続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。   作:マスターチュロス

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【救助要請チームAのメンバー】

・八百万百(やおよろずもも)→個性:創造
・耳郎響香(じろうきょうか)→個性:イヤホンジャック
・上鳴電気(かみなりでんき)→個性:電気
・尾白猿尾(おじろましらお)→個性:尻尾
・口田甲司(こうだこうじ)→個性:生き物ボイス
・峰田実(みねたみのる)→個性:モギモギ
・葉隠透(はがくれとおる)→個性:透明

※雄英高校の構造に関する情報があまりに少なく、『外から見るとH型の全面ガラス張りの建物』くらいしか分からなかったので、勝手に設定させていただきます(既にプロローグでやってしまってはいる)。ご了承ください。




救助要請チームA編:その1

 

 

 

 突如、化け物に襲われた1年A組は3つのチームに別れ、それぞれの階層へと移動を始める。

 私たち救助要請Aチームは1階の先生方との合流を第一とし、この圧倒的に不利な状況を打開するのが今のところの最終目標だ。

 そして現在、Aチームは現在3階から2階へと続く階段を降り、そのまま1階まで降りようと足を進めたのだが……

 

「…………崩れて通れませんね」

 

「せっかくここまで敵と合わずに済んだのに……!」

 

 無数の瓦礫が行く手を阻むように存在し、ここを無理矢理通るのはかなり厳しい。

 

「別の階段から降りるしかありませんね」

 

「待てよヤオモモ、こんな岩くらい俺らが力を合わせればすぐにでも壊れるぜ?」

 

 八百万の肩を掴み、引き止めたのは上鳴だった。

 

「えぇ、ですが大きな音を立てるわけにはいきません。私達の目的は先生方と合流すること、なるべく早く行くべきですが敵が未知である以上慎重に行くのが最善かと」

 

「となると、また上に戻るのか。うへぇ」

 

 上鳴が気の抜けた声を上げる。距離はさほど無いが、魔境と化した学校内を歩くだけで精神的負担はかなり大きい。響香の個性が無ければここまで動くことは出来なかっただろう。

 Aチームは元来た経路を辿って3階へと引き返す。この棟の階段が使えない以上別の棟の階段から移動するしかないのだが、別の棟に移動するには3階の連絡通路を使う必要がある。Bチームと同じ棟を行くわけにはいかないため、必然と校門から遠い方の棟へと移動することとなるが、さしたる問題は無い。職員室から遠ざかるのは良くないが。

 

「耳郎さん、敵の位置は?」

 

「……3階には3体、だけど3体とも教室に固まって動いていないから、廊下突っ切って素通り出来る」

 

「では静かに、素早く移動しましょう」

 

「────」フルフル

 

 耳郎からの情報の元に着々と進むAチーム。八百万をブレインとし、耳郎響香は探知、上鳴と尾白は緊急時の戦闘要員として参加し、峰田は足止め、口田はサポート、葉隠はステルス特攻隊長として各々が役割を果たし、無事連絡通路まで辿り着く。

 

「────私! 通路の先を下見してくる!!」

 

 意気揚々と葉隠が先頭へと踊りだし、両手を水平に広げながらフラフラと進んでいく。透明になる個性を持つ彼女なら化け物に見つかることは無いのだが、心配が勝ってしまうのは何故だろうか。

 

「…………」

 

「? どうした峰田?」

 

 葉隠に先行させている間、他のメンバーは通路の出入口の付近で静かに待機していたのだが、峰田だけは何故か思い詰めたような表情で黙りこくっていた。そんな峰田を不思議に思った上鳴が峰田に話しかけると、峰田はおそるおそる口を開ける。

 

「…………今の葉隠ってさぁ、やっぱり何も装備つけてないんだよなぁ? それってつまりさぁ、全裸ってことなんだよなぁ…………?!」

 

「平常運転かよ」

 

 溢れ出る唾液を左腕で拭う峰田を葉隠を除く全員がゴミを見るような目で見つめる中、葉隠が偵察から帰ってくる。

 

「見てきたけど大丈夫だったよ! 誰もいない!」

 

「ナイス葉隠! んじゃ今のうちに行こうぜ!」

 

 安全を確認し、葉隠に続き続々と連絡通路を渡る7人。連絡通路の壁に張られたガラスから外の様子が少し見え、現在の状況が少しだけ把握出来た。

 

「先生!?」

 

「えっ、どこ!?」

 

「ほらこっち! 中央のほう!!」

 

 芦戸が指をさした方向には、雄英高校の教師であるセメントス先生が何かと戦っている。

 

「兎?」

 

 兎のような耳、見ているだけで不安を感じる赤い瞳、異常に発達した体格、右腕に重機関銃を備えた化け物が、その体格からは容易に想像出来ない俊敏さでセメントス先生の攻撃を避けきっている。

 

「●●●●」

 

 セメントス先生が何か言うと、兎の化け物の足元から巨大なコンクリートの壁が全方位を囲み、押し潰す勢いでコンクリートを圧縮させる。

 化け物はコンクリートの壁に飲み込まれ、確実に捉えられた。現代社会においてコンクリートを自在に操るということがいかにヤバいのか、それがよく分かる戦闘だった。

 

「すっげぇぇぇぇぇぇぇ!!! 先生つえぇえぇえ!!」

 

「マジですごい!」

 

「今なら先生と合流出来るかも!」

 

「えぇ·····!」

 

 窓ガラス越しから先生に向けて手を振りながら、大声で叫ぶ上鳴、峰田、葉隠の3人。距離があるせいで声は届かず、先生に気づかれる気配は全く無い。

 と思いきや手振りに気づいたのか、セメントス先生は上鳴達がいる方向に目を向けた。

 

「先生ぇぇぇぇ! 後でそっちに行きまぁぁす!!」

 

「●●●●!? ●●●●、●●●●●。●●●!」

 

 セメントス先生は安堵の表情を見せた後、右方向に指をさしながら大声で叫んでいる。

 

「うん、こっからじゃ全然聞こえないね」

 

「逃げろって言いたいんじゃない?」

 

「ではその通りにしましょう」

 

「いや、ヤオモモちょっと待って。あそこ·····」

 

 上鳴が指さした方向、それはセメントス先生の真後ろ。最初はただの先生の影だと思っていたそれは、よくよく見ると不自然な輪郭が浮かび上がっており、影から伸びたナニカがセメントス先生に向けられ、2つの赤い光が捉えている。

 

「先生?!」

 

「あれもしかして·····!」

 

「先生がヤバい!」

 

「先生ぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「●●●●●●●●!!! ●●●!!」

 

 先生は青ざめた表情で私たちの方向に指を指している。

 

「先生!! 後ろ!!!」「君たち!! うし」

 

「「Die(死ね)」」

 

 ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!! 

 

 

 パァン! 

 

 

「·····え?」

 

 セメントス先生が背後から撃たれ、大量の血が窓ガラスに飛散し、ゆっくりと垂れる。血の海が徐々に侵食し始め、生暖かい感触が耳郎の右足を包み込んだ瞬間、耳郎は異変に気づいた。

 

「ぅえ?」

 

 ゆっくりと首を横に向けた耳郎響香の目の前には、酷くグロテスクな血の塊と、巨大な木槌を持った兎の化け物がイた。セメントス先生と戦っていた兎の化け物とはまた別の個体ではあるが、兎とは思えないほどの筋骨隆々ぶりと狂気的な笑いにこの場の人間全員が恐怖を感じた。

 化け物がニタニタと笑いながらゆっくりと木槌を持ち上げると、血の塊が水飴のように引き伸ばされ、分離し、悪臭を放つ。

 木槌の表面には血と黄色がかった髪の毛が付着し、人間の惨たらしい死が染み付いている。

 

「かみな」

 

「耳郎さんッ!!」

 

 呆然と立ち尽くす耳郎響香の真横には、さっきまで見つめていたはずの木槌が存在しており、完全に意表をつかれてしまった。

 時間が断続的に流れ始め、木槌の速度もそれに応じて遅くなる。避ける、と頭の中で考えても、何故か体は言うことを聞かない。危険が目の前に迫っているのに、数センチしか体を動かすことが出来ない。

 終わった、そう感じた耳郎だったが、間一髪八百万が盾を生成し耳郎を強く吹き飛ばしたおかげで生き延びた。

 

「ぐうっ!」

 

「ヤオモモ!!」

 

 だがその代わりに攻撃をくらった八百万は衝撃によって窓ガラスに激突してしまう。弾丸すらものともしない雄英の強化ガラスにヒビが入り、八百万は額から血を流したまま動かない。

 

「Let's killing time!!」

 

 兎の遠吠えに煽られ、耳郎の思考はグチャグチャにかき混ぜられていく。上鳴は死んだ? 八百万が動かない? この化け物は何? 先生はどうなった? 知りたいこと、知りたくないこと、全てが思考の渦の中で回り続け、一行に答えが見つからない。動揺と焦りが、命の危険が、離れる、助ける、動く、動かない、何が正しい? 何が間違い? イマココですべきことは? 誰か助け────

 

「耳郎さん、早く逃げて!」

 

 後方から聞こえる、尾白の声。その一声で耳郎は冷静さを取り戻す。ぼやけていた視界が鮮明になり、現在の状況と、己のすべき行動が見えてくる。

 

「·····皆は?!」

 

「全員もう逃げてるし、八百万さんは僕が担いでる! 後は耳郎さんだけ!」

 

「化け物が峰田くんのモギモギに捕らわれている間に、早く!!」

 

 化け物の方を見ると、化け物の両足と木槌がモギモギで固定され、必死に力技で抗っている様子が見えた。

 

「·····ッ! 今行く!」

 

 耳郎は精一杯足を持ち上げ、皆のいる連絡通路の先へと進む。

 

(上鳴·····!)

 

 ほんの一瞬のうちにして絶命した友人、上鳴電気の笑顔が脳裏に焼き付く。出来ることなら今すぐにでも彼の死を悲しみ、泣き、苦悩し、そして静かに別れを告げたかったことであろう。

 しかしそれを許してくれる時間も、猶予も、ここには無い。

 

「上鳴、また後でね」

 

 チラッと後ろを振り向いた後、涙を拭って走り出す耳郎響香。上鳴はもういない、それは分かっている。分かっているが、ここでそれを認める余裕はない。

 また会えると信じて(思い込んで)、前に進む。

 

「こっからどうする?!」

 

「……足止めならまだしも鎮圧は私達だけでは不可能です。通常通り先生と合流することが優先かと·····!」

 

「だけど、セメントス先生は·····!」

 

「·····」

 

 その一言によって八百万達は深く黙り込み、重く静寂な空気が心を支配していく。

 セメントス先生の最後は窓ガラスが血で覆い隠されてしまったため見えなかったが、セメントス先生が銃口を背中に突きつけられていたことと、その後の長い銃声音から、現実的に考えると生きている可能性は低い。

 そのことを全員が察し、他の先生も同様にやられている可能性も考慮していた。だが、それでも生徒達は先生や他のヒーローが生きているという"希望"をどこかで信じている。

 

 だがそれと同時に、その"希望"を揺らす得体の知れない存在が蠢いていることも無自覚ながら感じ取っていた。

 

「もう嫌だ。」

 

 口田甲司の背中の上でボソッと弱音を吐く峰田。口田は峰田の様子を心配し励ましの言葉を思いつくも、喋るのが苦手なため口に出すことが出来ない。

 気持ちだけでも寄り添おうと、口田は心の中で峰田の安寧を祈った。

 

「階段あった!」

 

 葉隠が大声で呼びかけると同時に、メンバー一同はすぐさま階段をおり始める。早く、早く逃げて先生と合流したら、今戦っている緑谷達や他チームと合流してすぐさま避難するのもアリかもしれない。

 ついさっきまで、ヴィランが来ても何とかなるだろうという何の根拠もない自信が私達を支えてくれていたはずが、いつの間にか消えていた上に得体の知れない恐怖だけを残して私達を置いていく。

 分からない、怖い、だから逃げる。立ち向かうのは、本当に後にひけなくなった時でいい。今はとにかく少しでも生き延びて、救援を呼ぶべきだ。

 音をなるべく立てないよう静かに、そして出来る限り迅速に階段を下りるAチーム。1つ階段を下るたびに血の匂いが増していき、皆鼻を抑えながら先に進む。

 

「これは……ッ!?」

 

「……ッ!」

 

 叫びそうになった耳郎だが、咄嗟に両手で口を塞ぎ声を殺す。……このような光景を見るのは3度目だが、この惨状は今まで見た中で最も酷いと言っても過言ではないものだった。

 廊下を浸す大量の血液、目玉、飛散した内臓、噛みちぎられて原形を失った遺体など、まさにグロテスクを極めたかのような光景。これがただのR18Gのゲームならまだしも、現実なのだからタチが悪い。

 あまりのグロさに耐えきれず、峰田は腹の底から込み上がる吐瀉物を地面にぶちまけた。

 

「……峰田、大丈夫か……?」

 

「……オェッゲホッ、……おい、ここ、ホントに通るのか……?」

 

「……私だって、こんなとこ通りたくない……、おうち帰りたい……!」

 

 泣き始める耳郎響香、その背中を優しくさすってあげたのは八百万であった。

 

「……正直、これは先生でもどうにもならない状況かもしれません。……耳郎さんの言う通り、そのまま逃げるのも手段としては正解です」

 

「そしたら、足止めをしてくれている緑谷達やBチームのこと、見捨てちゃうの?」

 

「……今すぐとは言いません。もし、万が一、もっと最悪の事態が起きた場合、自分だけでも救えるよう、心構えをするということです」

 

「……ヒーローに憧れてここに来たのに、何で俺たちはこんなに無力なんだ……」

 

 尾白は拳を強く握りしめ、1粒の涙を零す。仲間を失ったというのに、その原因となったヴィランを倒すどころか逃走し、今や己を救うだけで精一杯。ヒーロー志望が聞いて呆れるほどの情けなさ、不甲斐なさを尾白は悔やむ。

 

「…………顔を上げてください尾白さん」

 

「私たちはまだ、力も経験も大人より下です。……ですから、ここで落ち込む必要はありません。私たちは私たちに出来ることを、するだけです」

 

「災害発生時の基本は自助・公助・共助。まずは自分を救わなければ、他人を救うことはできませんわ」

 

 精一杯励ます八百万の優しい気持ちが伝わり、尾白は涙を拭い、八百万に感謝する。

 

「耳郎さんも今は辛くても、ここは耐え時。泣いていいのは身の安全が保証された時です」

 

「ヤオモモ……」

 

 キリッとした目付きで前を向くヤオモモ。平静を崩さない彼女の姿はチーム全員に安心感を与えていたが、八百万の心の中は常に不安と焦りで充満していた。だがそれら全てを己の精神力で抑え込み、不安が伝播しないよう配慮していた。

 

(私たちは、オールマイトの姿をずっと見てきました)

 

(ヒーローとは、困っている人達を安心させるために力を行使するもの。私が、皆さんを支えていかなければ……)

 

 友の涙を見過ごせないヤオモモは先陣切って階段を降り、敵がいないか様子を見始める。辺りは静けさに包まれ、先程とはまた別の"見えない恐怖"が、ジワジワと心を削っていくのを感じた。

 

「血の跡が……階段まで続いています。おそらく、この惨状を作り出した存在が1階にいるのはほぼ間違いありません」

 

「……でも、職員室は1階だよ? しかも1回外出てさっきの棟に戻らないといけないし」

 

「どっちみち、行かざるをえないのか……」

 

「待って、私の個性で1階の様子を探ってみる」

 

 涙を拭き、真剣な表情に戻った耳郎響香が個性「イヤホンジャック」を発動し、血の浸っていない床に○○を突き刺した。

 

「……いる。この下に一体、しかもめちゃくちゃデカい」

 

「その化け物は今何をしていますか?」

 

「……食べてる。何食べてるか考えたくないけど、多分、人間」

 

「……じゃあ、また別の階段から降りた方がいいんじゃない? ……危ないし」

 

「けど、職員室までの距離が……」

 

「「……」」

 

 目の前のリスクを避けて安全なルートを通るか、リスク承知でショートカットするか、Aチームは決めあぐねていた。

 

「…………ショートカットだろ」

 

「峰田?」

 

 最初に口を開いたのは、先程まで沈黙を貫き通していた峰田だった。

 

「仮にその化け物がこっちに気づいたとしても、オイラのモギモギがあれば足止め出来る。だから、問題ねぇ」

 

「……怖く、ないの?」

 

「……怖ぇけど、仕方ねぇだろ。爆豪の野郎だって最速で行けって言ってた気がするし……」

 

「峰田が漢気出してる……!」

 

 チームの中で最も根性が欠けてるであろう峰田が、誰よりも勇気を振り絞り、覚悟を決める姿に全員が感化された。

 

「……行こう!」

 

「うん……まだ、怖いけど!」

 

「どのみち敵と遭遇するのは時間の問題、なら、早いに越したことはありませんわ」

 

「……!」コクコク

 

 全員が覚悟を決め、1階へ続く階段に向かっていく。そうなると、必然と血の跡に沿って歩くことになるのだが、耳郎からの前情報もあってか全員の警戒心がかなり高まっていた。あの惨状を生み出した巨大な化け物がすぐ近くにいるということを意識しただけで、心臓の鼓動が早くなる。音を立てないことに集中しすぎて、自分の息遣いが、血の流れる音が、普段の何倍も大きく聞こえる。

 階段を降りきったAチーム、目の前の廊下には血の跡が続いており、そして左側の2つ先のドアへと繋がっている。

 

「ここからは静かに」

 

「「了解」」

 

 八百万を先頭に廊下を進み始める6人。姿勢を屈め、音を忍ばせ、化け物に知覚されないよう慎重に立ち回る。

 化け物との距離が縮めば縮むほど、パキッ、ゴリッ、という音が耳を劈く。咀嚼音と共に聞こえるその音は、おそらく人の骨を噛み砕く際に発せられる音だと何となく察しがついた。それはあまりに気味が悪く、今すぐこの場から去りたいと思うほど不愉快であったが、6人は堪えつつもゆっくり、前へ進む。

 

「キヒッ?」

 

「────ッ!?」

 

 曲がり角から突如現れた異形妖精に驚くAチーム。隠密行動を要求されるこの状況において最も最悪な現象が今、目の前で起きてしまった。

 

「きひひひひひひひひひひひひひ!!!」

 

「くっ!」

 

「伏せて!」

 

 咄嗟にしゃがんだ八百万の背の上を尾白が駆け抜け、襲いかかる異形妖精に尻尾による強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「キイイイイィィィィィ!!!」

 

「ごめん、八百万。これバレたかも……」

 

 八百万の危機は救えたものの、隠密行動は失敗。物音に気づいた化け物がゆっくりと部屋の外へ出始める。

 

「いえ、仕方ありません。ここはもう逃げましょう」

 

「あと尾白さん、助けていただきありがとうございます」

 

「……お互い様さ」

 

「今それ言ってる場合じゃない! 後ろ見て!」

 

 葉隠の言葉に反応し後ろを振り向く6人。そこには、今まで見た妖精のような化け物や兎の化け物とはまた違った、おぞましい怪物が背後に存在していた。

 返り血で所々紅く染まった白い身体、複数の手足に串のようなものを持ち、人を丸呑み出来そうなほどの大きな口と血に染った鋭い歯の数々。例えるなら、突然変異した血まみれの白鯨のような見た目をした化け物が、生気を微塵も感じられない瞳でこちらを覗いている。

 アレが、人を喰い殺した化け物。もはや人の形すら留めていない、正真正銘の怪物の登場にAチームは一斉に立ち上がり、出入口を見据えた。

 

「走れ!!!」

 

 誰かがそう叫んだ時には既に全員走り出しており、化け物も新たな餌を見つけたことに我慢できず、驚異的なスピードで追いかける。

 

 

 捕まったら即終了の鬼ごっこが、開始された。

 

 

 






上鳴電気、死亡。Aチーム残り6名



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