無限転生 ~Summon Irregular~   作:とんこつラーメン

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          何かを殺す為じゃない。
          これは、全てを守る為の『勇気』だ。

                       獅子座のアイオリア








お仕事 お仕事

 部屋から出かけて数時間後。

 私は街角にある、とあるファミレスに足を運んでいた。

 これだけを聞けば、私が食事をしに来ていると思われるだろうが、実際には全く違う。

 今回、私がファミレスに来ているのは『とある人物』で会って話をする為だ。

 その人物は今、私の目の前で真昼間だというにも拘らず堂々とジョッキでビールを飲んでいた。ちくせう。

 因みに、私はその正面でチョコパフェを食べている。おいちい。

 

「ぷは~! 昼間から飲むビールは最高だぜ~!」

「あっそ。ヒゲに泡が付いてるよ」

「おっと。こいつは失敬」

 

 服の袖で乱暴に泡を拭っている髭を生やしたちょい悪親父風の男。

 普通に観察していれば、探せば割とどこにでもいそうな感じの男だが、何を隠そうこのオヤジこそが三大勢力の一角である『堕天使』達の総督をやっている『アザゼル』だ。

 皆も気軽に『アザゼルさん』と呼んであげよう。

 

「そっちは良いのかよアルカ。お前もビールは好きだろ」

「好きだよ。そりゃあ大好きですよ? 特に、仕事終わりに飲むビールはこの世の物とは思えない程に美味ですとも」

「はっはっはっ! 中々に分かってるじゃねぇか!」

 

 店の中で馬鹿みたいに笑うなっつーの。

 こんなんでも昔はかなり凄かったらしいが、俄かには信じられない。

 少なくとも、私から見たアザゼルは酒と女と研究が大好きなタダのオッサンだ。

 

「だけど、これから大事な大事なお仕事が待っているから、こんな所でアルコールを摂取する訳にはいかないのよ」

「仕事?」

「そ。とある大公さんから依頼されたはぐれ悪魔を討伐するってお仕事がね」

「あぁ~…そういや、そんなのがまた入り込んでたっけか。邪魔になりそうなら部下共に任せようとも思ったが、アルカなら大丈夫か。お前の仕事達成率は100%だからな」

「頑張ってますんで」

 

 私の仕事は信用が第一だからね。

 例え、それが表向きだけだったとしても。

 

「ついでに、どこかの誰かさんがヘマをして勝手に動いた馬鹿な堕天使達をどうにかするって仕事もあるけどね」

「ぶふっ!? ごほっ! ごほっ!」

 

 あらら。いきなり咳き込んじゃって、どうしたのかしらん?

 私、何か言っちゃいましたぁ?

 

「わ…悪かったよ…。こっちもよ、まさかあんな下っ端が勝手に動くとは思ってなかったんだ」

「本当は?」

「…研究が忙しくて全く知りませんでした」

「よろしい」

 

 下手な言い訳なんかするもんじゃないよ。

 何事も素直が一番。私が言えた義理じゃないけど。

 

「既に犠牲者も出てるから、相手がどれだけ雑魚でも看過は出来ないんだよね」

「だよな…。本当はこっちで片付けられれば一番なんだが、今は一番デリケートな時期でな…どんなに小さな案件でも下手には動けないんだよ…」

「それぐらいは知ってるわよ。伊達に調停者やってないんだから」

「ホント…お前さんにはマジで頭が上がらねぇよ。三大勢力で一番働いてるのってお前なんじゃねぇか?」

「かもしれないね。別に、仕事自体は嫌いじゃないから良いんだけど」

 

 少なくとも、冥界の実家(仮)にいるよりはずっとマシだし。

 こっちの方が居心地は数百倍良い。

 

「サーゼクスの義妹にしておくには勿体無いぐらいに有能な女だよ…。もしも、俺の方が早かったら、まず間違いなく義娘にしてたわ」

「その場合、徹底的にアンタの生活を管理してたかもしれないけどね。例えば、酒と煙草を止めさせて仕事に専念するようにするとか」

「前言撤回。やっぱ、お前みたいな娘はいらねぇ」

「それはなにより」

 

 私はそこまで嫌いじゃないけどね、アザゼルの事。

 そこまで堅苦しくしなくていいし、一緒にいて普通に楽しい。

 正直、こんな奴が私の本当のお父さんだったら…なんて考えたのも一度や二度じゃない。

 

「あぁ~…とっとと今日の仕事を終わらせて、部屋でお酒を飲みたいな~」

「お前も相当な酒豪だよなぁ……」

「ストレス発散には丁度いいんだよ。あと、純粋に美味しいから好き」

「なんつーか…良くも悪くもビジネスウーマンって感じだな」

「褒め言葉として受け取っておきましょう」

 

 あ…話しながらパクパクと食べてたら、もうパフェが無くなりかけている。

 むぅ…好きなものは減るのも速い。

 

「お酒がダメなら、こっちで我慢しますか」

「おいおい……」

 

 ポケットの中から小さな箱を取り出して、そこから煙草を一本だけ出して口に咥える。

 

「アザゼル。火」

「あいよ。ったく…この俺にんな事が出来るのはアルカぐらいだよ…」

「私にとって、アザゼルは総督じゃなくて普通のオッサンだし」

「ひでぇ……」

 

 なんて言いつつも笑ってるのはどこの誰だよ。

 渋々って感じでアザゼルは私の煙草に火を着けてくれた。

 

「ふぅ~…数少ない喫煙席を確保できたのは大きかったわね~」

「そういや、お前が喫煙者だって事はサーゼクスの奴は知ってるのか?」

「多分、知らないんじゃないかな。グレイフィア義姉さんは知ってそうだけど」

「もしも知ったら卒倒するかもしれねぇな……」

「まさか」

 

 あの人が卒倒? ないない。

 

(サーゼクスの奴も哀れだな…。お前達の『愛情』とやらはアルカには全く伝わってねぇみたいだぞ。コイツの境遇を考えれば無理も無いけどよ……)

 

 んあ? なんか同情されるような目で見られてるんですけど。

 私ってばマジで何かした?

 

「はぁ……」

「なんでそこで溜息?」

「別に。救われねぇなと思ってな……」

「は?」

 

 いきなり何言ってるの? 普通に意味不明なんですけど。

 結局、その後もアザゼルとはだらだらと話し続け、極秘会談という名の食事は終了した。

 勿論、アザゼルの全額奢りで。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 夜も遅くなり、人気もかなり少なくなった町外れにある廃工場付近。

 私はそこに一人で足を踏み入れていた。

 リアス達がやってくる前に、とっとと片付けておかなくては。

 大事な大事な時期御当主様の玉のお肌に傷でもつけてしまったら、それこそ私が義兄さんに殺されてしまう。

 

「はぁ……嫌な匂いがする。昔を思い出してしまうような匂いが」

 

 血の匂いは色んな意味で嗅ぎ慣れているけど、だからと言って好きという訳じゃない。

 好き嫌いで言えば大嫌いだ。

 

「ほいっとな」

 

 私がパチンと指を鳴らすと、魔力で極小サイズにして左耳にピアスとして付けていた白い杖が現れる。

 それをパシッと摑んでからクルクルと回し、コンクリートの地面に柄を付ける。

 

「はぐれ悪魔のバイザー…いるのは分かってるわよ。大人しく出てきなさい。あなたは既に包囲…はされてないか。私一人だけだし。刑事ドラマの見過ぎね」

 

 闇が支配する廃工場の中からは、どう足掻いても隠し暮れない程に濃密な野性味たっぷりの殺気が漂ってくる。

 恐らく、昼間の間はここで気配を消しつつ息を潜め、夜の自分の時間になった途端に本性を現しているのだろう。

 で、この廃工場の近くを通り過ぎようとする人間を捕まえてパクリ…ってか。

 

「この私にたった一人で向かってくるとは…単なる無謀な馬鹿か。それとも、己の実力に無駄な自信のある愚か者か。どちらでも構わんか」

 

 妙に迫力のある声と共に影の中から出現したのは、軽く五メートル以上はある半裸の女の化け物。

 下半身は四足歩行になっていて、蛇のような尻尾に、手にはなんか槍を持ってる。

 うん。典型的な合成獣(キメラ)ですね。分かります。

 

「どちらにしろ、私の餌となる結果には違いないのだからな!!」

 

 人間だった頃はかなりの美人さんだったんだろうが、今はもう見る影もないな。

 なんだか見ていて哀れになってきた。せめて、少しでも早く終わらせてやろう。

 

「死ね!! 小生意気な小娘風情が!!」

「あら。まだ私の事を『小娘』扱いしてくれるだなんて。地味に嬉しいかも」

 

 その長い腕を使って、私に向かって槍での刺突攻撃を仕掛けてくるが、私はそれをバックステップをしながら回避。

 

「やるではないか…では、これならどうだ!!」

 

 こっちが回避に専念していると、今度は尻尾の蛇が襲い掛かって来た。

 あれは明らかに毒蛇ですね。なんか『シャー』って言ってるし。

 

「うっさい」

「ブジャァァァァッ!?」

 

 なんか普通にムカついたので、杖で思い切り尻尾蛇をぶん殴った。

 あくまでも尻尾部分なので本体へのダメージは余り無いが、そこまで気にする事じゃないだろう。

 だって…『本番』はここからなんだから。

 

「あんまり時間を掛けたらご近所迷惑だし、あの子がやってくるかもしれないし。一気に決着を付けさせて貰うわね」

「なんだと…?」

 

 決着なんて言っても、ここでそこまで本気を出すつもりはないけどね。

 だって、もしも『本気』なんて出したら駒王町どころか日本が世界地図から無くなるかもしれないし。流石にそれだけは勘弁願いたい。

 

「契約者『アルカ・グレモリー』の名において、今こそその姿を我が前に示せ。出でよ!!」

 

 私の足元に召喚士特有の魔方陣が形成され、そこから魔力が放出される。

 そこから、私が契約した数多い召喚獣の一体が姿を現す。

 

「召喚獣『サボテンダー』!!」

 

 それは、私の膝ぐらいの大きさの可愛らしいサボテンの魔物。

 ちょっとマヌケな顔がチャームポイント。

 

「な…なんだそれは! ふざけているのかッ!?」

「全然ふざけてなんてないんですけど。サボテンダー…遠慮なくやっちゃって」

 

 私の言葉にサボテンダーは全く同じポーズのまま頷いて、バイザーと小さな体で対峙する。

 

「このような矮小な魔物で私を倒せると本気で思っているのかっ! 生意気な!! こいつも私が食ってやろう!!」

「それは無理でしょ。サボテンダー! 『針千本』!!」

 

 サボテンダーが僅かな砂煙をあげつつ廃工場の天井近くまで大きく跳び上がり、そこで何故か『ピカーン』と輝きを放つ。

 そして、全身をジタバタとさせながら体中の針をバイザーに飛ばした。

 

「無数の針が襲い掛かってくるだとっ!? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 あっという間にバイザーの体が針だらけに。

 幾ら可愛いからってサボテンダーを舐めちゃいけないんだよ。

 バイザーが苦しんでいる間にサボテンダーが着地した。

 

「ご苦労様。さて、次は……」

「ま…まだあるのか……!」

 

 勿論ですとも。んじゃ、お次はこの子かな。

 

「出でよ! 召喚獣『デブチョコボ』!!」

 

 真っ暗な天井から突然、真っ白なキモ可愛い大きく太ったチョコボが落下して来てバイザーをその質量で押し潰す。

 因みに、このデブチョコボ…他のデブチョコボ達を遥かに超えるメタボ体型で、バイザーの体ぐらいなら軽く押し潰せるぐらいの大きさはある。

 なのに、どこか愛嬌のある顔をしてるからたまらない。普通に好き。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? なんだこいつはぁぁぁぁぁっ!?」

「デブチョコボよ!」

「誰も名前なんぞ聞いておらんわ!」

 

 あらら。なんか普通にツッコまれてしまった。

 

「次でトドメと行きますか」

「もう何が出てきても驚かんぞ……うぐぐ……!」

 

 デブチョコボに乗り掛かられたままで言ってもシュールなだけよ。

 そんな訳で、最後も可愛い召喚獣で締めますか。

 

「召喚獣『トンベリ』!!」

 

 魔方陣の中からゆっくりと出てきたのは、フード付きのローブを着た緑色の肌に黄色いつぶらな瞳を持つ可愛らしい魔物。

 右手には包丁も持ち、左手にはランプを持っている。

 

「それじゃ、よろしくね」

「うん!」

 

 なんと、このトンベリちゃん…お話が出来るのです。

 ニッコリ笑顔で可愛らしく頷くと、バイザーに向かってチョコチョコと歩いて近寄っていく。

 

「や…やめろ…来るな…来るな!!」

 

 どれだけ叫んでも、体の上にデブチョコボがいるお蔭で一歩も動けないバイザー。

 この光景だけを見ればシュールとしか言いようがない。

 

「私の傍に近寄るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 あれ? なんかどこかで聞いたことがあるな、この台詞。

 私がずっと前に、どこかの世界に転生した時に『パッショーネ』って組織にいた時に聞いたような気が……。

 

「えい」

 

 ぷす。

 そんな音と共にトンベリの包丁がバイザーの体に突き刺さる。

 確かに包丁が刺されば痛いかもしれないが、あの巨体に包丁では意味が無いようにも思える。

 だが、この包丁は見た目通りの威力じゃないのよね。

 

「どうして、こんな包丁ごときでこれ程の痛みがあるんだぁぁぁぁぁっ!?」

「トンベリちゃんが可愛いからじゃない?」

 

 それ以外の理由なんてないでしょ。いやマジで。

 

「おのれ…こんな連中にここまでやられるとは…!」

 

 まだまだ可愛い召喚獣は沢山いるんだけど、その子達を出すまでも無くズタボロになっているバイザー。

 ま、その気になれば一発で消滅させられる召喚獣とかもいるんだけどね。

 どこぞの竜王とか。もしくは超巨大な海蛇さんとか。他にも色々。

 

「降参する? もう骨とかバッキバキでしょ」

「……殺せ」

「殺せと来ましたか……」

 

 ここで殺すのは簡単だけど、それだけじゃなんか面白くない。

 …………そうだ。良い事を思い付いた。

 

「ねぇ…バイザー。一つ提案があるんだけど」

「なんだ……」

「私と契約をして召喚獣にならない?」

「召喚獣…だと…?」

「そ。調停者である私と契約をすれば、少なくともこれ以上は誰かに命を狙われる事は無くなる。私と契約をした召喚獣は、三大勢力間でも物凄く特殊な立場になるから」

「もしも断れば…?」

「別に何もしないよ? ただ、もうすぐ来るであろう私の義妹に殺される可能性は高いけど」

「選択肢など、最初からあってないようなものではないか……」

「失敬な。それだと、まるで私が脅迫をしたみたいじゃないのよ」

「実際にしてるだろ……」

 

 え? そんな風に聞こえてたの? 普通にショック。

 

「私はバイザーの力を利用して、バイザーは私の立場を利用して自分の身を守る。これって十分にウィンウィンな関係じゃない?」

「言ってろ……。それよりも、とっととその『契約』とやらを済ませろ」

「はいはい」

 

 親指をちょっとだけかじってから血を出し、血文字でバイザーの額に契約の紋章を書き記す。

 すると、紋章は溶けるようにして消え、同時にバイザーの体が光り輝く。

 

「これは……」

「契約が完了した証の光だよ。この契約は無理矢理には出来なくてね、互いの了承があって初めて可能になるの」

 

 これが『悪魔の駒』とは違うところだね。あれはなんか好きになれない。

 必要悪だと理解はしているけどね。

 

「その証拠に…ほら」

「なんと…!」

 

 バイザーの体から体に中に入っていた『悪魔の駒』が摘出され、空中にて粉々に砕け散った。

 

「これで、あなたは悪魔から召喚獣へと昇華された。中には悪魔のまま召喚獣になった変わり者もいるけど」

 

 それらもいつから召喚する日が来るだろうね。多分だけど。

 

「基本的に私が契約した召喚獣たちは各々に元の場所で待機して貰っているんだけど、バイザーの場合は『使い魔の森』にいた方がいいだろうね」

「使い魔の森…聞いたことがある。私はそこにいればいいのだな?」

「うん。今からそこへと私が転移させるよ」

 

 いつの間にかバイザーの体からどいているデブチョコボに付いては気にせず、私は彼女の足元に転移の魔方陣を展開させる。

 

「あなたの力が必要になったら遠慮なく呼ばせて貰うから。その時はよろしくね」

「了解した。どこまでやれるから分からんが…任せておけ。我が契約者よ」

 

 最後に良い笑顔を浮かべながら、バイザーは使い魔の森へと転移して行った。

 

「皆もありがとね。ご苦労様」

 

 仕事が終わったので、サボテンダーとデブチョコボとトンベリを元いた場所へと戻す。

 いつか、あの子達の事も労ってあげないとね。

 

「はぐれ悪魔バイザー!! グレモリー公爵の名において、あなたを成敗する…って、あれ?」

「やれやれ…やっとご到着なのね。流石は次期当主様。重役出勤ですこと」

 

 ポカンとした顔で私を見つめる義妹。

 その周りには彼女の眷属の子達が集まっていた。

 で、あの始めて見る子が義兄さんが言ってた新人君ね。

 

「ア…アルカお義姉さまぁっ!?」

「やっほー。久し振りねリアス。元気そうでなにより」

 

 なんだか変な空気のまま、私は久し振りに義妹と再会するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




      例えどんな相手でも、目的の為ならば殺す事が出来る。
      それが、俺の強さの根源なんだ。


                          蟹座のデスマスク




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