続・最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。   作:マスターチュロス

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ICPO特殊部隊最高責任者ニルべ・ナ・カーラ、彼女が何らかの手を引いていると察した異形魔理沙は米国No.1ヒーローの記憶を辿り、ロシアに常駐していることを特定した。のだが……




異形魔理沙編:その3

 

 

 瞬間移動でロシアの首都モスクワに到着した異形魔理沙だったが、異常事態が発生した。

 

「寒すギンだろ」

 

 外気温マイナス198℃、それは大気中の成分が液体や固体と化すほどの寒さである。それだけに限らず、猛吹雪が異形魔理沙の心身を急速に冷やし、彼女からやる気を奪っていく。

 

「帰っていい?」

 

 虚空に許可を求めたものの何も起きず、ため息と共に歩き出す異形魔理沙。風が強過ぎるので帽子は4次元に収納し、吹雪は全てベクトル反射で弾き返し、寒さはテキオー灯で克服することで、異形魔理沙はこの劣悪過ぎる環境に一瞬で適応した。

 

「全く、こんなバカみたいに暴れてるヤツはだいたい陽性か、もしくは低級妖怪かだ」

 

 50cm以上降り積もった雪を最上級火炎呪文で溶かしながら、異形魔理沙は凍りついたモスクワの街を散歩し始めた。

 周囲の建物は雪と氷に閉じ込められ、景色はほぼ真っ白。空は常に曇天で、太陽などまるで最初からいなかったかのような振る舞いを見せる。

 メラガイアーで溶かした雪の中から、凍死した人間の死体がいくつか現れた。が、全く気に止めることなく異形魔理沙は足を進める。

 

「……暇だ。虐めがいのあるヤツ全員凍死してやがルせいで退屈でしようがない。アメリカの方がマシだ」

 

 歩けど歩けど、道は白く、何も無く。

 

「霊夢がいればなァ、少しはマシになるんだが」

 

「…………俺は何故故にこんなクソつまらん場所にいるんだ?」

 

 もはや当初の目的すら忘れてしまう始末。

 

「あぁ、思い出した。あの煮るベなかやまきんに君っていう女を潰しに来たんだったな。虻ねーセィフ」

 

 何千年も生きる異形魔理沙にとってたかが数時間の記憶など塵に等しく、基本的にはすぐに消え失せる記憶だが、何とか思い出した。

 決して歳のせいで忘れたわけではない。

 

「……吹雪、強くなってね?」

 

 歩いている内に、風がさっきよりも異常に強くなっているエリアを発見した。おそらくこの辺に元凶がいるはずである。

 

「さぁて、バカはどこかな?」

 

 

 

「あ」

 

 異形魔理沙の目線の先、透視能力で見えた建物の裏側の景色には、いびつに歪んだ化け物が踊り狂っている。

 その化け物は雪の結晶に目玉をランダムに3つ貼り付けたような顔をしており、胴体は裸の女性(乳は垂れており、肋骨が浮かび上がっているが、腹は何故か横に広く三段腹)といった気色の悪い風貌に、足は短足で腹の内側に収まっているといった、何とも近寄り難い姿をしていた。

 その化け物が身体を回転させると、彼女から強烈な冷気が発せられ、周囲の建物をさらに氷漬けにしていく。さらに回転すると雪雲が分厚く成長し、さらにさらに回転すると猛吹雪が街からあらゆる熱気を奪い去るように襲いかかる。

 モスクワの惨状は明らかにコイツが原因である。

 

「バカ、発見」

 

 異形魔理沙は人智を超えた跳躍力で建物を飛び越え、雪雲を掻き消しながらとある槍を顕現させる。

 

「ロンギヌス!!」

 

 100m以上にも及ぶ巨大な紅き槍が天から現れ、それを異形魔理沙は肥大化した腕で掴み取り、豪快にぶん投げる。

 

 音速を突破した巨大な槍は何も知らない化け物の身体を貫通するどころか派手な音とともに粉々に破壊し、周囲の建物が爆風で消し飛んでいく。

 手加減の手の字など知るはずもなく、異形魔理沙はニコニコ笑いながら降臨した。

 

「ようレティ、元気?」

 

 レティ、と呼ばれた化け物は完全に潰れたトマトと化していたが、微かにうめき声のようなものをあげた。

 

「あ、理由? それ効く? ウザイ」

 

「ところで太ましいデブ(おまえ)に聞きたいのだが、煮るで中川翔子って知ってる??」

 

 レティはバラバラに崩れた脳を必死に振り、意志を示す。

 

「知らない?? ここお前の管轄だよね?? サボりか???」

 

「あ? 中川翔子が誰か分からない?? は? 」

 

 話が噛み合わない二人。異形魔理沙の怒りが積もる一方、レティは異形魔理沙の機嫌が直らないことに焦りと恐怖を覚えていた。

 

「生姜ねぇ、バカでも分かるように言ってやる。ここに、ニルべ・ナ・カーラという、ISeaPOの中でも"そこそこ"に偉い立場のヤツが、常駐シているらすィんだが、お前知ってル?」

 

 片言でゆっくり教えると、レティは先程の様子とは打って変わった雰囲気で、無い首を上下に降った。

 

「はァ、年に1回会議してんの? ICPOとヒーロー連盟等々が? で、昔ここで会議したことあってその中にアイツがいた? 常駐はしてない? ふざけんな」

 

「……最近はめっきり姿を現していない、ね。オリゴ糖、おかげで無駄足だった挙句クソ寒い目に遭ったってことを自覚したよ。氏ね」

 

 異形魔理沙が指パッチンすると肉塊と化したレティに追い討ちをかけるように爆発し、焼け跡を残して消滅してしまった。

 正直に全てを話したとしても関係ない。腹が立てば全力で相手を消し炭にし、気に入らないヤツは容赦なく始末する、それが異形魔理沙である。

 

「はァ、振り出しだ。たく何だこの世界は、俺たちが終わらす以前に終わりか? 終わコンかァ? サービスしら」

 

「……仕方ねェ。あの中川翔子の事ァ一旦ワすれて、ヒーロー狩りぬァがら魔王シバくか」

 

「……と、その前に」

 

 異形魔理沙はいつの間にか手に持っていた狙杖の先端を天に向け、トリガーを押すと、放たれた小さな光弾が光の速度で曇天に激突。大爆発を起こし、暗く閉じたモスクワの街を夜空の下にさらけ出した。

 だが未だに外気温度はマイナス191℃と寒いため、異形魔理沙はさらにサービスとして降り積もった雪全てを魔法で蒸発させた。我ながら珍しくいい事をした。

 

「これで晴れたな、モスクワ。感謝しろよ」

 

 ロンギヌスの槍の余波で半壊したモスクワの街を背に、異形魔理沙は静かに立ち去っていく。

 なお、この後モスクワの街は過去類を見ない大洪水によって街が崩壊してしまうのだが、魔理沙は知る由もなかった。

 

 

 ■

 

 

 モスクワを離れ、徒歩でヨーロッパに向かう異形魔理沙。瞬間移動を使えば一瞬で到達出来るが、歩きたい気分だったので歩くことにした。

 

「……いや、可笑しい。こんな何も存在しない国から今すぐにでも離れてーのに何で俺は止少いてんだ?」

 

「…………! ……アイツ!!」

 

 この不自然さ、違和感の正体、そしてそれを生み出している元凶に心当たりしかない。

 

「どうやら()()()は相当俺に会いたくないらしい。じゃあ尚更会うしかねェよなァ!!? ファンサービスいるよなァ!!?」

 

 わざわざご自慢の能力を使ってまで足止めしたいとなると、アイツは俺がいると困るようなことを現在進行形で進めているということになる。つまり、アイツは俺抜きで勝手に面白そうなことをしてるってことだ。

 

「無理矢理行くか」

 

 まずは因果律操作による特異点化の誘導を企む異形魔理沙だったが、ある人物との思わぬ出会いによってそれは阻まれた。

 

「待て」

 

「あ?」

 

 能力発動間際、背後から人間らしき声が聞こえた。ついさきほどまで氷点下198℃という極寒の環境下で、住人のほとんどが凍死しているこの状況において生身の人間がいることなど異常でしかない。

 しかし、異形魔理沙にとって人間なんぞ何の脅威もない雑魚としか感じていないため、無警戒で振り向いた。

 

「……避難民にしては髄分と速いンじゃあないか? そんなにお外が大好きか」

 

「あァ感謝すンなら要らねぇよ? お前もどうせ死ぬ」

 

「私の顔に見覚えはありませんか?」

 

 異形魔理沙の言葉を全てガン無視し、女は自分に見覚えが無いか問い始める。

 一般人にしてはあまりに肝が据わっている様子に少し興味を持った魔理沙は、脳内で今まで会った人物の顔を思い出しながら彼女の顔と比較してみた。

 

「あァ〜〜ハイはいその顔ね。知っているなァ」

 

 異形魔理沙はニヤリと笑い、首の骨をコキコキと鳴らし始める。

 

「煮るべ中臣鎌足……!」

 

「私の名前はニルべ・ナ・カーラ。貴方と少しお話をしに参りました」

 

 スーツ姿で登場した細身の女性はそう言うと、自前の折りたたみ式のイスを広げ、腰掛けながら話を続けた。

 

「貴方が異形魔理沙さん、で良いですね?」

 

「その前に俺の質問に答えてもらおうか、オリキャラくん。お前、どうやってここまで来た? 俺らに対する対処が思った以上に早いのはお前の手引きか?」

 

「あなた方は常に我々組織の監視下にあるため、居場所が割れています。後は自家用ジェットでモスクワ上空まで行き、パラシュートを使ってここまで降りてきました」

 

「俺が歩いてる最中、お前ずっと俺の真上にいたのかよ」

 

「あなた方への対処が早かったのは「人の話を聞け」事前情報を得ていたからですね。雄英体育祭以降、彼女から連絡「もうええわ」がありまして、『凶悪な化け物が近々大量に現れるかもしれないから備えろ』と、強く言われたものでして……」

 

「……、アイツか」

 

 概ね理解したものの、腑に落ちない点がいくつか存在している。

 1つ、アイツはこの女と接点を持ったことは一度もない。ヤツの深層心理の奥底から見ていたこともそうだが、本人から奪った記憶を覗いてもそのような過去は無い。つまりコイツは嘘をついている。

 不愉快なのは2つ目、こいつは()()()()()()()()。さっきと矛盾しているが、コイツの心の声と現実の声が一言一句一致しているのだ。俺の読心能力を受けていないとなると、コイツがそういう個性(能力)を持っていのか、それか頭のおかしい虚言癖か、最悪俺と同格である可能性が考えられる。が、俺と同格の人間がこの世界にいるはずが無いのでコイツは虚言癖に違いない。

 3つ目は、アイツを知っていること。この世界の住人は俺の現実改変能力の影響で■■■■■の記憶を完全に失っている。どんなに親しい関係だろうとヤツとの思い出は記憶の彼方へ封じられ、記憶の空白は自己補完によって解決される。だがコイツは■■■■■の事を思い出している。それすなわち俺の現実改変能力が効いていない、ということは……

 

(……同格か?)

 

 念の為、もう一度心を読んでみると、人の顔が浮かび上がってきた。どうやらヤツは情報元である彼女の顔を思い出しているらしい。馬鹿が、全部お見通しだ。

 

 

 

(…………誰?)

 

 誰ってか何? 何だこの女。というか金髪じゃねぇしボサボサじゃねぇし顔黒くねぇし誰だコイツ。マジで誰なんだお前。

 …………アイツ以外に俺らを知っているヤツがいる? それこそ有り得ねぇと言いたいが、可能性の1つとして考慮するべきか。

 

「そろそろ本題に入ってもいいですか?」

 

「あァ、好きに喋ってくれ。それがお前の最後のセリフだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「降伏しなさい」

 

 目付きが鋭く、冷徹になるナカーラに対し、異形魔理沙はプッと不意に笑う。

 

「くくくく……w コーフク? w こッwwwコーwwフwwwクwwでwすwwwかァ!? コッ! wココココココココココwww」

 

 某将軍のような笑い声を上げながら異形魔理沙は腹を抱えて地面に倒れ込んだ。

 

「『降伏しなさい』キリッ!! ……クククククwww、ヒィ〜〜腹がァっwwwハッ腹が痛いッwwwwヒッwヒッwヒッw」

 

 異形魔理沙は地面を転げ回っている。

 

「そんなに面白い事ですか?」

 

「おもしれェ! に決まってんだろバ〜〜〜〜カ!!! (笑) だってよォ、ミジンコが『僕実は人間より頭良いんですキリッ』つッッてんだぜ!? wwwクククHAHAHAはハははハはハハ!!! 」

 

「何処ぞのいい歳して13騎士団とかイッてる頭のおかしいBBA共と同レベルで笑えてくるぜ笑 実はアイツらと友達だったりする?」

 

「真面目に聞きなさい」

 

「www失礼! そんなわけなかったな! つまり手前の脳ミソは天然ミソだってことだwwwHAHAHA笑笑笑笑」

 

「はァ〜〜www笑った、久しぶりに笑ったよ。うんうん、凄いすごい。人も異形も、頭のおかしいヤツはどの世界にもいるんだね。うん。ホントわざわざモスクワまで笑わせに来てくれてありがとうニラ……似り、煮る……ニ…………、お前を殺すのは最後にしといてやる」

 

「んじゃ」

 

 異形魔理沙は手を軽く振った後、魔王に会いに行くべくヨーロッパ方面へ一歩踏み出した。

 が、自分の話を全て意味不明な頓痴気で流されたニルべ・ナ・カーラにとってたまったもんではない。仮にもICPO特殊部隊最高責任者、これ以上愚弄されたまま引き下がれるわけもなく……。

 

 銃を構えた。

 

「……オイ、忠告してやる。その引き金を引いた瞬間、お前の顔面は胴体からおサラバだ」

 

「それに、チャカごときで俺を殺せると思ったなら大間違いだ。俺を殺したければ、オールマイトとアメリカNO.1ヒーローと■■■■■連れてこい。もう全員氏んでるがな」

 

 銃を構えたナカーラと、振り向かずとも状況を察知し、それでいてなお物怖じしない異形魔理沙。

 両者の力関係は火を見るより明らかで、どちらが無謀であるかなど愚問である。

 

 カチッと、引き金を引く音が聞こえた瞬間、異形魔理沙は弾丸が発射されるよりも速く移動し、その勢いのままニルべ・ナ・カーラの顔面を思い切り粉砕した。

 弾け飛ぶ肉片、飛び散る体液、ついさっきまで人間だったものが今ではこの有様である。

 

「バカだねぇ黄身。コメディ路線のままだったら人気出たろうに。もっと芸能事務所とかで練習してから出直せば?」

 

「汚ぇ」と思いながら拳に付いた肉片と体液を雪に擦り付け、とりあえず不届き者の後始末を完了した。これでこの世界から治安維持に関わる有能な人間が消え、人類は統率を失い滅びゆくであろう。

 単体で世界をひっくり返す人間も全て殺したので、後は静かに待つだけ。お茶しながら世界中を散歩するだけで目的達成である。あまりにもチョロい。

 

「ほら、ちゃんとタイトル通りだったろ?」

 

 またもや虚空に向かって喋る魔理沙に、誰一人としてツッコミを入れることは無い。

 

「それはどうかな?」

 

 そしてまた再び、背後から女の声が聞こえてくる。また頭のおかしい人間が来たのかと思いきや、その声はあまりにも聞き覚えがありすぎた。

 

「さ、話の続きをしよう。マリッサ」

 

 背後から全く無傷のニルべ・ナ・カーラが現れた。

 

「…………お前、何で生きやがる」

 

 異形魔理沙は彼女が死んだ場所に目をやったが、彼女の死体は存在していなかった。

 彼女の体液と肉片を擦り付けた場所にもその痕跡は見当たらず、まるで最初から無かったかのように見えた。

 そんなありえない状況を見て異形魔理沙は静かに笑い、あっけらかんとした表情を見せた後、手のひらを返すかのごとく真剣な雰囲気を出した。

 

「やはり只者じゃあ無かったか。オレの目に狂いはなかった」

 

「……」

 

「とはいえお前に可能性が見えた以上、手加減する必要はねぇな?」

 

 相手の実力が分かった途端、本気を出し始めた異形魔理沙。高まる力はオーラとなって噴出し、地を荒れさせ吹雪を生み出し、相手に絶望的な力の差を知らしめる。

 常人なら目も開けられないほどの風圧と、空気を通して伝わるほどの異常さがか細い希望を打ち砕き、圧倒的強者への恐怖を増大させる。

 そしてそんな吹雪の中においても、黒い眼で真っ直ぐ敵を見据える魔理沙に、勝てると思う人間などいない。

 

 しかしニルべ・ナ・カーラはそんな状況下においても異形魔理沙を見つめ返し、立ち向かう姿勢を見せていた。

 

「その目をしたヤツは全員死んだが、お前はどうなるんだろうな?」

 

「……さぁ、どうだろうね。でも私そこそこ強いから、キミといえどそう上手くは行かないと思うけど」

 

 黒のゴム製手袋をキッチリと履き、異形魔理沙と相対するニルべ・ナ・カーラ。彼女を前にしてなお崩れない態度に、並々ならぬ強さを感じられる。

 

「それに私、魔女狩り得意なの」

 

 

 

 

 

 To be continued...

 

 

 










「魔王様、ロシアの首都モスクワにテ霧雨魔理沙の姿が確認サれまシた。現在レティ・ホワイトロックを殺害後、ヨーロッパ方面ニ移動中。目的はおソラくこコかと」

「分かっている。既にアイツの運命は操作してあるから問題無いわ。ただ……」

「……?」

「今、退屈なのよね。アイツが来ると分かったときは丁度忙しくて弄ったけど、こうなると話は別。さっさと元に戻したいところだけど……」

「何か問題でモ?」

「アイツを呼んだら呼んだで、起きるわ。あの子が」

「……妹様」

「あの子は知らないから、起きれば全部壊すでしょうね。そうなってしまえば全てが台無しになる」

「が、それはそれで面白そうね。特に魔理沙が発狂しそうで」

「………。」



To be continued...

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