続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。   作:マスターチュロス

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負の感情が溜まると文章がサクサク進む件




プロローグ②

 

 

 

 沈みかけた太陽、窓の外から差し込む夕陽が多くの生徒を照らしている。6時間目の授業も終了し、どこのクラスも担任の先生から明日の連絡を受けていた。

 しかし1年A組の担任は不在により、連絡はほかの先生によって行われた。それ以外は特に異変も無く、ただいつも通り平穏に過ごしていた。

 

 4時23分、イギリス、ロンドン市上空に超巨大な時空の歪みが発生。発生から僅か3秒後に地面が歪みに吸い込まれるようにめくり上がり、ロンドン市内の建物の93%が壊滅。また、歪みの中心部から悪魔の翼を生やした少女が出現。少女は軽く指を鳴らすと、巨大蝙蝠、悪魔、騎士団、魔法使い、龍と、配下と思わしきクリーチャーを大量に呼び出し、さらに崩壊したロンドンの中心に血塗られた紅き城を召喚したのだった。

 

 4時24分、中華人民共和国、上海市にて巨大なゴリアテ人形が出現。ヒーローによる迎撃が行われた結果、人形の反撃により3名のヒーロー及び36名ものの一般市民が死亡。また、同時刻アメリカ、ニューヨークにて巨大な桜が出現。その数秒後、桜の中から日本風の幽霊の格好をした少女が現れた。少女は人々に笑いかけると、一瞬で周囲に存在していたありとあらゆる物質及び生物を喰らい尽くした。

 

 4時25分、フランス、ドイツ、オランダ、インド、オーストラリア、エジプト、ロシア、ブラジル及びその他120ヶ国以上の国々に謎の少女もといクリーチャーが次々と出現。世界全体の死亡者数が指数関数的に増加。各国のヒーローが続々と倒れる事態に一部の国民が大パニックに陥る。

 

 4時26分、日本、雄英高校上空に巨大な魔法陣が出現。中心から大量のクリーチャーに加え、謎の少女が複数出現。多くのクリーチャーは日本全体に飛び散っていったが、一部のクリーチャー及び少女は雄英高校に襲撃した。

 

 パリンッ

 

 パリンッパリンッガシャァァンドゴォォォン!!! 

 

「ッ!? 何だ今の音?」

 

 突然の轟音に切島鋭児郎が反応する。切島だけでなく、他のクラスメイトも同様に驚いていた。

 

《校内に侵入者アリ。警戒レベルは最大のレベル3。教師は全員、生徒にひなnnnnnnnnnnnnnn》

 

 警報がバグり、ブツンと音が切れた直後、再びアナウンスが入る。

 

《あー、亜ー、全ッ校征徒に告グ!! 今スぐそこの窓からヒモなしバんズィージャンプぷをするか、この世のもんとは思えナ最高最悪の悪夢を見るか、今すぬ選べ》

 

 日本語のように聞こえて日本語ではない音声による脅迫は、恐怖より疑惑を呼び起こした。放送室で何が起こっているのか、外はどうなっているのか、今喋っている人物は何者なのか、微塵も分からない。

 

 ただ一人を除いて

 

(午後4時27分、異形の存在、世界の終わり……ッ!)

 

 朝、送られてきたメールを再び確認しようとする緑谷。しかし緊急速報アプリの通知が邪魔でメールの画面にたどり着けない。

 たどり着けないのだが……

 

「なんだ……これ?!」

 

 通知である以上、新聞の見出しと同じように1発で内容が分かる程度に文が省略されている。それ故に詳しいことは通知からでは分からないのだが、そんなことを気にするレベルの問題ではないほどの、嘘のようなニュースが飛び込んできた。

 

【ロンドン、消滅】

 

【上海に突如出現した巨大人形、周辺の建造物を破壊しながら海沿いに南下。死傷者143名】

 

【ニューヨーク、中心街から外に向かって建物が倒壊、荒地化が進行中。原因は謎の少女? 怪物?】

 

【世界各国で大規模な破壊活動が進行中。ヤツらの正体とは?!】

 

【雄英高校上空に謎の魔法陣が出現!? ノンフィクションか?!】

 

「…………こんな嘘のような事件起きるわけが」

 

《起きるんだぬぁこれが》

 

「!?」

 

 緑谷の一人言に、さっきの音声の人物が反応する。そもそも放送室にいるはずの人物が、教室内にいる緑谷の一人言に反応するというのはおかしな話である。

 しかし、誰もそのことに突っ込むことはせず、謎の人物も話を続けた。

 

《今世界がどンな状況か理解していぬぁい平和ヴォケしたヒーローの玉子(藁)にこの俺が暴力的に優すぃく教えてやろう……》

 

《お前らは終わりなんだよヴァァァァァカ!!! はははははははははははは!!》

 

 高笑いが教室中に鳴り響く。しかしそれは可憐で美しい少女の笑い声などではなく、邪悪に満ちた完全なる悪魔の声、他者を弄び破壊し脳髄までしゃぶり尽くすような気色の悪い奇声だ。

 

「意味不明なこと抜かしてんじゃねぇぞテメェ!」

 

 流石の爆豪もこの暴挙を我慢できるはずもなく、憤怒の形相を顔に浮かべスピーカーを睨みつけながら、手の上で小さな爆発を複数回起こしていた。

 

《ま、せいぜい頑張ることだヒーロー諸君。俺はお前たちを応援している、何故って? 俺はお前らみたいな弱者がいっしょつけんめち地べたを這いずり回るのがだいすこだからな。せいぜい足掻け、でなければ》

 

《死ね》

 

 その瞬間、教室の窓が一斉に割れた。超能力などではなく、何者かが物理的に破壊し侵入したのだ。

 ガラスの破片を踏み、突き刺し、それでもなお立ち上がる侵入者に、クラスメイト全員が怯え慄く。

 侵入してきたのがヴィランならまだマシだった。まだ人の姿をしているだけ、人としての制約が存在するからだ。

 しかし目の前の敵は違う、1人は顔に手足が付いた2頭身かつ異常に肥大化した右腕で巨大なハンマーを携えた化け物。

 もう1人は比較的人間に近い体型だが、背中から虫のような翼が生え、カタツムリのごとく目玉が飛び出し、右手に斧を携えている。

 他にも身長が異様に低いが、羽を生やし武器を携え、終始下卑た笑い声を上げる化け物が複数体、教室内に侵入していた。

 

「…………君たちはいったい、何なんだ……?!」

 

 緑谷は怯えながらも、相手の正体を探る、否、この終わりなき不安と恐怖の渦をかき消すべく、知識を、情報を欲した。

 しかし、その言葉に耳を貸すこともなく、化け物共は一斉に襲いかかる。

 触れれば全身を弾け飛ばすハンマーの一撃が、整備されてないが故にデタラメに傷を広げ楽には死なせない狂気の斧が、槍が、クラスメイトに牙を剥く。

 緑谷は咄嗟に両腕でガード、しかしそれは完全なる悪手。刃物相手に素手で防御など、腕を生贄にしているのと変わらない。緑谷はあまりの状況の変化に、思考が一歩遅れてしまっていた。

 

 ガキンッ、と重い金属同士がぶつかり合ったかのような音が鳴り響く。

 緑谷は閉じていた目をそっと開けると、そこには切島鋭児郎がいた。

『個性:硬化』によって全身を硬化させ攻撃を防ぐ切島の姿が。

 

「ッッ! ぉうらァッ!!!」

 

 化け物の一撃を弾き返し、仲間の窮地を救った切島。化け物が後退したが、その隙を轟焦凍は見逃さない。

『個性:半冷半燃』の能力を使い、教室内に巨大な氷の壁を形成し、隔離することに成功した。

 

「……みんな、今のうちに逃げるぞ!」

 

 その言葉に全員が反応し、咄嗟に教室のドアの方へと走っていく。自分の命が失われる恐怖、状況を把握していないことによる焦りが絡み合い、ほとんどの生徒がパニックに等しい状態であった。

 

 とにかく逃げることだけを考えた結果など、たかが知れているというのに。

 

 ぴゅんッ、ぴゅぴゅぴゅんッ

 

 一番最初に教室を飛び出した蛙吹梅雨と砂藤力道が、突然力が抜けたように倒れる。生物の生存本能か否か、クラス全員がピタリと教室に出ることをやめた。

 

「蛙水さん?! 蛙水さんッ!!」

 

「梅雨ちゃん!!!」

 

「砂藤くん?!」

 

 突然の出来事で頭が回らない1年A組の生徒たち。廊下に出た二人は突如何者かの狙撃を受け、地に伏した。全身には無数の小さな風穴のようなものが存在し、地面には針のようなものが落ちている。

 ドクドクと流れゆく生命の雫を、ただ眺めることしか出来ない憐れな生徒(子羊)達。綺麗に整備されていたはずの廊下は鮮血の海に沈み、夕焼けは酷く残酷に、世界を照らしていた。

 

「そんな……嘘だ。蛙水さんと砂糖くんが、し、死!」

 

「嫌! 嫌ぁぁ!!!」

 

「そんな、まさか……ッ?!」

 

「どーなってんだよ!! わけわかんねぇよ!!」

 

 緑谷もお茶子も八百万も上鳴も、他のみんなも、仲間の、クラスメイトの突然の死を受け入れることが出来ず、混乱はさらに拡大する。

 そんな中、冷静に動くことが出来たのはやはり彼らであった。

 

「今気にするとこはそこじゃねぇ、敵の居場所だ」

 

「何言ってんだよかっちゃん!! 蛙水さんが、砂糖くんが、……二人が死んじゃったんだぞ!?!」

 

「黙れクソデク! テメェも死にたくなければ脳みそを使え!!! 俺達は今、命を狙われていることに気づけこのバカ!!」

 

「でも!!」

 

「爆豪の言う通りだ。今は生き残るのが先決、命を惜しむのは今じゃない……」

 

「轟くん!!」

 

 三人のやりとりが繰り返される中、少しずつクラス内の混乱が静まっていく。一旦何もしないことで、狭まっていた視界が少しずつ広がっていく。冷静さを取り戻した生徒は、とりあえず緑谷と爆豪の喧嘩を抑えた。

 

「この廊下のどこかに、ヤバいヤツがいるってことだよな?」

 

「…………どうやって確認する?」

 

 上鳴が酷くどうしようもないような表情で話しかける。『どうやって』と濁しているが、正確には『誰が』確認するかと聞いている。しかし、ここで名乗りあげるものは正解を掴んだ賢者か命知らずの愚者である。

 廊下に出たその瞬間から行われる正体不明の攻撃、触れれば全身が穴だらけになって死ぬかもしれない凶悪無慈悲な攻撃を誰が受けたいと思うだろうか。

 

「俺が確認する」

 

 そう言い出したのはクラスで最も身長の高い男、障子目蔵。彼は『個性:複製碗』の持ち主で、両腕の後方についた触手から体の一部分を複製できる。

 

「お前……大丈夫なのか?」

 

「安心しろ、複製した器官を攻撃されても重症にはならない」

 

「…………任せた」

 

 上鳴から期待を受けた彼は目の前で触手から『眼玉』を複製すると、壁際からそっと外を覗かせた。

 

「……何か、見えた?」

 

「廊下に一人、誰かが立っている。……人っぽいが、異様な雰囲気だ。両手に針のようなものを持っている上に、顔が……無い?」

 

 障子が敵の正体を把握出来ずにいたが、その直後に複製碗に異常が起きた。

 とりあえず触手を引き戻した障子であったが、

 

 眼玉には数十本の針が、眼玉全体を余すことなく突き刺さっていた。

 

「…………マズイな」

 

 コツ……、コツ……、コツ、コツ、コツ、コツ!!! 

 

 近づいてくる足音、明らかに自分たちの位置を把握している。全員の鼓動が足音に比例して早くなっていく。

 

「早く逃げよう!!」

 

「けど廊下は危ないって!!」

 

「それ以外に出るとこないでしょ!?」

 

「窓だってさっきのヤツらがいるんだぞ!! もう、廊下しかねぇじゃん!!」

 

 落ち着いたはずの混乱が再び息を吹き返し、生徒を絶望の底に落としていく。

 まず、逃げるには廊下を出て走り抜けるか、氷の壁をとっぱらって窓から逃げるかの二択が存在する。しかしそのどちらも危険かつ無謀に等しい選択であり、どちらにしろ必ずといっていいほど人が死ぬ。

 果たしてどちらを選ぶのか。

 

「だったら、この下をぶっ壊せばいいに決まってるよなぁ!?」

 

 爆豪は『個性:爆破』の力を使い、教室の地面を突如爆破。その後、轟が穴を氷で塞ぎ、脱出に成功。

 廊下に出ることなく、クラス全員はひとつ下の階に降りることが出来たのである。

 

 しかし、降りた下の教室には3体の化け物と、それらに血と臓物を貪り食われる5人の生徒の死体が存在した。

 

「キヒヒヒヒ!」

 

「アハハハハ!」

 

「ニク! サナカ! トモダチ、イッパイ!」

 

 口から血を垂らしながら迫り来る化け物に対し、緑谷、爆豪、轟はそれぞれの個性を発揮した。

 

「50%デトロイトォォォスマァァァッシュ!!!!」

 

徹甲弾(A・P・ショット)!!!」

 

「……ッふん!!」

 

 受け継がれし偉大なる拳が1匹の化け物を窓の外の遥か向こうまで吹き飛ばし、高火力の爆発から繰り出されるエネルギーが別の化け物を黒板もろとも消し炭にし、全てを停止させる冷酷な冰気が化け物を氷像へと変えた。

 

「はぁ、はぁ、危なかった……!」

 

「…………どこもかしこもこんな感じなのか!」

 

 息つく暇もなく襲いかかる敵たちに、翻弄される緑谷と轟。襲われてるのは自分たちのクラスだけでないことが判明したが、それはすなわち、誰も助けに来てくれることがないということを示している。

 

「おい耳野郎、今すぐ校舎内にいる敵の数を調べろ」

 

 しかし爆豪は冷静だ。こういう点において冷静になれるのは、生き残る上で重要となる。

 

「……」

 

「おい、話聞いてんのか耳野郎」

 

 爆豪が強引に耳郎響香の肩を掴んだ。が、響香はらしくも無い様子で振りほどき、頭を地面に強くぶつけながら泣き叫ぶように倒れ込んだ。

 

「うっさい!! うっさいうっさいうっさい馬鹿!! もう嫌だ、散々だ!!! 訳の分からない放送が起きて! 気持ち悪い化け物が出てきて! クラスメイトが殺されて! わけがわかんない!! 今日だっていつも通りお家に帰って、ご飯食べて、家族と幸せに過ごしながら寝るつもりだったんだ!! なんで!! ……なんで、こんな……こんな……ッ!!」

 

 泣き叫ぶ1人の少女 、それに寄り添う1年A組の女子達。

 誰もが同じことを思っていた、どうして自分たちの日常が壊されなければいけないのかと。

 1人の少女の涙につられ、他の少女達もつられて涙を流す。女は絶望の縁に立たされ、男は終焉の狭間を彷徨う。

 

 希望なんて存在しない、幸せなんてありはしない。

 

 そう、感じてしまう世界が、ある日突然訪れた。

 

 

 ■

 

 

 それは非常なくらい突然だった。

 

 何の前触れもなく、ある日ヤツらは僕たちの世界に現れた。

 

 

 いいや、違う。()()()()()()()

 

 僕らがそれに気づかなかっただけだった。

 

 それに、気づかないよう守り抜いた人がいた。

 

 

 

 いたのだが、

 

 

 

 

「キャァァァァァァァァァ!!!!!!」ゴシャッ

 

「誰かっ!! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!」ミチミチ

 

「嫌ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」ペキッ

 

「オ"ー"ル"マ"イ"ト"ッ! オ"オ"(ry」グシャッ

 

 

 

 

 

 絶叫が絶叫を呼び、強者が弱者を蹂躙する世界。

 

 

 世界は、残酷にも変わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






残り 78億6518万8437人


プロローグ終了。グロ表現ってとても難しい。
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