吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話 作:鈴木颯手
1000万という破格のポイントを持ったわけだがやはり試合開始と同時に狙われる緑谷出久。実質的な1000万の争奪戦となった訳だ。
真っ先に仕掛けたのはB組の騎馬だ。確か体を固くできる奴だったか?そいつが騎手を務める騎馬の前騎馬が個性か何かで地面を沼にする。緑谷チームはどんどん足が埋まっていくが何かバックパックの様なもので空を飛び回避している。しかし、あの沼は便利そうだ。敵を捕らえるにはもってこいだが空を飛べたり空中を足場に出来る奴には弱いな。
他も良い感じに鉢巻の奪い合いが起きている。そして早速緑谷チームに危機が訪れた。先程のB組チームが前方よい迫り後方から、なんか背中が覆われている人が走って来る。一人ではできないはずだからあの中にチームメイトがいるのか。あの様子からして体格の小さい、巨乳ポニテの背中に張り付いていた奴が入っているのだろう。
入り口を一つにして奇襲を受けないような工夫はとても良いな。あれなら鉢巻を奪うのは至難の業だろう。
「マリー。今年は面白い奴が多いな」
「そうですね。個性も便利そうなものが多いですしダメもとでオール・フォー・ワンに貰えないか聞いてみてもいいかもしれません」
「オール・フォー・ワンか……。流石に直接会う気は起きないしヴィラン連合を経由する事になりそうだな」
どちらにしろ一度襲撃を受けた雄英高校に再び襲撃を仕掛けるのは難しい。となると雄英高校とは別の場所、修学旅行や林間合宿の様な行事を襲撃するのがよさそうだな。
と、そんな事を考えている間に試合は更に進んでいる。試合開始より7分経過といった所か。試合は15分だから凡そ半分といった所か。そこで今のポイントが表示されたわけだが……、あの爆豪が鉢巻を取られている。しかも緑谷チーム、轟チーム以外のA組は軒並み0ポイントだ。どうやらB組の作戦らしいが、正直に言って予想外だな。
「あのB組の男、物間という方は中々の策士の様ですね」
「とは言え今はまだ7分。ここから奪い返される可能性だってなくはない。勿論このままポイントが動かない可能性もあるがそうなれば最終種目に出場する大半がB組となるだろう」
俺個人としてはその場合は拳藤一佳も出場できるようだし特に不満はない。だが、他の客は違うだろうな。ヴィラン連合の襲撃を退けたにも関わらずその大半が敗退。A組の人気は失墜し、B組の評価が上がるだろう。
爆豪は緑谷を狙っていたようだが鉢巻を取られたからか奪っていった奴らを標的にするようだ。そしてその緑谷には轟を始め0ポイントの騎馬が襲い掛かっている。ある意味では妥当な展開だ。0ポイントの騎馬にとって緑谷の1000万ポイントというのは魅力的だ。何しろそれを持っているだけで一位で通過出来るのだから。更に緑谷がどんな個性を持っているのかは分からないが轟や爆豪を狙うよりも簡単だろう。何しろ二人の個性は純粋に強い。加えて鉢巻を一つとってもその数字はバラバラだしそれだけで通過出来るポイントが手に入るわけではない。
「!? これは……」
「あらあら」
轟チームの後騎馬の一人が雷を放つ。どうやら操る事は出来ないようで味方は感電しないように対策を取っている。しかし、それはあくまでチームメンバーのみ。他は諸に電撃を浴びて動きは止まる。その隙を突き轟は個性を使い氷漬けにする。これだけで四つ程の騎馬が無力化され……
「あいつ! 拳藤の鉢巻を取って……!」
「だ、旦那様!? 落ち着いてください!」
あの半分野郎!強い個性を持っているからって調子に乗りやがって!決めた!あいつは何時か倒s……、待てよ。アイツはエンデヴァーの息子なら……。
「マリー。アイツの母親を拉致ろう。そして眷属にしてアイツと戦わせるというのはどうだ?」
「それはおすすめできません。彼と母親の仲もエンデヴァー並みに悪いので和解するまではあまり効果は期待できないかと……」
「くそっ! なんであの家族はこうも……!」
いかん……。少し苛立ち過ぎた。今は騎馬戦の様子を見るか。緑谷チームは
突然轟は加速した。正確には前騎馬の男が普通の人間には見えない速度で走ったという感じだが。その結果、轟は1000万ポイントの鉢巻を奪い取る事に成功した。だが、どうやら奥の手だったようで前騎馬は大きく消耗している。そりゃ消耗が少ないなら予選の障害物競走で使っているよな。そして両者の攻防戦は立場が逆転する事となる。
ぶっちゃけ、ここからはこれまでの15分に勝るとも劣らない濃厚な攻防戦だった。緑谷は初めて個性らしきものを発動させた。同時に轟も左手から炎を出すがそれは超パワーと思われる緑谷によって振り払われた。その隙を突き鉢巻を奪うもそれは70ポイント。4位までが最終種目に進めるというのが分かっている現在では圏外である6位。一瞬硬直するもそこへ氷の壁を破壊して爆豪が乱入してきた。奪われた鉢巻のみならず奪っていった奴から全て奪い取った爆豪は元々の狙いである1000万ポイントを狙いに来たのだろう。
そして、爆豪が轟が1000万ポイントを持っているときづき狙いをそちらに変更、緑谷も攻撃を行おうとしたタイミングでブザーが鳴り騎馬戦が終了した。緑谷は6位という圏外で敗退が決定したのだ。
……と、思っていたが実は違っていた。というよりも順位は中間、というか終了直前から大きく変動した為1位から言って行こう。
1位は1000万と490ポイントを取った轟チーム。
2位は1360ポイントを取った爆豪チーム。
3位はいつの間にかなっていた普通科で唯一予選を勝ち上がった心操が騎手を務めたチーム。ポイントは1125。
そして、4位は
そう、緑谷チームはいつの間にか轟チームの初期ポイントである615ポイントを取っていたのだ。どうやら轟が爆豪や緑谷に気を取られている隙に前騎馬を務めたモンスターを使える奴が奪ったようだ。それが分かった緑谷は号泣しているが正直何処からそれだけの水が出てくるのか不思議だ。騎馬を組むときにも流していたしこれで体中の水分全てが放出されたんじゃないか?そう思わせる量だ。
「予選の時に注目を浴びた三人。無事に突破しましたね」
「ああ、だがここからどうなるのかは分からないぞ。何しろ雄英体育祭は毎年一対一の戦いを行う傾向にある。ここまで緑谷が来れた理由の一つは彼が肉体ではなく知力を持って戦ってきたからだ。超パワーを何故使わないのか? いざという時まで温存する為? 情報を奪われない為? 違うだろう。恐らくだが個性を扱いきれてない。これが正解だろうな」
「コントロールができないという事ですか?」
「おそらくな。誰だってリンゴを潰すのに車を潰せる力を使おうとはしないだろう。もしかしたら体の負担も大きいのかもしれない。まぁ、どちらにしろ彼の力は最終種目で分かるだろう」
そして昼休憩を挟みいよいよ最終種目、の前にレクリエーションを挟む。レクリエーションは最終種目に出場する人は参加しなくても良いらしく英気を養えるようだ。そしてレクリエーションに行く前に最終種目であるトーナメント方式のガチバトルの組み合わせ抽選が行われる事になったがその時にひと悶着あった。心操チームに参加していた尻尾を持つ生徒が辞退を申し出たのである。どうやら個性によって操られていた様で自分の実力で突破したわけではないのに出場する事に我慢できなかったようだ。同様の理由からB組の生徒も辞退し二名程繰り上がる事が決定した。
「という事は惜しくも落ちてしまった拳藤が出るのか!?」
「旦那様、落ち着いてください」
マリーに引き留められるほど興奮してしまったが結局拳藤一佳含む女子たちは別のチームを推薦した。途中まで3位をキープしていたチームだ。あのチームにも女性はいたが……、あまり好みではないんだよな。
そんな訳で二名の繰り上がり出場者を含めてトーナメントが発表された。耳郎響香は予選落ちしてしまったし唯一出場できた芦戸ちゃんを応援するか。せめて一回戦は突破してほしい物だ。
『よーし! それじゃぁトーナメントはひとまず置いといてイッツ・ツカノマ! 楽しく遊ぶぞレクリエーションン!』
そして、その言葉と共にレクリエーションが始まった。最初の競技は借り物競争らしくやる気のある人は皆それぞれのお題のモノを借りようとしている。ん?あの巨乳ポニテの背につかまっていた奴、『背油』とか書いてあるな。流石は雄英、一歩間違えれば苦情が来そうな内容のものまである。
「っ! すいません! そこの人、一緒に来てくれませんか!?」
そんな風にどんなものがあるのか眺めていると拳藤一佳が俺の方を見ながら言ってくる。一瞬誰に言っているんだ?となるが拳藤一佳はその疑問を解消するようにお題を見せてきた。書かれていたのは『超が付くイケメン』。それをみた俺の付近の全員の視線が俺に集中する。確かに俺の今の容姿はイケメンだ。そうなるように顔を変えたがまさかこのような事になるとはな。
「……俺か?」
「っ! ハイ! オネガイシマス!」
何やら俺が視線を合わせると顔を真っ赤にしてカチコチになる。瞬間、先程までの「ああ、こいつの事かよ」という視線から「爆死しろ」という嫉妬の視線に変わった。マリーは可笑しそうにくすくす笑っているし……。仕方ない。
俺はそれなりの高さのある観客席から飛び降りる。そして綺麗に拳藤一佳の隣に着地する。ふむ、やはりとても可愛らしいな。ついつい手を出しそうになるが今は我慢だ。こんな目立つところで行ったらめんどくさい事になるからな。俺は拳藤一佳に話しかける。
「確か、拳藤さんだったね。行こうか」
「ハ、ハヒ……」
……完全にフリーズしてしまっているな。仕方ない。俺は彼女の膝裏と背中に手を回すと持ち上げる。所謂”お姫様抱っこ”と言う奴だ。
『おおーっと!? 滅茶苦茶顔の良いイケメンがB組拳藤をお姫様抱っこしているぞぉぉぉっ!? なんてうらやま! 爆死しろ!』
『落ち着けマイク』
観客たちからは黄色い歓声と嫉妬のブーイングが起こる。前者は女性で後者は男性だ。というか先ほどから拳藤の反応がない。俺が顔を見てみれば……
「……キュゥ」
失神している。姉御肌的な人物かと思ったけど意外とこういう事に弱いのか。それなら眷属にした後はこういった事をして彼女をあたふたさせよう。決して慣れさせず常に顔を真っ赤にして恥ずかしがるような感じにしてもいいかもしれない。そう思うと興奮してくるしレクリエーションとは言え一位にさせてあげたいと思えてくる。本気を出すつもりはなかったが少し力を出すか。
俺は力を少し込めて走る。とは言えそれだけでも十分に早い。轟チームの前騎馬を行っていた生徒並みには早いぞ。
『おいおい! あのイケメン足も速いじゃないか! 拳藤一佳、本人気絶してるがまさかの”お題で借りて来た人”の活躍で一位だぁ! ちくしょー! イケメンで足も速いとかまじでうらやま!』
『あれはいいのか?』
「あ、あれ? 私は……」
「お? お目覚めかな? お姫様」
「え? ……? ……っ!!??」
自分が今どのような状態にあるのかを察した拳藤一佳は水が沸騰できそうな程顔に熱がこもる。軽く湯気すら出るほど混乱と羞恥を味わっているようだ。これ以上は流石に可哀そうだし下ろしてやる。若干ふらつきながらも俺の方を向く。
「あの、えっと……! あ、ありがとうございます?」
「ああ、こちらも雄英体育祭のレクリエーションとは言え参加出来てよかったよ。それに、こんな美人さんに指名してもらえたのだからね」
「っ!!!!」
俺がそう言うと拳藤一佳は明らかに動揺している。目を回しそうになっているしこれ以上ここにいるのは不味いだろう。
「さて、流石に生徒でもなんでもないただの観客である俺がこの場にいるのは不味い気がする。拳藤さん、申し訳ないけど出口まで案内してもらっても良いかな?」
「あ、はい。勿論です……」
俺は拳藤と並んでステージから出る。その後は軽くお喋りしたりして拳藤一佳との仲を深めた。最後には携帯番号を交換するくらいには彼女からの信頼を得る事に成功した。……眷属にした時、彼女は俺を第一に考え俺の降伏の為に動く様になる。そうなればこんな会話も難しくなるのだろうな。なら、せめて。彼女を眷属にしても良いと判断した時までこの微妙な関係を続けさせてもらうとするか。
因みにその後のトーナメントは白熱した展開だったが拳藤一佳との会話には勝らない。芦戸三奈も二回戦で負けてしまったしな。ただ、緑谷出久はパワーを扱いきれていない事、轟が何やら和解できそうな雰囲気になっている事、そして何より今年の生徒たちの個性、性格をある程度は把握出来た。
雄英体育祭も終わりその帰り道、俺はマリーと並んで歩く。未だに嫉妬の視線が向けられているが今はそんなのどうだって良い。今の俺は確かな充実感を得ているのだから。それを感じ取ったのか、マリーが話しかけてきた。
「ふふ、拳藤さんを随分と気に入られたようですね」
「ああ、是非とも彼女は俺の眷属にしたい。きっとここ数百年ぶりの充実した、とても楽しい日々を過ごす事が出来るだろう」
「眷属にするタイミングは何時頃にしますか?」
「”今は”厳しいな。ただでさえ襲撃の後だ。チャンスとしては夏休みを挟んだ二学期だな。そこで隙を見ていただく」
「なら、その予定で準備を進めさせてもらいます」
「頼むぞ」
「お任せを」
かつての王妃然とした態度とは違う。策士と思えるような笑みをマリーは浮かべている。とは言えこちらも同じだ。気に入った女性を手に入れるその時を待ち遠しく思える俺の顔はきっと、大きく歪んでいるのだろうな。
拳藤一佳
始祖のお気に入り。始祖曰く”数百年ぶりの充実した、とても楽しい日々を過ごせるかもしれない”と言うほど気に入っている。原作とは違いお題は『超が付くイケメン』になった。始祖から気に入られている為死亡しない限り眷属化の未来が待っている。しかも割と早めに(他だと芦戸三奈と耳郎響香)
他のキャラを出すか(勿論始祖の眷属として。その為性格は大きく変わる可能性大)
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あり
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なし
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数人程度ならあり