吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話   作:鈴木颯手

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02・雄英高校襲撃

「一かたまりで動くな!」

 

 ヒーローを育成する国立雄英高校のヒーロー科では初の災害救助訓練授業が行われようとしていた。『ウソの災害や事故ルーム』略してUSJと呼ばれるそこではヒーローであり教師でもある13号より個性についての説明を受けやる気十分でまさに挑もうとした時、中央にある広場を見てこの授業を行っている1年A組の担任である相澤消太は瞬時にそう叫んでいた。

 突然の事に驚くA組生徒だが広場に黒い靄が現れそこから大量の人が出て来た事でそこに注目がいく。恰好も姿もばらばらの十人を軽く超えるそれらはゆっくりと広場を埋め尽くす。

 

「なんだありゃ?」

「また入試のような奴か?」

「動くな!」

 

 困惑する生徒たちに対して相澤は直ぐにでも行動できるように身構え生徒が不用意な動きをしないように注意する。自らの個性である”凝視する者の個性を消す”力を十全に使えるようにゴーグルを付けると一言だけ言った。

 

「あれは……、(ヴィラン)だ」

 

 (ヴィラン)。それはヒーローを目指す者なら必ず相対する犯罪者たち。それがこうも早い段階で出会う事になるとは生徒たちの誰もが予想外だった。一方で、相澤や13号は何処か分かっていたような態度を取っており余裕はないが混乱している様子はなかった。

 

「やはり”先日の”はクソどもの仕業だったか……」

 

 相澤が言う”先日の”とは雄英高校の防壁を破壊してマスコミを侵入させた事件の事である。ただのマスコミにそんな芸当が出来るはずがなくそのせいで今回の災害救助訓練は相澤を含めた三人で行う事になっていた。

 そして、相澤と13号と共に教えるはずだった存在、オールマイトはこの場にはいなかった。今年より雄英高校の教師となったオールマイトだが”とある事情”で活動できる時間が少ないにも関わらず通勤中に人助けをしていたせいで本校舎の仮眠室で休んでいた。

 とは言えそれを知らない敵、ヴィラン連合を率いる死柄木弔は呟く。

 

「何処だよ。せっかくこんなに大衆を引き連れて来たのにさぁ。オールマイト、平和の象徴……。いないなんて、子供を殺せば来るのかな?」

 

 そう言って弔は笑う。初めて悪意を目にし、自分に向けられたA組の生徒は恐怖で顔を引きつらせているが中には冷静に状況を把握しようとしている者もいた。そんな彼らを見て弔の隣に立つ女性が言う。

 

「ヒーローの卵たちの中には将来大物になりそうな人材もいるようですね」

「お前、分かっているとは思うが」

「勿論です。今の私はヴィラン連合に所属する一人。我が()より承った命令をきちんと遂行して見せましょう」

 

 女性は首から下げている十字架のペンダントの下部を握ると口づけを行う。女性の優れた容姿も相まってその行いは神秘的であり平時なら同性ですら見惚れさしただろう。しかし、ここでは違う。その様な行いも恐怖を増長させる要因の一つにしかならなかった。

 生徒の様子を伺っていると相澤が一気に駆け寄って来る。それを見た射撃能力のある(ヴィラン)が攻撃を行おうとするが個性は発動せず相澤が持っている布に絡めとられて呆気なく無力化された。炭素繊維を練り込んだ特注の捕縛布でそう簡単に破れたり破損するような物ではなかった。

 

「へぇ、中々やるな」

「確かイレイザー・ヘッドでしたか? 個性を消せるというこの超常社会において最強と言える個性。それだけではなく本人の身体能力も高い」

 

 どんどん仲間がやられていくが女性と死柄木はのんきに分析している。それもそのはず、死柄木と女性、出入り口である黒霧にもう一人の巨漢の男?を除けば連れてきたのはその辺の裏路地で個性を持て余している様なチンピラなのだから。別に仲間でもなんでもない為彼らの生死に興味はなかったのである。

 とは言え本命ではない、全く相手にしていなかった奴に一方的にやられているのは不快感を催す様で死柄木は目に見えて苛立っていた。口調こそ普通だがその目には確かな苛立ちが宿っていた。それに気付いた女性が死柄木に声をかける。

 

「私が出ましょう」

「……いいのか?」

「ええ、そのために私は来ているのですから」

 

 死柄木は女性の提案を顎でしゃくることで同意する。女性はゆっくりとした足取りで相澤の下に向かう。騎士の様な格好をしているせいでヴィランとは思えないが現にチンピラたちは彼女に道を譲るように動きだす。

 それを見た相澤は女性に警戒を示すがまるで通行人に話しかけるように明るい口調で言う。

 

「こんにちは。今日はとても良い日ですね」

「……お前らクソどもが来なければな」

「そうですか? それは残念です」

 

 相澤はこれ以上話す事は無いとばかりに捕縛布を女性に放つ。なんの個性を持っているのか分からないが相手のペースに乗る必要はない。そう判断しての先手必勝だったが女性は捕縛布を簡単につかむ。

 

「っ!?」

「先手必勝とばかりの行動。御見それしました。ですが、私を相手にしたいのなら、何もかもが劣っています!」

 

 女性のその言葉と同時に女性が掴む辺りの捕縛布が燃え始める。個性が発動したと思い視線を向けるが一向に火が消える事は無くドンドン火力が上がっていく。

 

「なっ!?」

「個性を消すというのは確かに強力ですが個性を持たない者には無意味な行いです!」

 

 簡単には燃えないはずの捕縛布を半分ほど焼き尽くすと女性は相澤に一気に近づく。コマ送りで突然前に現れたような状況に相澤は一歩下がるがそれよりも早く女性が相澤の頭を掴み後頭部を地面にたたきつける。

 

「がっ!?」

「肉体もそれなりに鍛えている様ですが全然足りませんね」

 

 その二回、三回と後頭部を叩きつけていく。地面が陥没する程の威力で叩きつけられている為後頭部から大量の血が出ていた。その様に相澤を嬲っている間に黒霧は逃げ出そうとしていた生徒たちを自身の個性を使ってUSJ各地に散らしていた。ドーム型の施設であり出入り口は頑丈で重厚な鉄の扉があるだけ、そこを封じられた以上彼らはここに閉じ込められたという事になる。警報やアラームの類は予め作動しないようにしておき通信妨害の個性を持つ者で外部との連絡を遮断した以上中から外に出て助けを呼ぶか外の人間が異常事態に気付くしかない。

 

「生徒たちは散らしたみたいだし貴方も満身創痍。全滅も時間の問題ですね」

「……ほ、ほざけ……。俺の生徒は、お前らになどぐっ!?」

「まだ喋れましたか」

 

 相澤の悪態を途中で遮るようにもう一度後頭部を叩きつける。先程よりも力を込めて。半分ほど地面にめり込み動かなくなった相澤を離すと死柄木の方を向く。

 

「さて、私はこれからどうすればいいですか?」

「好きにしろ。俺はそいつ(相澤)で暫く遊ぶさ」

 

 オールマイトがいない事でやる気を失ったのか死柄木はそう答え相澤の下に向かって行く。彼の個性は【5指で触れた対象を破壊する】という凶悪なものだ。人間なら触れれば1分で塵に出来る程凶悪であり動けない相澤に対抗する手段はなかった。

 

「ならば私は我が神への報告を行います」

「そうか」

 

 死柄木は興味なさ気に答えた。呆気なく相澤を無力化した事で広場にいるチンピラたちは各地に散らばった生徒たちを殺そうとそれぞれ好きな場所に向かって行きこの場には一歩も動かない巨漢の男とタブレットを取り出し報告をする女性、死にかけの相澤とそんな彼をさらに追い詰めるように四肢を壊していく死柄木のみが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態が動いたのはそれからすぐだった。相澤の膝と肘を破壊し完全に動けなくした死柄木の下に黒霧がやってきた。黒霧は出入り口を抑えていたはずだったがそんな彼がこの場におり更に何処か焦っているようにも見えた。

 

「どうした黒霧? 13号は始末できたのか?」

「行動不能にはできました。ですが、散らし損ねた生徒がいまして……。一名、逃げられました」

「……は?」

 

 死柄木は黒霧の予想外の言葉に思わず聞き返した。プロでもない、ヒーローの卵とは言え子供に逃げられた。まさかの出来事に死柄木の息は速くなり首の両脇をかき始める。ただならぬ雰囲気に報告を終えた女性が戻って来る。

 

「黒霧、お前がワープゲートの個性じゃなければ粉々にしてたぞ……!」

「申し訳ございません」

「逃げられたのか? 流石にこの戦力で何十人ものプロを相手にするのは難しいよ」

「分かってる。ゲームオーバーだ! ゲームオーバー! オールマイトも来ないし、帰ろっか」

 

 死柄木の言葉に女性は苦笑する。目的がいない以上それもあり得る話だがまさかのゲームオーバーである。ゲーム感覚でいるとはさすがの彼女も予想外だった。

 

「……あ、そうだ。帰る前に平和の象徴の矜持を、少しでも壊してからでも遅くはないか」

「……? ……ああ、そうね」

 

 女性は一瞬なんの事か分からなかったが直ぐに何を示しているのか気付き死柄木と同じように”とある方向”に視線を向ける。そこには三人の雄英高校の生徒がいた。散らされた先で敵を倒しここまで戻ってきていたのだろう。しかし、完全と言える程無力化され死にかけの相澤を見て恐怖で固まっていた三人はまるで瞬間移動でもしてきたような動きを見せた死柄木の行動に全く反応できていなかった。そのまま死柄木の腕が三人の中で唯一の女性の顔に触れ……

 

「……ああ、本当にカッコいいぜ。イレイザー・ヘッド」

 

たが個性は発動せずその原因である相澤の方を見る。四肢を動かせず頭部を損傷しているが相澤は睨みつけるように体を起こし死柄木を見ている。もう動けないと思っていただけに死柄木は感嘆すら覚えるが個性を消していると分かった以上何時までもそうしている訳にはいかない。直ぐに女性が行動に出た。

 

「まだ起き上がれるのですか。ですがこれでお終いです!」

「がっ、ぁ……!」

 

 女性は相澤の胸辺りを思いっきり蹴る。体にめり込むほどの威力を受けた相澤の体は吹き飛び広場の端にぶつかり大きな煙を上げる。距離が開いた上に止めとも言える攻撃を受け相澤が動く事は無いだろう。

 そこで漸く我に返ったのか生徒の中で唯一ヒーロースーツではなく学校指定のジャージを着ていた生徒が動き出す。右腕を振りかぶり殴る姿勢を作る。右腕には赤く光る血管の様なものが浮き上がっている。そこで漸く死柄木も気づいたようでそちらを振り返るがその時には既に攻撃態勢が整っていた。

 

「手、放せぇ! スマッシュッ!」

「っ!」

 

 死柄木を中心に爆風が起こる。女性も吹き飛ばされないように固まる程の衝撃で攻撃時にスマッシュと言った事と合わせてオールマイトを思わせた。

 倒せたと思ったのか生徒の顔は明るい。しかし、顔を上げると同時にその顔は絶望に染まる。そこには巨漢の男が立っていたのだから。ヴィラン連合が出て来た場所から一歩も動かなかったが死柄木の危機と判断したのか一瞬で二人の間に割り込んでいたのである。しかも爆風が起こる程の一撃を受けても巨漢の男にダメージが入った後は見えない。

 

「あ、あ……」

「良い動きをするな。……”スマッシュ”ってオールマイトのフォロワーか?」

 

 その生徒は絶望の表情を浮かべており巨漢の男を挟んだ反対側にいる死柄木は興味を持ったのかそう口にするが直ぐに興味を失ったのかトーンを落とした声で呟く。

 

「……ま。いいや別に」

 

 その言葉が合図となり巨漢の男が生徒が突き出した右腕を掴み逃げられないようにする。そして掴んでいない方の左腕を振り上げ攻撃の動作を始める。そこで漸く女性生徒も動き出し蛙のような長い舌を出し巨漢の男に捕まっている生徒を助けようとするがそんな女生徒と残ったもう一人の生徒を殺そうと死柄木の両腕が迫って来る。女性は三人の生徒が死ぬと思い十字を切り三人が天に召される事を祈る。

 このままいけば三人の生徒はなすすべなく巨悪の前に死ぬだろう。

 

 

 

 

 

 しかし

 

 

 

 

 

 

 天はまだ彼らを見捨ててはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 突然出入り口にある鉄の扉が吹き飛ぶ。”外側”より受けた衝撃で内側にくの字で倒れ込んだ扉を無視するように足音が聞こえてくる。いきなりの事に巨漢の男も死柄木も攻撃が止まりそちらを見る。

 

「もう大丈夫」

 

 そこには生徒も、相澤も、13号もそしてヴィラン達でさえ待ち望んだ人物がいた。筋骨隆々で画風すら違って見えるNo.1ヒーローにして”平和の象徴”。

 

「私が来た!」

 

 オールマイトが到着したのである。

 

 

 

「ああ、コンティニューだ」

「あれが、オールマイト……。我が神が警戒する男……」

 

 破壊や絶望を振りまく”巨悪”と希望を照らす”平和の象徴”が今、相まみえようとしていた。雄英高校襲撃は最終局面を迎えようとしていた。

 




相澤君まさかの瞬殺……。目に後遺症は残らない代わりに原作より重傷で四肢を全てやられていますが多分生きていると思います

女性に関して
始祖が派遣した眷属。オール・フォー・ワン相手に傷を負わせるくらいには強く始祖との出会いは千年以上前。生まれはヨーロッパ。(キリスト)を信仰していたが死ぬ間際に始祖に助けられて以降眷属化による絶対服従と会わせて神と思うようになる。
あらゆる物を焼き尽くす炎を使う。炎は焼くというよりも破壊するという感じで死柄木の個性と似ているが本人に近ければどこにでも出せる為汎用性は高い。更に千年以上の間肉体を鍛え武術などを覚えてきた為素の身体能力も高い。

他のキャラを出すか(勿論始祖の眷属として。その為性格は大きく変わる可能性大)

  • あり
  • なし
  • 数人程度ならあり
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