吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話 作:鈴木颯手
特田種男はフリーのジャーナリストである。痩せ気味の体をしており何処か胡散臭げな人物だが18年前に父親をオールマイトに助けられて以降恩人として尊敬していた。故に、オールマイトの神野区での言動から”後継者がいる”と言う推察に行きつきその真実を確かめようと雄英高校に向かっていた。
「お客さん、雄英高校に何か用で?」
特田が雄英に向かうためにタクシーに乗り込むと40代程の男性運転手がそう尋ねてくる。明るい笑顔を見せる彼に特田もついつい喋ってしまったのは仕方ないことかもしれない。
「いやなに、寮生活となった雄英生の事が知りたくてね。特に一年A組」
「ああ! 体育祭では盛り上がっていましたからね! 私も実際に見ましたがいやー盛り上がりましたね!」
「私はその時九州の方に行っていたのでテレビで観戦していましたよ」
そんなたわいもない話をしつつ特田は考える。オールマイトが本当に後継者を見出していた場合、特田は記事にするつもりはなく早とちりで終わらせるつもりであった。雄英生にいる場合、その力が芽吹くのはまだまだ先だろうと予測している為知らせる訳にはいかなかった。
「(もし仮説が当たっていたら、取材許可を取ってくれた編集長に何か雄英でしか見れないオールマイトの様子を撮って渡そう)」
特田はそう考え雄英高校に到着するのを待つのだった。
……運転手の目つきが鋭くなっている事に気付かないまま。
特田は雄英高校の1年A組が済んでいる寮、ハイツアライアンスにやってきていた。午前8時より午後6時まで且つ今日一日だけの取材であり特田は寮のドアをくぐり中に入っていく。中では担任である相澤先生が説明をしており邪な事を考えていた峰田実を縛り上げていた。
「相澤先生、そんな事はしなくて大丈夫ですよ。私は、生の雄英生の寮生活が見たいのですから」
「特田さん……、まだ入って良いとは言ってないのですが」
「取材時間開始である午前8時は過ぎていますよ? 時間は有限ですよ」
特田はそう言って左腕に付けている時計を見せる。その時計は午前8時を過ぎており特田の言葉に信ぴょう性を持たせていた。それを見た相澤先生は峰田実を拘束を解き捕縛布をしまう。特田は改めて1年A組に向き直ると挨拶をする。
「皆さん、記者の特田です。今日は一日よろしくお願いします」
「「「「「「お願いします!」」」」」」
「特別何かをしていただく必要はありません。皆さんの普段の生活の様子を撮らせてもらうだけですので。あ、偶に質問するかもしれないのでその時はよろしく」
そう言って特田は笑みを浮かべる。それを見て女子は特田を爽やかイケメンと言っていたり峰田実は明らかに女性じゃなくてがっかりしている。他も少し緊張気味だが特に抵抗はないようだ。特田は早速その様子を一枚、カメラに収めた。
相澤先生は少し特田を警戒するそぶりを見せているが正規の手続きを踏み且つ、本人から悪意が感じられない事もあり”何か企んでそうな胡散臭い記者”程度だった。そんな相澤先生の警戒も特田が普通にカメラを持って写真を撮っているだけの現状で次第に薄れていくことになる。
朝食から始まり、授業風景や昼食、午後の授業などを得て学校後の寮生活の様子を写真に収めていく。このころになると緊張気味だったA組の生徒も自然体となっていき思わぬ瞬間を取れる頻度が増えて言った。
特田は幾つか写真を撮ると”真の目的”の為に動き出す。ここまでの間にリサーチをしてきた事を踏まえて一人の生徒と対面した。
「緑谷出久君、ちょっといいかな?」
「は、はい?」
外で体を動かしていた緑谷出久に特田は話しかける。その前にオールマイトが持ってきた肉まんの差し入れを受け取ったりしながら特田は緑谷と話す。
「特田さんはオールマイトのファンなんですか?」
「うん、そうだよ。18年前に起きた事故で父を助けられてからね。それに、僕らの年代でファンじゃない人なんていないんじゃないかなって言うくらいには人気だったさ。最近じゃエンデヴァーへの関心もあるけどね」
「エンデヴァーですか?」
そう言って緑谷が思い出すのはクラスメイトの轟焦凍。エンデヴァーの実の息子であり林間合宿の前に母と兄、姉を吸血鬼に殺されていた。エンデヴァーも焦凍もその件に関しては沈黙を貫いているが神野区の一件で仇を取りたいという気持ちがある事が発覚した。普段の生活に特に変わった事は無いが時折影を落とすようになったのはA組ならだれもが知っている事だった。
「オールマイトが引退した以上、この社会はエンデヴァーに対して大なり小なり期待せざるを終えない。とは言えエンデヴァーは一度吸血鬼に敗北している。命こそ助かり最近は活動を再開したけど世間の目は厳しい」
「それは……、知ってます」
緑谷は幾度となく組まれた特集記事でエンデヴァーが叩かれているのを眼にしていた。
-平和の象徴亡き今エンデヴァーに対する不満が続出
-一度敗北したエンデヴァーにオールマイトの代理は務まるのか?
-読者アンケート! エンデヴァーは信頼出来る? 結果発表!
-某ヒーローが暴露!? 「エンデヴァーは期待できない」
-犯罪発生率が急上昇! エンデヴァーでは抑止力足りない
どれもこれもがエンデヴァーを叩き不安をあおるような記事を出していた。それを見た緑谷は世間の怖さやヒーローに対する不信感をあおるマスコミに疑問を持つ程だった。
「同じ記者として彼らのやっている事は可笑しいと思っている。エンデヴァーを叩いたところでオールマイトが戻って来るわけではないんだ。にもかかわらずエンデヴァーを叩き、民衆の不安をいたずらにかき回す。本当に最悪だ」
「特田さん……」
「だからこそ、今回の取材は必要だと思っている。雄英生という将来を担うヒーローの卵たちの様子を見せて世間の不安を少しでも減らしたい。記者である私に出来るのはそのくらいさ」
特田はそう言って空を見上げる。そんな特田を複雑な思いで見る事しか出来ない緑谷。暫くの間、二人に会話はなかったが気分を変えるように特田は明るい口調で問いかけた。
「そう言えば、君なんだろう? オールマイトの後継者は?」
「……えっ!? それは……!」
唐突な言葉に緑谷は慌ててしまう。それが何よりの証拠として特田に教えていたが当の彼は笑いながら緑谷の肩をポンポンと叩く。
「ははは、ごめんごめん。唐突過ぎたね。安心ていいよ。この事を記事にするつもりはない。ただ確認したかっただけさ。”平和の象徴”はいずれ再び戻って来る。それが確認できたからね」
「特田さん……」
「さて、そろそろお暇しようかな。相澤先生にはよろしく言っておいてくれ。今日は一日ありがとう」
そう言うと特田は入り口に向かって歩いていく。その後ろ姿に緑谷は黙って頭を下げた。その行為にどれだけの意味が込められていたのか?それは当人しか分からないだろう。
暫くして、”ヒーローの卵たちの寮生活”と言う名前で記事が作られた。”ヒーローの卵たちはきちんと育っており、雄英の管理体制も見直されつつありオールマイトに比肩しうるヒーローがいずれ誕生するかもしれない”と言う一文はオールマイトの引退や吸血鬼の動きで不安な日々を送っていた人々に小さな希望と安らぎを与える結果となった。
この記事の効果かは分からないがエンデヴァーを叩く記事も減っていき異様とも言えたエンデヴァーたたきは鳴りを潜めていく事になる。
そして、この記事の写真を提供した特田種男は写真を提供した後、行方不明となった。
『お疲れ様でした』
「ああ」
とある街の裏路地にて特田種男はスマホで一人の女性と話をしていた。電話の相手の女性は凛とした声で特田をねぎらう言葉をかけ特田も軽く返事をした。
『それでどうでしたか?
女性の言葉に特田、いや特田を乗っ取った始祖は口角を上げて答える。
「最高だったよ。特田の個性を使い雄英高校の寮を中心に写真を撮る事に成功した。これで雄英高校を
そう言いながら始祖は特田の容姿から何時もの姿へと戻る。偶々タクシー運転手として潜んでいた眷属から報告を受けた始祖は雄英高校に侵入できるチャンスとして特田を殺し血を奪って特田に成り代わり侵入したのである。特田の記憶も血を摂取する際に一通り確認済みであり本人しか知りえない、少なくとも始祖が知らない出来事に答える事が出来ていた。その後は特田=始祖という事が分からないように写真を提供していたのである。
「フリージャーナリストで助かった。こいつなら行方不明になっても気づく奴はそう居ない。雄英高校の襲撃を行った者らしくない行動も取って来た。特田が雄英高校の取材前には死んでいたなんて誰も思わないだろうな」
『一応こちらでも対策は取っておきます』
「ああ、頼む。……そう言えば才子から連絡は来たか?」
『はい、予定通りに仮免試験に参加し参加者の個性及び容姿の確認を行ったそうです。トガヒミコに関しては別行動をとっていたようですが少なくとも正体を現すような行為は行っていないそうです』
「【変身】は使わせずに別の個性を使わせているな?」
『勿論です。本人もその辺はきちんと分かっていたようです』
「ならいい。引き続き才子には聖愛学院の管理をさせろ。それとトガは戻りたいなら戻って良いと伝えろ」
『かしこまりました』
そう言うと通話を切りスマホをポケットにしまう。そのまま歩き続ける始祖は雄英高校の様子を思い出す。
「轟焦凍は復讐心を糧にして行動している。爆豪勝己も雄英体育祭で見せたヴィランと見間違う性格は鳴りを潜め大人しくなっていた。……他も大分仕上がってきている。そして何より」
始祖は一枚の写真を取り出す。緑谷出久が外で自主練をしている姿だ。それを見て始祖は狂気的な笑みを浮かべた。
「オールマイトの後継者。君がヒーローとなり俺の前に立つときが楽しみだ。その時は二度と立ち上がる事も出来ないほどにボロボロにして破壊してあげるよ」
そう呟くと始祖は
「始祖……」
薄暗い部屋の中で唯一光源となりうる光があった。パソコンと思われるその画面に映されているのは神野区に姿を現した始祖の隠し撮りの写真である。ネットに投稿されたこの一枚の写真から人々は始祖の姿を知る事となり不安を募らせる結果となった。
しかし、その者は不安を抱えている様子もなくかと言って憤りに駆られているわけではない。ただただ眺めていた。
「貴方は
その者の呟きは誰にも聞かれる事は無く消えていく。しかし、その者はいずれ始祖との
この者と始祖が出会った時、何が起こるのか。それはまだ誰にも分からない。
特田種男
アニメ第4期第1話に登場したフリーの記者。推定年齢28歳で
しかし、今作だと雄英高校に向かう途中で始祖に喰われて死亡する。特田が行うはずだった事は全て敵情視察を兼ねた始祖が行っていた。結果、ハイツアライアンスを中心に雄英高校の情報を与えてしまう事となる。
個性:【全身レンズ】
全身からレンズを出して写真を撮れる。左胸にはプリンター機能もありその場でプリントアウトも可能。個人的に特田の個性は敵情視察とかで滅茶苦茶便利だと思う。
爆豪と轟
轟は何度か話した通り母を攫われ兄と姉を殺された事で怒りと復讐心はあるが飯田の様にそれをぶつける事は無く力の一部としている。なので表面上は原作と変わりはない。
爆豪は【
他の面々は原作とあまり変わりはないが吸血鬼が派手に動いている事から原作以上に訓練に励んでいる為ちょっと実力は高めとなっている。
仮免試験
原作でもあった出来事。A組は轟と爆豪以外が合格できた(B組は意外な事に全員合格している)。原作だとトガヒミコは士傑高校の現見ケミィに成り代わっていたが今作はそんな事は無く聖愛学院の生徒の一人として行った。
聖愛学院は才子を中心に参加者の情報収集に徹したため一次試験で全員不合格となったがその分様々な学校の生徒の個性が始祖に知られる結果となった(原作だと八百万達が倒してクリアするけど別の人たちを倒してクリアした)。トガヒミコは【変身】の個性を用いずに用意された個性で適当に戦っていた
始祖に名前つけた方が良い?
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その方が良い
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今のままでよくね?
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俺が考えてやんよ!