鮮血少女と鮮血狼   作:熊田ラナムカ27

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 編集をしていたら未完成品を間違って投稿して急いで削除した結果、編集中の一部データが吹き飛んだ、どうも熊です。
 
 書く内容と出だしが決まったので1週間程度で、意外と早く編集が完成しつつあったんですけど、前記の熊のミスで倍の時間を使う事になりました。
 
 本当にすいません。
 
 そんでもって、ここからいつもの謎トーク的なのを書こうと思ったんですけど………正直なんにも思いつかない。
 
 ……こうなったら、最近始まったガンダムがガンダムっぽくないと、友人間で議論になった話を───
 
大魔「知るか。さっさと始めろ馬鹿」
 
 
※今話は一部、人によっては不快な描写があるかもしれません。どうか、ご了承のできる方のみ、ご拝読をお願いします。
 
  


65 ゾッとするもの

 

 

 

「少し遅れちゃってごめん!簡易ヒーロースーツ着るのにまた手間取っちゃって、少し時間かかっちゃった。というか、昨日も思ったけど簡易ヒーロースーツなんてなかなか見ないし、初めて着たけど、結構動き安いし軽いんだね。この靴でなんかピョンピョン高く跳ねれるし」

 

「そりゃあそいつは元々昔のアメリカの特殊部隊で使われてた物をリファインして、うち独自に改良と最適化をしたものだからね。靴に仕込んである強力スプリングで最低でも1メートルは跳躍可能だし、対弾防刃機能のある特殊繊維で作られてるから軽いながらもかなり頑丈だ。………まぁ、あんたが個性を全力で使ったら一瞬で溶けるだろうし、一個人専用に作られたスーツの機能とは雲泥の差だから何度も言うように、あまり過信はしないようにしろよ。あくまでも、それはヒーローだということを識別するためのものだからな」

 

「OK、OK、わかってる、わかってる。過信なんかしないよ、しないよ。それはそうと凛ちゃんのスーツはスーツでかなり特徴的だよね。赤い半袖に赤いスカートに赤い靴に、赤い番傘で全身真っ赤かだ」

 

「昔から赤いものが好きで、それをコスチュームに反映してもらうよう頼んだら何故かこんなデザインになってな。The赤って感じのコスチュームを自分で頼んだとはいえ、胸元の黄色いリボンと薔薇の髪飾りの黒以外は全部赤って………我ながら赤の主張が強すぎると思うけど」

 

「まぁ白髪も相まって結構似合ってるからいいんじゃない?………確かに、赤の主張がかなり激しいけど」

 

「………また今度、解原さんにデザインの変更頼もうかな」

 

「すいません、少し遅れちゃいました。昨日頼んでおいた刃引きした刀とナイフの開封作業をやっていたら少し遅れちゃいまして」 

 

「よし、じゃあヒミコも来たことだし、改めて今日のパトロールする範囲と特に注意する場所教えておくね。昨日でわかったと思うけどこの街はかなり喧嘩が多いし、何かに付けてトラブルを起こす奴等が何かと多い。逮捕とまではいかない騒ぎといえど、頬っておいて更に問題起こして面倒くさいから自分で対処できないと思ったら直ぐに私に言って。それとこれが特に騒ぎ起こす人物についてのリスト。時間ある時にでもチェックして、頭の中に入れておいて」

 

「はい、わかりました」

 

「うん、わかった」

 

「じゃあまず最初に巡回する場所は─────」

 

 この世界に来て約2日と数時間。

 

 昨日の監視室でのヒーローの顔合わせや街で暮らす人達との挨拶回りによって、刀花さんと爪牙さん及び、鉄田さん、病さん、荒記さん、解原さん達4人のフェンリル事務所重役の判断のもと、保護観察処分を行うとともに、凛ちゃん監視下のもとでのヒーロー活動の従事を行うことが正式に発表された。

 

 保護観察処分の判断についてはほぼ全員から肯定的な意見が貰えた一方、この判断についての当初の意見はバラバラであり、この街の住人達や古参ヒーロー達からの意見がある程度肯定的であるのに対し、警察は勿論、隣町(昔の私の家がここにあったりする)の住人達やヒーロー達、そしてフェンリル事務所に入って間もない新人ヒーロー達からはかなり否定的な意見が上がっており、最終的に様々な話し合いや取引がなされた結果、監視をつけるのは当然として、私達のヒーロー活動をこの鬼住街に限定し、怪しい動きを見せ次第即刻確保することを条件で認めることになったそうだ。

 

 なお、この決定に関して、私達はこの街を出るつもりもなかったので特に反対などもなく、そもそもこの街と関わりたくない隣町の住人や、元々犯罪発生率が壊滅的に高かったこの街を沈静化し、未だに日本トップの治安の悪さを誇るものの、ある程度安定した治安を維持しているフェンリル事務所なら、と警察も直ぐに引き下がったのだが、新人ヒーロー達からの反対だけは止まず、ボイコットまで起こりかけたのだが……… 

 

  

『心配せずともこいつ等に重要な仕事はさせるつもりないし、警戒を緩めるつもりない。というか、もし仮にこいつ等がヴィランで、街で暴れるようなら迷わず即刻にボコボコにしてミンチにした上で牢屋にでも地獄にでも放り込むから安心しろ』

 

 という………刀花さんの鶴の一声ならぬ、大魔王の一声と、爪牙さんのあくびをしながらの鉄塊粉砕によって、もしもの絵図を想像した新人達は顔を青くしながら全力で頷き、それを聞いた私達は端の方で恐怖のあまり抱き合い、残像が見えるほど震え上がることになった。

 

 ……やはりその4年前から健在というか………できれば健在してほしくなかった刀花さんの大魔王っぷりは健在であり………爪牙さんの何も喋らないながらも確かに恐怖を伝えてくる魔王っぷりもまた確かに健在だ………。

 

 最初から2人敵に回すつもりなんてないですし………2人を怒らせる行動もとるつもりないですが………今後は私も三奈ちゃんもできるだけ注意した行動を取るようにしましょう………。

 

 ……というより、そもそも、この人達はこんなにも圧というか、死を確信させるようなオーラをどうやって……毎度毎度ことあるごとに……放ってくるのやら………。

 

 まぁ……兎にも角にもなんやかんやでそれなりの信頼(同情)を勝ち取り、今日から本格的に取り掛かっていくのだが、私達のヒーロー活動に対して2人からの説明で納得せず、私達自ら説明しようとしても取り合わなかった人物………

 

「てめぇ等俺の見てない所で妙な真似してみろ?即刻ボコボコにして牢屋に叩き込んでやるから覚悟しとけ!わかったな!?変な触覚に金髪!!」 

 

「だから変な触覚って……そこまで変じゃないと思うんだけど………」

 

「三奈ちゃん気にしないで!スマイル!スマイル!」

 

「人の仕事の説明中に茶々入れるとはいい度胸してんなぁ馬鹿犬。てめぇこそ今ここでボコボコにしてやろうか?」

 

「上等だ。かかってこいよ男女」

 

「やめろってお前等!なんでお前等は顔合わせると毎回毎回喧嘩始めようとすんだ!?」

 

「狼君も凛ちゃんも落ち着いて!それに喧嘩なんかしてたら学校遅れちゃうよ!!」

 

「おっ、喧嘩か!やれやれ!!ついでに俺も混ぜろ!!」

 

「やめろ斬撃!火に油を注ぐな!!つーかお前も止めんの手伝え!!」

 

 ………狼君との仲は最悪であり………会うたびに睨まれ、妙な真似をしたらボコすなどの言葉を吐き捨てられていた。

 

 確かに私達は狼君の立場からすれば、何処から来たかも素性もわからないのにも関わらず、自身の家に我が物顔で居候し、まして自分が喉から手が出るほどやりたいヒーローの仕事の手伝いという夢を掠めとった存在であり、狼君からすれば気に入らない存在なのは仕方のないことなのだろう。

 

 だが、ここまで、言葉や威圧をぶつけられるのは予想外………というより、私からすればショックそのものであり、今までの狼のイメージを覆すほどには十分過ぎる程の衝撃だった。

 

 ………正直、狼とは何処に行っても分かり合えると思っていたし、例え狼が私の事を知らなくても直に打ち解けられると思っていた手前……私の知らない狼の姿がこんなにもあって………こんなに心が不安になるなんて………思いもしなかった。

 

 それに……何処か足元が揺さぶられるというか………私の中に抑え込んでいた何かが爆発するような気がして………ずっと体の奥底で冷たい物を押し付けられているような気がして……堪らなかった。

 

 狼君が私の知る狼じゃないからこんな行動するのはわかっている。私達が素性を明かさないから警戒するのだってわかってる。

 

 けど………一体これは何なんだろう?私の中にある………このゾッとするような………冷たい何かは…………。

 

「………また、顔色悪そうだけど大丈夫?無理そうなら今日はもう休んでもいいんだぞ?」

 

「………あっ、いえ大丈夫です。ちょっと、気になることがあったので………ちょっと…………」

 

「あの馬鹿犬言う事なら気にすんなよ。どうせお前等を嫌ってる理由なんてしょうもなくて、くだらない理由なんだから気にする価値もない。あいつのキレるの殆どの理由はしょーもない、ガキっぽい理由だからな」

 

「それはそうと、ガキっぽいで思ったけど、凛ちゃんって学校とか行かなくていいの?今日は平日だし、それに凛ちゃんってたしか11歳とかそんなもんでしょ?学校の友達とか、心配するんじゃないの?」

 

「あぁ、それは大丈夫。私、学校行ってないから」

 

「えっ、学校に行ってない!?」

 

「母さんと父さんが仕事手伝わせる為に行かせてないとか、そういう理由じゃないからそこは勘違いしないでね。2人は私に学校に行って欲しいって思ってるけど、私が行きたくないって無理言って、頼んで行ってないだけだから」

 

「けど勉強とか、友達とかは………」

 

「それも大丈夫、大丈夫。私って、自分で言うのも変だけど、国際仮免試験の筆記で満点取るぐらい頭いいし、週1で針山先生………私の学校の先生に来てもらって、学力とかの確認をしてもらってるから大丈夫。それに友達だっているしね。ついさっきの馬鹿犬と一緒にいた3人、止めてた男の子が銃機、止めてた女の子が法子、煽ってた馬鹿が斬撃っていうんだけど、家で遊ぶくらい仲いいしね。別に心配することなんてないよ」

 

「あっ、そっか。それなら、いい、のかな?」

 

「まぁ、そんな些細なこと置いといて、早く仕事するよ。今日も今日とて、茨木通りのパトロールに、酒呑街で間違いなく起きる騒ぎの鎮圧、土竜組組長との会談に、例の誘拐殺人事件の聞き込みとやることがたくさんある!ほらっ!ぼさっとしてないで早く足動かす!!」 

 

 学校に向かった狼君達4人達と反対方向にある商店街方向に凛ちゃんはそう言いながら番傘をさし直すと、1人先に歩いていってしまい、凛ちゃんの言葉に何処か怪訝な顔をした三奈ちゃんと、凛ちゃん言葉でようやくハッとなった私は少し距離が空いた距離を埋めるように軽く駆け足気味で茨木通りに向かっていった。 

 

 茨木通りは東西南北各方向に向かって伸びる4つの大通りこと熊通り、虎熊通り、星熊通り、金熊通りの中心に位置する巨大な商店街で、スーパーなどがないこの街で唯一と言っていい買い物ができる場所だ。

 

 製菓店や精肉店などと言った他の商店街にもある店から、質屋や古本屋、電気店や大規模な酒蔵を備えた酒屋といった幅広い店種類が揃い、教科書で見た超常黎明期以前の建物の面影を何処か残した街の姿は別の時代に来てしまった(今回はまさにその通りなのだが)ような錯覚さえ覚える。

 

 駅に向かう通学路にある場所なので私も1度はじっくりと見てみたかった場所なんですけど、此処には幅広い種類の店があると同時に、明らかに怪しい薬や道具を売っている店やぼったくりの飲食店、歓楽街である酒吞街が近くにあるということでちらほら見える、アレなお店が数多く存在しついるということもあって、あまりじっくりと狼が散策させてくれることがなかったんですよね。

 

 急ぎの買い物以外で来ることのなかった場所に、仮想空間であるとはいえ来るとは………人生何があるかわからないものだ。

 

 ちなみに酒吞街は方角的には鬼門の方角にあり、フェンリル事務所は裏鬼門の方角、裏鬼門の更に奥の方向にMIPデックスの会社、そして南の方角にある鬼住街と隣町の境に狼君の通う学校がある(私が小学生の時通っていた学校は、こことは別だった)。

 

「あら、この時間帯はいつも1人でパトロールしてる凛ちゃんが他の子を連れてくるなんて珍しい。随分と可愛い子達だけど、もしかしてお友達?」

 

 茨木通りを軽く見渡しながら歩いていると、やや古っぽいデザインのそこそこ大きいバーの前を掃除していた、サングラスをかけた赤い長髪のややオネエ口調の人が話しかけてきた。

 

 知らない相手に私達が戸惑っていると、慣れた様子で凛ちゃんが言葉を返す。

 

「おはようございます引石さん。それと友達じゃなく、部下兼保護観察対処ですよ、この2人は。昨日はいなかったので挨拶できませんでしたが、引石さんのところにも連絡来てたでしょ?」

 

「あぁ、そういえば来てたわね。じゃあこの2人が例の」

 

「この人は引石さん。このオカマバーの店長で、ここじゃ数少ないNotぼったくりで飲食やってる。私もたまにここで昼飯食べさせてもらうけど、一番のオススメはカレーだ。かなり辛くて、めちゃめちゃ上手い」

 

「やーね、レストランみたいに紹介して。何度も言うけど、ランチはやってるとはいえ、基本はうちはレストランじゃなくて飲み屋。褒めてくれるのは嬉しいけど、子供が来るような場所じゃないのよ」 

 

「では、改めて始めまして。私はしん………じゃなくて、渡我 被身子。色々あって凛ちゃんの下で働かせてもらっています」

 

「それで私が芦戸 三奈。どうも、これからよろしくお願いします」

 

「昨日一昨日は私集まりが集まりがあったからここにはいなかったけど、話はママから聞いてるわ」

 

「ママ?」

 

「うちのおばさんのファティーグ・セーブレットもとい、プリティーラブリーマンのこと」

 

「私昔やんちゃやっちゃって警察捕まっちゃったことがあってね。その時と働く場所に困っていたときにママには世話になって、今はこうやってオカマバーの支店の1つを任されてるってわけ。……ここに来て長い人ならともかく、ここに来てあまり経ってない人からすればあなた達は怖がられるだろうし、邪険にされることもあると思う。けど、それにめげず、功績さえ積んでいけばイメージも払拭できるだろうし、少しずつでもこの街に馴染んでいけると思う。だから大変かもしれないけど頑張ってちょうだいね。未成年にはお酒は出せないけど、相談にはいつでものってあげるから」

 

「あ、ありがとうございます。……けど、私達本当に何もやってないんですけどね」

 

「またまた。隠さなくていいのよ?」

 

「ホントですって!誤認逮捕されただけなんですよ!!」

 

「店長。店の掃除の方は終わったんで、料理の仕込みの方をそろそろ」

 

「早くしないと、ランチ間に合わないよ」

 

「あら、もうそんな時間。じゃあ私仕込みやんなきゃいけないから、そろそろこれで」

 

「あっ、そうだ、聞き忘れるとこだった。最近近くで怪しい噂とか、怪しいものが流れてるとかの情報ない?例の誘拐殺人事件についての情報があるんだったら、詳しく知りたいんだけど」 

 

「うーん、そうね。確か、一昨日潰された麻薬グループの残党が鬼住街うろうろしてるってのは聞いたけど、特にその関係の話は聞いてないわ。少なくとも、茨木通りにはそこらへんのこと知ってる人は今いないんじゃないかしら」

 

「うーん………なるほど。となると、茨木通りでの聞き取りは無駄か。……うん、なかなかいい情報をありがとう」

 

「そこら辺の情報が聞いたら伝えるようにするわね。それじゃあ3人共。次来るときは、もっと大人になってからいらっしゃいね」

 

「はい、時間があるときにまたお邪魔させてもらいます」

 

「聞き込みの協力ありがとうございました」

 

 私達が言葉を返すと引石さんは私達に軽く手を振りながら、掃除をしていたらしいバイトのバッジをつけたヤモリ顔の人と、店員のバッジを付けたツインテールの人と共に、店の中に入っていった。

 

 その後は、何故か仕事を抜け出して電気屋のテレビの前でアイドルのライブを正座して視聴していた連さんや、またも仕事を抜け出して暴れていた2馬鹿もとい、投球君と俊雷君の喧嘩や、その2人の喧嘩を肴に酒を飲んでへべれけになっていた葉子さん達を捕縛したり、介抱して他のヒーローに引き渡しつつ、狼が特に近づかせてくれなかった歓楽街、酒吞街への小道へと向かっていった。

 

 これまでの茨木通りの外観が古き良き昔ながら町並のイメージだとすれば、鬼門街への小道はイメージは、古い時代の社会の闇、といった雰囲気であり、小道という閉鎖的な空間も相まって何処か暗く、何処か危険な雰囲気が漂っている場所だ。

 

 また、歓楽街に近づいているということもあってか……アレな店がちらほらより多く見え、そういう雰囲気の大人の女の人や男の人とも何度かすれ違った。

 

 何というか慣れている凛ちゃんはともかく、慣れていない私達は気まずいというか、早くこの場所を色んな意味で抜けたいという気持ちでいっぱいであり、私達は凛ちゃんにぴったりくっついて小道を歩いていく。

 

「……うん。ここは……まぁ……うん。そういうアレなんだろうね……ここは」

 

「歓楽街なのであるのは当たり前なのですが……思っていたより数が多いといいますか、何というか………はい。まぁ……そうですね……はい」

 

「元々鬼住街は遊郭に連なってできた街だからな。今も昔もここはそういう店で溢れてる。……慣れなくて挙動不審気味になるのはわかるが、ここから先はついさっきの騒ぎ以上のことが頻発する。どれだけ挙動不審になってもいいが、警戒だけは絶対に緩めないようにしろよ」

 

「わかってるよ、そんくらい。………というか、正直警戒をやめたくてもやめられないし」

 

「あの、あとどのくらいしたら……この小道抜けられますかね?何というか、その、ここはえっと…………」

 

「居辛い?」

 

「あっ、はい、そうです」

 

「うーん……そうだな。ここからある程度雰囲気のマシな場所に行くなると………大体5、6分とか?近道して後もう少し先の道を右に曲がってもいいんだけど、あそこは酒関係売って利益を得てる窮鼠組の事務所を通りかかるから酒臭くて嫌だし、かといってこの左の道を通るなんてしたら闇院の奴等に強制連行されて、検診と色々された挙げ句、強制的に献血させられるから面倒だ。………色々考えたけど、やっぱりこの道を真っ直ぐ歩くのが、一番早くて安全だな」

 

「へ、へぇ、そうなんだ。………色々ツッコミどころ多くて、後半全然頭に入ってこなかったけど」

 

 そう言って凛ちゃんが顎に手を当てて考える素振りを見せ、三奈ちゃんが苦笑いをした。

 

 だが、そんななか、私は話の内容に違和感を感じる。

 

「窮鼠組に闇院………。……そういえば、凛ちゃんと私達が初めて会った時、確かこの街には4つの勢力があるって言ってましたよね?」

 

「ああ、そういえばそんな事言ってたね。確か毎日争っていて、勢力はそれぞれフェンリル事務所にオカマ軍団。受刑者達にゴロツキ集団………って!ついさっきここら辺に窮鼠組と闇院があるって言ったよね!?それってつまり───」

 

「ああ、そうだ。ここら一体…………更に言えば、酒吞街そのものは基本ゴロツキ集団の縄張りだな」

 

「やっぱり、そうでしたか……。ヤクザに闇医者がいそうな名前が出ましたから、そうなんじゃないかと思いましたよ」

 

 凛ちゃんの言うのを忘れていた、という表情に私は思わずため息を付き、三奈ちゃんは焦ったような雰囲気となった。

 

 慣れている凛ちゃんはともかく、三奈ちゃんの焦り様はご尤もで、凛ちゃんが最初に言った言葉のとおりならば、ここはフェンリル事務所と敵対している組織の本拠地ど真ん中であり、それに加え凛ちゃんは仮にもフェンリル事務所のトップの娘。

 

 真っ先に狙われる対象であり、その近くにいる私達も危険であることこの上なく、此処を離れた方がいいのは一目瞭然だ。

 

「じゃ、じゃあ早くここ引き返したほうがいいんじゃない!?敵対してる私達がいるって知ったら、間違いなく襲いかかるんじゃ────」

 

「待て待て、よく考えろ。あっちに襲いかかる気があるんだったら、もうとっくに私達は攻撃受けてるだろ」

 

「あ、そっか。言われてみれば確かに」

 

「もともと監視下にある受刑者達はともかく、下手に攻撃を受けない感じからして、敵対してるって割にはゴロツキの人達とも、オカマの人達とも、多分きっとある程度仲いいですよね。もっとも、ゴロツキ集団の方々とはまだちゃんと話していないので、まだその人達は何とも言えないんですけど、組長と会談をするってことは、それなりに交流はあるってことですよね………これってどういう事ですか?最初の言っていたことと、だいぶずれてる気がするんですが」

 

 私は持っていた違和感を凛ちゃんに言い、凛ちゃんは私に背を向けて再び考える素振りを見せた。

 

 そして、何度か首をひねり、何度かうなずく仕草を見せると、凛ちゃんはこちらに向き直る。

 

「……まぁ、実際問題ある程度個人の好き嫌いはあるし、昔からこの街に住み着いているゴロツキ集団と新参者のオカマ軍団はめっちゃ仲悪いけど、大体はその通りだ。最初言ったことは半分がホントで、半分が嘘。確かに敵対はしてるし、喧嘩は多いけどどれもじゃれ合いの範疇を超えたことはないし、少なくとも10年間は度を過ぎた喧嘩をして、逮捕されるなんて奴は出ていない。………あんた等が信用できるってわかんなかったから、軽く嘘混ぜてビビらせようとしたけど……昨日と今の様子じゃ少なくとも敵対はしなさそうだし、嘘言う必要もこれ以上ないね。一応、軽くとはいえ、騙しててごめん」

 

「い、いえ、謝ることじゃないですよ。ただ、気になっただけですし」

 

「この街に4勢力なんて大層なものできた理由も、別に大した話じゃない。ただ生きてた時代とか、人のその時の考えとか、まぁ、色々あってこんな変な街になっちまっただけだからな。………私はその時生まれてなかったけど、元々この街は何処にでもある普通の街だった。ほんと、何処にでも、少し騒がしいけど賑やかで、何処に笑い顔が溢れる街だった」

 

「……だったって………何で過去形に」

  

「だから大した話じゃないって、言ったろ?この街をこんなにしちまったのは、お前等や私が持っている当たり前のもの。………………世界各地で起きた異能を持った人間の誕生や、既存の人間の細胞変異による異能の発現による弊害だ」

 

「異能持つ人間の誕生に、細胞変異による異能の発現?………それって、もしかして」

 

「個性誕生のせい、って事ですか」

 

 私の少しだけ戸惑った言葉に凛ちゃんは何も否定した様子を見せず、そのまま無言の肯定を示す。

 

「今の時代こそ個性は誰もが持つ当たり前の力となり、その力の驚異や異常性はあまり指摘されなくなったが、個性の発見された当初、その異能を持つ人間の数は全人類の内の約10%。日本全土で言えば約1%っていう、当然当然といえば当然だけど、ごく少数の奴しか力を持っていなかった。そしてもってそんなか、この街に人間は幸運か不幸かわからないけど、その多くが個性を発現。周囲の街の人間には個性の発現があまり見られなかったてのもあって、まさに異能を持つ人間達は御伽噺の化物や怪物同然。何でも昔、個性を持ってる連中を集めたヤバイ奴が暴れてたってのもあって、それは目に酷い目にあっていたそうだ」

 

「………酷い目って、具体的に?」

 

「………殺しに拷問は当たり前。酷いのとだと目の前で自分の子供や妻を殺す姿を見せて………それで苦しむ姿を見るなんていう悪趣味な輩もいたらしい」

 

「殺しに……拷問………。………ウップ、………ちょっと、ごめん」

 

「み、三奈ちゃん!?大丈夫ですか!?」 

 

「気持ちのいい話じゃないし、当然の反応だ。まぁ、そんなこんなもあったせいで、この街の連中は自身の街の者や、同じく異能を持つもの、社会から排斥されたもの達で構成された組織を作り、周囲の人間を攻撃。生まれつつあったヒーロー達と何度も衝突を繰り返して、いつしか社会からこの街はないものとして隔絶。………オールマイトも現れた第4世代に時代がなっても周囲の差別や街の人間達の怒りは消えず治安は悪化。この街はヒーローは勿論社会から、国から、世界から………そして、そこに住む者達からも見捨てられた、最悪の街に、この街は成り下がっちまったってわけだ。………まぁ、結局の所、ついさっきも言った通り、大した話じゃないけどな」

 

「大した話じゃない、って………。そんな事、おかしい以外何ものでもないじゃないですか……!?そんな大した話じゃないって言って、凛ちゃんは何も思わないんですか!?」

 

「思うよ、色々と。けど、それは過去に起きて、今も起きていることだ。………本当に人間ってのは、愚かな動物だ。性別に生まれ、育ちに考え、長所に短所やらの他者との違い許さず普通を強いて、平等と言いながら差別を振りかざして、誰かの当たり前を壊して生きて、何10年も、何100年も、何1000年も同じ間違いを繰り返して、新たな間違いを生み出す愚かな動物だ」

 

「………確かに、そういうところは誰だってあるかもしれません。けど、誰も彼もがそういうわけじゃ───」

 

「ああ、誰も彼もがそういうわけじゃない。そんなのわかってる。けど……この世界はあまりにも残酷すぎる。簡単に当たり前を強いて、簡単に当たり前を壊されて、簡単に当たり前を壊すしかない、どうしようもなさすぎる世界なんだよ。………少なくとも、私の知っている世界は」

 

 

『誰も誰もが普通を持ってるわけじゃない。全部持ってない奴だっている。そんな奴等が生きるためには…………眼前の当たり前を壊してでも戦い続けるしかない』

  

 

 凛ちゃんは吐き捨てる様にしてそう言いとともに、私は不意に試験で戦った士傑高校の人の言葉が強く、頭に中に響いた。

 

 ……確かに、授業や色んな場所で差別についての知識上では知っていたし………私の前の家のこともあって、そういう差別が身近にあることは嫌でもわかっていた。

 

 けど、その知っているという認識はあまりにも脆く、ないも等しいものであり、私は頭の奥底でその事についてあまり深く、考えていなかったのかもしれない。

  

 人間がこの世に何億人もいる以上どうしても必ず違いは発生し、その中で考えや育ちといった違いは更に違いが生まれ、違いの中で生まれる幾万考えの相違とともに新たな新たな差別が生まれる。

 

 それは社会という大きなものから、1個人同士の小さなものまで、永遠に生まれ、争いもまた生まれ続ける。

 

 ………進んでも進んでも何も見えず、ただ暗闇が広がるだけ。

 

 人間はずっと、一人ぼっちで、いるしか、ないんだろうか?

 

「………ごめん、こんな話をして。もっと内容を、配慮を考えて話すべきだった」

 

「………大丈夫、じゃないけど、大丈夫。一応は、落ち着いたから」

 

「三奈の方はわかったけど、ヒミコの方は大丈夫?顔色、また更に悪くなってるけど」

 

「………はい、何とか。けど、まだ、頭の中ごちゃして、ゾッとして、なんて言っていいか、わかりません」

 

「………そっか、そうだよね。普通そうなるもんね、普通は」

 

「………この街に4勢力ができたのはかつての、その、昔の名残、があるかっていうのはわかったよ。けど、だとしたら何で、この街はある程度安定するようになったの?話を聞く限り、もう今の治安が目じゃないどころの騒ぎじゃない状態だったみたいだし、国も何もしてくれなかったんじゃ」

 

「………まぁ、それは、うん。………7割、8割、いや、9割?………じゃなくて、間違いなく10割、母さんのせい、というかお陰?そんでもってうちが他の3勢力押さえつけてトップになってるもとい、母さんがこの街を支配するようになった、理由かな?」

 

「ちょっと待って。話が一気にシリアスから別のに変わってるんだけどどういう事?刀花さんが街を支配って、何?」

 

「い、一体、刀花さんは何を…………」

 

「おい、おい、こんなところに魔王軍とこのガキに、人売りにでも売ればそこそこの金になりそうなガキ2人がいるとは、これまた不注意なもんだ。こんな真っ昼間からお友達連れてヒーローごっことするんだったら、もうちょい場所を考えるべきだったな」

 

 話がシリアスから別のものに変わったことに凛ちゃんも含め、全員困惑しているなか、それを邪魔するかのように、蛸の異形型の個性に、デカい葉巻を口に咥えて、人売りという普通出てこない言葉を発する、明らかにヴィランっぽい言葉と仕草に顔のを大男は私達に近づき、逃げ道を塞ぐようにあちこちの脇道からこの男2人の部下のような人達が大量に現れた。

 

 数は見えるだけで30人以上はおり、全員つい先程の4馬鹿と違ってこちらに明らかな殺意を持っており、全員が個性と武器をいつでも使えるようにしている。

 

 そう、明らかな不利な状況であり、明らかなピンチな状況。

 

 国際仮免資格を持っているとはいえ、仮にも11歳である凛ちゃんと、簡易的な装備故に全力を出せず、現場に立つのも殆ど初めてな私達2人は本来為す術もなく、どうしようもできないはずなのだが…………

 

「悪いけど、話がいいところなんだから、さっさと眠ってろよこのデカブツ」

 

「シリアスからギャグに雰囲気変わったから、正直あんま怖くないよ、正直」

 

「ごめんなさい。本当に話がいいところなんです。すいません」

 

 全くと言っていいほど、私達全員に緊張感はなく、先頭で堂々と大男が何やら口上を言おうとしているが、そんなのお構いもなしとばかりに蹴りや拳を全員1発ずつ腹にお見舞いし、大男は白目をむきながら宙を鮮やかに弧を描きながら飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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