目を覚ましたら実験動物になってたんだけど・・・ 作:饅頭おとこ
キュイキュイ!!
ワーム君と遊んでるなう。
あれ? なうって死語だっけ……
どうでもいいことに頭を悩ませていると、ワーム君がこちらをつぶらな目で見てきた。
先ほど拾ってきた枝を投げてやると、ワーム君がキュイキュイ鳴きながら取りに行く。
その場で木の枝と遊ばず、ちゃんと持ってこられたら、頭を軽くなでて肉を与える。
お、俺の天職はブリーダーだった?
あの後ワーム君を連れ帰ると、だんだんと筋肉隆々の体から細身になり、羽毛が生えた。触ってみると、俺のモフモフの尻尾と同じ毛並みですごく気持ち良かったです。
きっと、ワームと鳥は親戚だったってことだね。
せ、世界の真理を知ってしまった(震え声)
俺がワーム君と戯れていると、いつものアナウンスが聞こえてくる。
「いいデータが取れたよ。そちらのワームとも良好関係だね。ワームを研究していた所員たちが、君の行動によって卒倒していたよ。やはり、君の力によって変異したツノが関係するのかい? もしよければ他にもいくつかツノなどを渡すから変異させてもらってもいいかね? もちろん、それによっては報酬も弾むさ」
な、なんだって?! 俺が投げたツノのせいだった?!
いやいや、そんなことはない。うん。俺にそんな力はありません。
ワーム君がボインさんの声を聞くと、よちよちと俺の傍へやってきて、羽毛を逆立て威嚇をする。
「ふむ、君を守ろうとしているのかな? 健気だね。君を主と決めているようだ。もし君がよければワーム君を研究させてくれないかい?」
却下だ却下!
フンッ!
俺はふて腐れたように顔を背けてると視界にチラチラと、なんか……黒い巨大な葉っぱが見える。
うーん?
ふぁ!?
俺は二度見どころではなく三度見してしまった。
な、なんじゃこりゃー!
誰だ!俺の可愛い観葉植物をこんなグロテスクにしたんだ!
部屋を出る前までは、緑色の葉っぱで健やかに茂っていたのに。も、もしかして俺が部屋出る直前に、食べ残った肉の塊を隠すように土にぶち込んだから……?
動揺しながら葉っぱを見ると黒く変色していて、しかも幹も俺の腕ほどの太さになっていた。
ていうかこれどうやって植木鉢に入ってるの?
よーく見ると植木鉢が割れており地面に根っこが貫通してました。
えぇ……肉の破片ごときで、ここまで変化しないでしょ……
そ、そうだ! きっとそうに違いない。
俺がいない間にお前らが変なドーピングを与えたせいだ!!
許さない!!
「植物の方も、君がいない間かなり成長していてね。何人かの所員は無断に部屋に入り動かそうとしたり調べようとしたんだが、襲われてしまってね。しかも重体と来た。困ったものだよ。しかもその植物の根も地下深くまで張っていてね、動かせないんだ。君の力でそれを小さく命令とかできないかい? さすがに研究所を壊されるとね……もし君が協力してくれれば追加で好きなものを与えるが」
えぇ……そんなこと言われましても。植物に「小さくなって(ニッコリ」と言ったら小さくなると思ってるんですかね。
俺のことを妖精だとでも思ってるの?
俺が禍々しい観葉植物を見ているとワーム君が嫉妬するようにキュイキュイ鳴く。
無視していたらワーム君は観葉植物に、怒りの突進をした。
キュイキュイー!!
ワーム君が観葉植物から伸びている蔦に捉えられて、緊縛された。
え、何この観葉植物。エロ植物に進化したの?
ていうか観葉植物ってそんな事できたっけ? 凄すぎない?
アホなことを考えているとワーム君が俺に助けを呼ぶように再度キュイキュイ鳴く。
うーん、なんか蔦の力どんどん強くなって縛り殺そうとしてるし、流石に愛着湧いてるワーム君を殺されるのはなぁ。
俺は観葉植物に近づき蔦を解こうとすると俺にまで蔦を伸ばしてきた。
ふぁっ?!
こいつ! 部屋の主人である俺まで食おうってか?!
ゆるさねぇ!
俺に取り付いた蔦を思いっきり掴み、引きちぎる。
ついでに緊縛されM嬢みたいになっていたワーム君も助けた。
そうして怒りのまま観葉植物が入っている植木鉢を持つ。だが予想以上に強く地面にくっついていて、頭の血管が千切れそうになった。
ぐがぁぁぁ!!
根性を出して持ち上げると根っこがブチブチとグロテスクな音を出しながらちぎれる。
そのままの勢いにまかせて壁に向けて投げ飛ばした。
ドンッ!!
植木鉢が壁に当たり粉々に割れ、観葉植物は剥き出しの状態で倒れた。
観葉植物眺めていると、根っこを足のように使ってゆっくりと立った。そして恐る恐るこちらへ近づいてきた。
……え、もしかしてお前も、そういう感じですか?
内心びびっていると、観葉植物は体内から木の実を俺に差し出す。
う、うん。
心底いらないんですが。
嫌そうな顔していると、ワーム君がキュイキュイ鳴くので木の実を取ってワーム君に放り投げる。ワーム君は美味しそうにパクパク食べ始めた。
君、本当なんでも美味しく食べるね……
観葉植物は自身を徐々に変態させて、俺とワーム君を足して2で割ったような姿形になった。
きっしょ……
なんで、こう俺の周りにはまともな生物がいないんですかね(震え声)
ー主任ー
彼が壁に投げつけ突き刺さったツノを壁越しに見たが恐ろしいほどの魔力が充満していた。壁から取り出す際に興味本位で
ああいう考えなしの馬鹿には付ける薬がないものだ。
魔力汚染の恐れがあったため、短時間ではあまり検査ができず、判明したことはごく僅か。
ツノは人狼である彼から距離が離れると次第に魔力が霧散していく。が、人狼以外の者が触れるとおぞましい魔力を吹き出し、触れた者を魔力汚染にさせる。
人狼に近づけば近づくほど魔力は濃くなり、持ち主である人狼の元へ戻ろうとする。実験のため解剖をしろと、騒ぎ立てる研究者もいたが却下した。
解剖でもして、もし破損したらどうするのかね? ツノが持ち主に帰りたいのであればそのまま返そうではないか。必ず何か変化があると、私は確信している。
ただツノを返すだけでは彼は無視するだろう。
何かを工夫して、身につけられるようにするのがいいかもしれないな。
上の者から彼の更なる戦闘データが欲しいということで、幼体のワームと戦わせろと命令が下る。
「混合獣の次にワーム?」
「人狼に巨大な餌でも与えるつもりか?」
「本当に戦闘になるのか?」
と所員が馬鹿げたことを言って私は頭が痛くなった。
こいつらは自身の専門か実験している生物以外には本当に興味がないんだな。私もとやかく言える立場はないが、ワームも一応竜だぞ?
人狼と幼体の竜が戦いでもしたら、研究所が壊れて……しまうな。
流石にそれはちょっと困るな。まだ研究したり足りないのに。
まぁ、私も所詮、いち研究者だ。
上の意向には素直に従うが、だからといって何も手伝ってはいけないとは言われていない。
私はふと保管庫にあるツノを見ると、小刻みに震えていた。その姿はまるで親鳥を待つ雛のように。
安心しろ、すぐにお前の持ち主に帰らせてやる……