目を覚ましたら実験動物になってたんだけど・・・   作:饅頭おとこ

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誤字脱字及び修正していただき感謝しきれません。ありがとうございます。
続いてシリアス成分がありますので、お気を付けてください。


ー13ー

 あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!

 

 

 はぁはぁ……

 な、なんだ。今の出来事は……

 

 ゆ、ゆめだよな? 頭がおかしくなりそうだ……

 

 しかも、なんだこの真っ黒の空間。

 

 それともこれも、夢の一部……?

 ぐ!! 首が痛い……

 

 ゆっくり右手で首を触るとべったりと血が付いていた。

 

 なんで、夢で見た光景なのに血が……血が滲んているんだ?

 どこなんだ、ここは?

 

 辺りを見渡しながら進むが何もない。

 

 な、なんで夢なのにこんなに意識がはっきりしているんだ?

 本当にここは……何なんだ。

 

 歩いても歩いても何もない……

 本当に夢の中で夢を見ているのか?

 

 

 ハハハ……まるで小説のようだ……

 

 

 しかしなんでだろう。

 とても悲しく胸が痛い……。

 

 さっきの夢の中で気持ち悪い生物を見て、なんで俺は殺さないでくれなんて言ったんだ?

 

 

 何が、ワーム君だ……。

 何が観葉植物さんだ、触手本にのじゃロリって……バカなんじゃないか?

 

 あんなの非現実的すぎる上に、あんなの普通じゃない。

 

 ただの化け物じゃないか。気持ちが……悪い……

 

 

 そう呟くが言うが、両目からは止めどなく涙が溢れてくる

 胸にはポッカリと穴が空いているように、喪失感に襲われていた。

 

 

 あまりの気持ち悪さに立ち止まり蹲っていると、遠くに巨大な狼の頭が落ちていた。

 それを見ているとどこかに見覚えがあり、気持ち悪さで嘔気(おうき)に襲われる。

 

 

 狼の頭が憎悪を孕んだ二つの怪しい瞳を俺に向け何かを呟いたが、頭に入ってこない。

 ノイズが入るといつのまにか可愛らしい黒い犬に変化していた。

 

 黒い犬はつぶらな瞳で見てくるが何も思い出せない、思い出したくない。

 

 やめてくれ……頭が、頭が割れそうだ……

 

 

 痛い、

 痛い、

 痛い……

 

 やめろぉぉぉぉお!!!!!!!!!!

 

 

 無理やり頭に何かを植え付けられるように、切り取られた場面が浮かぶ。

 

 黒い犬と幼い男の子が遊んでいる場面。黒い犬が泥んこになって走り回っている場面。幼い男の子が墓の前で泣きじゃくっている場面。泣いている男の子の顔を舐める黒い犬。幼い男の子が青年になり黒い犬を抱き上げている場面。黒い犬が嬉しそうに尻尾がちぎれるように振る場面。男性が老いた黒い犬に悲しい目をしながら撫でている場面。老いた黒い犬が男性に目で訴えている場面。老いた黒い犬を男性が心配しながら散歩する場面。男性が呆然と自室にいる場面。男性が頭を掻き毟る場面。男性が憎悪に狂気に憤怒に絶望に殺意に場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面場面。

 

 

 

 あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

 

 あ、あぁぁぁぁ……クロ、そうクロだ。

 俺が、僕ががずっと一緒にいた家族じゃないか!!

 幼少期からずっと僕のそばにいた。かけがえがない唯一の家族のクロだ。

 

 ――憎い.……

 

 僕はなんでずっとクロを忘れていたんだ、なんでだ。

 

 ――世界が憎い……

 

 あぁ、胸が痛い、足が痛い、腕が痛い、頭が割れそうだ。

 君はいつもそばにいたののに。

 

 僕があのときもっと注意すれば……地面を何度も殴る、殴る、殴る、殴り続けた。

 

 ――奪った……

 

 蹲りながら胸を掻き毟っていると、クロが近づいてくる。

 

 あぁ、あの時も君は僕を慰めてくれていたね。

 君はいつも僕を慰めてくれる。

 

 ――許せない……

 

 憎悪と狂気に襲われていると、クロがゆっくりと僕の顔を舐める。

 震えた手でクロの頭を撫でる。

 この感触だ、僕が唯一安心できる。僕の、僕の……!!

 

 本当にごめん……クロ……君はずっとそばにいたのに。

 僕は……あぁぁ!!!!

 

 泣きじゃくりながらクロを抱こうと手を伸ばすが、クロは避ける。そうしてワーム、アルラウネ、悪魔の書そして幼い女の子の姿に変身するとまた元の姿に戻る。

 

 お前にはもう新しい家族がいるんだから根性出せよアホ、と呆れた表情でワン(キュイッ・ギュイッ・ピギィ・のじゃ)と吠えた。

 

 そうだよね。ここで頑張らなくて、いつ頑張れるんだろうね。

 守らなければ、僕が。

 ああ、大丈夫だよ。

 

 僕は、俺は思い出した。お前を思い出した。

 安心してくれ、もうお前を忘れない。

 

 憎悪? 狂気? 俺にそんな物は必要ない。

 

 ずっと俺の傍で見守っていたんだな。本当にお前はかっこいいよ、母であり父であるってか?

 かっこよすぎだろ。

 

 安心してくれ。

 お前は俺で、俺はお前だ。だからもう大丈夫だよ……

 

 これ以上お前に酷い姿を見せないよ。

 

 

 袖で涙と鼻水を拭き、クロを見て酷い顔で笑った。

 

 

 

 

 ー主任ー

 

 検体番号-0000アルファ:人類が初めて****に犯された純人間種

 人類が栄華を誇っていたある日、突如未明の大災害に襲われた。それらの対応に追われ焦燥した各国はある決定をする。

 重罪、軽罪問わず全ての犯罪者を最前線に送り出し、人間ではなく消耗品として扱うと、それに多くの者が反発したがそれらも拘束され同じように使い潰された。

 一時期はその対応によって、一旦の落ち着きを見せた。だがある日、その中で死なずに****に犯され変異された人間が現れる。それに呼応するように各所で同じような者が現れた。それらの多くの特徴として気性が獰猛で残忍そして憎悪と狂気、憤怒に取り込まれていた。

 

 

 しかしあのアルファは異空間古代遺跡(エンシェントダンジョン)の大量の遺物を使い、最下層のコキュートスに封印されたはずだが……。

 私は足がぐちゃぐちゃになりながらも再度頭の中で整理しながら、彼らの戦いを横目に見ていた。

 

 やはり、人狼でもアルファには勝てなかったようで、人狼の首が切り落とされる。

 

 あぁ、人狼よ。

 

 お前とお前の仲間なら勝てると信じていたが、やはりお前もこのアルファには勝てなかったか。

 やはり、研究者が結果を見ずに、盲目的に信じてはいけなかったな……

 私もお前に影響されていたってことか……

 

 

 巨人は最初から私が狸寝入りしていたことに気づいていたようで、私に汚い笑みを見せながらゆっくり近づいてくる。

 

 はぁ……いやだねぇ、これだから、憎悪と狂気に取り込まれたやつは嫌いなんだ。

 

 どうしてこうも短絡的なんだろうかね?

 

 私がこの場所からどうやって脱出するか、頭の中で模索して周りを見渡すと。

 

 

WAOOOOOOOOOON!!!!!

 

 

 とても大きく……切なく……こちらまで、心が悲哀に満ちるような遠吠えが聞こえた。

 

 私が悲しみと驚きにごじゃまぜになった表情をしてそちらへ顔を向け、同時に巨人も驚いたように後ろへ顔を向ける。

 

 

 

 そこには……一匹の狼が……

 

 忌み嫌われ

 

 呪われ

 

 迫害され

 

 堕とされてもなお、

 

 神々しく(こうごうしく)も恐ろしい……大神(オオカミ)が……いた。

 

 神々のみならず全ての生物から、呪いと呪詛を一心に受けたのではないかというほど、黒く……黝く(くろく)

 全ての光を吸い尽し、見ているだけで発狂するのではないか錯覚するほどに……。

 二対の目は、いくつものルビーと血を幾重にも混ぜたほどに紅く……心を奪われる。

 

 

 

 突如、左半身が暴れ回った。

 

 私はいったい……?

 

 一度心を落ち着けようと、深呼吸をして瞬きをした刹那、それ(大神)は消えた。

 それ(大神)の行方を探そうと辺りを見ると、まるでどこからか壊れた噴水が水を噴き出す音がした。

 

 その音の場所を探すと、巨人の腕の四本全てが無くなっており、根本から鮮血が吹き出ていた。

 

 なんだこれは……何が起きている!?

 

 視線を先ほど大神(オオカミ)がいた場所へ戻すとと、まるで何も無かったように佇んでいた。

 

 

 巨人が痛さから叫ぼうとした瞬間、今度は頭が消え……崩れ落ちる。

 

 

 あれはなんだ?

 どういうことだ?

 アルファを瞬殺だと?!?!

 あれは人狼か?

 覚醒か?

 ありえないはず!!

 そんな報告書を見たことない!!

 首を落とされたはずだぞ!!

 この目で見たはずだ!!!

 

 

 私が驚き混乱していると大神(オオカミ)が突如私の目の前に現れた。

 

 

 真正面から目を直視され、生まれて初めて恐怖を抱いた。

 まるで深淵を覗いているようで、どこまでも奈落へ落ちていくように……

 

 私が凍りついていると、大神(オオカミ)は私からゆっくりと視線を外し、ワーム、アルラウネ、悪魔の書に顔を向けた後、何かを伝えるように再度私に視線を向ける。

 

 

 目の前でその巨体を丸め、大神(オオカミ)は目をゆっくりと閉じると、まるで……永遠の眠りにつくように動作を……止めた。

 

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