吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話 作:鈴木颯手
16・罅を立て始めた社会
オールマイトの引退より約二週間が経過した。ヴィラン連合は今捜査かく乱の為に各地に散っている。それ以外にも仲間集めも行っているようだが、
「仲間集めはあまり上手く行っていないようだな、荼毘」
「……あんたか」
俺は路地裏とは言え遠慮なく青い炎を放つ荼毘にそう声をかけた。炎で燃えているのはチンピラ同然のヴィラン。USJ襲撃の時なら役に立ったかもしれない程度の小物たちだ。荼毘やスピナーを見た後だと必要とすら思えない者達だ。
荼毘はそんなチンピラの焼死体に一瞥するとこちらに向き直った。相も変わらず凄い見た目をしている上にその瞳から敵意がにじみ出ている。最初にあったころと比べると大分関係は悪化しているがヴィラン連合に協力しているという事もあるのかこちらに手を出そうとはしてきていない。
何故、このような事になっているかは分からないが
「死柄木から連絡を受けてな。一度集まりたいとの事だ。全く、人を足に使うんじゃねーよって話だよな」
「お前には丁度いいんじゃないか」
荼毘は俺の愚痴にそう返す。明らかに不満だらけです、と言った態度に俺は苦笑する。ここまで嫌われるなんて俺本当に何かしたのか?いや、そもそも
「じゃぁな。俺は確かに伝えたぞ」
「……死柄木にはよろしく伝えて置け」
「はいよ」
全く、本当についてないな。
俺は
最初こそ獣と変わらないと思っていたが
だがな、その後の行動は俺の心を苛立たせた。あの糞野郎、エンデヴァーの家族を襲撃した事だ。既に
だからいずれエンデヴァーを社会的にも、精神的にも殺した後はあいつを殺す。吸血鬼と名乗っているくせに日光は普通に浴びるわニンニク入りの料理を普通に食べるわ十字架は平気だわと弱点となり得そうなものがないが炭化させれば蘇生は難しい事が分かっている。不意を突き一撃で決めてやる。それまでは、背中を任せる位はしてやるからさ、俺を信頼しその時に油断していてくれよ?
「……誰だ、貴様等」
京都府にある志韋羅町の郊外にはそれなりの標高を誇る山がある。そこの頂上には平安より続く寺があり一人の住職が一人で切り盛りしていた。立地ゆえに訪れる者は体力のある若い人以外は中々訪れない為に何かあった際には住職が山から降りてくることがあった。
そんな場所ゆえに明らかに異質な気配をまとった二人の女性を見て住職
「ねぇねぇ、姉さま。この人強いよ」
「ええそうね。事前情報で知った個性も合わせれば最高の逸材と言えるわ」
「……何を話しているのか知らぬがさっさと去れ。ここはおぬし等のような悪意ある者が居ていい場所ではない!」
日暖は戦闘の構えを取り目の前の徴姉妹に神経を集中させる。空気がどんどん重くなっていき日暖を中心に振動が発生する。明らかに武人として優秀だと思わせる目の前の住職を前に、二人の態度が変わる事は無かった。
徴姉妹の妹の方、徴弐はニコニコと笑みを浮かべると普通に歩き近づいていく。まるで目の前の日暖の姿が見えないように。そして、徴弐が日暖のすぐそばまで近づいた時だった。
「ふん!」
「アハッ!!」
日暖の正拳突きが徴弐の懐にめり込む、と思った瞬間にアクロバティックな動きで正拳突きを囲むようにイナバウアーの形で避ける。その瞳には快楽の感情が浮かんでおりこの攻防を楽しんでいるのが日暖にも分かった。
「ちぃっ! 小癪な!」
「良いよぉっ!もっと戦おうよぉっ!!」
「戦狂いの類か! なら!」
戦闘狂相手に長期戦を行うなど愚の骨頂と判断した日暖は己の鍛え上げぬいた肉体だけではなく個性も用いて短期決戦で挑む事にした。空手の様に握った拳を腰の位置に置き深く深呼吸をする。それを隙と捉えた徴弐は右手の指の間に挟んだ彫刻刀やドライバーを日暖の胸部に突き立てようとする。
しかし、触れる直前で日暖の両腕が炎に包まれる。突然の事に徴弐は一瞬動きが止まりその隙をつく形で日暖の正拳突きが徴弐の腹部を捕らえた。骨の折れる音、肉の割ける音が響き更に肉が焼ける音と匂いが一瞬日暖の鼻で感じるが直ぐに徴弐の体は吹き飛びお堂を囲むように存在する塀を突き破り木々をなぎ倒して地面に倒れる。
明らかな重傷を負った徴弐を姉である徴側は一瞥だけするとため息をつく。
「まったく、あの娘は何をやっているのでしょうか……」
「次はお主か?」
頭を抱えている徴側に日暖が問う。徴弐が吹き飛んでいった音は町からでも聞こえていたはずで誰かしら様子を見に上がって来る可能性があった。そうなった場合人質を取って来る可能性もあり日暖はさっさと無力化をするか追い返したかったのだ。それを知ってか知らずか徴側は日暖に向き直ると言った。
「私としてはパワータイプの者と一対一で戦うのは苦手なのです」
「……ならばもう一人の女性、お主の妹だろう者を連れてさっさと去れ。今なら見逃してやる」
日暖は確信していた。この者達は危険だと。一刻も早く逃げるか無力化せよ、と己の本能が何度も知らせていた。日暖はその本能で感じている事に歯向かうつもりはなく本能に従い戦闘を行った。
しかし、徴側は去るつもりはないらしく徴弐が吹き飛んでいった塀の方を見ると叫んだ。
「徴弐! 何時まで寝ているのですか! さっさと戻ってきなさい!」
「……お主、何を言っt「もう! 姉さまったら! 傷を治すところなんて誰にも見られたくないのに!」馬鹿な……!」
日暖は驚愕した。徴弐と呼ばれる女性の腹部に正拳突きをくらわした際に感じた感触からして二度と歩けないと思わせるほどの一撃を与えていた。しかし、塀から飛び出してきた徴弐は服こそ破れ、乱れているものの、傷は一切残っておらず彼女もくるくると軽やかな動きを見せていた。
人間離れした回復力を見て日暖は二つの可能性が思い浮かび最も当たって欲しくない方の予想を言う。
「貴様等、吸血鬼か?」
「あれ? 姉さま、バレちゃったよ?」
「ブラフの可能性もありますが別に今更隠す必要はありませんね。その通りです。私は徴側、隣の妹は徴弐と言います」
「やはりか(当たって欲しくはなかったが厄介な……!)」
日暖は自らがかなり窮地に立たされている事を悟った。渾身の一撃は通用するが直ぐに回復されてしまう上に基礎的な身体能力はほぼ互角と言えた。そのうえで相手の個性次第ではこちらが不利になる可能性が高かった。自らの本能が鳴らした警告に狂いはなかったと思うと同時に逃走の手段を考え始めていた。
彼女たちの狙いが分からない以上この場で戦闘を続けることは出来ない。応援なり助けを呼ぶ方が良いだろうと判断して日暖は徴姉妹の隙を探す。
「……姉さま。こいつ、逃げようとしている」
「っ!?」
しかし、その動きはあっさりと徴弐にバレた。日暖は徴弐と目が合った瞬間、全身からブワッと汗を噴き出す。絶対に勝てない、戦ってはいけない、早く逃げろと己の中で本能が荒れ狂いながらそう伝えてくる。その様子に徴弐は楽しそうに嗤う。その顔は、弱者をいたぶろうとする者とよく似ているがそこに映る狂気は比べ物にならないほど大きく、そして歪んでいた。
「逃がさないよ」
「くっ!?」
徴弐がそう言うと同時に日暖の視界より消え瞬間、右足に激痛が走る。そこには刃先が違う彫刻刀が四本地面に縫い付けられるように刺さっており右足を固定していた。
立つ事すら辛い激痛を感じつつ日暖は周囲を確認する。相も変わらず徴弐の姿を眼で終えておらず一瞬で行った出来事故に焦りが出始めていた。
「日暖。本名は
「っ!」
「腕および周囲の空気の熱を上げ炎を起す事が出来る個性。炎に対応できるように腕の皮膚は頑丈でこれを生かして武術に置いて強力な攻撃を放つことが出来る」
「ぐぁ!?」
徴弐が一言話すたびに体のどこかに彫刻刀かドライバーが突き刺さり日暖の命を削っていく。そして喋り終えたからかそれまで刺してこなかった腹部に五本の彫刻刀が突き刺さりその場で膝を付く。日暖の息は荒く体中から脂汗を出していた。そんな彼の前に徴弐が現れゆっくりと近づいてくる。
「安心して。
「っ! そんな事をさせると思っているのか!!」
日暖はそう叫ぶと瞬時に腕に炎をまとわせ正拳突きを放つ。本来の姿勢ではないため威力は落ちるが奇襲としては十分と思われた。しかし、徴弐はそれを
「結構強いね。でもさ、本気で私達吸血鬼に勝てるとは思っていないよね? だって、
そう言うと徴弐は日暖の背中に彫刻刀とドライバーを交互に突き刺していく。背骨のある位置に等間隔に突き刺さる彫刻刀とドライバーに日暖は無音の悲鳴を上げる。そんな日暖に徴弐は止めとばかりに頭部に蹴りを入れる。吸血鬼としての身体能力に筋力増加系の個性を用いた一撃は日暖の意識を奪い真横に吹き飛ばすには十分すぎる威力だった。日暖は塀を突き破り木々をなぎ倒すという先ほど徴弐にした事と同じ事をされた。
それを見た徴側は呆れたような表情をして話しかける。
「徴弐。貴方はやりすぎです。これだけの騒ぎを起こしたのです、直ぐにでも人が来るでしょう。さっさと要件を済ませますよ」
「はいはーい! すぐに回収してくるね!」
徴弐は満身創痍の日暖を持って来ると抵抗できないようにロープで縛る。更に両手両足には彫刻刀が突き刺さり動かせないようにされた。それを見て安全だと思ったのか徴側は【ワープゲート】を発動する。徴弐は生み出された黒い靄の中に躊躇なく飛び込み徴側も周囲を確認した後に入る。数秒後、靄は消え周囲には戦闘の後だけが残された。
日暖の様に襲撃を受け拉致される件数は日を追うごとに多くなっていた。そのほとんどが多少なりとも腕に覚えのある実力者たちであり市民は不安を覚える日々を送っていた。
ヒーローや警察が必死に防ごうとするが【ワープゲート】や姿形を変えての隠密行動などを吸血鬼たちも行っていくようになりまともな成果を出せない日々が続いていた。
オールマイトの引退より一月後、このころになると犠牲者は百人を超えるようになり少しづつ表の戦力がそがれ始めていた。
吸血鬼たちが実力者を狙って襲撃をするという観点から眷属にして戦力強化を狙っていると考えられたが女性ばかりを眷属にするという始祖の行動を知っている者は違うと判断し、始祖の強化の為に攫っていると仮定していた。その場合、始祖の力は格段に上がっていると思われヒーローや警察は始祖が直接動き出した時の対応をどうするのかを想定していくことになる。
日本の社会は今、始祖の動きを中心に大きな渦となって混乱しようとしていた。オールマイトという支柱を失った社会に抗う術は、ほとんど残されていなかった。
徴弐
徴姉妹の妹の方。マジでやばい戦闘狂。やってること的にトガちゃんと気が合いそう。
彫刻刀やドライバーを武器に戦う。相手を戦闘不能にしてから皮をはいだり目玉をくりぬいたりする本人曰く”遊び”が一番大好き
戦闘能力は吸血鬼の中でトップに近い実力の持ち主。個性も便利そうなものを中心に持っている。姉とはセットで動く
日暖
オリジナルキャラクター。筋骨隆々、ゴリマッチョな坊さん。「殿といっしょ」の本願寺のお坊さんを参考に出したキャラだが登場するのはこれで最後。武道を極め、個性と合わせて地元では最強と言われている人物。個性を普通に使っていた件はあれよ、私有地だから(寺は私有地に入るのだろうか……?)。滅茶苦茶強いが吸血鬼(というか徴弐)には敵わなかった。最後は手足の筋を切られ二度と動かせなくなったうえに脊髄を大きく損傷したので寝たきりは確定していたが始祖に血を取られて死ぬためある意味では幸せ?
個性:【腕部における炎熱操作】
腕および周囲の熱を操れる。頑張れば炎を生み出し炎をまとった拳になれる。熱に対応できるように皮膚は異様なほど耐火性能に優れている。その分冬は苦手だが周囲の熱を熱くする事で冬でも半袖で過ごせるようにも出来る。
始祖の血液事情
始祖は血液を取り込めば取り込むほど強く成っていく。生きるのに必要な物ではない為始祖は定期的に摂取するのを忘れている。引きこもっていた時は数十年単位でそれを怠っていた為実は徴姉妹の方が強かったりする。保須市でエンデヴァーに燃やされた後は己の強化の為に血を集めている。強い者から集めているのは強者の血の方が大きく強化できるため
壊理ちゃんをどうするか
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本命:眷属にしよう
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対抗:原作通りでいいじゃん
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穴:え?まさかの死亡?
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大穴:ヴィラン連合行き