続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。   作:マスターチュロス

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【あらすじ】

ホワイトハウスを襲撃し、大統領の警備部隊を容易く全滅させた異形魔理沙。果たして彼女の目的はいったい……


【異形魔理沙のスペック】

・基本的になんでも出来るが、それ故に油断する。
・相手の体の一部分(髪の毛でもOK)を食べると、その相手の能力を使えるようになる。
・427種類の姿にそれぞれ変身出来る。
・個性:抹消の効果を受けるのはあくまで個性だけであって他の異能や超能力は消されない。
・頭のおかしい根っからの戦闘狂。
・異形霊夢が好き。



異形魔理沙編:その1

 

 

【ワシントンD.C.中心街】

 

「───ッ! 次から次へとヴィランが出やがる! 今日はなんて日だ!」

 

 とある一人のヒーローが逃げる一般市民を非常用シェルターに避難させながら、この最悪の現状に唾を吐く。

 

 午前3時27分、何の前触れもなく出現した化け物集団は僅か15分で死者134名、重傷者162名、その他軽傷者131名、そして36棟の建造物を崩壊させ、人々に危害を加えていた。

 

 ワシントン在中のヒーローがこの異常事態の対処に向かったが、敵の数が多い上にほぼ全ての敵が並のヒーローでは返り討ちに合うほどの戦闘力を持っており、多くのヒーローが苦戦していた。そのため、ワシントンヒーロー公安委員会はヒーローの増援を要請、到着までに出来る限り市民を迅速に避難させ、戦闘力の高いヒーローは率先して化け物の進行を食い止める作戦へと移行した。

 また警官及び軍隊も出動し、銃撃による制圧を試みるが、銃弾を受けた化け物はしばらくするとまるで何事も無かったかのごとく傷が再生し、再び襲いかかる事案が発生。8名死亡、17名が重傷を負った。

 

 現在、ヒーロー、警官、軍隊の共同戦線により化け物の鎮圧が行われているが、化け物共の再生能力が戦闘を長引かせ、完全鎮圧まで時間がかかりそうだ。

 

「あの……」

 

「何?」

 

 後ろを振り向くと、そこにはまだ幼い少女がクマのぬいぐるみを携えながらヒーローコスチュームの裾をつまんでいる。

 

「君、どうしたの? 家族とはぐれた?」

 

 怯える少女に目線を合わせ、話をする。

 

「今、向こうで何が起きてるの? パパとママは?」

 

 ふるふると、幼いながらも両親の安否を心配する彼女。そんな彼女の悲しげな顔を放っておけず、ヒーローは彼女の両手をそっと握る。

 

「……大丈夫、君のパパとママはヒーローが必ず救ってくれる。だからそれまで避難しているんだ、場所は案内してあげる」

 

「……どんなヒーローがいるの?」

 

 幼子の質問に、一般ヒーローはまるで自分のことのように語り始める。

 

「今戦っているのは皆も知ってるNo.1ヒーロー『スターオブストライブ』と稀代の天才『パワードビーム』、『ヘルタランチュラ』に『マッドネスグリーン』、エージェント『アサシンズシャドウ』に『ゴッドサンダー』、不死人『ライフリバイブ』、超人『ハイパーマン』、そして『トップオブアメリカン』が加わった最強の布陣で対処しているよ」

 

 一般ヒーローのテンションは最高潮に達している。

 

「ハッハッハ! 敵も馬鹿だよなぁ、軍事力もヒーローの在籍数も圧倒的にトップクラスのアメリカで集団テロとか、ゴリラに腕相撲しかけるようなものさ!」

 

「しばらくすれば騒動もおさまるはずさ。だからそれまでの間は僕達一般ヒーローが市民の安全を確保しなきゃね!」

 

 そう言って手を差し伸べる一般ヒーロー、どうやら避難所まで誘導してくれるそうだ。

 自分の力を弁え、自分の出来る限りの貢献をしている。心配させないための気遣いも出来るし、なんて立派なヒーローなのだろうか。

 

 少女はそっと、一般ヒーローの手を握る。

 

 と、見せかけて男の心臓目掛けて巨大なネジを無理やりねじ込んだ。

 

「は?」

 

「もぅムりまシ"げンクァイ英語嫌い」

 

 目はぐるんっと回転し、首は一回転、二回転、三回転ほど捻れながら怯える一般ヒーローに視線を合わせ、背中が縦に割れると、中から魔女の格好をした金髪の女性が現れた。

 

「HalloWarld! AND deeth!」

 

 危険を察知したころにはもう遅い。男の四肢にはそれぞれ巨大なネジが突き刺さり、多量出血でショック死寸前である。

 

「確かにアメルカはつぉい、日本はヒーロー多いがどいつもこいつも貧弱だ。が、アメ公はそうじゃない。戦勝国だからこその根性ぐぁある」

 

「でも大丈夫! なずぇってええええええええ?」

 

「私が来た」

 

 ボロボロの服装、長い金髪、使い込まれた魔女の帽子、不自然に黒い顔、そして底知れないオーラ。

 

 その姿はあらゆる英雄をも絶望させ、抗う力すらも奪い、全てを暴力でねじ伏せる究極の存在。

 

「情報提供あリがたう、一般モブヒーロー君」

 

 異形魔理沙がワシントンD.C.中心街に出現した。

 

 

 

 ■

 

 

 

「おいおい、どうした化け物共? もう終わりか?」

 

 機械ヒーロー『パワードビーム』が鋼鉄製のネットに絡まった異形妖精達に話しかける。

 

「グルルルルル……!」

 

「こりゃダメだ、話になんねぇ。まだウチの可愛いペットの方が会話になる」

 

 パワードが呆れつつ、一体の化け物をネット越しから引っ張り、無理矢理舌を出させる。

 

「いつぞやの突発性ヴィランってわけでもなさそーだな。つーかお前ら本当に人間か?」

 

 不自然で基本的に小さい身長に、昆虫のような羽、見た目は最悪だが特徴だけでいえば妖精とも言えるような構造にパワードは目をつけた。

 

「おいパワード、スパイダー、それに他のみんなも聞いてくれ」

 

 声をかけたのはアメリカで1、2を争うほど人気の超人気ヒーロー『トップオブアメリカン』。

 アメリカでNo.3の実力者であり、その名に恥じぬ(ある意味恥かもしれないが)功績をいくつも挙げてきた彼だが、今回に関してはかなり深刻な顔つきをしていた。

 

「どうしたリーダー、顔色悪いぞ?」

 

「すまない、あまりの異常事態に流石の俺も動揺してな……」

 

 悩むリーダーの姿に驚くチームのメンバー、普段見せることのない彼の表情が事態の深刻さを表していた。

 

「何があったんだ?」

 

「……ニューヨークが、滅んだ」

 

「「は?」」

 

 意味不明なリーダーの発言にまたもや驚かされるメンバー達。

 

「ニューヨークだけじゃない、ヒューストン、ロサンゼルス、ラスベガス、シアトル、デトロイト、マンチェスター、バーミンハム、リトルロック、シカゴ、コロンバス、ボストン……アメリカのほとんど都市で甚大な被害が出ている」

 

「おいおい、戦争でも起こす気か?」

 

 人類史上最大規模のテロ案件に流石のメンバー達もゴクリと唾を飲む。

 

「アメリカだけじゃない、イギリスやフランス、ドイツにロシア、インド、インドネシア、オーストラリア、中国、日本、ブラジル、アルゼンチンまで全てだ」

 

「世界滅亡の危機、つまり俺たちの出番って訳だな」

 

 危機的状況を認識するマッドネスグリーンに対し、全員が同様に頷く。

 彼らは過去に幾度もアメリカを、いや世界を救ってきた。街を覆うほど巨大な悪の戦闘兵器、大量のヴィラン、宇宙からやってきた最強の侵略者etc、そして今回のヴィランによる無差別攻撃、まさに正義のヒーローのために現れた最高のやられ役がやってきたということだ。

 

「さっきの敵は一体だけならさほど脅威にはならないが、集団で襲いかかられるとかなり厄介だ。傷を負わせても再生される以上、捕縛用のアイテムか何かで拘束することが望ましいのだが、あいにく3つしか持っていない。どうしたものか……」

 

「少し待って、リーダー」

 

「どうした、アサシンズシャドウ?」

 

 引っかかる点があったのか、アサシンズシャドウはトップオブアメリカンの言葉を制止させた。

 

「さっきニューヨークが滅んだだとか、アメリカの洲全体が甚大な被害を受けたとか言ってたけど、さっきの敵と同レベルの個体が起こしたにしては違和感があるわ。いくら数が多くてもあの程度じゃ大規模な破壊活動は起こせない」

 

 アサシンズシャドウが真っ当な意見を挙げる。彼女の言い分は至極その通りであり、こんな短時間で街を壊滅させるほどの力をあの化け物たちは持っていない。何か別の要因が働いている可能性が高いと、アサシンズシャドウは感じ取った。

 

 彼女の意見を聞いたリーダーは少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと口を開いた。

 

「────あぁ、それはだな」

 

 

 

「俺みたいな例外がいるからな」

 

「「?!」」

 

「あばバばばbばばばaばばばばbbbbbb」

 

 ミチミチと、リーダーの身体が縦方向に裂け始め、中から金髪の魔法使いが現れた。

 

「Hallo? Hew are yu?」

 

 発音が可笑しいながらも、金髪の魔法使いは礼儀正しく挨拶をした。

 

「貴様、リーダーに何をした!?」

 

「日本人か……?」

 

「コイツが新たな敵か。分かりやすくて助かるよ」

 

 しかしヒーロー側は聞く道を持たず、それぞれ金髪の魔法使いに対して憤慨したり、正体を探ろうとしたり、戦闘準備を整えたりするなど、反応はバラバラだった。

 

(質問を質問で返すな、と言いテいところどォがまぁいい。今回は祭りだ、母上からのミッションもあリが、それ以上にここまで大規模の殴り合いはそうそうねぇ。遊びがいがあるってぇもんだ)

 

「コイツ何言ってんだ?」

 

 金髪の魔法使い、もとい異形魔理沙の言葉が直接脳内に流れ込んだものの、誰にも理解されることはなかった。

 

「それより聞かせてほしいんだけど、本物のリーダーは何処なの? 場合によっては貴方を拘束する必要があるのだけど」

 

 自前の拳銃を敵に向けつつ、アサシンシャドウは問いただす。

 

(答える必要も無ければ、答える義理もねェ。強ィて言うなら、今ごろ解体ショーでも殺ってんじゃないか?)

 

 異形魔理沙は両手を左右に広げ、知らないとでも言いたげなポーズをわざとらしく取っている。

 そんなふざけた態度にヒーロー達は怒りに呑まれることはなく、冷静に武器を構える。

 

「────貴方をトップオブアメリカン殺害の容疑で拘束させてもらう」

 

(オイオイ、死ぬぜ? アイツ。死亡フラグビンッビンッじゃねぇか。元気ハツラツか?)

 

「お前のその意味不明なセリフは聞き飽きた」

 

(あっそう。即席3分cookingで作られたア○ンジャーズモドキのお前らがどこまでヤレるか楽しみだよ)

 

 漆黒の瞳から邪気が溢れ始めた直後、異形魔理沙の周囲が突如歪み始める。空間が捻れ、全身から暗黒のオーラを噴出する異形魔理沙を前にし、ヒーローは一瞬たじろぐ。

 その最中で、最も早く行動したのはアサシンズシャドウだ。

 

「はァッ!!」

 

 胸から二丁拳銃を取り出したアサシンシャドウは即座にリロードした後、前進しながら異形魔理沙の両肩に照準を合わせる。

 

(喰らえッ!!)

 

 放たれた2発の弾丸が異形魔理沙の両肩に着弾した。真っ赤な血液が飛び散り、よろめいた隙にアサシンシャドウは両足に狙いを定め、弾丸を放つ。

 アサシンシャドウの特攻が戦闘の合図となったのか、他のヒーローらもアサシンシャドウをサポートするように立ち回る。近接格闘が得意なマッドネスグリーンは異形魔理沙の側面へと移動し、中〜遠距離の戦闘が得意な

 パワードビームは空中から援護射撃を撃つ為に飛行する。

 アサシンズシャドウがさらに放った2発の弾丸が異形魔理沙の両足に当たると、シャドウは即座に腰から「スタンガンブレード」と呼ばれる強力な電流を流し込む短剣のようなものを素早く異形魔理沙の首元に当てた。

 

(あま)いな)

 

 異形魔理沙は銃弾を撃ち込まれて動くはずのない左手で、さも平気とでも言わんばかりに握り拳をつくり、スタンガンブレードを弾き飛ばす。

 その直後、異形魔理沙の右手から光る鍵のようなモノが現れ、その取っ手を握り鍵を前に突き出し、言い放つ。

 

「スマブラ参戦おめでとう」

 

 再び訳の分からないことを言い放つ異形魔理沙。ふざけた態度をしているが殺意は依然として変わらず、鍵のようなモノの先にエネルギーを集中させ何かを放とうとしている。

 

「クッ!」

 

「避けろシャドウ!!」

 

(封印してやるよ、二度とMARV○Lをバカに出気ない人本にしてやる)

 

「そうはさせねぇ!」

 

 鍵から放たれる淡い紫色の光線がアサシンズシャドウに触れるかと思いきや、光線は僅かにアサシンズシャドウの左側に逸れてしまう。

 異形魔理沙のエイムがゴミすぎた、というわけではなく、ヘルスパイダーの個性『蜘蛛糸』によって右手首から放たれた蜘蛛の糸が異形魔理沙の右肘に付着し、引っ張られたためであった。

 

(おめェスパイダーマ゜ッ!)

 

「フンッ!!」ドゴォンッ!! 

 

 既に背後に回っていたヘルスパイダーに視線を向けた瞬間、側面から個性によって凶暴走状態になったマッドネスグリーンによる強力なショルダータックルが炸裂し、異形魔理沙は5メートルほど遠くまで吹き飛ばされる。

 

(───痛てぇなァおい。俺じゃなったら死んで……)

 

「逃がさねぇぜ?」

 

 吹き飛ばされ、異形魔理沙が立ち上がる前にパワードビームが空中から威嚇射撃と同時に特殊電磁波ドームを形成し、異形魔理沙をドームの中に閉じ込める。

 

(コレも個性か?)

 

「いいや、俺の()()さ」

 

(それはザンネン)

 

 諦めたような表情でパワードビームが作った特殊電磁波ドームに触れようとする異形魔理沙。その直後、全身に強力な電流が流れ始める。

 

「おっと、ソイツに触れるのは止めておいた方がいい。感電して黒焦げになりたくないならな」

 

 異形魔理沙は黒焦げになった右腕を見つめると、クスクスと笑い始めた。

 

(……あ〜〜はいはいなるほど。これでヴィランを殺さずに手甫まえて警察に売り飛ばす寸法ね理解した)

 

 うんうん! と、わざとらしく上下に首を振り、手の上に顎を乗せる仕草をした後、異形魔理沙は大きく息を吸い込んだ。

 

「スゥゥゥゥゥゥ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そして盛大にため息をついた。

 

(あぁ、まったくどいつもこいつもヘタレ能無しchikinで笑えるぜ。失神? 感電? その程度の攻撃でこの俺を倒せるとでも思っているのか?)

 

(教えてやろう、お前らが相手にしている敵がいかに強大で、邪悪で、最強なのかをな)

 

 異形魔理沙が立ち上がると同時に特殊電磁波ドームはあっという間に瓦解し、何事も無かったかのように平然とポッケに手を突っ込みながら、こちらに向かってくる。

 

「おい、止まれ!」

 

(止まれと言って止まるルヤツはただのカバだよ)

 

「止まらなければ殺す、と言ったら?」

 

(逆に言わせてもらうが、俺に殺されたくなければ今すぐ俺の前から消えな)

 

 異形魔理沙は歩みを止めることなく、徐々に近づいてくる。

 

「ウガァァァァァァッッ!!!」

 

「マッドネスグリーン!」

 

 痺れを切らしたのか、未だ凶暴走状態のマッドネスグリーンが強力なショルダータックルを噛ますべく、肩を突き出し前傾姿勢を保ったまま勢いよく異形魔理沙の方へと向かっていく。

 強力なタックルが異形魔理沙の全身を粉々に粉砕しながらはるか遠くまで吹き飛ばす、そう予想していたヒーロー達だったが、現実は全くもって違った。

 タックルが届く僅か1m半の距離でマッドネスグリーンは突如停止し、大量の血を流しながら地面に伏してしまったのだ。

 

「マッドネスグリーン?! どうした? しっかりしろ!」

 

「何が起きた?!」

 

「────」

 

 何度声をかけても起き上がらないマッドネスグリーンの傍で、異形魔理沙はクスクスとまた笑みを浮かべる。

 

(ククク、天才も暴走すればただの単細胞か。研究者ならまず観察と考察を交えるべきであろうに)

 

「────よくもグリーンを!!」

 

 仲間を馬鹿にされ激昂しかけるヘルスパイダー。個性を発動し糸で引き寄せてぶん殴るつもりだったが、その行動はアサシンズシャドウによって遮られる。

 

「何をするシャドウ! アイツは俺たちの仲間を!」

 

「正体不明の個性でマッドネスが殺られたのを、貴方は見てなかったの? 迂闊に行動すれば殺られるわ」

 

(それは半分正解だが半分不正解だな。俺みたいなチート能力者を相手にする時は基本2択、一つは即殺、もう一つはその能力者に対抗出来るほどの耐性及び能力を身につけること)

 

 お節介なのか、わざわざ説明し始めた異形魔理沙に対し、アサシンズシャドウとヘルスパイダーは黙してしまった。

 

(そして一番やってならねぇことは、相手の様子を窺って隙を晒すことだ。───まァ、つまりィ?)

 

 徐々に近づいてくる異形魔理沙、その右手の中で発光する謎の球体が形成される。

 

( こ う い う こ と だ )

 

 異形魔理沙が謎の球体を握りつぶした瞬間、手の中で淡い光が漏れたと同時に、アサシンズシャドウの身体が内側から盛大な爆音と共に大爆発を起こした。

 

「ぐぁっ!!」

 

「嘘……だろ?」

 

 強烈な爆風によって吹き飛ばされ、何度も地面に打ち付けられながら転がっていくヘルスパイダー。何が起こっているのかさっぱり分からないまま、二人の仲間が呆気なく死んでしまい、自身の無力感に苛まれる。

 

(おかしい、明らかに個性の範疇を超えている)

 

 パワードビームは上空から異形魔理沙の行動を見ていたが、彼女の個性は不自然過ぎることに気がつく。

 

 個性というのは基本的には身体機能の一部であり、いわば身体のどこかしらの部位に依存した超能力である。炎や氷が出せるのはあくまで身体の中にそういった器官があるおかげであって、決して魔法のような代物ではない。

 どんな個性であろうと体内から体外、または体外から体内という流れを崩すことは出来ない。噴出または吸収の動作が見られない個性も存在するが、そういった個性は基本"直接相手に触れる"などといった体を使ったアクションが必要となる。

 しかし今回の触れずにマッドネスグリーンの全身を傷だらけにした攻撃や、球体を破壊することでアサシンズシャドウの身体を内側から破壊するという攻撃はそういった動作とはかなりかけ離れている。触れてもいなければ、何かを噴出したり吸収したりしているわけでも無い。

 身体機能に依存しない"個性"、それはこの世で最も珍しい"概念系"の個性であり、それを持つのは世界でたったの〈該当データ無し〉である。

 

 その概念系の個性を2つも使用した彼女、果たしていったい何者なのか。

 

(死にゆくお前たちに種明かしをしてやろう。そこの緑色の筋肉達摩が死んだのは俺がパクッ…………考え編み出した■■■■■■■■■■■■■■■■■番目の能力、『致死武器魔魅レ(スカーデッドパラダイス)』によるものだ。俺に近づけば近づくほど、お前が過去に受けたあらゆる傷跡がみるみる開く能力であり、あらゆるってのはもちろん身体だけでなく()()()も今口まれる。最高にcuolだろう?)

 

(そしてそこの澄ましたクソビッヂウーマンが爆散したのは『ありとあらゆるものを破壊する程度(フランドール・スカーレット)の能力』によるものだ。対象者から"破壊の目"という、"相手の弱点そのもの"を手のひらに顕現させ、破壊することで対処者を木っ端微塵に消し飛ばす能力。これを使うには相手を視認する必要があるが、たいした問題じゃあない。"千里眼"でも使えば誰であろうと粉々に粉砕できる)

 

(分かるか? お前らは最初っから勝ち目がいっっっっっッッッッッッッッッッッぺン足りとも存在し無ぇってことがよ!!)

 

 HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!! 

 

 

 盛大な高笑いをする異形魔理沙の前で、膝をつき手を地面に当てたまま立ち直れないでいるヘルスパイダーと、唇を力強く噛み締めるパワードビーム。彼ら二人は本能的に察してしまったのだ、圧倒的強者との実力の差を。

 

(さぁ!! 最髙に楽しいショーの初まりだ!!!)

 

「クソッ! 少しでも仇を……!」

 

(ザラキーマ)

 

 脳内で謎の言葉とレトロゲームの効果音のようなものが流れると、パワードビームとヘルスパイダーの足元から淀んだ漆黒の手のようなものが足首を掴み、下半身から上半身へと手を伸ばしていく。

 

「止めろ…………止めてくれ! 死にたくない!!」

 

「おい嘘だろ? 冗談じゃねぇ、俺には帰りを待っている嫁さんと娘がいるってのに……ッ!」

 

 忍び寄る死神の手から必死に抵抗する二人を前に、異形魔理沙はニコニコとした表情で彼らを見つめていた。

 漆黒の手が頬まで届いた瞬間、地面から本体のような人型の概念的存在が二人の前で姿を現す。

 髑髏の頭、ボロボロの布、無数の細い腕、その全てが闇の粒子で構成されたその存在はまさしく"死神"と呼べるものに限りなく近い。

 "死"そのものが来たことを本能的に察した二人だったが、理解した時には既に遅く、身体は徐々に凍え、全身を震わせることしか彼らには許されない。

 

「タス……ケ…………」

 

 願いなど届くはずもなく、二人は静かに地面に倒れていく。綺麗な状態のまま残された魂の抜け殻は、時間の経過共に徐々に崩れていき、最後は骨だけを残して消えていった。

 

「さーて、邪魔者はタヒんだ。後は()()だが、こんくらい暴れればそろそろ来ても可笑しくねェな」

 

「第6次幻想破壊の前に()()だけは殺しておく必要があるッて、母上がそう言ってたからな。他の連中はどぅせ役に立たねェし、ここは前作主人公を殺すた主人公として俺が元頁張らねぇとな!」

 

「ま、それが終わったらこの世界で適当に個性乱獲して研究の材料にでもすっかァ」

 

 先程までの邪悪なオーラは完全に消え、異形魔理沙はのんびりと歩き始める。その周囲は戦闘の余波により大部分が崩壊し、血と臓物と死体で溢れていたが、かまうことなく突き進む。

 

「グギィィィィ!!」

 

 呻き声が聞こえた方向に目を向けると、そこにはヒーロー達によって捕らわれた異形妖精達が存在した。

 

「そういへば居たな、お前ら。忘れてたわ」

 

「────────おらよッ!」

 

 異形魔理沙は妖精達に近づくと、縛られた鋼鉄製のネットを素手で引きちぎり、妖精達を解放する。

 

「キィ! キィ!」

 

「勘違いするな。これは俺が母上からのミッションをこなすための先行投資だ。分かっとらサっさと行け」

 

 シッシ、と離れるよう促す異形魔理沙に異形妖精達はペコリとお辞儀をすると、手を振りながら立ち去っていった。

 その後ろ姿を見つめながら、誰にも見られないようこっそりと手を振った後、異形魔理沙はワシントンDC中心街から静かに立ち去っていく。

 

 

「思ったより随分と仲間意識の高いヤツじゃないか。もう少しド悪党だと思っていたよ」

 

 

 背後から突如聞こえた謎の声、そして背中を突き刺すような視線を感じた異形魔理沙はゆっくりと後ろを振り向く。

 その声の正体に異形魔理沙は驚き、声の主は異形魔理沙の驚いた様子を気にもとめず話を続けた。

 

「だが私のダチを殺った以上、お前を許すことは決して無いがな」

 

「─────コイツは驚いた。そっちから来てくれるたァ願ったり叶ったりと言ったところか」

 

 異形魔理沙が目を見開き、警戒する存在。金髪を靡かせ、女性であるにも関わらず筋骨隆々な肉体、赤と白のストライプに加え襟などに装飾された星の数々、オールマイトと同様"画風"が違うと表現されるほどの気迫をもったこの存在はまさしくアメリカそのものといっても過言ではない。

 かつてないほどの危機に陥ったアメリカを救うべく立ち上がったアメリカ最強のヒーロー、『スターアンドストライプ』がここに、参上した。

 

「異形魔理沙、お前はアメリカNo.1ヒーロー、スターアンドストライプが打ち砕く」

 

 鬼の形相で睨むスターアンドストライプに対し、異形魔理沙は態度を崩すことなく応対する。

 

「ちぉどお前の能力が欲しかったところだよスターアンドストライプ。その能力、けっこー魅力的だからさァ」

 

「死ぬまでパクっていい?」

 

 

 アメリカ最強のヒーローと異形郷最強格の魔法使いが今、激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ちょい解説

・致死武器魔魅レ(スカーデッドパラダイス)
→めだかボックスのキャラクター「志布志飛沫」の過負荷『致死武器(スカーデッド)』の強化版。近づくほど古傷が開くことに加え、視認するだけで誰であろうと古傷を開かせることが出来る。また、スカーデッドはコントロールを外すことで物体の補習箇所などを古傷としてみなし建造物などを倒壊できるが、スカーデッドパラダイスはコントロールを外さなくても可能。

・ありとあらゆるものを破壊する程度の能力
→東方Projectのキャラクター『フランドール・スカーレット』の能力。説明は作中通りであり、これは動物に限らず物や結界など全てが効果対象に当てはまる。どれほどの防御力を誇ろうと"弱点"が存在する限り、この能力に敵はいない。



※現在、救出チーム編、???編、異形魔理沙編、救助要請チームA編を同時に進行中。めちゃくちゃ時間かかってるので不定期に何ヶ月か空いたりしますのでご了承ください。


スターアンドストライプさん、ナイスタイミング。

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