目を覚ましたら実験動物になってたんだけど・・・ 作:饅頭おとこ
【のじゃのじゃ、なのじゃ!!】
そんな題名の動画を俺たちは見ていた。
なんで見ているかって?
……るっせぇ! オークさんをぶつけんぞ!
画面にはのじゃロリと観葉植物さんが頭に両手を置いて耳のようにしていた。ワーム君も出演していて、のじゃロリの肩に乗っている。
ゆっくりとコミカルな音楽が流れると二人は腰をフリフリして同じことを繰り返す。ワーム君は喫茶店にいた時と同じように頭を上下に振ってビートを刻む。
音楽が流れ終わると、二人は腰に両手を置いて「むふー」とご満足な笑みを浮かべ、ワーム君が「ぴーぴー!」と鳴いて終了した。
それだけだというのに、百万回も再生されていた。
コメント欄は『ほっこり』、『むふー』、『ぴーぴー!』で溢れかえっていた。
触手本も動画を……というか目ついてるのか?
ま、まぁいいや。それに感化されたように横でゴツイ腕を生やし耳? のようにふりふりしている。
うん
すっげぇ、不気味なんだが
視線を戻し。
次は【子犬なのじゃ!!】という動画を見る。
こちらももうすぐで百万再生、間近だった。
子犬姿の俺と戯れる、のじゃロリ。
ただ、それだけ……それだけなんだが……
コメント欄はそれはもう、荒れに荒れまくっていた。
[なんでこいつがいんだよ!!]
[ふざけんな!]
[画面を殴っちまっただろ!]
[のじゃさんだけ映してろ!!]
[最初のやつだけいなければ最高]
[消えろ消えろ消えろ消えろ]
動画を再生するとまず最初にオークさんがドアップに映る。
「みなさんが大好きなエルフのルークなのです! 今日はですね……」
と、長々と動画の半分以上をオークさん新しい語尾でひたすら自画自賛しながら、頑なにのじゃロリを映さず自分の顔を見せる。
そうして、そこを乗り越えた一部の猛者だけがサムネにあるのじゃロリを見れるという。
もはや、詐欺かな? と言えるような内容だった。
ん?
さっきまでるんるんで見ていた観葉植物さんとワーム君が隅にいた。
チラッと見ると観葉植物さんは不機嫌なご様子で地面をツンツンして、ワーム君が左右にビートを刻んでいた。
ワーム君はビートを刻むやつ気に入ってんの?
呆れながら顔を戻すと、動画が終わり三つ目に入っていた。
【迷惑系なのじゃ!!】
名前の通り住宅街でピンポンダッシュをするという動画。
のじゃロリがピンポンをして逃げるんだが、毎回転んでベソをかいているところへ外へ出てきた住人がお菓子を与えシクシクしながら食べる。
ご満悦になると再びピンポンをしては何度も同じことを繰り返す、それだけ。
最後に友情出演で観葉植物さんとワーム君が登場。
のじゃロリと違いピンポンダッシュが上手く、住宅街から怒声が響き渡っているのは……き、気のせいだ。
自分がまた映ったことに満足げになり、腕を組む観葉植物さんと頭を上下に振ってビートを刻むワーム君。
オークさんがいないだけでコメント欄は穏やかだった。
ただ、いつのまにかオークさんがのじゃロリのスタンプを作っていたらしく、みんなそのスタンプを貼り付けている。
[スタンプ:ほっこり]
[スタンプ:ほっこり]
[スタンプ:ほっこり]
[スタンプ:ほっこり]
[スタンプ:ほっこり]
[やっぱあいつがいないと最高だぜ!!]
疑問に思ってスタンプの価格を見たら一つしかないのに一万という強気の値段だった。
す、すごいね
三つの動画を見終え。
のじゃロリが足を組みながら分厚い札束を数えていた。
「ひーふーみ。ふん、きちんとあるようだな」
「ふふ。最初に言った通りだよ、謝礼はきちんと半分に分けるってさ」
「悪魔の書」
オークさんを無視してのじゃロリが札束を後ろに放り投げると、触手本が触手を伸ばして本の中に仕舞い込んだ。
「それで次は?」
「後二つほど考えているけど、とりあえずこれかな?」
なにやら台本が書かれた紙をのじゃロリに渡した。
チラッと覗くと題名はまだ仮で、とりあえず【いたずらなのじゃ!!】という名前にするらしい。
内容は人通りが多いところで知らない人の足をポンポン叩いて知らんプリをする。
俺の出番は今回もなかった。
べ、別に悔しくないもんね!!
涙目になりながら、人通りが多いところみんなで向かう。
到着して二人は配置につく。
俺は他の仲間たちと遠巻きから見ていると足元からシュルシュルといくつものツルが絡んできた。
ひぃぃ! やめて!
私に乱暴しないで!
てっきり食われると思って身構えたら、観葉植物さんに抱えられた。
い、いたたた!
もっと普通に抱えて!
観葉植物さんはのじゃロリを真似しているんだろうが、力強くて痛い。キャンキャン言うと力が弱まった。
はぁ……ため息をこぼして主演ののじゃロリと撮影係のオークさんに向ける。
多くの人が動画を視聴していたようで、のじゃロリはすでに有名人だった。
数人のミーハーっぽい人が近寄るが……近くにいる生身のオークさんの迫力に圧倒されそそくさと逃げていく。
のじゃロリは気にせず歩いている人に近づき、足を叩く。叩かれた人は一瞬微笑ましい顔になるがオークさんを見て血相変えて走って逃げていく。
うーん
今回は失敗だな
俺が考えていると同じようにオークさんも困った顔で頬をポリポリかいていた。
しかし、のじゃロリはわかっているのか、いないのか。めげることなくぽんぽん叩いては知らんぷりする。
みんなの反応が悪くのじゃロリもどんどんムスッとした表情になっていく。
そんなことを繰り返していき、俺が今晩何を食べようか考えていると……
「なんだガキ!!」
大声が響いた。声の元を見ると、柄の悪いチンピラが怒っていた。
えぇ、のじゃロリそんな人にもやったの?
度胸ありすぎじゃない?
やっといい反応が聞けて嬉しいのか、のじゃロリは「わー!」と言って両手を上げてオークさんの背に隠れる。
柄の悪いチンピラの威勢が止まることはなくオークさんへ詰め寄った。
「お? 何見てんだ! 豚! おるぁぁ!!」
ほう? なかなか度胸あるね
……ていうか、これ喧嘩になるよね。
逃げたいんだけど、離してくれない? 観葉植物さん
観葉植物さんを見ると、いつの間にかさっきのじゃロリが座っていた椅子を持ってきていた。
その上、どこから持ってきたのかサングラスをかけて足を組んで座る。頭の上にはワーム君が可愛らしく乗っていた。
監督? ……う、うん。意味がわからん
何を目指してるの? 君は
視線を戻すとチンピラがオークさんにメンチを切っていた。
はぁ……離してくれないし、暇潰しに実況でもするか
チンピラさんは顔をぐりぐり近づけてメンチ攻撃をしています!!
対してオークさんは……なんと! ただ微笑むだけです。ふぅむ、メンチ攻撃は全く食らっている様子もありませんね。
解説の観葉植物さんはどう見ますか?
ほうほう、チンピラさんはこのまま引き下がることはない、と? なるほどですね。
お! チンピラさんがオークさんの襟元を掴み上げました!
ですがオークさんは巨体なだけあり、微塵たりとも動きません!
チンピラさんは両手で掴みあげるが動かない! 動かないぞぉぉ!
どんどん顔が赤黒くなっていきます!
あ! チンピラさん諦めましたね、残念。
呼吸を整えようとゼーハーしています。
ほう? チンピラさんは次に実力行使に出ると?
おぉ!
解説の観葉植物さんの言う通り、チンピラさんは腕を構えた! ですが対峙するオークさん不動の構え。
そこへ視界外からのじゃロリ選手、チンピラさんの脛を蹴る! なんと狡いんでしょうか、さすがのじゃロリ、生意気だ!
いつか、わからせられそうですね!
チンピラさんいいフットワークでオークさんの顔を殴る! 殴る! めちゃくちゃ殴る!
だが、オークさんにダメージを与えらない様子! まるで山を相手にしているようだ!!
おや? オークさんが全く動かないことにチンピラさんが少し怯えているようです。
さぁて、ここからどうなるか、楽しみですねぇ。
な、な、なんと! チンピラさんポケットからナイフを取りました!
あ、危ないですね。
私たちも避難した方がよろしいのでは?
え? 大丈夫だと?
そ、そうですか。
現在愛くるしい子犬になった私は戦々恐々ですが、観葉植物さんが大丈夫だというなら信じましょう。
あ……オークさんが「申し訳ございませんでした。ですが子供がしたことなので大目に見ていただけないでしょうか?」と謝罪攻撃!
ふむ?
解説のワーム君には後半の言葉がどこか挑発めいていると感じたようですね。
ですがチンピラさん! すでにナイフを出した手前、引くに引けない!
おぉぉと! 不動のオークさんついに動いた!
なんと素手で抜き身のナイフを掴んだではありませんか!
これはすごいですね。普通なら肌を切り裂いて血塗れになると思いきや、メキメキと音だけが響いてくるではありませんか。
オークさんがゆっくり手を離すとナイフが飴細工のようにぐちゃぐちゃないか!
あ! チンピラさんは泡を食ったように逃げていきました!
さすがのチンピラさんでも怖くなるようですね。
パチパチパチ!!
おお! 周囲から拍手が送られているようですね。
拍手喝采、スタンディングオペレーション!!
以上、実況はこの私と解説の観葉植物さんとワーム君でした。
あれ?
何しにきたんだっけ