続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。   作:マスターチュロス

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1年ぶり




序章:『終わりの始まり』
プロローグ①


 

 

あの事件の直後、僕、緑谷出久はベットの上で目覚めた。酷い夢を見たせいか、全身が汗でびっしょりと濡れ、シーツにも跡が出来ていた。

あの日、自分は何かと戦っていて、それを誰かが助けてくれたのだが……。

 

「誰だっけ……?」

 

何も思い出せなかった。記憶が霞みがかっていて鮮明な映像すら思い浮かばない。もしかして本当にただの夢だったのだろうか。その割には、筋肉痛が酷すぎる。

 

突然、スマホが鳴り出した。

 

出久はスマホを手に取る。送信者不明のメールが一通、届いていた。件名には『緑谷出久へ』と書かれており、本文にはこう書かれていた。

 

『重要ナ要けンだ心してキけ。このメールはセん頭中に脳内でム理ヤりつ喰ったモノだから黄泉ヅラいがZeッたいに嫁。いいか? いマすぐ逃げろ。ニげても無駄鴨しレな胃が、とにかく逃げろ。いヤ血がウ、ヤツらから身を隠せ。サiaク痔殺し太ほうがマシ化模試レナイ。ヤツらはこの世界の常識を破壊する異常生命体。ヤツらの前では倫理も人権も存在しない。死んだ方がマシだと思うようなおぞましい行為を平気でするのがヤツらだ。おそらくヤツらは明日の午後4時27分にこの世界に侵入する。い伊か、Ze対にヤツらと戦うな。特に私と同じ姿をしたヤツには絶対に近づ苦な。緑髪とその信者もダメだ。吸血鬼もダメ。暴食もダメ。偶像もダメ。有頂天もダメ。とにかく自分の身を守れ。他ニンを少ウ夜優はナい。■■■■がもし生き残ってたら■■■■を探せばいいが、ダメならぁイツの家に行け。素個で家主に会ったら■■■■の友達ですって言え。祖死たラ匿ってくレるハ図だ。下にURL2つ葉っとく。1つは私の現在地、もうひとつはアイツの家だ。

 

最後に一言言わせてくれ。

 

結局私は何も守れなかった。

 

オールマイトは死んでしまったし、私自身もそろそろ限界が来ている。

 

だから君たちだけでも救われてほしい。

 

それが死にゆく私の最後の願い。

 

だからぁア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイ遺体偉大痛いイタイイタイイタイイタイ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬs』

 

「ヒッ?!」

 

メールの最後の文章の壮絶さに、出久は驚いてスマホを床に落としてしまった。

 

「何……このメール……ッ! いっ、意味が分からない! 悪戯にしても酷すぎるし、本当にわけがわからない!!」

 

「発信日が昨日の深夜、明日の午後4時27分は今日のこと、異常生命体、緑髪、吸血鬼……それにオールマイトが死んだ!? そんなの嘘に……」

 

「大変よ出久!! 今起きてる!?!」

 

ドタドタと階段を駆け上がり、勢いよくドアを開けたのは出久の母、緑谷引子だ。

 

「てっ、テレビ!! ニュース!! オールマイト!!」

 

余程焦っているのか片言でしか喋れていない。しかし、片言だろうと、聞きたかった(聞きたくなかった)ワードが出てきた瞬間、出久は階段をすぐさま駆け下り、放映中のテレビの前に立つ。

 

『先日、保須市○○にて、No.1ヒーロー"オールマイト"の遺体が発見されました。痛いは激しく損傷しており、現場周辺は大規模な戦闘の形跡が見られ、犯人は現在行方不明です。これほどまでの戦闘の形跡を残していながら、犯人の手がかりを掴めない例は初であり、捜査は難航しています。』

 

『そもそも、あの"オールマイト"が負けるなどありえない。彼は多くのヴィランを退治し、多くの国民の命を救ってきた正真正銘のヒーローですよ? そんなかれが、……彼が殺されるなんて……そんなわけが………』

 

『わっ、わたしっ………グスッ、おっ、オールマイトのファンで……、このニュース……、聞いて…ッ、わたし、うっ、………』

 

緑谷出久は、理解できなかった。

 

「嘘……絶対嘘だ。オールマイトが負けるわけが無いオールマイトが死ぬわけないオールマイトが僕を置いていくわけが無いオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイトオールマイト……」

 

膝が崩れ落ち、両手は自然と顔全体を優しく覆うように包み込み、身体を丸めてブツブツと大好きなヒーローの名を何度も呼び続けた。

 

緑谷出久は理解できなかった、ことにしたかった。

 

オールマイトは死んだ。そしてそのことを予言したあのメールは本物であると証明された。それ即ち、

 

今日の午後4時27分、常識を破壊する異常生命体がこの世界を侵略しにくることが決定

 

「いやそんなわけが無い。ありえない。オールマイトが死んだのもありえない。たまたまだ、たまたま悪質なメールとフェイクニュースがシンクロしただけだ。最近の嘘は本当にクソだ、タチが悪過ぎる。言っていいことと悪いことの区別もつけられないなんて人間失格も程々にしてほしい。今すぐこの嘘を吐いたやつの首を絞めて殺して炙って燃やして吐いて殴って二度と嘘をつけないよう粉々に…」

 

「出久……?」

 

母親の声でハッと、出久は正気を取り戻す。オールマイトについてはとにかく置いておこう。考えたくない。とにかく現状何か、正体不明の何かが発生していることは間違いない。この何かは調べるべきだ。でも何も分からない。

 

分かっていることと言えば…

 

「この、送信者不明のメールに記載された2つの位置情報、これが手がかりか?」

 

URLのうちの1つはメール送信者の現在地らしいが、その場所はちょうどニュースでもやっていたオールマイトの殺害現場(フェイク)と同じである。つまり送信者はあの現場周辺にいたということだ。もしかしたら犯人は送信者かもしれない。もしそうだったら殺す。

もうひとつのURLは頼るべき人? の家の位置情報らしいが、場所が完全に山の中だ。家なんてどこにも建っていない。やはりこのメール悪戯なのでは?

 

「後で調べるけど、問題は午後4時27分か。今日は5時まで学校があるから、………異常生命体が侵略してくるので休みます、なんて言えるわけが無いし……」

 

緑谷出久は常識人だ。そんな誰にも理解されない文言で言い訳できるほどの狂気さは持ち合わせていない。

出久は朝飯を素早く喉に押し込み、テキパキと支度を済ませた。

 

「行ってきます。」

 

緑谷出久はそう言うと、ゆっくりと玄関のドアを開く。

 

「気をつけて行ってらっしゃい!」

 

母の声に安心すると、出久は静かにドアを閉じた。

 

 

 

 

そしてもう二度と、家に帰れないことを、彼は後々悟ることとなる。

 

 

 

 

 

 

学校はいつも通り進行した。普通に授業もしたし、普通に友達とも喋った。違っていたのは担任の相澤先生がいないことと、クラスの雰囲気だ。それはそうだ、オールマイトが死んだというニュースが今朝流れたのだ。ヒーローの中でもとびきり有名で人気のあるヒーロー、平和の象徴、そんな人物が死んだなど、これほど話題性のある話はそうそうない。きっとクラス中、学校中がこの話題で持ち切りになるのだろうと、そう思っていた。

 

誰もオールマイトについて一切触れなかった。

 

誰もあの事件について話す人はいなかった。

 

いや、違う。誰も話したがらなかったのだ。それほどまでにオールマイトという存在は大きく、みんなの心の支えだったのだ。

 

しかし、彼は違った。

 

「緑谷、ちょっといいか?」

 

「轟くん…? どうしたの?」

 

1年A組最強格、轟焦凍が声をかけてきた。

 

「………ここじゃ聞きづらい、外で話してもいいか?」

 

「言いけど……」

 

ちょうど昼食を済ませた後だったので、出久は轟の後を追うように雄英高校のグラウンド近くに出た。

 

「……かっちゃん…?!」

 

「やっと来たかクソデク。遅せぇんだよ」

 

そこには幼なじみかつ1年A組最強格の爆豪勝己の姿もあった。

 

「みんな、どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたも、アイツはどこにいるんだ?」

 

「さっさと■■■■の居場所を吐け、でなきゃ殺す」

 

「? 何て?」

 

肝心な部分が変にぼやかされ、誰の居場所のことを聞かれているのか分からない。自分の耳が遠いというより、意図的にその単語だけ認識出来ないという方が近い。まるで知らない英単語に出くわしたかのような、そんな感覚に出久は包まれていた。

 

「チッ、テメェもか………。」

 

普段の態度からは想像もつかないほどの落ち込み様に、出久は驚きを隠せない。

 

「…………黒白、金髪、顔が黒い、やたら強い、意外と思いやりがある……」

 

「おい半分野郎、何言ってやがる」

 

「………いや、特徴を1つずつ言っていけば思い出すかと。」

 

古典的な作戦で失われた記憶を取り戻そうとする轟焦凍。しかし今回のケースは記憶ではなく認識の方であるため、あまり効果はない。

 

「……、そんなんで思い出せるわけがッ」

 

「師匠だ!!」

 

思い出した。

 

「……ッ、マジかよ」

 

想定外の事が起き、流石の爆豪も素の反応をせざるを得ない。

爆豪は出久に会う直前まで、多くの人に師匠、すなわち結依魔理沙の所在について聞き回っていた。教師、クラスメイト、B組、ヒーロー科以外の生徒にも何人か聞いたが、誰も彼女の居場所を知らないどころか、彼女の存在すら忘れていた。雄英体育祭を優勝した彼女がみんなに忘れられるはずがなく、この現象は何者かの個性による影響で記憶を改竄されたのではないかと爆豪は疑っていた。が、何故か爆豪自身と轟焦凍だけが彼女の存在を忘れていないことが唯一の疑念であった。

そして彼女を思い出した出久を見て、爆豪勝己は再び思考する。存在を忘れない条件が仮に彼女との交流の深さだったとしたら、1番交流の深い緑谷出久が真っ先に思い出せなかったのがおかしい。個性が原因だとしても、3人の個性に共通点は無い。

結局、結論は出なかった。

 

「師匠! 昨日の夜! 保須市! 助けてくれた! 早く助けに行かないと!!」

 

「馬鹿か。あの騒動はとっくに終わってる、行っても無駄だ」

 

「じゃあ師匠はどこ!?」

 

「それが分かんねぇからテメェに聞いたんだろが!」

 

「……落ち着け2人とも、争っても意味ねぇって」

 

ヒートアップしかけた2人を轟が諌める。

 

「………チッ、おい出久、朝のニュース見たな?」

 

「……オールマイトが死んだって…」

 

保須市で殺害されたオールマイト、遺体は激しく損傷し、周囲は大規模な戦闘形跡が見られたという。

 

「………、オールマイトが死んだのは保須の北側、そんでアイツの最後の目撃情報も北だ。」

 

「アイツは絶対! オールマイトの死に関わってるはずなんだッ!!」

 

「……。」

 

爆豪勝己の怒号、彼の怒りの矛先は結依魔理沙に向かっている。どうしてオールマイトを見殺しにしたのか、どうして助けなかったのか、どうして出てこないのか、そもそも最強であるオールマイトが殺害されるほどの敵とは一体何なのか、全く分からない。

 

「おーい! 爆豪ー!」

 

「3人とも何してるのですか?」

 

「ウチらも混ぜて〜!」

 

遠くから呼びかけるのは切島鋭児郎、八百万百、麗日お茶子であった。

 

「………、教室に戻るか」

 

そういうと3人は静かに教室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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