続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。   作:マスターチュロス

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( ᐛ)バナナ






???編:その4

 

 

「お肉〜♪ お野菜〜♪ お魚〜♪ ……は、ちょっと怪しいので別のに変えて……」

 

「カロリーメイト〜♪ 缶詰〜♪ 冷凍食品♪」

 

「カップラーメン♪ シーチキン♪ 漬物♪」

 

「これだけ詰めれば、しばらく持つはずです」

 

 大量の食品をカバンに詰め込むトガヒミコ。女の子一人が運べるとは到底思えないほどの量を詰め込んだカバンを、彼女はめいっぱい引っ張る。

 だが、カバンはほとんど動かない。

 

「……流石に多すぎましたね。出入口の近くに置いた方のバックも合わせると、1人じゃ到底無理です」

 

「が、マリサちゃんがいるから大丈夫ですネ! 多分!」

 

 トガはキョロキョロと辺りを見回した後、耳を澄ませた。

 

「……もしかして、終わった?」

 

 買い物の最中に聞こえていた数多の戦闘音が突然途切れ、静かな時が流れるのを感じる。それすなわち、決意マリサと化け物の間に決着がついたということである。

 

「意外と早いですねェ。元最強は伊達じゃありませんか」

 

 トガは先程まで音が聞こえていた方向、すなわち決意マリサのいる場所へと走り出す。近づけば近づくほど、冷えた空気が増していくのを肌で感じながらトガは前へ進む。

 

「……これは」

 

 中央エリアと食品エリアを分ける扉の前にたどり着いたトガだったが、肝心の扉が凍りついており、強烈な冷気を放っている。

 余裕で勝利……とは言い難い現状にトガは苦い顔をするも、一抹の不安を払拭し再びドアを見つめる。

 

「……壊せますね」

 

 極低温によって耐久性が劣化したドアにトガは強烈な蹴りを加える。すると、いとも容易くドアは後方へ倒れた。

 中央エリアへ戻ってきたトガヒミコ。マリサの様子を確認するために周囲を見渡すが、その光景はあまりに悲惨なものであった。

 

「……マリサちゃん?」

 

 中央エリアにそびえ立つ1つの氷像、その中には決意マリサらしき人物が気を失った状態で閉じ込められていた。

 そう、決意マリサが勝ったのではない。戦いの勝利者は異形チルノだ。最も強力な特性である不死身を完全に封じられたまま、マリサは静かに眠らされたのである。

 

「値」

 

「あ……」

 

 極低音の冷気を放出し続ける元凶、異形チルノがトガヒミコの存在に気づいた。

 エスカレーターで会合した時より強烈なオーラを放っていることに気づいたトガであったが、気づいたところで何も意味は無い。

 個性の範疇を超えた凶悪な化け物を前に、人が出来ることなど逃げる以外に何も無い。

 

(……ワタシじゃ、コイツは殺せない)

 

(…………今すぐ逃げたい、けど)

 

 普段の彼女だったら、マリサのことを見捨てて一人で逃げていた。いくらマリサの生き様が性癖に刺さろうとも、己が死んでしまっては意味が無い。性欲より生欲の方が優先度高いのは当然である。

 しかし、トガは己の性癖以上に彼女に対して価値を見出していた。好きという感情以外に、彼女に対する畏敬の念が、一筋の希望を照らしていたのだ。

 

(マリサちゃん……なら)

 

 雄英体育祭であらゆる敵を蹂躙し、傷を負い続けつつもそれを能力で隠し、1人戦い続けた少女。しかし今は記憶を失い、昔とは似ても似つかないほどに弱々しい姿なってしまった。現に彼女は既に氷漬けにされている。

 だが彼女の根本的な、彼女を突き動かす"動力"は変わっていない。どんな劣勢に立たされようと逆転するだけの力が、彼女に備わっていることをトガは見抜いていた。

 

 自分1人で逃げるより、マリサを救った方が得であると、トガは本能で理解した。

 

「待っててね、マリサちゃん」

 

 トガは自前のナイフを2本取り出し、両手で構える。

 

「人間=⑨」

 

 トガを新たなターゲットと認識した異形チルノは再び動き始め、地面を凍らせながらトガヒミコの元へ一気に距離を詰めた後、冷気を纏ったブレード状の両腕を水平に薙ぎ払う。

 が、トガは前進しながら仰け反ることで攻撃を回避し、異形チルノの股の間を潜って背後へ移動。両手に持っていたナイフをすかさず頭部へ投げつけるが、あまりの硬さにより弾かれてしまう。

 

(全然ダメですね。無理です)

 

 ナイフによって位置を特定した異形チルノは振り向きざまに冷気を纏ったビームを放つが、トガは類まれなる身体能力で回避し、氷像の影へと隠れる。

 異形チルノは笑い声のような奇怪な声を上げると、右腕を振るって氷像を砕こうとした。だが、その腕は氷像に触れるギリギリのところでピタリと止まる。

 

「U = - GMm/r」

 

 氷像を盾にすることで攻撃を誘発させ、偽マリサを救う算段であること察した異形チルノは、即座に氷像の裏に回り込み、両手を突き出し冷凍ビームを放つ。

 だがそこにトガヒミコはいない。

 

「残念、こっちデス」

 

「!?」

 

 気づいたものの後頭部にしがみ掴まれてしまい、振り落とそうにも振り落とせない。

 

「私結構関節技とか得意何ですけど、アナタはどうです?」

 

 トガはニンマリと笑うと、両足を首に絡め、力いっぱい締め付ける。それと同時に重心を外側に寄せ、異形チルノを地につかせようと試みた。

 人間相手なら失神させられたであろうが、この化け物は微塵も苦しむ様子がない上に倒れる気配は皆無。トガの試みは虚しく散り、最終的に脇腹を軽くブレード状の腕に刺され、地面に投げ捨てられた。

 

「クソッ?!」

 

 起き上がろうとするトガヒミコの左肩に異形チルノの右腕が突き刺さり、そのまま同じ目線の高さまで持ち上げられると、再び地面に投げ捨てられる。

 

「ガハッ!」

 

 骨の軋む音が響き、痛みが全身を刺激し、トガは悲鳴を上げる。だが悲鳴を上げている間だろうと異形チルノは容赦なくトガの左肩を貫き、苦悶の表情が見える高さまで持ち上げた後、今度は食品コーナーの方向へぶん投げた。

 冷気で劣化した分厚いガラスはいとも簡単に壊れ、トガは勢いよく商品棚にぶつかり地に落ちる。

 頭部から溢れ出る血を拭い、前を向くトガヒミコ。頭を強くぶつけたせいか目眩もなかなかに酷く、朦朧とした景色がトガヒミコの視界を覆う。

 

「……やっぱり、無謀、ですかね……」

 

「相手が……悪すぎです」

 

 トガは商品棚の裏側で身を潜めながら、ブツブツと独り言を言い始めた。

 

「……硬いせいで、……はァ、ナイフが通りませんし、……はァ、……関節技も、……全然ッ、……効いてませんし!」

 

「その上……、冷凍ビームが……、シャレになりません」

 

 トガは常備していた応急処置用の包帯を左肩に巻き付け、テープで包帯を固定し出血を抑える。これで幾分かマシになるとはいえ、正直もう左腕は使えない。脇腹も軽く刺されているし、地面やガラスに激突したことで内蔵にもダメージが入っている。満身創痍といっても過言ではない。

 

「一応、策はありますが、……今の私では実行出来ないモノばかり。せめて、マリサちゃんが起きるまで、……時間稼ぎをするくらいが限界」

 

「……早く、起きてください。マリサちゃん」

 

 切実にマリサの復活を願うトガ。神や仏など信じるに値しないが、事態を好転させてくれるならば何であろうと祈っておきたい。

 

「.bg」ドゴォンッ!! 

 

 激しい音と共に壁が吹き飛ばされ、異形チルノは食品コーナーの中へと侵入した。トガの息の根を止めるために、氷の吐息を吐き出しながらジワジワと近づいてくる。

 

(……やるしかない)

 

 商品棚の影から颯爽と飛び出したトガヒミコ、それに気づいた異形チルノは再び冷凍ビームをトガに目掛けて放つが、高速で動く存在を捉えるのはなかなか難しい。

 トガは野菜コーナーから赤い物体を2個拾うと、すぐさま棚と棚の間の通路を駆け抜ける。

 巨体故に複雑な動きを取れない異形チルノは、トガが進む方向へ先回りするように移動を開始した。周辺の物体をなぎ倒しながら一気に予測到達地点にたどり着き、トガの姿を捉える。

 

「小娘=44444444444444」

 

 冷凍ビームの命中精度を気にしたのか、異形チルノはブレード状の両腕でトガの息の根を止めにかかる。それに対しトガはナイフを構え、そして天井に向けて即座に投げつけた。

 全く意味の無い行動、そう思った異形チルノだったが、その判断は誤りであったことを自覚する。

 

「ッ!?」シャァァァァ!! 

 

 室内に降り注ぐ大量の雨、それはついさっきトガが壊した火災用スプリンクラーから漏れ出たものだった。

 大量の水は異形チルノの極低温の体によって凝結し、徐々に身動きが取れなくなっていく。

 

「やっぱりアナタ、おばかさんですね。頭良さそうなフリして、こんなチンケな罠にかかるなんて」

 

 煽るトガにキレたのか、力技で脱出しようと試みる異形チルノ。無理やり身体を捻り、動かし、徐々にヒビを拡げながら異形チルノはゆっくりと進み始めたため、トガは舌打ちをしつつ別の場所へと移動する。

 

「……左腕さえ使えれば……!」

 

 体が万全であれば近距離でのミスディレクションも使えたかもしれないが、残念ながら今のトガはボロボロであるため激しい運動は不可能。だが、時間稼ぎならまだ手はある。

 再び追い始める異形チルノ、それに対しトガは店内を縦横無尽に駆け巡り、異形チルノの追跡を躱そうとする。だがどんなに死角を利用して視界から外れても、死角を形成する壁そのものを破壊しながら追ってくるため、捕まるのは時間の問題。

 トガは再び商品棚の裏側へと逃げる。だがそれを異形チルノは意に介さず、右腕で商品棚もろとも切断することでトガヒミコを炙り出そうとした。

 そして再びトガが逃げてイタチごっこへ……と思いきや、トガは異形チルノの真正面に立っていた。手に持っていたのはさっき拾った赤い物体、トマト。トガはこれをフルスイングで異形チルノの顔面に叩きつけ、再び逃走を開始した。

 

「値ッ!!」

 

 破裂したトマトは異形チルノの顔面に付着し、冷気によって完全に凍りつく。視界一面がトマトで覆い尽くされた異形チルノは自身の鋭い腕でゴリゴリと付着したトマトを削り始めるが、かなり時間がかかりそうだ。

 

「……今のうちに、マリサちゃんのところへ!」

 

 トガは中央ホールに繋がる通路へ走り出した。このチャンスはなかなか無い。アレだけ隙を晒していれば、決意マリサを封じ込めた氷を削る時間くらいは稼げる。

 そう思い込み、あと一歩で中央ホールに出れる距離で、トガヒミコの足が止まった。

 

「……あり?」

 

 氷漬けにされた両足、その足元には、水色の魔法陣が輝いていた。

 

「……これは、ハメられましたね」

 

 一生懸命ジタバタと体を動かすトガだったが、氷はビクともせず、ひたすらトガの両足を冷やし続けていた。

 

 ゴリ……ゴリ……

 

 顔面のトマトを削りながら徐々に近づいてくる異形チルノ。血ではないが、そう思わせるほどの覇気を放ちながら一歩、また一歩と距離を詰め始め、トガヒミコの表情に焦りが表れ始めた。

 

「値=天才」

 

 完全には拭いきれていないもののある程度視界が確保された異形チルノは、トガヒミコを背後から、見下すように顔を見つめる。

 流石にマズイ状況なのは百も承知だが、足が固定されている以上何も出来ず、このまま氷漬けにされればトガヒミコは完全にゲームオーバー。来世でよろしくコースである。

 しかし異形チルノは氷漬けにすることは無く、右腕を大きく振りかぶり、トガの股下から頭蓋に向けて勢いよく振り上げる。

 反射的に前傾姿勢で回避しようとするトガ。それによって体勢が前に傾き、致命傷は避けられたものの、氷魔法の追撃と風圧によりトガの身体は放物線を描くように吹き飛び、そして再び地面に複数回激突した。

 

「かハッ」

 

 呼吸が、整わない。酸素が、血に巡らない。

 

 骨も今ので何本か折れ、もう上半身を起こす余力すらない。完全にタイムアップである。

 

 金属同士がぶつかり合っているような音が複数回聞こえる。音の聞こえる方向に目を向けると、化け物が両腕を使って拍手のような真似事をしていた。彼女なりに称えているつもりなのだろうか。

 

「763」

 

 異形チルノは右腕の先をトガヒミコの額に合わせると、トガの脳内に冷気が異常に染み出してきた。

 

「嫌」

 

「嫌、痛い、嫌」

 

「痛い痛イ痛い嫌止メて嫌嫌嫌痛イ嫌嫌嫌痛イ痛い痛イ!!!!」

 

 冷気によって引き起こされた激しい頭痛と、死に近づく恐怖で頭の中がおかしくなり始めたトガ。悲痛な叫びを上げても止める気配は到底無く、異形チルノは奇怪な声を上げて勝利を確信する。

 

 

 全身が徐々に冷え始め、四肢の感覚が消えた当たりでトガはうっすらと、走馬灯のようなものが見え始めた。

 

 

 トガの生まれ持った個性「変身」、その影響で血に興味を持ち、血を愛してしまった故に家族から敬遠された忌まわしき過去。嫌われたくないが故に、仮面を被り、己を個性を隠し続けた過去。そして好きな同級生が出来たあの日、再び血に対する欲求が膨れ上がってしまったこと。そしてその欲求に抗えず、同級生を殺し血を啜り続けたあの日、トガヒミコは己が抑え込んでいたナニカを解放した。

 

「い き て る」

 

 その後、自分の欲求のままに人を殺してきたある日、テレビに映ったある人物に、恋に似たナニカが芽生え、その人に近づくためにヴィラン連合に入り、そして今、その人に出会うことが出来た。

 そんな順風満帆な人生を送っていたが、その人生が今ここで終わろうとしている。人ですらない化け物の手によって、無慈悲に、不条理に、殺されようとしている。

 己の欲のままに殺し続けた彼女の末路としてまさに自業自得であると、多くの人間はそう思う。だからと言って、「はいそうですか」と納得して死ぬような悪人はいない。当の本人は最後まで、生にしがみついて止まない。

 

「マリサちゃん……!!!」

 

 氷像に目を向けるトガヒミコ。希望を託したはずの彼女は未だ氷の中で眠り続け、意気揚々と復活する見込みは無い。

 

「そろそろ、おきて……ください……!」

 

「ワタシを……おいてく、つもりですか……?」

 

「ワタシを……、ひとりにしないで…………」

 

 徐々に凍結が進むトガの身体と、無機質ながら限りなく嘲笑に近い声を出す異形チルノ。いくら涙を流しても、いくら心の中で祈っても、覆らない現実があるということを、彼女は知らない。

 だが現実を理解している化け物は、ひたすら彼女を嘲笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし希望は、彼女を見捨てたりはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 いばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばら

 

 4

 

 7

 

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 いばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらいばらばらばらいばらばらばら

 

 

「久しぶり」

 

「この秘匿音声を聞いているということは、キミは今かなり特殊かつ重篤な状態なのかな?」

 

「本来ならキミはまた記憶を失って■■■■するところだけど、不具合が生じているようだね」

 

「大丈夫、気にしなくていい。おそらくその不具合は私がワザと発生させたモノかもしれないし、そうでなくとも私のところに戻ってくれさえすればすぐに直せるさ」

 

「あぁ、キミが記憶を失っていることを考慮して今ここで、名前を出しておこうか」

 

「私の名前は"■■■■■■"。キミの恩人さ」

 

「ま、今すぐ会えなくても、キミに何らかの事故が発生したらすぐに場所を特定して会いに行けるから大丈夫さ。だからキミは好きな風に生きるといい」

 

「だが、2つほど注意点がある」

 

「1つ、異形と呼ばれる頭の可笑しい連中と関わらないこと」

 

「2つ、騙されちゃダメだよ? とは接触しないこと」

 

「とはいってもこの2つと遭遇する確率は極めて低く、ましてや両方と接触する確率は数多の世界で観測されるあらゆる事象と比べても非常に少ない部類だ。気にしなくていい」

 

「ただし、もしこの2つのうちのどちらか君の役目は私に会うことと関わってしまった場合、キミの人生はもちろんのこと私の計画ま私の"言葉"だけに耳を傾ければいいので狂うことになる」

 

「特にあは2つ目は危険だ。……未だ■■されあははない■■■あはははは■■■だが、私は■■の■■を■■している。誰もが■■■が、彼■が真に■あはははははははははははははははは■■■の■であることを■は知って■■」

 

 

 いばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばらいばらばらばら

 

 

ここなら、届かないね

 

……? どうして不思議そうな顔をするの? 

 

……ワタシが誰だか、分からない? 

 

へぇー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

? 

 

 

 

 

「思い出した?」

 

「そう、キミの道標。生きる目標。心の支え」

 

「キミが会いたがっていた人、本人だよ」

 

「あ、今ワタシに話しかけられただけで目的達成とか、そういうのは禁止ね? 面白くないから」

 

「で、今日はキミとお話がしたくて来たの」

 

「……ワタシのこと、好き?」

 

「ワタシはキミのこと、好きだよ?」

 

「何でかって?」

 

「……フフフ、それはねぇ、似ているからだよ。ワタシと、キミが、あらゆる点において、ね?」

 

「フフフ……」

 

「……どこが似てるのかって?」

 

「そうだね……、他人を躊躇せずに殺せるところとかぁ、他人の尊厳を平然と踏み潰すところとかぁ、損得でしか物事を判断できないところとか……」

 

「……フフフ、冗談だよ。キミはそんな分かりやすい子じゃないし、ワタシも興味無い」

 

「本当に似てるって思うところは、何も無いこと」

 

「記憶もない、心もない、五感も無ければ、生きる理由も目的もない。まさに産まれる前の"胎児"のような、夢ばかり見続けるキミの姿が、ワタシとトてもトテモとっテも、似ていると思ったの」

 

「ねぇ、そうでしょう? 夢見る胎児くん?」

 

「キミの前世のことは全てキミの深層心理で把握したけど、キミはワタシと同じくらい救えない運命に囚われているものだから、つい助けたいと思ったの」

 

「だからキミに力をあげた。あの子や他の子にも負けないほどの力を」

 

「……フフフ、長々と話しちゃったね。でもそのおかげで、キミのSAN値はかなりの勢いで落ちている。死刑囚レベルかな?」

 

「これなら、キミはさらなる段階へ進める」

 

「これから先、おそらくキミはワタシと似た能力を開花するだろうけど、頑張ってね」

 

「最初は辛いかもしれないけど、だんだん慣れてくるから。大丈夫」

 

 体の内側から肉を食い破るように出てきたのは、棘の生えた蔓であった。蔓は宿主の身体を徐々に覆い尽くし、蕾が少しずつ形成されていく。

 マリサの身体は、自然と楽な姿勢を求めた。出来る限り体を丸め、足を閉じ、瞳を瞑り、折りたたまれた両足を両腕で抱え込む。

 夢見る胎児は茨の中で笑っている。己の心を隠したまま。

 生まれるべきではなかった。胎児は笑って殻にこもる。

 

 

「さぁ、私の手をとって……」

 

 黒い何かが手を差し伸べる。触れたくない、けど暖かい気がする。ボクは笑ってその手を握る。

 

「……キミの心を縛っているのは、誰?」

 

「キミは何に囚われている? 自分自身?」

 

「自傷行為で救えるのはキミの自己満足だけだよ」

 

 闇の中で微笑む少女。優しさ。

 

「さぁ、手を開いて? 辛いことがあるなら全て吐き出せばいい。楽になるまで、キミがシアワセになるまで」

 

 全身を覆い尽くした茨の棘が、私の方に向かって伸長し、皮膚を貫く。

 

「茨はキミの敵じゃない、キミの心に従っているだけだよ。キミがより遠くに手を伸ばしたいなら、茨はより長く伸びるし、またキミが心を守りたいと思ったら、茨はキミの全てを守る」

 

 ボクは彼女の言う通りに、自分を愛したいという気持ちを茨に伝えた。すると茨はみるみると棘を引っ込み始め、傷だらけの本体が闇に晒される。

 

「うん、その調子」

 

 彼女はそっとワタシを抱きしめ、頭を撫で、そして耳元で囁いた。

 

「温かいでしょう?」

 

「もっと感じてほしいけど、時間が無いから今日はここまで」

 

「さ、目を瞑って」

 

 彼女の言う通りに、ボクは目を瞑った。すると彼女はボクの肌に手を当て、目隠しをする。

 

「気持ちよく起きられるよう、おまじないをかけてあげる」

 

 彼女の言葉が、ボクの心を落ち着かせる。

 

「さ、ゆっくり」

 

「落ち着いて」

 

「深呼吸して」

 

「身体の力を抜いて」

 

「ゆっくり」

 

「落ち着いて」

 

「深呼吸して」

 

「身体の力を抜いて」

 

「ゆっくり」

 

「ゆっくり」

 

「目覚めたての朝のように」

 

「ゆっくり」

 

「夢を見て」

 

「ゆっくり」

 

「目を覚まして」

 

「ゆっくり」

 

「ゆっくり」

 

「ゆっくり」

 

 

「────────解放、しよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

割れる、割れる、セカイが割れる。心にヒビが、脳にキズが、ボクらは今生まれ変わろうとしている。

 解放だ。溜めに溜め込んだ己の全てを吐き出すように、己の全てをひっくり返すように。

 地に頭を着ける胎児、親と逆さに産まれるのは、なぜ? 

 

 氷を砕く時が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一人』を認識し、『他人』に興味を持ち始めたキミが次にすべきこと

 

それは『解放』。己の心をさらけ出し、己が認識したものを他人と共有すること。

 

それがキミの2つ目の力、『解放ノ夢』

 

目覚めの時だ

 

 

 

 

 

 






1ヶ月に1回しか投稿出来ねぇぇぇぇぇあア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゙全然進まねぇえ"え"え"え"え"え"!!!

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