかなと甘い見立てを立てていたら、あまりの忙しさに編集時間を中々確保できず2ヶ月も間隔を空けてしまいました。本当にすいません。
冗談抜きでここ数ヶ月の忙しさが本当にヤバい!
終わったと思ったら次のやるべきことが迫ってマジで時間が取れません!!
何度も言う通りこの1年はかなりの不定期となりますが随時編集は勧めていきますので、どうぞ気長にこの小説の更新をお待ち下さい。
それと改めて!!この小説が1周年迎えたのは読者の皆様のお陰です!!誠にありがとうございます!!!
「で?ある程度時間置いてそっちも落ち着いただろうから改めて取り調べを再開したいんだが…………2人揃ってこれは一体何だい?この取り調べ資料は?」
「……住所に関しては黙秘。保護者名に関しても黙秘。何故こんな危険物の倉庫みたいな街に来たのかについては、自分達でもわからない。そんでもって、あの馬鹿2人の喧嘩に介入した理由は、体が勝手に動いたから?」
「………ここまで自分の立場を考えず黙秘続けるとは………、お前等2人、馬鹿じゃねーの?こんなに黙秘続けても立場悪くするだけだし、ここがもし一昔前の警察の取調室だったらお前等二人全力でぶん殴られても文句言えねーぞ」
「そんな事言われても…………言えないものは言えないと言うか…………話したら余計ややこしくなるというか…………何というか………………」
「申し訳ないですが………本当に言えないんです………どうしても…………。………証明はできませんが、私達絶対何も悪い事しませんので、せめてこの牢屋から出してくれませんか?」
「そうですよ。ここ狭いですし、ベットも硬いんですよ。こんなじゃ取り調べを受けるやる気も出てきませんですって」
「駄目だ。ここまで取り調べをまともに受けねー奴を、出す道理なんてあるわけねーだろ。………まぁ、本当にこの牢屋から出たいだけなら、今すぐ警察の方に付き渡しても────」
「警察は勘弁して下さい」「本当に悪いことはしてないんです」
「冗談はともかく、なら大人しく取り調べ受けなさいって、まったく。………凛の言う通り訳あり臭かったから、ある程度身構えていたが、まさかここまで黙秘するほどの訳ありだったとはな」
「言えない事情って、もしかしてあれか?見た感じお前等いい年だし、仲良さそうだし…………もしかしなくても夜に────」
「違います」「何でそうなるんですか?」
………投球君と俊雷君を気絶させてから約6時間。
どうにか凛ちゃんに追いつき、この世界にいる狼に会えたまでは良かったものの、私達は駆けつけた他のフェンリル事務所のヒーローの方々の手によって拘束されて事務所にまで連れて来られた上、何も悪いことをしてないのに牢屋に入れられ、かれこれ3時間ほど刀花さんと爪牙さんによる取り調べを私達は受けていた。
…………一応私と三奈ちゃんの名誉の為に言っておきますが、私達はあのあと暴れてなんか一切してないですし、寧ろ大人しくしていたはずです。
それなのにも関わらず何故牢屋に入れられた上、何故こんなにも長く取り調べを受けているのかと言うと、端的に言って時期の悪さによるものと、ほぼ間違いなく狂一せいだ。
この街では喧嘩は半場日常的ではあるし、仮に戦闘に乱入した事自体は注意はするものの本来ならば拘束などしないそうなのだが、どうもここ数ヶ月近辺で起きている誘拐殺人事件で街は一応厳戒態勢(あの騒ぎで十分すぎると思うが、普段はあの2倍は騒ぎが起こるらしい)取っているらしく、またこの街は訳あり人間が多いこともあって外部の人間への警戒心が元々少し高い。
なので外部から来た人間によって不安を広げないように、形だけでもと拘束し、軽い取り調べをするに至ったそうなのだが………ここで私達が4年後から来たなどと言えるわけもなく、当然のように取り調べは難航。
結果として本当に事件に関わっているのではと本当に怪しまれ、牢屋に入れられ、マジの取り調べを受けるという悲しい自体に陥っているというわけだ…………。
………ほんと、はい。
こっちに来てから数時間経ったくらいなのに色々とあり過ぎるというか……怪しまれ過ぎているというか………色々と悪いことしてないのに理不尽な目に逢いすぎていると思います。
ここが荒記さんが作った仮想空間である以上、どうにかそこら辺は疑われないようどうにか上手く出来るはずですし、そもそも狂一さんが私達を突き落とさなければここまで疑われるような事はなかったはずです。
………もしや、狂一さん。
私達に嫌がらせをする為に、そこら辺に何もしてなんてことないですよね………?
確かに子供嫌いだと言われていましたが、まさか殺しにかかるぐらい子供嫌いっていうことはないですよね………?
どうにか言ってくださいよ狂一さん………。これは、なし崩し的なしょうがない理不尽なんですよね………?
あなたが私達のこと嫌いだからってやった、嫌がらせではないんですよね…………?
そうなんですよね………狂一さん………?
「どうした?ついさっきから変な顔して?腹でも痛いのか?」
「あっ、いえ、ちょっと悪い想像をしてしまっただけですので、何ら問題はありません」
「色々と問題がありそうだが………まぁいい。一先ず、これで取り調べは終わりだ。2人共牢から出ていいぞ」
「えっ、いいんですか?正直、このまま拘束されたままかと………」
「何だい?そっちの方が良かったのかい?」
「いえ!そういうわけじゃないんですけど!!」
「君達を最初に取り調べと拘束した新人の奴等はともかく、ここにある程度いる奴等の殆どは最初から君達が誘拐殺人事件と関係あると思ってないよ。明らかにそういうタイプじゃなさそうだし、何より目が、普通の人間のものそのものだ。とてもじゃないが、殺人を起こした奴がする目じゃない」
「そういう目じゃないって………釈放してくれるのはありがたいけど………そんな曖昧な基準で………」
「お前等にとっては曖昧なものかもしれんが、私達にとって、人の目は人の本性を映し出す鏡であり、そいつが何を考え、何を思ってきたかを推し量るにおいて重要な確信だ。………犯罪や犯罪でなくても取り返しの事をした奴。後悔や深い悲しみ背負った奴には必ず、目に明らかな濁りが生まれるもんだからな」
「はぁ……そういうものですか」
「まぁ、外れてるときもあるから、的中率は80%ぐらいなもんだけどな。とにかく、お前等があの騒ぎに飲まれながらもそれなりに何故場馴れしていると言っていいほどある程度冷静に行動できたか、何故お前があんなにもいとも簡単にあの馬鹿2人を捌くほどの戦闘技術を持っているかは聞かないでやるから、さっさとその牢から出てきな。ここで数日間、獄中生活をしたいのなら話は別だがな」
そう言いながら刀花さんは牢の鍵を開け、私達は狭い牢の入り口から二人の座っていた椅子が通路のど真ん中に無造作に置かれている廊下に出た。
やはり、自分を閉じ込めるものがないのはいいことで、時間とすれば6時間程度なのだが何より開放感が違う。
………だが、この開放感は別として、今回こんな理不尽を引き起こしただろう狂一さんには一言言いたくてたまらない。
光良さんには悪いですが、後であの人には一言言わせてもらわなければ。
「で、これからのあんたの処遇としては約1週間の保護観察処分。更に言えばウチの仕事を手伝ってもらいたいと私は考えている。あの2人を捌いたヒミコは勿論、芦戸 三奈。あんたも立ち振る舞いからしてある程度は戦える口だろ?事務をしろとは言わんから、パトロール当たりをやって貰いたい」
「はぁ。それは構わないけど、私達って一応保護観察処分なんですよね?そういう人がヒーロー活動手伝うって………結構まずいんじゃ」
「まぁまずいが、黒寄りのグレーだったはずだから監視がいれば大丈夫だったはずだ。というか、そういう手でも使わないと、こっちもこっちで不味いんだ。………これは完全のこっちの都合なんだが、受刑者が年々増加してるってのに、補助金に関して猛烈な反対をしている政府の一部が年に数回行われるこっちに送る人員の推薦を難癖つけてなしにしたり、元々批判のとんでもなく多い仕事だから当然好んでうちに来たがる奴もかなり少ないもんだから、即戦力と言える新人が殆どいない。……はっきり言ってウチは今ブラックギリギリの仕事量。端的に言って、圧倒的人員不足なんだ」
「………それで人員不足を多少マシにするために、私達をこき使いたいっていうわけですか」
「………人聞きは悪いが………まぁその通りだ。だが、保護観察のみである以上監視を一人つけるが当然無茶な仕事はさせるつもりはないし、君達がこの街で自由に動きたいのであれば、こっち側にいる方が君達にとっても動きやすいはずだ。まぁ、こっちの私情がある以上無理強いするつもりもないし、その分ある程度監視は厳しくなってしまうが、この話を断ったとしても君達の自由と安全は保証するから、そこは安心してくれ。……君達がなんのためにここに来たかはこの際聞くつもりはないが、少なくともそれが本当にしなければならない事ならば、少なくとも使えるものは何だって使っていくべきだと思うがな。それで、君達はどうしたい?この街を去って安寧を求めるか、それとも危険も承知で此処に残り、君達のやるべきことをするか」
そう爪牙さんは今までと打って変わって真剣な表情でそう言い、刀花さんは私達の答えを待つかのように、ただ静かに私達の目を見つめた。
……………此処に来た時点で危険があることは承知していたし、例えこの街を去った所で何かわかるという保証はない。
そして何よりここには狼が、凛が、私達の知らない過去が、きっと、此処にはある。
何ら迷う必要はない。
「私達の素性はこれ以上言えませんし、私達が怪しくないと証明することは今此処でできません。………けど、きっと、此処には私達がやるべき何かがあるはずなんです。だから、どうかお願いします。私達を此処で働かせて下さい。お願いします」
「精一杯やれることだってやりますし!食事は流石に欲しいですけど給料とかいらないんで私からもどうかお願いします!私達が出来ることと言ったら、えっと、その………」
「わかった、わかった。君達の意思はわかったからもうそんな焦らなくていいよ。それに一応ウチは毎日死ぬほど忙しいけどブラック企業じゃないし、給料もちゃんと出すから」
「じゃあ早速ここでの詳しい仕事の内容と、お前達2人の担当する仕事について説明をしていきたいんだが………それをするには流石にもう夜遅すぎる。明日の朝に監視室で他のヒーローとの顔合わせと仕事等々の説明をするから、貸出用の簡易ヒーロースーツを来て、8時までに監視室に来てくれ。それと一つ質問なんだがお前等2人、ここら辺に住む場所とか、どっかに泊まる金とかはあんのか?」
「あっ………そういえばありませんね………どっちも」
「唐突に落とされたからね………否応なしに」
「寮があるならそこに泊めてやりたいが、今はまだ計画段階でそんなもの骨組み一つもありゃしないし、流石に牢屋の中に住まわせるってのもどうだって話だしな」
「しゃーない。うちに空き部屋一つあるからそこを貸してやる。元々物置みたいなもんだから少し日当たり悪いし、物で溢れてるから掃除もしなきゃならんだろうが………まぁ人が住めないほど荒れてはいないはずだ。布団2枚やるから、そこからは自分達でなんとかしてくれ」
「色々とご迷惑かけてすいません」
「お世話になります」
「母さん、父さん。一応2人の分の飯も作っておいたけど話の方は終わった?成り行きとはいえあの馬鹿2人を止めるのに協力してくれたんだし、出来れば2人共悪いようにはしてほしくないんだけど………」
「ああ、それなら心配しなくていい。なんせこいつ等2人はうちで預かり。そんでもって明日からこき使うことにしたからな。それと相談何だが凛。こいつ等の教育係兼監視役、お前に任せても構わないか?」
「別にいいけど、そういうのって一応新人扱いの私じゃなくて、もっと別の誰かに任せるべきなんじゃ………って、そもそもそういうのに回せる人手が今全然いないんだった」
「そういう事だ。仮にこの2人がヴィランだったとしてもお前なら問題なく対処できるだろうし、何より顔見知りなら多少は話が早い。たっぷり教育して、しっかりとこき使ってやれ」
「はっ、はは………。精一杯やれることはやるけど………お手柔らかにね」
「まぁ、それなりね」
「じゃあ話が終わった事だし、さっさと飯の時間にするとしよう。凛は基本辛い料理しか作らないんだが、それが慣れると妙に上手くてな。君達もきっと気にいるはずだよ。凛に案内させるから、君達は先に家に────」
「若待ってください!説明は後でしっかりしますから、どうか牢屋の方には────」
「どいてください鉄田さん!!俺は後じゃなくて今すぐ母さんと父さんと話したいんです!!あんな決定!!認められるわけないでしょ!?」
「ですからその事も含めて説明をしますので、って若待ってください!!今は取り調べの最中なんですよ!!ちょっと!!」
爪牙さんに促されて私達が真血家の方に向かおうとすると、地下にあるこの牢屋階層唯一の出口兼入り口で見張りを念の為見張っていた鉄田さんを振り払うようにして、4年前の狼(ややこしいので、これからは狼君と呼ぼう)が現れた。
鉄田さんを振り切って現れたその姿には僅かばかりとは言い難い怒気が漂っており、その目には困惑が浮かび上がっている。
「取り調べ中にすいません……爪牙さん、刀花さん。一応私も止めたんですが、どうも納得できないととてつもない剣幕で………」
「いや、取り調べの方は今終わったところだから大丈夫だ。見張り方ご苦労」
「事務所の方で立ち話してるヒーロー達の話を聞いたんだけど、こんな素性も全くわからない奴等を家に置いた挙げ句、凛と一緒に仕事をさせるって一体全体どういう事!?そんな正気の沙汰じゃない事、俺は反対だ!」
「正気の沙汰であろうがあるまいが、ついさっきの会議でもう決定したことだ。素性がわからないこそ身近に置けば下手な真似をさせにくいし、街の奴等にもウチで面倒を見ると言えば、ある程度は今回の件の不安を取り除く事ができる。それに何より、凛の強さはお前の知っての通りだ。実力面からしても、監視には十分だ」
「実力面からしても十分?………ふんっ。そんなもん仮免資格取って1週間もしてないんだからあってないようなもんだろ。こんな男女が監視をやるぐらいなら俺が────」
「こんな男女?おいおい、聞き捨てならねーな?昼あたりでも言ったけど、仮免資格のないあんたにはヒーローをやる資格が文字通りないんだから、監視どうこうの前にあんたがヒーローなんてできないの。何よりそんな奴呼ばわりの私に1本も取れてないんだから、あんたの実力だってたかが知れてるだろ。何度も言うようだけど、あんたなんていなくて大丈夫なの」
「………そんなもん、やってみなきゃわかんねーだろ!お前こそ本当はいらないって自覚知ってんじゃねーのか!?」
「あんっ?何だと」
「ちょ、ちょ、ちょ。私達の事の発端だから何とも言えないけど、喧嘩は良くないからやめようって。それに夜遅いっぽいから近所迷惑だろうし、とりあえず落ち着いて………」
「うっさい変な触覚!お前の話なんて聞いてない!!俺は父さんと母さんに話があるんだ!!」
「へ、変な触覚!?……そこまで変じゃないと思うんだけど」
「まぁまぁ、狼君落ち着いて下さい。ほら、私で良ければ血をあげますからこれ飲んでリッラクスしましょ、リラックス。私健康体ですのきっとで多分美味しい血のはずですから!多分!!」
「はぁ?誰がそんな素性も知らねー奴の血何か飲むか金髪。寝言は寝て言え」
「寝言は寝てから言え…………。………つまり、血を吸いたいっていうことじゃなくて、血を吸われたいってことですね。わかりました」
「何でだよ。何をわかったんだ」
「っていうか。ホントなんであそこから血を吸われたいって発想
になるんだよ、マジで。………よだれまで垂らしてるし」
「………ヒミコちゃん。はしたないからやめようね。はしたないから」
「あの、冗談で言ったんですよ?場を和ませようと思った冗談なんですよ?」
「はいはい、わかったから、ちょっと奥の方に行こうね。少し私ヒミコちゃんに話したいことあるから」
「あの、三奈ちゃん?皆さん?あれホント冗談ですよ?確かにちょっと吸いたいなとは思いましたが、冗談なんですよ?冗談なんですよ!?」
弁明のために何度もそう冗談だと言うが結局伝わらず、私は三奈ちゃんにそのまま奥の方に連れて行かれ、羞恥心について何故か軽く説教されることとなってしまった。
………ほんと、はい。一応伝わりにくかったかもしれませんが、冗談なんですよ………一応。
確かに、狼君の血って狼と味違うかなって思いましたけど、あくまでそれは興味本位で、実際にやろうとなんて思っていません!
………えっ?いつもの年の差が同じならともかく、今の体格が大きく離れている状態だと完全に絵面が完全にアウトだから絶対にやめて?
………何でですか?ただ血を吸っているだけですよ?別にアウトな要素ないと思うんですけど。
「………なんか茶化されたがとにかく!俺は納得してないからな、この事に!!男女は精々後ろからザクッとやられないように、背中には気をつけるんだな!どーせ直ぐ俺と交代することとなると思うけどな!!じゃあおやすみ!男女はさっさと怪我でもしてろ!!」
「こらっ!!凛とこの2人に変なあだ名付けた事を謝れ!!それと怪我しろたか軽々しく言うんじゃない!!………って全く、行っちまった。あの馬鹿息子と来たら………謝ることすらしないとは………」
「あの野郎舐めた口ききやがって………!また立場ってものを教えこんでやる…………!!」
「やるのはいいが、程々にな、お互い。兄妹喧嘩は結構だが、そこまでお互いを嫌い合わなくてもいいだろ?」
「いいや、父さん。あんな奴……兄なんかじゃないよ。少なくとも………私は認めない。いいとこ、そこら辺の野良犬が精々だ」
「そこまで言わなくても………」
「じゃあ、母さん、父さん。飯の方は済ませたし、明日も早いから私もう寝るね。それじゃあおやすみ」
「ああ、おやすみ。………わかってると思うが、薬とクリームを忘れずにな」
「………うん、わかってる。それじゃあ2人共、また明日」
刀花さんの言葉に少し暗い表情を見せるが直様表情を変えて明るい顔となり、凛ちゃんもまた家の方に行ってしまった。
嵐が過ぎ去った後のような静けさの中で、刀花さんと爪牙さんはため息をつく。
「本当に仲が悪いというか……殺し合う勢いというか……早めの思春期というか………どうもあの2人に付ける薬が何処にないのかね………まったく」
「2人共、あの子達の喧嘩に巻き込んでしまって悪かったね。どうもあの2人は顔を合わせた瞬間何かにつけて喧嘩をする上に、なまじ力があるものだから私達も手を焼いているんだ。喧嘩が始まる前に止めてくれて、本当に助かったよ」
「あっ、いえ。元はと言えば私達が発端ですから」
「けど仲が悪いって言っても殺し合うほどなんて………やっぱりなんか色々変。兄妹喧嘩って言っても、あそこまで険悪にならないと思うけどな」
「………まぁ、少し前に色々あってね。2人共………色々思うところがあって………お互いを罵ることでしか接することができなってしまったんだ」
「お互い本当に嫌い合っているわけじゃないんだが………お互い頑固だからどちらも中々鞘を収めようとしなくてね。お陰で時間が経って余計に拗れて仲が険悪になるわ、狼がヒスイに八つ当たりしてそっちの仲まで険悪になるわで、もう散々な事欠かないさ。……………まぁ、この事は全部、私達のせいなんだが」
「………ああ、そうだな」
「「……………?」」
「………さて。長話はそれくらいにして、2人共殆ど昼抜きなようなものだったから腹が減っただろう?改めて早く夕食にしよう。実は私達も忙しくて、まともな飯を食うのは久しぶりなんだ。ここ最近はゼリーとエナジードリンク、たまにレーションの偏ったメニューだったからね。献立は一体何やら、何やら」
「鉄田。2人の取り調べの資料をまとめて、こっちで保護観察することにしたことを警察の方に1本連絡しておいてくれ。俺は保護観察についての公約を念の為に確認する。これでもし仮に保護観察者は保護管理者の保護範囲であったとしても、個性を使うことを禁ずるとかの、ルールがもしあるのならばまた別の処遇を考えないといけないからな。グレーラインを通るにしても、国を敵に回すのは御免被る」
「じゃあ飯の方は食わず待っててやるから、早めに仕事を終わらせろよ、爪牙」
「わかってるよ、刀花」
「刀花さん、お疲れ様です」
「じゃあ、あの、とりあえずありがとうございました!」
「お仕事の方頑張って下さい!」
「ああ、わかった。君達も取り調べお疲れ様」
そう言葉を交わすと私達2人は刀花さんについていくようにして階段を昇り、何処か懐かしく、何処か狼の味に似た凛ちゃんの作った激辛の豚バラ丼を食べて風呂に入り、私達が居候させてもらう部屋の軽い整理と掃除をした。
なお、この部屋に案内された時に少し驚いたのだが、この今私達が掃除している部屋は私が4年が使っている部屋そのものであり、てっきり私は4年前は凛ちゃんがこの部屋を使っているのかと思っていたのだが、実際のところそうではなかったらしい。
ちなみに、真血家は地下1階層と上の2層の全部で3階層であり、1階がリビングと風呂、2階の左端の部屋が刀花さんと爪牙さん、右端の部屋が狼の部屋で、真ん中の部屋が私達の部屋。そして地下にトレーニングルームがあり、その奥の部屋に凛ちゃんの部屋があるとのこと。
「ふぅー疲れたー。掃除おーわりっと。人が住めないほど確かに荒れてはいないけど、それにしてもここ色々と物多すぎ。どかして、スペース作ってで、もうくたくた」
「……けど、本当にここに来て驚くことばっかりでしたね。色々と………」
「………そうだね。昔の狼ってとんでもなく口悪いし、生意気だし………加えてまさか妹に対してあそこまで喧嘩ふっかけるなんて………思いもしなかった」
「何というか意外というか………衝撃というか………口が開きっぱなしでした」
「あっ、けど、ヒミコちゃんの言うことにツッコむところは今と同じだったけどね。今と比べて、だいぶツッコミの切れ味悪いけど」
「…………ねぇ、三奈ちゃん。覚えてますか?あの時……仮面の男が言った言葉」
「………狼が妹殺し…………つまり凛ちゃんを殺したって、話だよね?………忘れるわけがない……忘れられるわけがないよ」
「………期末テスト時に………狼言ってたんです。
『俺だけが傷つけば………もう誰かが傷つくことはない。もう………失うこともない。もう………泣くこともない。だから俺は………強くなりたかった。全てを守るための力が………全てを生かすための力が………もう………何も失わないだけの力が………俺は欲しかった』
………狼が間違いなく凛ちゃんを………死なせてしまったことをとても後悔をしているのは間違いありません。けど……それだとしてもなんで……狼は凛ちゃんのことを………まったく話してくれなかったんでしょう?何かに巻き込まないように、っていうのはわかるんですけど………それでも何処か、違和感があって」
「………まぁ、確かに、秘密主義が過ぎるっちゃ、過ぎるよね。私達が知った狼の過去って全部、狼本人じゃなくて周りの人から聞いたものだし。………けど、今はそういうのはあんま気にしなくていいんじゃない?だって、私達がここに来たのは狼のそういうこと全部、知るためでしょ?まだ1日目何だから、焦ることないって」
「それは……そうなんですけど………」
「ああもうっ、顔がまーた固くなってる。そんな顔してちゃ、狼に次会ったときに思いっきり笑われちゃうよ?もっとスマーイル!スマーイル!!」
「わかりましたけど三奈ちゃん!擽ったいですから今すぐお腹くす擽るのやめてください!そんなことしなくても自分で笑いますから!!」
「えー、けど、そんなこと言われちゃうと、もっとお腹擽りたくなっちゃうんだよなー私」
「言っても聞かないのであれば………ならばこれはどうですか!?」
「ちょ、反撃!?くはっ…、やめ…、ふふぁははははははは!!ヒミコちゃん擽るの上手すぎ!!」
「やられた分はその分やり返す主義なんです!たっぷりやられた分は!たっぷり返させてもらいますからね!」
「何を!ならこっちはその倍だ!!」
「ならば私はその倍です!!」
そんなことを言い合いながら私と三奈ちゃんは戯れ合い、心に漂った不安を吹き払うように、思いっきり心の奥底から笑い飛ばした。
こんな時間が、これからもずっと続けばいい。
誰かと笑い合う時間が、狼ともいつか、こうやって笑い合える日がいつか必ず来ると、このときの私はそう信じ、そう心の奥底から祈ったんです。
………そんな幸せな時間は………どこまでも脆く、どこまで儚く、いつか必ず………壊れてしまうものなのに。