吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話 作:鈴木颯手
ヴィラン連合の目的は”平和の象徴であるオールマイトの抹殺”である。しかし、それを行うにはあらゆる困難が待っている。
先ずはオールマイト自身の力。オールマイトは平和の象徴でありNo.1ヒーローとして頂点に立つ人物だ。当然その地位にふさわしい実力を持っており並みの人間では太刀打ちすら出来ない。それどころか一撃で倒されるだろう。それだけの力を彼は持っている。
次に他のヒーローたちだ。オールマイトをどこで襲撃するかにもよるが大抵彼以外のヒーローがいる。彼ばかりに構っていればその後方から攻撃を受けるだろう。No.2であるエンデヴァーを始め実力だけならオールマイトにも劣らないヒーローというのはたくさんいるのである。
他にもあるが現状ではこの二つがオールマイト抹殺を困難にしている。とは言えこれらを超える事が出来ればオールマイトの抹殺は可能なのである。
そして、実行できるチャンスは簡単に訪れた。オールマイトの雄英高校教師に就任というニュースである。これによりオールマイトの位置はある程度固定された。後はカリキュラム次第では雄英高校の教師すら気付かないで襲撃も可能だろう。オールマイトを倒せる戦力もオール・フォー・ワンが用意したようだ。そこに俺の眷属が加わる事でオールマイトの抹殺は現実味を帯びてくる。
そうなると俺も生半可な眷属を派遣する訳にはいかない。俺の眷属約一万のうち戦闘に特化した眷属は約千名。その内オールマイトやオール・フォー・ワン相手に戦える存在は三分の一。その中でもトップ10、いや5に入る者を派遣しよう。
フランスで産まれ神の声を聴いたとしてイングランドとの戦争に参加し、最終的には異端として火刑されたはずの
雄英高校にある災害救助専門の施設『
そして、今まさに命が潰えようとしていた三人の生徒、緑谷出久、蛙吹梅雨、峰田実はオールマイトの登場に希望を持ったが只一人、緑谷出久だけはオールマイトの様子に気が付いていた。オールマイトが持つ個性【ワン・フォー・オール】は世間では超パワーなどと言われているがそれはこれまでに8人の継承者から受け継がれてきた超パワーを使う事が出来るもので緑谷出久はオールマイトより個性を受け取った継承者なのである。故にオールマイトの今の体、過去にオール・フォー・ワンより受けた傷が原因でその力が弱まっている事を知っていた。
更にいつもなら笑って言うセリフすら真顔で言うほど余裕はなく何時力が尽きても可笑しくはない状況だったのだ。それでも、その事を知っているのはこの場において彼只一人であり生徒たちは希望を抱きヴィラン連合は目的達成の為に彼の方を向く。
「あれがオールマイト。写真では見ていましたが画風が全く違いますね」
始祖より派遣された眷属である女性、ジャンヌ・ダルクはそう呟きつつ警戒を怠らない。まだ距離はそれなりに離れているがジャンヌ達のいる所からでも分かる強者の覇気に自然とそうしていたのだ。
そして、オールマイトが死柄木達の方を向き、力んだと思った瞬間
「っ!?」
「くっ!」
「……え?」
死柄木は顔を殴られジャンヌは辛うじて両腕で防ぐも苦悶の表情を浮かべ死柄木達と零距離の位置にいた緑谷達は少し離れた場所に立っていた。思わずと言った様子で峰田が疑問の声を上げるがそれだけオールマイトの成した事は理解が追い付かない事だった。
「え? あれ?」
「皆! 相澤君を頼む!」
「は、はい!」
困惑する峰田をよそにオールマイトはそう言って三人を下がらせる。緑谷は心配そうにオールマイトを見ておりやがて決心したように話し始めた。
「ダメですオールマイト! あの脳みそヴィラン、ワン・フォー……。僕の腕が折れない程度の力で殴ったのに全然効かなくて! 多分……」
「緑谷少年!」
緑谷出久の制止する声をオールマイトは遮った。そして、彼の方を向き笑顔で言う。
「大丈夫!」
緑谷出久を安心させるように言うその言葉を聞き彼は相澤の下に走る。その後を追いかけるように蛙吹と峰田も向かう。それを確認したオールマイトは改めてヴィラン連合達に向き直る。
死柄木は殴られた衝撃で外れた顔面に装着した手を付けなおし荒れた呼吸を直す。一瞬にして情緒不安定になったその姿は何処か不気味さを覚えるがオールマイトにとっては倒すべき敵でしかない。
たった一蹴りで死柄木の下に跳躍すると腕をクロスさせる。
「
「”脳無”」
「SMASH!!!」
両腕でクロスチョップを死柄木にお見舞いするもその直前で巨漢の男、”脳無”に阻まれる。緑谷出久の時と同じように必殺の一撃にも関わらず脳無にダメージが入った様子はなかった。脳無はそのまま両腕で抱き着く様に掴みかかろうとするもそれをリンボーダンスの様な形で避ける。
「っ! マジで全然効いてないな!」
オールマイトはそう言うと同時に右ストレートを脳無の胴体に叩き込むもこれもダメージを受けた様子はなく再び掴みかかろうとする。
「なら!」
オールマイトは脳無の腕から逃れると左右の頬にストレートを決める。しかしそれすら効かず脳無は雄たけびを上げてオールマイトに襲いかかる。そのまま両者の攻防が行われるがオールマイトの攻撃はどれも通じない。その様子を死柄木は楽しげに見ていた。
「効かないのは【ショック吸収】だからさ。脳無にダメージを与えたいならゆっくりと肉を抉り取るとかが効果的だね。尤も、そんな暇があればの話だけど。オールマイト、お前の敵は脳無だけじゃないぞ」
「その通りだ」
「っ!」
殴り合いに割り込むように走る炎。脳無すら巻き込む形で放たれたそれをオールマイトは上空に飛ぶ事で間一髪のところで避ける。その結果脳無は炎に飲み込まれる結果となりフレンドリーファイアのみとなってしまった。
しかし、そこで漸くジャンヌ・ダルクの存在にも目が行くようになり炎の中からほぼ無傷で現れた脳無と挟まれる形となった。更にオールマイトは自身の一撃を苦悶の表情を上げていたが防ぎきる程の動体視力と身体能力をジャンヌ・ダルクが持っている事を先ほどの緑谷達を助ける際に判明している。
前方には自身の攻撃が全く通用しない
「オールマイト。我が神の為にここであなたを殺します」
「神? まさかそれはオール・フォー・ワンじゃないだろうね」
「勿論違います。私が仕える至高の御方、私の全てを捧げるにふさわしいあの御方は貴方の活躍に警戒を示しています。故に、我が神の心の重みを取り除くため、貴方には死んでもらうのです」
「それはそれは。悪いがまだ死ぬわけには、いかないな!」
ジャンヌ・ダルクの火炎放射を避けると襲ってきた脳無の背後に回り込み押しを掴むとバックドロップを決める。瞬間、爆発したような衝撃が施設中を襲う。これには遠くから見ていた他の生徒や相澤を運んでいる緑谷達も歓声を上げる。
しかし、煙が晴れると同時に彼らの目に飛び込んできたのは脳無がコンクリートの地面に突き刺さる光景ではなく黒い靄によってオールマイトの背中に上半身を出し左の脇腹に指を突き立てる脳無の姿だった。一転して訪れるオールマイトの危機に生徒たちは絶句する。そんな中、死柄木だけは愉快そうに笑っている。
「コンクリートに体を突き刺して動けなくする算段だったのか? 残念だったな。脳無はオールマイト並みのパワーがあるんだ。無駄な行いだぞ」
苦悶の表情を浮かべるオールマイトは脳無の腰から手を離し自身の左わき腹を突き刺すようにして押さえつけている脳無の右腕を離そうともがく。しかし、オールマイト並みのパワーを持っていると言っている通り全く緩む気配はなかった。
「黒霧、よくやった。期せずしてチャンス到来だ」
「君ら、初犯でこれは……、覚悟しろよ!」
「今のあなたにそう言われても怖くもなんともないですわ」
オールマイトの負け惜しみとも取れる言葉にジャンヌ・ダルクは嘲笑する。
「……黒霧」
「はっ。……私の中に血や臓物が溢れるので嫌なのですが、あなたほどの物なら喜んで受け入れましょう!」
黒霧はそう言うと同時にオールマイトは黒い靄の方に引き寄せられていく。異変に気付いたオールマイトが確認するがその答えを言うように黒霧が話を続ける。
「超高速のあなたを拘束するのが脳無の役目。そして、あなたの体が半端に留まった状態でゲートを閉じて引きちぎるのが私の役目」
「因みに私はそれらを円滑に進めるための補助だよ。まぁ、私で殺してもいいと言われてはいるけどね」
「くっ!」
オールマイトはこれから行われる出来事に歯を食いしばるが今の自身ではどうにもならず必死に頭を巡らせる。しかし、そこで視界の端に一人の少年が向かってくるのが見えた。
「(緑谷少年!? 君ってやつは……)」
「……先ほどの生徒か」
オールマイトが気づいたようにヴィラン連合も緑谷出久が向かってきているのに気づく。迎撃に出たのは今この場で何もしていないジャンヌ・ダルクだった。飛び込んでくる緑谷出久の向けて炎を繰り出そうとする。そこに至り自分の行動が失敗したと気づくが時すでに遅かった。そのままジャンヌ・ダルクの炎が緑谷出久を包み込もうと……
「邪魔だぁ!!」
動こうとした時だった。横から別の生徒が現れジャンヌ・ダルクの顔に爆破を起す。その生徒、爆豪勝己はそのまま黒霧が首に巻いていた鉄製の襟をつかみその場に倒す。更に地面に氷が走り脳無の右足を伝い右腕のギリギリまでが凍る。雄英高校に推薦入学を決めた轟焦凍の一撃によりオールマイトへの拘束が緩む。更に死柄木に襲いかかるように生徒の一人である切島鋭児郎が飛び出してくるがk路絵は簡単に避けられ一旦下がる。
「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた。どうやら当たっていたようだな」
「すかしてんじゃねぇぞ! モヤモブがぁ!」
瞬く間に形成は逆転した。黒霧は抑えられ脳無は右半身が凍り、ジャンヌ・ダルクは爆破を顔面に受け倒れている。死柄木以外が無力化されてしまっていた。
「……出入り口を抑えられた。こりゃぁ、ピンチだな」
「ふん! このうっかり野郎め! 思った通りだ。靄状になれる部分は限られているからそこを靄で覆ってたんだろう? でなけりゃ”危ない”なんて言葉を言ったりしないもんなぁ?」
「クッ!」
黒霧が生徒たちを散らす際に爆豪と切島に攻撃をされていた。その際に黒霧は”危ない”と口にしていたがそこから黒霧の個性と弱点が見破られたのである。
この状況を打開するべく黒霧が行動を起こそうとした時だった。鉄製の襟で小さな爆発が起こる。
「動くなぁ! 少しでも怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐに爆破するぅ! 今度はもっと威力を込めるぞ!」
「おいおい、それがヒーローを目指す奴の台詞かよ」
爆豪の言葉に切島が呆れたように呟くが生徒たちのどこか余裕のある声とは違いヴィラン連合はまさに窮地に陥っているといってよかった。
「……こうならないように散らした先にはチンピラを送ってあるのに攻略された上に全員ほぼ無傷。……凄いなぁ、最近の子供は。ヴィラン連合を名乗るこっちが恥ずかしくなってくるぜ」
死柄木は冷静に状況を把握する。しかし、その声は恐ろしい程落ち着いておりまるで窮地を感じていないかの様なふるまいをしていた。そして、死柄木は脳無の方を向くと名前を呼ぶ。
「脳無」
その言葉と同時に脳無が動き出す。氷で動けないにも関わらず無理やり動いたため右足と右腕が割れるが脳無はまるで痛覚を感じていないように平然としている。そして、その瞬間氷を突き破り砕けたはずの右足と右腕が生えてくるがそれはオールマイト、緑谷出久にとってはあり得ない光景だった。何しろ彼らは【ショック吸収】という個性が脳無にある事を身をもって知っているからだ。にも関わらず脳無はまるで
「なんだ!? 【ショック吸収】の個性じゃないのか?」
「別にそれだけとは言ってないだろ。これは【超再生】だな。脳無はお前の100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバッグ人間さ」
死柄木がそう言い終わると同時に再生は完了し再び無k慈雨の脳無が自由となる。それを受けて生徒たちは警戒するがそんな事はどうでもいいとばかりに死柄木は呟く。
「まずは
「っ!」
死柄木の言葉に標的が誰なのか瞬時に判明するがそれと同時に脳無が駆けだす。オールマイト並みの速度でまっすぐ黒霧を抑える爆豪に突進する。しかし、それを防ぐようにオールマイトが割り込み爆豪をどかす。それと同時に脳無のフルパワーの一撃がさく裂した。とっさに防御は間に合ったが後方にある壁まで押し出され衝突する。
「くっ! 加減をしらんのか」
「何だよ。ピンピンしてるじゃないか。それに仲間を助ける為さ」
死柄木は黒霧たちの下にまで歩み寄りながらオールマイトを見る。そこから始まるのは死柄木に縁る演説。ヒーローは暴力装置と言いそれによって抑圧された世界にオールマイトを殺す事で”暴力は暴力しか生まない”と言う事を知らしめると語るがそれは直ぐにオールマイトによって嘘だとバレる。
その後はオールマイトが再び脳無と殴り合うが今度は先ほどとは違い【ショック吸収】という無効ではないという事を生かして吸収できなくなるまで攻撃を行い続けて遂には脳無を吹き飛ばす事に成功した。施設を震わせるほどの衝撃が走る。オールマイトが来ているが現場を見ていなかった者達はオールマイトが行った事だと見抜き歓声を上げる。
【ショック吸収】をなかったことにしたうえで吹き飛ばしたことによりヴィラン連合の戦力は大きく低下した。何しろオールマイトを抑える役目をしていた脳無がいなくなったのだから。しかし、そこで漸くもう一つの戦力が動き出す。
「……まさか、餓鬼にやられるとは」
「「「「「っ!!??」」」」」
誰もが声の方を向けばジャンヌ・ダルクが忌々しそうに爆豪を睨みつけながら歩いてきていた。脳無とオールマイトの戦いの最中、気絶していたジャンヌ・ダルクは少し離れた場所に飛ばされそこで漸く意識を取り戻していた。火傷を負ったのか顔の皮膚は痛ましい姿をしているが不思議と少しづつ治っていた。
「!【治癒】系の個性か」
「ふん、そんな物じゃないさ。これは”種”として持ち合わせた能力であり恩恵だよ」
死柄木と黒霧の横に並ぶように立つジャンヌ・ダルクは轟の言葉にそう答える。この場において彼女の正体を知るのは死柄木と黒霧だけ。それ以外には何の事か分からなかった。
「……死柄木。帰ろう。今日はここまでだ」
「なっ!? 待ってください! ここで退くのは……!」
「施設の外から複数の足跡が聞こえる。教師たちが到着するぞ」
「それは……!」
ジャンヌ・ダルクよりもたらされた情報はヴィラン連合のゲームオーバーを示していた。教師がくればチンピラだけでは抑えられない。オールマイトを殺す事は不可能となるのだ。それが分かっただけに黒霧は悔し気にしながらワープゲートを開く。
「ほら、死柄木入れ」
「くそ、今回は失敗だが次は殺すぞ。平和の象徴、オールマイト……!」
死柄木はそれだけ言ってワープゲートの中に消えていく。実行犯を逃がすわけにはいかないと爆豪たちが向かって来ようとするがそれを防ぐようにジャンヌ・ダルクが炎の壁を作る。
「なっ!? これほどの炎とは……!」
「オールマイト。貴方はどうやら我が神が警戒するに値するだけの力を持っているようだ。今日はこれにて帰らせてもらいます。……ああ、そうだ」
ジャンヌ・ダルクは足をワープゲートに入れたところで何かを思い出したようにオールマイトの方を振り向くと笑みを浮かべてこう宣言した。
「我が神からはオールマイトを殺せなかったときは自己紹介を行えと言われていました。
私はジャンヌ・ダルク。フランス、オルレアンの乙女にして吸血鬼の始祖に仕える眷属の一人です。
次に会う時は貴方を殺せるくらいには力を付けておきましょう。ではさようなら、No.1ヒーロー」
「っ! 待て!」
オールマイトの制止の声など届いていないとばかりに無視してジャンヌ・ダルクはワープゲートの中に消える。その瞬間、黒霧はワープゲートを閉じ連れて来たチンピラを置いてその場から消えるのだった。
そして、教師たちがその場に到着するのはその数分後の事だった。
ジャンヌ・ダルクの補足
百年戦争で活躍した本人。始祖と出会ったのは火刑にあう前日。ジャンヌ・ダルク(の容姿)を気に入った始祖によって眷属にされ替え玉を用意してそいつをジャンヌ・ダルクだと思わせるようにして死を偽装した(歴史に名前が出てくる女性たちの中で眷属にされたものは大体こんな感じで替え玉と交換されている)
元々軍人だった事もあり眷属の中では最上位の戦闘能力を持っている他炎を操る事が出来る。
眷属化の影響で始祖を神と思い込むようになり狂信者とも言える人物となる。元々の性格は神を信じそれに従いつつも女性らしさを持った女性且つ超のつくほど真面目だったがその面影はほとんどない
雄英高校襲撃では相澤を瞬殺(殺してないよ)する。その後はオールマイトを倒すために脳無事焼き殺そうとしたり脳無と一緒に挟み撃ちにしたりする。オールマイトの危機に向かってきた緑谷出久を焼き殺そうとした際に爆豪の爆破を受けて意識を失い顔に重度の火傷を受けるが吸血鬼の能力で再生するがその最中にオールマイトと脳無の戦いの爆風で吹き飛ばされ体を打ち付ける。その衝撃で目を覚ます。最後は教師が向かっている事を察知し到着前に死柄木と黒霧と共に逃げるが最後にオールマイトに自らの正体を明かして去った。
因みに原作だと熱い展開のオールマイトと脳無の戦いはジャンヌ・ダルクが出て来ない為ほぼカットしました(予想以上に長くなって早めに切り上げたかったとかそんな理由ではない。決してない)
他のキャラを出すか(勿論始祖の眷属として。その為性格は大きく変わる可能性大)
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あり
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なし
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数人程度ならあり