目を覚ましたら実験動物になってたんだけど・・・ 作:饅頭おとこ
ふぇぇ……このクッションとズボン最高やぁぁ……
まずクッション。
低反発でなおかつ上品なさわり心地で、とても高級感溢れている。
尻尾を置くと喜んでいるのがわかる。
次にズボン! 麻布で作られていて、チクチクと俺にダメージを負わせてくるが、今までの俺は裸だった原始人以下の生活だったので、これのおかげでレベルアップして下半身を隠すということができるようになった!
最後に、なんと綺麗な観葉植物が置いてあるじゃないですか!
これを見ていると、とても大自然に包み込まれ……
ってざけんな! 何度も一人でボケツッコミをやらせんな!
なんだこの小さいクッション! 人を馬鹿にするのも大概にしろ! 尻尾しか置けねぇぞ!
ズボンもズボンだ、いつの時代だよ! お前らが入ってきたときスーツとか白衣着てたの知ってるぞ! それをよこせよ!
なーにが高給取りだ! 小学生の風呂掃除レベルのお駄賃かよ!
ていうか部屋のインテリアを変えるのに、観葉植物だけ置けば良いと思ってんのか!!
場所移らせたくせに、ほとんど同じような部屋じゃねーか!
俺がクッションを尻尾でぽふぽふして怒っていると、いつものようにまた声が来た。
「おはよう、取り寄せたクッションとズボンは良い具合かい?
かなり特製でね、君のために特別に発注したんだ。
君が今見ている観葉植物もかなり特殊な植物でね。
特別に特殊チームを用意して、採取してきてもらったんだ。
もし何か改善点等あったらいつでも言ってね。
すぐに変更しよう」
お、おう。またマシンガントークですか?
ってちがーう! なーにが取り寄せだ! 人を馬鹿にしやがって……
が、俺がぷりぷり怒っても、尻尾はクッションをとても気に入っているようでパタパタ動く。
俺は尻尾のためにも、クッションを奪われないようにぐっと堪え唸った。
「そんなに高ぶらなくとも次の戦闘相手は今準備しているよ。少し時間が空いてしまったが、そろそろ到着するから喜んでくれ。今回も前回同様、素晴らしい戦闘データが手に入れば、好きな物を与えよう」
ざけんな! いつ俺が戦いたいって言ったよ!
どうせまた悪魔みたいなやつだろ?
今度こそそのボインのボインボインをボインしてやるからな……
そう息巻いているとドアが開いた。
開いたドアの奥に机があり、その上にアクセサリーらしき物が置いてある。
誰かの忘れものかな?
近づいて見るとそれは俺が以前壁にぶん投げた羊のツノだった。
紐が通されているし誰かの忘れ物ですよね。わ、私、別に倒した相手の一部つける蛮族じゃないんですが(震え声)
しかもなんか以前より禍々しく黒く変色してますよ。
無視して通ろうとすると、ボインさんがねちっこく言ってくる。
「それは君が初めての戦闘で倒した混合獣の角だよ。君の力と呼応したのか、変異してしまい私たちが取り扱うのにも困っていてね。よかったら付けてくれ」
よかったらって言ってますが、それよくある上司が言う強制ってやつですよね、知ってます。
しぶしぶ首にかけた。
なんかツノが震えたんですが、呪われてませんか?
若干、及び腰になりながら呪いの装備とともにドアを潜る。
相変わらず長い通路を通っていると、また前と同じくアルコールが噴出される気配が出たので後ろにバックステップしてドヤ顔をする。
だが飛んだ場所の上から、ぬめぬめした液体をぶっかけられました。
俺じゃなくてボインさんにかけてください(切実)
涙目になりながら、ぬめぬめの液体を取りながら歩いていると通路の入り口を見つけ出る。
今度の場所はかなり広いところのようで、辺り一面木や花が植えられている屋外のような見た目の場所だった。
どうして俺の部屋は観葉植物だけで、ここはこんなに自然いっぱいなんでしょうか……これを俺の部屋にしてくれませんかねぇ。
プリプリしながら進むとゴゴゴ! と地面が揺れ、足下がもごもごと動く。
あからさまに何かが飛び出してきそうだったのでジャンプして木の上に飛び乗る。
さっきいた場所を見ると、そこからワームみたいな気持ち悪いやつが口を十字に広げて飛びでてきた。
キィェェエエ! 気持ち悪い! なんだあれ!
そいつは俺が避けたことに怒ったようで
『KYAAAAAAAAAAA!!!』
周波数が高い、金切り声を上げる。
それに呼応したように呪いの装備のツノも震えてた。
ひぇぇ気持ち悪いよぉ……
とりあえずぷるぷろ震えてるツノが気持ち悪いので、ワームの頭にぶん投げる。
グチュッッ!!
綺麗にワームの頭部に当たり、そのままめり込んでいった。
う、うん……ヨシッ!
一人ガッツポーズしていると、ワームは痛さからか地面で暴れ回る。
そりゃあ痛いわな、あっ、進化するのかな?
馬鹿なこと考えていると、ワームはどんどん変色し始め紫色と黒色のツーカラーになり、めり込んだどころから先ほどの黒いツノが生えた。
えぇ……どういうこと?
気持ち悪すぎない?
気持ち悪い生物が口をパカッと開いて、俺の方向に口を向け
「キュイキュイ!!」
え、可愛いくない。
絶句していると、ワームは何もせずこちらをずっと見つめてくる。
え、なんですか?
……見つめあっても何もしてこないし、敵意も感じない。
アホらしくなった俺は木から飛び降りた。
ワームはゆっくり俺に近づいてくる。俺が何もしないとわかると、子犬みたいに頭部を擦り付けてきた。
うっ、感触が気持ち悪いです。
が、私は現代日本の心優しい人。害がない生物に対しては不殺生だ! ふ、不殺生だよ(涙声)
ワームも特に攻撃してこないし何も起こらないので周囲を散策する。ワームも雛のように俺の後ろをヨチヨチ付いてきた。
試しに近くにいた小動物を捕まえて、与えるとキュイキュイ!! と喜ぶ。
もしかしてワームはペットに最適……?
ラ・ラ・ラ~ラララ~
ワームを連れ、早朝犬の散歩をするおっさんの気分で鼻声で歌いながら歩いていると、アナウンスが聞こえた。
ボインさんじゃなくて、神経質っぽいおっさんの声だった。
なんでも南の方にドアを開いたから帰っていいという、なんでおっさんに命令されなきゃいけないんですかねぇ?
ていうか南ってどこだよ……
無視して適当にその辺にある木や花の種を集めていると、おっさんが懇願し始めた。
おっさんに懇願されても気持ち悪いのでドアのある方に指示してもらい、ワーム君と一緒にドアを潜る。
ー竜研究所:研究者ー
混合獣を一方的に殺戮した人狼と戦わせろと上から馬鹿げた指示が来た。
まぁ勝てるわけないだろうに。
多くの無知な研究者はワームをただミミズが大きく成長しただの、所詮は土がなければ生きていられないだというが、私はそれを聞くたびに罵倒したい。
やつらはわかっていない、ワームはミミズの同類ではなく竜の一種である。成長をすれば竜特有の顔になり鱗や羽毛を備え、強靭な生物となる。
竜と同様縄張り意識が高く、入ってきたものを無差別に殺し喰らい、猛毒や炎を吐く凶悪な生物だと。
小娘のお気に入りである、元人間ごときがワームに勝てると思っているのが笑えてくる。
今に見てろ、お前の人狼を無残に殺しお前の悔しい顔を眺めてやる!
そしてそいつがやってきた。報告書通りで確かに筋肉隆々で強そうではあるが所詮は二足歩行で元人間なんだろう。
仮にもワームは竜の一種だぞ? 英雄や勇者でもないゴミが勝てるわけない。
私は腕組みながら見物をする。
そうしていると、人狼がいきなり木の上に飛び乗り、そこからワームが飛び出してきた。
ワームがブレスを出そうと構えていると、突如人狼が何かを投擲をした。
ワームの頭部に当たり、そのままめり込んだ……
ハァ?
私は手に持っていたコップが傾き、コーヒーによって袖がびしょ濡れになるのも忘れそれを呆然として見ていた。
幼体だが竜だぞ……投擲ごときでめり込むはずが……
私を見た主任の小娘が苦笑をする。
ワームは痛みによって暴れ始めると、突如体が変色をしてツノが生えた。
竜研究部の所員、一同騒然とした。
「な、なんだあれは!」
「初めてみた種類だぞ!」
「あのワームはまだ幼体のはずだ、なぜ……」
「突然変異か?でも、今までそんな兆候なかったぞ!」
「人狼はいったい何を投げたんだ!!」
数分睨み合っていたかと思うと、人狼が突如木から飛び降りる。
ワームは先ほどまでの敵意がなくなり人狼に近づくと、まるで人狼を主人に決めたように頭を下げる。
「どうだい?あれが私たちが今もっとも注目をしている****によって変異した元人間だよ。あぁ、すまない今は個体名:人狼だったかね? あれは、とてもじゃないが私たちが今まで研究している生物のどれよりも、強く、恐ろしいよ。その上、智恵もあると来た」
小娘が何か言っているが、私はワームに釘付けだった。
ワームは竜の一種のだけあって、縄張り意識が異常に高く、例え番いになったワームや親兄弟ですら、殺し合う程の残虐性を持ち合わせているはずだ。
主従関係だと……? それとも先ほど人狼が投げた物がトリガーとなったのか?くそ、データが少なすぎる。
腹立たしいが、今まで避けていた小娘と連携して調べなければ……
私は更なる未知への興奮と小娘に対しての嫌悪感が混ざりあった感情からなぜか笑顔が浮ぶ。