続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。 作:マスターチュロス
トガヒミコ(渡我被身子)のスペック
・身体能力は高め
・個性は「変身」、血を吸った相手の姿になれる。吸った分だけ変身時間が延びる。
・血が好きで血まみれでボロボロの人も好き。
・ヴィラン連合所属
・ナイフと自前の注射器を複数所持している。
※今回、ヒロアカ原作にないオリ設定が死ぬほど出てきますのでご注意を。
「いひひ♡ アナタの血液、直接舐めちゃいました♡」
マリサの口内にこびり付いた血液を舐め取り、幸せそうな表情でマリサを見つめている。
「……これで俺に変身出来るってか?」
「はい♡ でもこの量だとすぐ切れちゃうので、もう少しだけ貰いますね♡」
トガは再び顔を近づけ、今度は喉元に突き刺さしたナイフから溢れ出る血を吸い始める。ジュルジュルと、一滴も残さず飲み干そうとする彼女の姿はまさに化け物と相違なく、マリサは反撃の機会が来るまでひたすらにやり過ごすしかない。
しかしその機会は予想よりも早く訪れた。
「…………?」
一瞬、トガヒミコの力が抜けたことを感じたマリサは即座にトガを頭突きで後退させ、その場から距離を取る。
首に突き刺さったナイフを引き抜き、トガヒミコの脳天に目掛けてナイフをぶん投げようと構えたのだが、トガヒミコが不規則に動くため狙いが定まらない。
いや、様子がおかしい。トガヒミコは自身の首と口を抑えながらのたうち回り、奇怪な動きを続けている。
「どうした?」
「がぁッ! ゲェッ! ぐごっ! グゴゴゴゴゴゴゴゴ!!」
「何ッ…………これ!! 頭がァ……ッ! 頭がオカシクなりますぅうぅうううッ!! 」
トガは突如しゃがんで塞ぎ込み、喉と口を膝で抑えつつ両手で頭を覆い、何かに震えるように閉じこもり始める。
「ワタシ……ッ! ボクゥッ! アナタ……オマエぇぇぇぇ!!! お前は誰だお前は誰だお前は誰だお前は誰だお前は誰だお前は誰だお前は誰だお前は誰だァァァ!!!!」
「誰も
全身が不自然に捻れ始め、両目から血という血を流し、目をギラつかせ不自然に首を曲げながら発狂するトガの姿に、マリサはついていけなくなっていた。
目の前で起きてること、それは自分の身にも起きた不可解な現象と似たものであり、トガの身にも起きた事にマリサは驚く。
「なン……で?」
トガは別に死にかけたわけでもない、さっきまで私に対し優位性を保ち、人の血を好き放題飲み散らかしていた。
しかしトガは今、彼女と接触を計ろうとしている。いや、彼女がトガに接触しているといった方が正解かもしれない。だが、何故? というか彼女はいったいどういう目的で接触しているのか。そもそもどうやって私やトガと接触しているのか、未だによく分からない。
「マリサチャン」
不自然に首が右に曲がったまま、突然私の名前を呼ばれたことに恐怖し、マリサはじっと凝視する。何してくるか分からないことの恐怖が警戒心を過剰に引き出させ、鳴り響く心臓の音で周囲の音が全く聞き取れない。
ただただ恐ろしく、初めてあの人に会った時と同じような感覚が再びマリサを襲い始めていた。
「キミはこれから先の人生、シアワセになれない」
「何を言って……?」
「だからキミは乗り越えなければならない。迫り来る運命の壁を、理不尽な暴力を、耐え難い絶望を」
「心が歪んでも、世界が滅亡しても、キミの尊厳が何度も何度も何度も踏みにじられても」
「たとえキミが全てを思い出し、全てを憎み、嫉み、憤慨したとしても」
「キミは忘れた罪を償うために、今日も明日も明後日も、過去も現在も未来もずっと誰かのために戦わなければならない」
「そしてキミはいずれ、彼女らと対峙しなければならない」
「鬼巫女、最強の魔法使い、サナエサン、売国奴、無頂点の女王、放射能バハムート、NITORI、暴食婦人、魔王、エイリアン、狂的チルドレン、地底怪獣、堕天女、地獄菩薩」
「全ての異形を滅し、キミが"異形の王"となるんだ」
「そして全ての絶望を超えた先で」
「"ワタシ"に会えるよ」
首を横に傾け、目を見開いたまま笑うトガヒミコ。しかし瞳は闇を抱え、虚無で満ちている。
「"お前"は誰だ」
決意マリサが問いかけると、トガヒミコは笑顔を保ったまま目を閉じる。すると全身から力が抜けたかのように倒れ、トガヒミコは完全に気を失ってしまった。
「……よく、分からんな」
マリサは立ち膝の状態になった後、倒れたトガの背中に手を回し、お姫様抱っこする。
「よく分からんけど、決めた」
「俺は、全ての異形を絶滅させて、"あの人"に会いに行く」
揺るぎない決心で満たされ、決意マリサは成し遂げたい"夢"を手に入れた。
それは果てなき"絶望の始まり"か、"いつかの幸福への旅路"かは分からない。
しかし食べることしか考えてなかったあの時に比べたら、目標を持てるだけでもマシな気がする。
マリサはそう信じて、己の道筋を歩き始める。
「……で、これはどうする?」
正直、何でお姫様抱っこしてしまったのかと後悔しているが、裸の女の子を路上に放置するのは流石にマズイ気がしたので、とりあえずどこか安全な場所まで運びたい。
「……のだが、どこに行けばいいのやら……」
マリサは辺りを見渡すが、あまり手がかりになりそうな情報は無い。しいていえば、道路に落ちていた標識からこの場所は"保須"ということが分かったが、せいぜいその程度で後は何も分からない。
マリサは歩き始め、周辺の探索を始める。娯楽施設ばかりだと思っていたが、少し歩けば格安チェーン店やスーパー、デパートが見えてくる。遠くには小学校らしき建物も見えたが、多分生存者はいない。
「……ヒーロー事務所?」
有象無象の建物群の中に一つ、怪しげな看板を見つけたマリサ。ヒーローが職業に該当するのか疑問だが、ここにトガを放置しておけば、ほとぼりが収まった頃にヒーローが拾いにきてくれるのだろうか。
(いや待て、そういえばコイツ"ヴィラン連合"だとか、人殺したとか言ってたような……?)
記憶を辿れば辿るほど思い起こされるトガヒミコの異常性、私に会う為という理屈で多くの命に手をかけた、処罰を受けて然るべき存在。
そんな危険人物を事務所で放置したら大変……ではないな、危険人物を倒すのがヒーローの仕事だろうからむしろ丁度いい。問題があるとすればトガが拾われる前に目覚めることだが、その場合は薬的な何かで強制的に眠らせておこう。最悪トドメを刺す。
魔理沙はある程度考えをまとめた後、入口の扉を開ける。目の前の階段を登って3階に到達すると、『マニュアル事務所』と書かれた看板が目に入ってきた。が、特に気にすることなく事務所の扉に手をかける。
「誰かいま」
「動くな!!」
事務所に入り込んだ瞬間、隣から怒号と呼んでも差し支えないレベルの叫び声が聞こえ、マリサは不快そうにその発生源に目を向ける。
オフィスへと続くドアの傍でバールのようなものを持つ男性が3人、こちらの様子を伺っている。
「……何だ、生存者いたのか」
今まで化け物としか会って無かったので、まともな人間が生きていたことに普通に驚いた。
「お前ッ! ……お前も化け物かぁッ?!」
「抱えてんのは人か?! 何しに来たんだ?!」
「まさか食べる気か!?」
「いや食わんて」
マリサを警戒し、震える手足を抑えながらバールのようなものを構える3人。言葉からも察せるようにこの3人はただの一般人で、かなり動揺している。
適当にトガを放置しに来たつもりだったが、他に人がいたのではそれが出来ない。その上、恐怖のあまりこの3人が殴りかかってきたら戦闘は避けられないだろう。
邪魔する者は誰であろうと許さない主義だが一般人に手をかけるのは気が引けるので、ここは誤解を解くべきだ。
「俺の名前は"決意マリサ"、ちょっとした事故で記憶をなくして何も覚えていないが悪いヤツじゃない。抱えてんのは……えーっと、アレ、拾った」
「ここに来たのはト……、避難。避難しにきたんだ」
慣れない笑顔で誤魔化しつつ何とか入れてもらえるよう交渉するが、怪し過ぎるせいかかなり疑われている。そりゃそうだ、私みたいな子どもが化け物共がひしめく危険地帯を抜けてここにたどり着くなど、普通の人からすれば異常としか言いようがない。
というか全裸の少女を抱えてる時点で普通じゃない。
「……テロリストだ」
「は?」
「コイツ!! ニュースでやってたテロリストだ!!」
「いや、はぁ?!」
突然と殺意を剥き出しにし、怒りに満ちた目付きで見つめる男3人。さっきまでの臆病な様子とはうってかわり、まるで親の仇とでも言わんばかりに、3人は名状し難いバールのようなものを強く握りしめている。
斜め上過ぎる反応に戸惑うマリサに構うことなく、男3人は声を荒らげる。
「俺たちの、平和の象徴"オールマイト"を殺し!! 化け物共を呼び寄せた世界の敵!!」
「絶対に許せない」
「俺たちの日常を返せ……、この化け物がぁッ!!」
彼らは息を荒くさせ、濁った瞳でマリサを睨みつけると、バールを構えながら3人は特攻を仕掛けた。
「待て……ッてんの!!」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
制止の声すら届かず、三本のバールのようなものがガードしたマリサの左腕に炸裂し、パキリと、酷く乾いた音が体内で響く。しかしマリサは怯むことなく、右腕のみで抱えていたトガの肉体を背後に移した瞬間、強力な正拳突きと回し蹴りが男達3人に炸裂した。
常軌を逸した攻撃に男3人はダウンし、激突した壁に寄りかかったままピクピクと体を震わせている。
「……で、誰がテロリストだって?」
マリサもさっきまで心がけていたはずの配慮を忘れ、彼らと同じ冷酷な瞳で睨みつけた。
「…………ぉ」
男は失神寸前であったが、虚空を見つめつつも口を開いた。
「…………
「は?」
「たすけ……て」
そう言うと男は意識を失い、紐の切れた操り人形のごとくへなりと地面に倒れた。
「……
また知らない単語が追加され、より一層状況が分からなくなったマリサ。ヴィラン、ヒーロー、アキレス、そして異形と、この世界はかなり混沌を極めているようだ。
それだけに限らず、何故か私は殺害の容疑をかけられている。"平和の象徴"なる人物を殺したそうだが、記憶喪失であるため自分が無実なのかそうでないのかすら分からない。
「……お?」
マリサは男のズボンのポケットからはみ出ていたスマホを見つけ、躊躇うことなくそれを手に取る。
幸いなことにロックはかかっておらず、易々とマリサはホーム画面にアクセスすることが出来た。
「これなら情報に困らないな」
さっそくマリサは気になっていたワードや現在の状況について一から調べ上げるために、Googleブラウザを開いた。何故か思い出せなかったヒーローやヴィランの事情についてとことん調べ上げ、その後"アキレス"について検索をかけた。
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"
また現在、アキレス及びIHPSCは凶悪な地球外生命体のうち
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【Vcode:004】コードネーム『
→イギリス、ロンドン上空に出現。騎士型地球外生命体の集団の総称『
【Vcode:063】コードネーム『
→アフリカ大陸各地に出現した地球外生命体の総称『
【Vcode:023】コードネーム『
→日本、雄英高校内部に出現。ウサギ型地球外生命体の集団の総称
【Vcode:017】コードネーム『
→チリ、マチュピチュ上空に出現。超広範囲型の重力変動によりマチュピチュ及び周辺都市は空中分解を起こし消滅。現在、北に北上中。
【Vcode:019】コードネーム『
→エジプト、ピラミッド上空に出現。確認から僅か数分後に1億ミリシーベルトの放射線と5000万度の超高熱波を放ち、エジプト及び周辺諸国に存在するあらゆる生命体を即死させた。現在は高度800m上空を飛行しながら東に進行中。見かけた場合、すぐに安全な場所(地下シェルターなど)に避難し、国際ヒーロー連盟に連絡してください。
【Vcode:024】コードネーム『Nitori』
→出現場所不明。戦闘機に似た地球外生命体。世界各地を自由自在に移動し、格納庫から弾道ミサイル、生物兵器、または新種の異形を射出する。最重要討伐対象の中でもかなりの厄介さを誇る。
【Vcode:007】コードネーム『
→イギリス、ロンドン上空に出現した吸血鬼型の地球外生命体。巨大な建造物と共に出現し、ロンドン市街を消滅させその上に巨大建造物を構築。建造物内には複数の地球外生命体と思しき生体反応がいくつも確認されている。現在は城内にて活動停止中と推測。なお、能力は不明。
【Vcode:014】コードネーム『
→アメリカ、ニューヨーク市街に出現。巨大な桜(種名は不明)とともに出現し、腹部から生えた無数の特殊な器官により、生物非生物かかわらずあらゆる物体を捕食する。現在、南に向けて南下中。ニューヨークに住まいの方は今すぐ安全な場所へ避難してください。
【Vcode:020】コードネーム『
→オーストラリア、シドニー上空に出現。巨大な飛行船の中で待機している地球外生命体。現在に至るまで特に活動はしていないが、飛行船内の異形の数が尋常ではないため、最重要討伐対象に指定。
【Vcode:011】コードネーム『サナエサン』
→日本、●●●●に出現。現在、消息不明。
【Vcode:008】コードネーム『
→アメリカ、ニューヨーク市街に出現。Vcode:014と同時に出現し、以後008は014と行動を共にしている。4本の腕に全身に刻まれた無数の切り傷、そして非科学的浮遊物体を傍に置いているのが特徴。現在は、014と共に南に向けて進行中。
【Vcode:002】コードネーム『
→アメリカ、ワシントンDC、ホワイトハウス内で確認された魔法使いの見た目をした地球外生命体。個性と思しき特殊能力の総数が確認されたものだけでも30個以上存在している超危険種。最重要討伐対象の中で最も警戒すべき存在。なお現在は消息不明。見つけた方は今すぐAKILESまたは公安委員会に連絡してください。
【Vcode:001】コードネーム『
→日本、雄英高校内部に出現。陰陽座を象った顔面を持ち、巫女服のようなものを着た地球外生命体。針による遠距離射撃と圧倒的な回避能力を持つ。また、狙った獲物に対しては執念深く追跡し殺す傾向有り。現在は、消息不明。
【Vcode:000】コードネーム『
→16年前に発見された最初の異常存在、だが地球外生命体ではない。白黒の魔法使い風の服に金髪の髪が特徴で、Vcode:002と見分けがつきにくいので注意。000は日本のNo.1ヒーロー『オールマイト』を殺害し、世界各地で発生した異形襲撃事件に深く関わっている可能性が非常に高い超危険種です。発見した場合、危険ですので戦闘は行わずAKILESまたは公安委員会に早急に連絡してください。連絡した方にはそれ相応の報酬を渡すことを約束します。合言葉は『結依魔理沙』
また、世界各地に出現した妖精型の地球外生命体、総称『
https://dandadanttemettyaomosiroiyone.com
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「俺が、最重要討伐対象?」
現在の状況、自身の姿、気絶した男の証言、携帯から得られた最新情報を加味した結果、決意マリサの正体がある程度判明した。
決意マリサは『結依魔理沙』であり、日本最強のヒーローと言われているオールマイトを殺した犯人かつ、今現在この世を蔓延っている異形達に非常に関わりの強い、国連お墨付きの犯罪者である……と。
「それはつまり、この国どころか、人類みな俺のこと捕まえに来るのか?」
「…………ヤバいな」
身に覚えのない罪が背筋を伝い、汗と共に流れ落ちる。人類78億人のうち、7割が敵にまわったとしても54.6億人、世界総人口の約8割が能力者であることを考えると、約43億6800万人の能力者が決意マリサの敵となる。それはもはや数の暴力などという言葉では言い表せないほどの絶望的な人数であり、個性を使わずとも43億人が決意マリサ目掛けて走るだけで十分脅威だ。
……という冗談はさておき、どちらにしろこのまま行けば詰むことを察したマリサはこのアクシデントを打開するための案を考える。だが思いついたのは、出会う人ごとに説得していくという地味かつ無謀な作戦ぐらいでなかなか良い案が出ない。しかもこの作戦、最悪その場で説得できなければさっき気絶させた男3人のように襲いかかってくる可能性がある上に、それが何十人何百人という規模で襲いかかられれば流石のマリサも対処しきれない。
他には、情報発信源である公安委員会やAKILESと接触し情報を訂正してもらうという作戦も挙げられるが、危険度はこちらの方がかなり高い上に成功するか死ぬほど怪しい。というか公安が私の言うことを聞いてくれるはずがない。無理だ。
そもそも過去の記憶をほとんど失っているので、本当に自分がオールマイトを殺したのかどうかすら証明できない以上下手に突っ込むのは良くない。
と考えると、やはり一般人と出会ったら通報されないよう地道に説得するしかない。
「いや、そもそも人に見つからなければいいのか?」
変に対策や積極的な行動をして通報されるくらいなら、そもそも人に見つからないよう行動すればいいのではないだろうか。……容疑が晴れないから公安やヒーローに狙われるリスクを解決することは出来ないが、そもそも見つからなければ良いだけの話で、仮に見つかったら……こっそり闇に葬れば問題ない。
それに異形が全世界で暴れているため、行方不明の俺の捜索に割く時間はおそらくないはず。と、考えるとやはりハイドアンドシークが一番適切かもしれない。
「じゃあヒーローや公安に見つからずに異形を倒すには、身の安全を確保できる拠点が必要になってきて」
「一番身を隠すのに一番良いのは……」
「ヴィラン連合ですネ」
「まぁ、だよなァ」
「───────ん?」
ふと、顔を横に向けると、可愛い女の子が裸で隣に座っていた。それだけならまだマシであったが、その女の子がナイフを持った吸血ガールじゃなければこうはならなかった。
「どぉうわッ?!」
「この世の地獄みたいな顔してたマリサちゃんも、随分とカアイくなったね」
いつの間にか起きていたトガヒミコに驚き、その場から離れるマリサと、正座したままにこやかに笑うトガヒミコ。
また意味不明な理由で襲われることを警戒し、マリサは拳を構え敵を見据えた。
「そんなに怖い顔されても照れます///」
「照れんのかよ……」
何とも言えない雰囲気に呑まれ、マリサは拳を構えるのを止めると、トガと同じように地面に正座し互いに向き合う。
「さて、気絶したフリをしながら見たり聞いたりしていましたが、マリサちゃん! ヴィラン連合入りたいのですか?」
サラッと傍聴してたことを告げつつも笑顔を崩さないトガに、マリサはツッコミを入れたい気持ちを抑えつつ話を続ける。
「……目的達成のためなら」
「つまりワタシ達の仲間になってくれると?」
「…………まァ、そうi」
「やったァァァァァァ──!!!」
「ちょ」
トガヒミコはマリサの両手を握ると、ぴょんぴょんと跳ねながらマリサを軸に回り始める。
「やめて吐きそうあと服着ろ」
「服はァありませぇぇぇん! ざんねんでぇぇぇす!!」
「テンション高すぎ……」
相方のテンションについていけず、そのまま10回くらい回転させられた後、トガが適当に手を離したおかげで壁に勢いよく頭部を強打。「ぐぇ」という言葉を発しながら地面にパタリと倒れつつも、持ち前の回復力で何とか復活した。
「大丈夫ですか?」
「……お前の頭がな」
少し憎たらしく言ったが、トガはニシシッと笑うだけで微塵も効果がなかった。
「じゃあさっそく、弔くんのいるヴィラン連合のとこまでワタシと一緒に帰るんですがァ……」
「一応決まりとしてマリサちゃんにはある"条件"をこなしてもらいます!」
「何」
「誰でもいいのでヒーローを1人殺してください」
トガの言葉にピクリと反応するマリサ。
「……何で?」
「戦力になるかどうかチェックするためです。あとはそうですねェ、スパイの防止とか? あと素質?」
「できるだけ有名かつ強いヒーローを殺すとより入りやすいですよ!」
「そう……」
死ぬほど要らない情報だが、トガのことは無視しつつもトガの出した条件には頭を悩ましていた。
ヒーローと対立せず、俺以外の最重要討伐対象を倒すためにはヴィラン連合と行動を共にするのが現状無難な選択肢だ。
しかしヴィラン連合に入るにはヒーローを殺さなければならない。対立を避ける目的で入ろうとしたのに結局対立するのは何かの皮肉と言えようか。
「……? ドうしたのマリサちゃん?」
「あ! もしかしてェ、ヒーローと対立するの嫌ってますかァ?」
痛いところを突かれたマリサだったが、何とか堪える。
「……仮にも俺は公安の重要討伐対象だから、あまり表だった行動はしたくないんだが……」
「あァ殺った後の後始末なら大丈夫です。ワタシもついていくのでその辺は任せてください。アナタはただ、殺すだけでいいんです」
「何か問題でもありますかァ?」
問題しか残っていない、自分の意図と全く逆の方向の答えが来たことにマリサは再び頭を悩ます。
だが、マリサのシナプス細胞にふと電流が走る。今思いついたこの方法なら、条件を達成せずに目的を果たせるかもしれない。
そう思ったマリサは、俯いていた自分の顔を上げ、前を向く。
「……そういう条件なら、俺はヴィラン連合には入らない」
「アレ? もしかしてひよっちゃいました?」
「入らないが、
「は?」
流石のトガヒミコも予想してなかったのか、珍しく驚いた表情をしている。
「ウチ、雇うお金ありませんよ?」
「お金はいらない、飯も自分で勝手に調達する。ただお前らと行動を共にさせてほしい」
「その代わりに俺はお前らの戦力として働く。ヒーローは殺さないが、戦闘不能ぐらいにはさせるし、化け物相手なら普通に叩きのめす。悪くないだろ?」
「……悪くないですが、こういうのはワタシの担当じゃないので、リーダーの弔くんに聞い」
「分かった、料理もやろう。やり方は分からないが練習すればきっと上手くなる」
「……でも」
「掃除も任せろ。どんな汚いゴミも消し飛ばしてやる」
「……んぅッ!」
「他にも洗濯、スケジュール管理、マッサージ、お悩み相談、戦闘練習の相手、肩叩き、資金調達もセットだ」
「ぜひウチに来てください」
(……よし)
思いついたワードを片っ端から並べまくり、ゴリ押した結果、何とか契約成立にありつけたマリサ。これで変に目立つことなく目的達成に近づける。
「何か……契約書とかいるか?」
「ウチはそういうのやんないんで……ただ、裏切ったら容赦なく殺します」
「分かりやすくて助かる」
物騒ではあるが、印鑑とか要求されないだけマシかもしれない。
「ホントに雇うかどうかはワタシじゃなくて弔くんが決めることなので、後は弔くんに聞いてください」
「それまでの間でしたらァ、そうですねェ、仮契約ってことで。よろしくね、マリサちゃん!」
「あァ」
マリサはトガと仮契約を結び、ついにヴィラン連合の一員として働くこととなった。
「あ、連合に戻る前に服の調達してもいいですかァ? ぶっちゃけ寒いし、恥ずかしいので……」
「俺も食料とか色々欲しいから、適当に散策するか」
とりあえずトガは服を、マリサは食料等を調達するべく、二人はヒーロー事務所の外へと出た。
相変わらず空は暗く、街は若干の悲鳴と汚い瓦礫で囲まれているが、何故か私の心はドキドキで満ちていた。
生きる、というのが何なのか、ちょっとだけ分かった気がした。
to be continued……
3回くらい書き直した()
序盤から設定盛りだくさんでアレですが、アレです。オリ設定多めですがこれからも増えてくのでご容赦を。
残り72億4123万7965
クリスマスはボッチdeath(デス)