吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話   作:鈴木颯手

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感想にあったやつを参考に壊理ちゃん作りました。多分原作とは結構違ってくると思います


18・ヴィラン連合と死穢八斎會

 死柄木弔は苛立っていた。ヴィラン連合の一員であるトゥワイスが連れて来たヤクザ、オーバーホール。彼との会合に失敗しマグネを殺されMrコンプレスの左腕を奪われたのである。更には「服従しろ」という要求までされる始末であり怒りは頂点に上っていた。

 しかし、オール・フォー・ワンが倒れて意向死柄木は理性というものが備わったのかヴィラン連合のボスらしいふるまいが出来るようになっていた。故に、バーの時と変わらない眷属のタブレットを通して始祖と話をしようとしている時にもそれが現れていた。

 

『……随分とお怒りのようだな』

「少なくとも無駄話をする気にはなれない程度、にはな」

『そうか。なら要件を聞こうか』

 

 平坦な声でしゃべる死柄木に対して始祖はそう言った。2、3か月前の死柄木なら癇癪を起して会話どころではなかっただろう。死柄木の確かな成長を始祖は感じ取っていた。

 

『(いずれオール・フォー・ワンを超える大物になるかもな)また伝言か何かか?流石に足に使われるのは勘弁だぞ』

「違う。死穢八斎會というヤクザは知っているか?」

『まずヤクザが存在している事自体を始めて知ったな。どんな組なんだ?』

「絶対に仲良くはできない奴が若頭をやっている組だ。マグネを殺されMrコンプレスの左腕を奪って行った」

『……それはそれは。成程、苛立ちの原因はそれか』

「だが俺たちはあいつと組もうと思っている。その際に俺の護衛を頼みたい」

『……へぇ? 俺に頼むってことはそれだけ警戒しているという事か?』

「先生がいない以上お前にしか頼めない。またうちの奴を殺される訳にはいかないしお前なら問題なく捌けるだろう?」

『信頼してくれている様で嬉しいな。分かった、時期を知らせてくれ。会談が失敗しても無傷で逃がしてやるよ』

 

 始祖は太鼓判を押して言う。死柄木は時期を知らせると通信を切る。ソファーに深く腰掛けていた死柄木はジッと、眷属を眺める。最近ではこういう時間が増えていた。

 

「……オーバーホール。マグネを殺したツケをきちんと払ってもらうからな」

 

 そう呟く死柄木の瞳には始祖と話した先ほどよりも強い”怒り”の感情が籠っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この超常社会においてヤクザが生き残っているのは中々レアな話だ。ヒーローが誕生するとほぼ同時期に多くのヤクザは解体、摘発されていった。今も生き残っているほとんどがヴィラン予備軍とみなされて監視されている。俺が所属する死穢八斎會もその一つだが組長はヴィラン予備軍なんて言われ方に我慢ならないようだ。俺としても社会の底辺で燻っていたところを拾ってくれた恩がある。だから組長の怒りには賛同できるし納得も出来る。

 そんな俺だが最近では不満を貯め込んでいる。今の組はオーバーホールと名乗り始めた治埼によって運営されている。何故若頭が組長を差し置いて組の運営を行っているのか? 簡単だ。組長が倒れたからだ。誰もが治埼の仕業だと気づいているがアイツの個性は強い。だから誰も逆らう事が出来ていない。

 何やら特殊な弾丸を生成しているようだが詳しい事は分からない。組長の孫である壊理ちゃんは地下室に監禁されてしまっているようだ。

 だが、俺はそんな壊理ちゃんの前に立っている。理由は単純だ。壊理ちゃんのお世話係に任命されたからだ。孤児院出身で小さい子の面倒を見ていたという経歴から採用されたようだが正直上手くできるとは思っていない。

 壊理ちゃんがどんな事を受けて来たのか分からないが全く心を開こうとはしてくれない。玩具やお人形を上げて気を引こうとするけど効果なし。最近ようやく目を合わせてくれるようになったが話しかけて無言、気を引こうとすると無視を決められる。他の人ならキレてい手も可笑しくはないかもしれないがこんな境遇の子供だ。こうなっても仕方ないと俺は特に気にしてない。そんな俺に出来るのは真剣に壊理ちゃんと向き合う事だけだ。

 

「……おじさんは良い人?」

「っ! そうだよ、おじさんは痛い事はしないよ!」

 

 ついに、遂に!壊理ちゃんが話しかけてきてくれた。壊理ちゃんのお世話係になってから早半年。ここまで来るのに長かったな。

 

「……」

「壊理ちゃん! 何か欲しい物とかある? おじさんが用意するよ」

 

 話しかけてくれたという嬉しさから詰め寄るように話しかけたがまた無言になってしまった。どうやら怖がらせてしまったようだ。とは言え今のは俺も悪かったからな、そう思い離れようとした時だった。

 

「このままでいて」

「壊理ちゃん?」

「動かないでね?」

 

 壊理ちゃんが両腕で俺の頭を抱きしめてくる。子供特有の体温の高さが感じられ少しイケナイ感情が出てくるが必死に抑え込む。今年で8()()になる筈の壊理ちゃんだがそれにしては細いな。きっと治埼の奴は食事をsせていないに違いない。 でなkれば¥こんあにやている蓮ががななななi 

 こここれれれれが。。。。おわつtらばばおーるー?にkっりりりとととととiuののおももも¥¥¥!!¥>><????&&&ri"s#la))))k

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

「初めましてヤクザの若頭」

「お前が始祖か。もっと威厳のある人物だと思っていたが大したことはなさそうだな」

 

 死穢八斎會の地下に広がる施設の一室にて始祖は死柄木と共に訪れていた。若頭、オーバーホールは始祖が来るとは聞いておらずその事も踏まえて煽るような事を言う。しかし、始祖は特に気にしていないのか死柄木の横にドカッと座る。

 遠慮もない始祖の態度にオーバーホールは一瞬眉を顰めるが直ぐに死柄木に向き直った。

 

「んで? 先日の電話の件は本当なんだろうね? 条件次第でうちに与するというのは」

「ンな訳あるか。都合よく解釈してんじゃねーよ」

 

 人形の如く背の低いヤクザにそう返事をすると死柄木は足をテーブルにたたきつけるように置きふんぞり返る。

 

「そっちは俺達ヴィラン連合の”名”が欲しい。俺達は勢力を拡大したいお互いニーズは合致している訳だ」

「……足を下ろせ汚れる」

 

 死柄木の話を聞いているのかいないのかオーバーホールはそちらに気を取られていた。だが、死柄木は関係なく続ける。

 

「足を”下ろしてくれないか”? そう言えよ若頭。本来はお前らが頭を下げるべきだろうが

まず、お前らの傘下にはならん。俺達は俺達の好きなように動く。五分、いわゆる()()という形なら協力してやるよ」

「……それが条件か」

「もう一つ、お前の言っていた”計画”。その内容を聞かせろ。名を貸すメリットがあるのか知るためには自然な条件だろ? ……尤も」

 

 そう言って死柄木が懐に手を入れた瞬間、二つの影が動く。一つは死柄木の後ろで待機していた側近の一人であるクロノスタシス、もう一人は人形の如き小さな体を持つミミックだ。クロノスタシスが拳銃を死柄木の頭に、ミミックが体からごつい腕を出して押さえつけようと動くがそれらが行われるより先に始祖が動いた。

 拳銃を右手で掴みミミックから出るごつい腕を左手に纏わせた【ワープゲート】を使いクロノスタシスの右肩にあたるように座標を動かす。

 その結果、拳銃は塵となっていきそれに驚く暇もなくゲートから通って来たミミックの腕に肩を叩きつけられる。

 

「ぐっ!」

「なっ!?」

 

 クロノスタシスは脱臼しそうになるほどの激痛を受けその場に膝を付き味方に攻撃したことで怯んだミミックに始祖の拳が顔面のマスクにめり込む。そのままミミックはオーバーホールの後ろの壁に激突し倒れる。

 

「……流石は始祖。実力行使は難しそうだな」

「ったく、何様だ? お前たちの使い捨て同然の雑魚と引き換えにこちらは引石を殺されてるんだぞ。加えて、コンプレスの腕一本分だ。それくらいしないと割に合わないだろうが」

「……そうだな。話の途中だったな。続けてくれ」

「お前らの計画、その内容を話せ。まぁ、ある程度察しはついているが」

 

 始祖が座りなおすと同時に死柄木は懐から”ある物”を取り出す。それは針のようなものが付いた赤い弾丸だった。

 

「こいつを打ち込まれた直後からコンプレスは暫くの間個性を使えなくなった。……なんだこれは?」

 

 死柄木の脳裏に浮かぶのは最初の会合の時の様子。オーバーホールの物言いに切れたマグネが個性を使い引き寄せたがオーバーホールの個性らしきものによって上半身を吹き飛ばされた。更に乗り込んできた死穢八斎會の者達と交戦した際にコンプレスがこれを打ち込まれ個性が使えなくなっていた。そして反撃をくらい左腕を失ったのである。

 

「これで、何をするつもりだ? 教えろ

「……理を壊すんだ。オール・フォー・ワンは個性を奪い支配したと聞くが俺はそのやり方を少しブラッシュアップする。既に根は全国に張り巡らせてある。少しづつ、少しづつ計画的に準備を進めている」

「……という事はそれを売りさばく事が目的か? んな訳ないよな? おそらくやりたい事はマッチポンプだろ?」

「始祖殿は察しは良いようだな。その通りだ。今俺はこの”血清”を開発している。とは言えほぼ完成していると言っていい。後はこれをヒーローに売りつける」

「……成程な」

 

 死柄木は目を細めて呟く。死穢八斎會の計画が分かった事で死柄木は組む事を決めたようで話を続けた。その後、細かい部分を話していくがその中で受け入れられないものがあった。

 

「黒霧と分倍河原をこちらに寄越せ」

「は?」

「始祖殿にも何人か戦闘系の眷属をいただきたい」

「へぇ……」

 

 引き抜きをしたいのかオーバーホールはそう提案してきた。死柄木は苛立ちを感じており始祖は感情の読めない笑みを浮かべながらオーバーホールを見ている。そんな事など気にしてないようにオーバーホールは将棋盤と駒を取り出す。

 

「将棋はやるか?」

「やらねぇしルールも知らん」

「俺は結構やるぞ。チェスよりも好きだ」

 

 死柄木を対戦相手と想定していたオーバーホールだが予想以上に始祖の方が乗り気になったためそちらち対戦を始める。局面は始祖の優位だった。オーバーホールが一手打つと素早く駒を動かして時間を与えない。それでいて戦術に無駄がなくまるで流れ作業の様に戦っていく。やがてオーバーホールは両手を上げて降参のポーズをとる。

 

「負けた。予想以上に強かった」

「そちらこそかなり強かったぞ」

「全然そうは見えなかったがな」

「死柄木……。雑魚ならあの半分で倒せた。予想よりも大分強かったせいで何度も戦術を変える羽目になった」

 

 放置されていたからか、死柄木は不貞腐れたようにそう呟く。その言葉に始祖が苦笑して答えるがオーバーホールは真剣な表情をして言った。

 

「信頼を築くためには必要な事だ。今はまだ遺恨を残している。こちらは計画の全貌を差し出したのだ。次はそっちの番だ。仲間は、大事なんだろう?」

「……なら何故俺にも求める?」

「そちらはついでだ。失敗して当然、成功すれば儲けものの気分で提案しただけだ」

「悪いが今眷属たちはどいつもこいつも忙しい。そちらに構っている暇はない」

「最近騒がれている連続失踪事件か」

 

 日本では主に強者の失踪が相次いでおり百人近くが行方不明となっていた。これを受けて政府は対策を取ろうと必死になっているが【ワープゲート】を自由に使っている事や吸血鬼の能力のせいで全く対応できていないのが現状だった。

 

「最近じゃ中国やアメリカなんかが調査に乗り出しているという噂もあるがどうなんだ?」

「んー、それっぽい連中は何度か見かけた事ならあるな。というか三人くらい喰らっている」

 

 強者を狙っているにもかかわらず諜報員に強者を選んだ理由は分からないが抵抗も出来ぬまま始祖に血を抜かれていた。もしかしたら強者を向かわせる事で確実に接触できるようにしたかったのかもしれないと始祖は後から思ったがそれだけであり特に接触しようとしたりはしなかった。

 

「まぁ、俺の事はどうだっていいのさ。今は死柄木との話が先だろう?」

「それについてはもういい。こっちは了承した」

「へぇ?」

 

 死柄木はオーバーホールと始祖が話し合っている内に答えを出したのかそう言った。しかし、先程と同じように死柄木は答える。

 

「ただし俺から出せるのはトゥワイスだけだ。黒霧は今別任務で傍にいない。何時戻って来るかも分からない」

「……仕方ない。今はそれで妥協する事にしよう」

「それならこちらも一人だそう」

「ん? 忙しいのではなかったのか?」

「そうなんだが、一人暇を持て余している奴がいた。死柄木、覚えているか? トガヒミコって」

「……あの時の餓鬼か。林間合宿の襲撃にも参加していたな」

「あいつを出す。アイツに誘拐をさせると血が残っていない状態でやって来るからな。任せられないんだよ」

「そんな奴を出すのか。オーバーホール、ご愁傷様と言っておくぞ」

「別に構わないさ。”吸血鬼がこちらに協力した”と言う実績が作れるからな」

 

 オーバーホールは機嫌よさげに答える。吸血鬼からも協力を得られてホクホクなのだろう。その後も機嫌よく会話を行い始祖と死柄木は部屋を離れ再び長い廊下を歩いていくことになる。

 二人が居なくなった後、ミミックはオーバーホールに問う。

 

「若、よろしかったので?」

「勿論だ。両方とも適当な場所で出して懐柔するなり事故に見せかけて殺すなりすればいい。俺達は名を上げ資金を得て仲間を得る。吸血鬼はともかくヴィラン連合の足を確実に鈍らせる事が出来る。問題ないさ」

 

 一方、廊下を出て地上に戻ってきた二人は始祖が出したゲートをくぐりヴィラン連合の現在の拠点である廃ビルに戻ってきた。そこで始祖は問う。

 

「良いのか死柄木? 確実にあちらの狙いはヴィラン連合の動きを封じる事だぞ」

「問題ない。トゥワイスはこちらで説得する。お前はトガとか言うガキの準備をしろ」

「はいよ」

「オーバーホール、お前は俺達を出し抜いていると思っているかもしれないがそれは大きな間違いだと教えてやるよ」

 

 死柄木はそう言って笑った。始祖も狂気的な笑みを浮かべて死柄木に続く。

 

 

 

 そしてトゥワイスとトガヒミコが死穢八斎會に出向した数日後、死穢八斎會の本拠地にヒーローと警察が摘発の為に突入するのだった。

 




トガヒミコとトゥワイス
原作だとペア的な存在となっている二人だが残念な事に原作のような相棒的関係はない。ただ、トガヒミコは(全く触れていなかったけど)原作通りに林間合宿襲撃に参加しているのでお互いの存在は知っている。トガちゃんなら直ぐに仲良くなれるかもしれないけど……

壊理ちゃんのお世話係だった人
ヤクザをやっているとは思えないほど常識人だが自分を拾ってくれた組長に恩義を感じ組長が倒れる原因をオーバーホールがやったと思っている。
孤児院出身で子供の相手をしていた事から壊理ちゃんのお世話係に任命される。原作に出て来たプリン頭の様に雑な扱いをせずに本心から接していたが中々心を開いてもらえなかった。やっと心を開いてもらえたと思ったら……

壊理
壊理ちゃんはほら、いろいろあったんだよ

将棋
将棋は楽しいぞ~。なお、筆者は下手の横好き

マグネ
本名は引石健磁。トランスジェンダーの女性でありそれが原因で今の社会から爪弾きにされていた。その為今の世の中を変えたいと思っていた。原作だとトガヒミコとトゥワイスから「マグネェ」と呼ばれていた
始祖との絡みはスピナーと同程度しかないがヴィラン連合だと林間合宿襲撃で捕まった奴らとMrコンプレスがまだ直接的な絡みがないのでそれなりに絡んでいた方。男(ではないが)の顔と名前を覚えるのが苦手(というか覚える気がない)な始祖が珍しく(一応協力している組織の一員だが)顔と名前を憶えていた人物。
原作と同じく連合初の死亡者。

始祖に名前つけた方が良い?

  • その方が良い
  • 今のままでよくね?
  • 俺が考えてやんよ!
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