目を覚ましたら実験動物になってたんだけど・・・ 作:饅頭おとこ
かっこいいお兄さんに案内され日当たりがいい席へ座る。
「のじゃー! お兄さん、美味しいケーキお願いなのじゃー!」
ぴーぴー!
「あと美味しい鉱石もなのじゃー!」
のじゃロリはメニュー表をペタペタ触りながら注文をしていく。
俺も何か頼んでもらおうとしたが……意識がそこになかった。
なぜなら横の席にははち切れんばかりの筋肉を持っているオークの男性がいたからだ。
ゴ、ゴクリ。
子犬姿の俺では簡単に八つ裂きにされそうだった。そんなオークさんへバレないようにチラチラ見る。
オークさんは、と言うと机の上に置いてある紙袋をガサコソしていた。
何度目かわからない唾を飲み込む。
ご、ごくり。
オークさんは薄いノートみたいな機械と金髪のカツラ、それに安っぽい二つの耳を取り出した。ふぅむと言って眺めるとおもむろに金髪のカツラを被り、長い耳を装着する。
……やばいやつにしか見えなくなった。
サッと視線を戻す。
のじゃロリは気づいていないのか、それとも視界から消しているのか足をふらふらして陽気な鼻歌を披露していた。
その横で観葉植物さんも真似をしていると思うが……とんでもなく耳が痛くなる高音を響かせ、ワームくんが頭を上下に振りながらビートを刻む。
触手本は……メニュー表がタイプだったのか触手を踊らせてアピってた。
て、訂正。
こちらの席もやばいやつしかいなかった。
再びオークさんへ向けると、機械を起動させていた。機械をまるでパソコンのモニターのように変形させ机に広げる。
ゴホンゴホンと声の調子を確かめているのか、咳き込むと。
「こんにちはー! MyTuberに舞い降りた華麗なエルフ、ルークでーす!」
と言った。
……エ、エルフ?
どう見てもエルフじゃなくやっべぇやつにしか見えないがオークさんはニコニコしている。
そしてパソコンには大量のコメントが流れていた。
「今日は最近巷で噂になっている喫茶店に来ました! 店内も良い雰囲気で今の時点で百点満点あげたくなりますね!」
目を凝らしてコメントを見るとありったけの罵詈雑言が書かれてあった。だというのにオークさんは笑顔を貼り付けている。
す、すごいな。
というか、コメントに書かれてる大半が悪口なんだが……
「うんうん、店員さんも私みたいにかっこいいですね!」
イケメンの店員お兄さんを見て、つぶやいたオークさんの言葉に大量のコメントで溢れかえる。
[ふざけんな!]
[お前の顔は汚物以下だろ、目がおかしいのか?]
[帰れ! 店の品が落ちるだろ!]
[消えろ消えろ消えろ消えろ]
コメントの流れがとんでもなく早く、視聴者数を見たら五万人を超えていた。
どんだけの暇人が見てんだよ。
「おにいさーん!」
オークさんは猫撫で声で店員さんを呼ぶ。
[気持ち悪いんだよ!]
[早くやめろ!]
[気色悪い声出すな!!]
[エルフを馬鹿にしてんのか!]
[消えろ消えろ消えろ消えろ]
俺の声を代弁したかのようなコメントが流れる。
店員さんはオークさんの筋肉にびびっているようでビクビクしながらやってくると、オークさんの注文を受けてすぐに下がっていった。
「うんうん! 素晴らしい接客ですね!」
もはやオークさんに投げられるコメントを見ていられなくなり視線を戻す。
触手さんの変な液体まみれになったメニュー表を奪い取り、舐めるようにして内容を見ていく。
あ! お肉あるじゃん。
おい、のじゃロリ! このステーキ頼んでくれ!
愛くるしい足でステーキの写真をペチペチすると、のじゃロリが心底めんどくさそうな顔で店員さんを呼んで注文した。
こんにゃろう……
イラッとしたがステーキが食べれるということもあり、るんるん気分で待っていると何やら熱い視線がジリジリと首筋に当たる。
ゴ、ゴクリ。
チ、チラッと……見るとオークさんが俺たちを見ていた。俺の視線が横に向かっていることに気づいたのじゃロリがオークさんに顔を向ける。
オークとのじゃロリの視線が交差した。
……のじゃロリが頭を傾け。
「のじゃ?」
と言うとオークさんはニコッと獰猛な笑みを浮かべる。
「こんにちは! エルフのルークって言います!」
「え? エ、エルフ? エルフってもっとこう……」
素になった地声の、のじゃロリが小さくつぶやいた。
オークさんの耳はすごいのかバッチリ聞こえていたようで眉尻を下げ、悲しそうな表情を浮かべる。
「あ! ご、ごめんなのじゃ……悪気があったわけじゃないのじゃ! 私はモ、モニ……モンブランって名前なのじゃ!」
あからさまな偽名を答えるのじゃロリ。
「ルーク、よろしくなのじゃ!」
引き攣った笑みを浮かべながらのじゃロリが答えると、オークさんはぱぁっと笑顔に戻った。というか草食動物を目の前にした肉食動物にしか見えない。
パソコンが壊れてコメント欄が止まったと思えば、先ほど以上の速度でのじゃロリに関するコメントで埋め尽くされた。
[のじゃ!?]
[の、のじゃだ!]
[は、初めて本物を聞いた]
[天使!?]
[消……!?]
「いやぁ、やっぱ良い喫茶店には可愛らしい人たちが来るんですね」
オークさんは嫉妬したのか、カメラを戻して自分の顔を中央に映す。
[お前は出てくるな!]
[のじゃさんに戻せ!]
[お前の顔はもう見たくねぇんだよ!]
[早く辞めちまえ!]
[消えろ消えろ消えろ消えろ]
再び悪口の嵐に包み込まれるコメント欄。