無限転生 ~Summon Irregular~ 作:とんこつラーメン
まだ眩暈とかはしてるんですけどね。
丁度、一仕事終えた直後にやって来た可愛い私の義妹(笑)であるリアス。
案の定といいますか、なんでこんな場所に私がいるんだ的な顔をしてポカーンとなっていた。
「な…なんでここにアルカお姉様がいるのっ!?」
…まんま言いやがった。少しは工夫しなさいな。
「そんなの、仕事だからに決まってるじゃないの」
「仕事…? それってまさか……」
「そ。私がバイザーをなんとかしたわ」
「なんでっ!? あれは私達が大公から依頼されたことで……」
「確かにそうね。表向きは」
「表向き…?」
この場に見慣れない新人君がいる時点で、義兄さんの予想は大当たりだったと見るべきだろう。
下手な言い回しをしても無駄にプライドが高くて物分かりが悪いリアスには理解出来ないだろうから、ここはバッサリとストレートに言ってあげた方がいいだろう。
「リアス。そこのツンツン頭の男の子が、新しく入ったっていう眷属?」
「そ…そうよ。イッセー」
「え? あ…あの…部長。あの人は誰なんスか? 妙に親しげっつーか、なんつーか……」
イッセーと呼ばれた子が戸惑いながらも私の事を見ている。
彼の立場からすれば当然の反応と言えるだろう。
「あの方は、リアスのお姉さんであり三大勢力間の調停役を務めていらっしゃる『アルカ・グレモリー』様ですわ」
「ぶ…部長のお姉さんッ!? 言われてみれば、髪の色とか同じだ……」
リアスや私よりも先に、『女王』である朱乃ちゃんが説明をしてくれた。
こう言ったフォローをしてくれるのは普通に有り難いけど、彼女も彼女で色々と問題ありな子なのよね…。
「ま、そーゆーこと。私がリアスの義姉のアルカです。今後ともよろしく」
「ど…ども…兵藤一誠です」
「イッセーは『兵士』の駒なのよ」
「ふーん」
この子が『兵士』ねぇ…。
確かに、リアスの眷属の中で空席になっていたのは『兵士』だけだったけど。
(この人が部長のお姉さまか…。胸の大きさは部長よりも小さいけど、すっげースレンダー美人だ……。しかも、あの超ミニなスカート…あれ確実に中が見えちまうだろ! めっちゃ美脚だし……流石は部長のお姉さまだぜ……)
…すんごい鼻の下を伸ばしながら私の全身を舐めまわすように見てるんですけど。
いや…職業柄、こういった視線には慣れてるけどさ……。
中には見る以上のセクハラをしてくる連中も割といたし。
「イッセー。幾らあなたでも、お姉さまを変な目で見るのは許さないわよ?」
「み…見てないッスよっ!?」
いや、超見てたでしょ。ここにいる全員が証人だよ。
「そ…それよりも、どうしてお姉さまが先回りしてここにいるのかを聞いてないわ」
「あぁ~…それね。リアスさ…大公から依頼された仕事をするついでに、その新人君に色々とレクチャーするつもりだったでしょ?」
「うぐ……そうだった…けど…それがどうかしたのかしら? というか、どうしてそれを知ってるのよ…」
「義兄さんが『もしかしたら』的なことを言ってたから。そう簡単に、あの人や私の目を誤魔化せるとは思わない事ね」
「お兄様が……」
仮に義兄さんが何か言わなくても、私の方で勝手に言ってたけどね。
リアスの考えって凄く読みやすいから。
「別に新人君に何も教えるなとは言わないけど、よりにもよっていきなり実戦に連れてきてからのレクチャーは有り得ないわよ? 何事にも段階ってものがあって、まずは座学で色々と教えて、その後に映像資料を見せて、その後に下級のはぐれ悪魔とかを宛がって実勢経験させるのがベターってもんでしょ? リアスだって、その手の資料が冥界で普通に売られてる事は知ってるわよね?」
「え…えぇ……」
「なのに、よりにもよって上級のはぐれ悪魔討伐に付き合わせるってどうなのよ? 貴女の事だから、まずは見学だけをさせて的なことを考えてたのかもしれないけど、場合によっては見るだけでトラウマになる子だっているのよ? その辺、ちゃんと分かってる?」
「は…はい……」
さっきかで堂々としていたのに、あっという間に借りてきた猫のように大人しくなる。
昔からリアスは、誰かの説教を受けるとこんな風になる。
「部長が説教されてる……」
「昔から、部長はアルカさんにだけは頭が上がらないからね」
「皆のお姉さん的存在ですからね、アルカさんは」
『騎士』である木場君と『戦車』である小猫ちゃんがなんか言ってる。
この子達は割とまともな部類だと思うけど、それでも決して問題が無いわけじゃない。
…今思えば、リアスの眷属の子達って全員が脛に傷がある子達ばかりよね。
私も人の事は言えないけどさ。
「一応、今回はリアスが討伐したって事になるから。そこだけは安心しなさい」
「な…なんでそうなるのよっ!?」
「リアスの将来の為だから。大丈夫、義兄さんの計らいで報酬だけは私の口座に入るようになってるの。つまり、手柄はリアスが、報酬は私が貰うって訳。別に私は功績になんて興味はないし別にこれで構わないんだけどね」
「そんなのおかしいわよ……。お姉さまは本当に凄くて立派な方なのに…これじゃあ、いつまでたっても正しく評価されないじゃない……」
「評価なんてどうでもいいの。与えられた仕事がちゃんと出来るか。大事なのはそれだけよ」
「お姉さまはいつも、そうやって大人の理屈ばかり……」
「だって大人だもん」
それが世の中ってもんなのよ。
いずれリアスにも分かるようになる日がきっと来るでしょ。
ほんと…体ばかり大きくなって、中身は昔のまんまなんだから。
「それと、この町に堕天使達が隠れ潜んでるでしょ」
「そうだけど…まさか…っ!?」
「そのまさかよ。これは私じゃなくて義兄さんが決めた事なんだけど、あれの討伐は調停者である私に一任されたわ」
「で…でも! この町の管理者は私なのよっ!?」
「…犠牲者が出て初めて侵入者に気付いたのに?」
「うっ……」
そこで言葉に詰まってる時点でダメダメなのよ。
「リアスはまだ管理者としての経験が足りていない。だから、今は目の前の事にだけ集中しなさい。露払いは私がしてあげるから」
「…それで、その功績も私の物になる…?」
「そゆこと。いいじゃない。楽して評価が上がるならそれで」
「イヤよ…そんなの…。まるで、お姉さまを利用してるみたいで……」
「利用していいの。どうせ、将来的には絶対にそうなるんだから。リアスがグレモリー家の当主になった時、私の事を顎で使わないといけないのよ?」
「そんなの間違ってるわ! 次の当主になるべきは間違いなくお姉さまで…」
「リアス」
ちょっと危ない事を言いそうになってるでの、ここは心を鬼にして強めに言う。
「知ってるでしょ。私がどんな立場なのか。どうして『調停者』なんて仕事をしているのか」
「それは……」
「私の事なんて考える必要はないの。リアスは自分の事だけを考えていればいいの」
「…………」
あらら…なんか黙りこくってしまった。
少し悪い事をしてしまったかもしれない。
けど、これはこの子の為でもあるのだ。
私のような『部外者』のことなんて気に掛けていたら、それこリアスの将来に支障が出てしまう。
そこら辺は義兄さんも分かっている筈なんだけどね……。
「ま、どっちみち侵入者である堕天使達は私が討伐しないといけなかったんだけどね」
「どういうこと…?」
「今日の昼、堕天使総督であるアザゼルから正式に依頼があったの。組織の意志を無視して暴走した者達を極秘裏に排除して欲しい…ってね」
「無視して暴走? もしかして、あの堕天使達は……」
「そ。完全な独断で動いてる。ここで奴等をやっちゃっても問題無し。それどころか、このまま放置しておけば色んな意味でヤバい事になりかねない」
ここでは詳しい事は話せないけどね。
『色んな意味』の概要を知ってるのは、三大勢力のトップ連中を除けば調停者である私だけだし。
「いい機会だからよく覚えておきなさい。何事にも『優先順位』ってものがある事をね。今回の場合、はぐれ悪魔よりも侵入している堕天使の討伐が何よりも優先されるのよ。それこそ、侵入が発覚したその日に討伐しなくちゃいけない程に。なのに、まだ討伐されていない上にリアスはこうして今ここにいる」
「私は……」
「本当は、義兄さんから『もう少し様子を見て』なんて言われていたけど、あんまり悠長なことは言ってられないし、私も今出来る事を先延ばしにするのは嫌な質だから」
通り過ぎながらリアスの頭をポンポンとしてから、後ろ向きに手を振って廃工場を出ようとする。
「ど…どこに行くのっ!?」
「そんなの決まってるじゃない。妹の管理している町に無断で侵入してきた無粋な連中をぶっ飛ばしに行くのよ」
「わ…私達も一緒に…!」
「いらないわ。あんな奴らなんて私一人で十分。それとも、リアスは私の実力を信用できない?」
「…その言い方は卑怯よ」
「大人ってのは往々にして卑怯なもんなのよ」
いい事だけじゃなく、悪い事も覚えるのが『大人になる』って事だからね。
リアスにはまだ早いかもだけど。
「そうだリアス。私の好きな言葉を送ってあげるわ」
「好きな言葉…?」
「『今日を頑張った者にのみ明日は来る』。立派な管理者になりたいのなら、余計なことなんか無視して、今の自分に出来る事…やらなければいけない事だけに集中しなさい」
…姉らしいことをしつつヘイトを稼ぐって楽じゃないわね。
私なんて嫌われてナンボだし、気にしてはないんだけど。
「それじゃ、あんまり遅くならないうちに早く帰るのよ。夜更しは女の大敵だからね。おやすみ~」
咄嗟に自分で言いだしてしまった事だけど、こればかりは仕方がないか。
さぁ~て、今から残業に向かいますかね。
幸いなことに、堕天使達の居場所は漏れ捲りな気配を辿って行けばすぐに分かるし。
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アルカが去って行った後も、リアスはずっとその場に立ち尽くしていた。
彼女から説教を受けた事がショックなのではなく、誰よりも尊敬している姉に負担ばかりを掛けている自分の情けなさに落ち込んでいるのだ。
「な…なぁ…木場。部長のお姉さんって……」
「うん…僕も詳しい事は良く知らないんだけど、あの人はグレモリー家でも非常に特殊な立場にいる方らしいんだ。余り実家にも立ち寄らず、仕事ばかりをしているって聞いてるよ。実際、僕もあの人に会ったのは今回を含めても数回しかない。けど、それでも分かってる事もあるんだ」
「なんだよそれ?」
「アルカさんは、リアスの事を誰よりも大事に思っているって事ですわ」
「朱乃さん?」
男二人の会話に朱乃が入り込んで補足をした。
彼女もまたアルカに関してそこまで詳しいわけではないが、だからこそ言えることがあった。
「リアスの事を大切に想い、その将来を心配しているからこそ、時には厳しい事を言ったりもするし、自ら汚れ役や嫌われ役をやったりもする。先程も仰っていましたけど、アルカさんはご自分の評価や評判なんて全く気にせずに仕事ばかりをやっているような方ですから」
「凄い人…なんスね……」
ただ美人という訳じゃなく、家族思いの優しい女性だった。
例え自分が嫌われるとしても、それで妹が立派に成長できれば、それだけで満足できる。
それが、アルカなりのリアスへの『愛情表現』だった。
「…皆、帰りましょう」
「いいんですか?」
「えぇ…お姉さまがやると言い出した以上、下手な手出しは無用よ。逆に足手纏いになってしまうわ」
「部長のお姉さんって、そんなに強いんスか?」
「強いわ。少なくとも、私達全員が纏めて掛かっても掠り傷一つも付けられない程に」
「マジっすかっ!?」
まだ転生悪魔成り立ての一誠からすると、ここにいるメンバーも十分過ぎるほどに強いのだが、それでも勝てない程の強さなんて想像も出来ない。
「アルカお姉さまは『召喚士』なの」
「しょーかんし? それってよくRPGとかに出てくる、あの…?」
「そうよ。数多くの魔物などと契約を交わして召喚をする職業。その全てを把握している訳じゃないけど、噂ではお姉さまは想像を絶するような存在や精霊達とも契約を交わしていると聞いたことがあるわ」
「マジかよ……」
開いた口が塞がらない。
流石はリアスの姉というべきなのか。
「だから…今日は大人しく帰りましょう。恐らく、お姉さまから事後報告があると思うから」
「そうですわね。私も、アルカさんが負ける姿なんて想像が出来ませんから」
最後は朱乃が締め、今回は何もすることなく解散となった。
何とも言えない重苦しい空気が頼ってはいたが、帰る途中で色々な話をしている間に徐々に緩和されていった。
話の内容は主にリアスがするアルカの武勇伝や自慢話だったが。
次回はアルカ無双。
そして、本格的な召喚獣たちが登場予定。